有価証券報告書-第35期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/29 11:06
【資料】
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【項目】
77項目

事業内容

当社の事業の目的は、我が国で少子高齢化が進み医療費の増加が大きな社会問題となるなか、国民の健康と医療費適正化に貢献し続けることであり、当社グループは、当社、子会社1社および関連会社1社で構成されております。
当社が営む医療関連情報サービス事業は、自社で制作している医療関連データベース(*1)を利用したソフトウエアを開発し、このソフトウエアを利用したデータヘルス関連のサービスを保険者等に提供することを主としております。なお、当社は医療関連情報サービス事業の単一セグメントであります。
1.医療関連情報サービス
当社の医療関連情報サービスは、主に保険者(*2)に提供するデータヘルス関連の保険者向け情報サービスとなっております。
保険者向け情報サービスは、保険者から預かったレセプト(*3)と健診のデータを分析し、医療費適正化のために、データヘルス計画作成と保健事業の支援、ジェネリック医薬品普及促進のための通知、レセプト点検システムの提供を行っております。
レセプトは、医科・調剤の全てに対応しており、紙レセプトの画像データをレセプトOCR変換技術(*4)でコード化し、電子レセプトは未コード化病名(*5)をコード化したうえで、分析を行っております。
コード化と分析については、長年にわたって開発してきた医療関連データベースと、特許を取得している二つの技術(傷病ごとの医療費を把握する医療費分解(*6)、傷病のステージ別の患者を抽出・階層化する傷病管理システム(*7))を、活用しております。
(1)データヘルス計画作成支援
データヘルス計画を作成するために、保険者の現状の把握、課題の抽出、課題に応じた事業の選定、目標の設定〈ポテンシャル分析〉から製本まで、保険者のニーズに合わせた支援を行っております。
(2)保健事業支援
医療費適正化のための保健事業(重症化予防指導、生活習慣病放置者受診勧奨通知・指導、頻回受診者指導、重複受診者指導、重複服薬者指導、薬剤併用禁忌対象者抽出)の対象者のリスト作成や、保険者がリストを作成するためのシステム〈保健事業支援システム〉の提供および、リスト作成を含めたアウトソーシングサービスとして保健事業(指導と通知書の発送など)を代行して被保険者とその扶養家族に行うものであります。
また、保健事業の結果をレセプトを分析することで、モニタリング・チェック・成果測定を行い、PDCAサイクルに乗ったアウトカムの見える事業として提供しております。
なお、重症化予防指導は、慢性疾患(現在は主に糖尿病を対象)に罹患された方に対し、適切な情報および問題解決技法等の提供を通じ、病気の進行の防止や健康なライフスタイルの維持を図るものであり、関連会社㈱DPPヘルスパートナーズは、この指導を行っております。
(3)ジェネリック医薬品普及促進のための通知〈ジェネリック医薬品通知サービス〉
保険者の医療費負担(薬剤費)を削減するため、被保険者とその扶養家族に対して、処方された先発医薬品から変更可能なジェネリック医薬品(*8)の紹介とジェネリック医薬品に変更した場合の薬代の削減額を記載した案内文を送付し、ジェネリック医薬品の普及を促進するサービスであります。
(4)レセプト点検システム
保険者のレセプト二次点検業務の効率化を図るため、全レセプトから点検の必要性の高いレセプトを絞り込むために、点検のノウハウをシステム化したものであります。
[事業系統図]
以上述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりであります。
0101010_001.png
(注) 日本の医療保険制度の解説
日本では、国民皆保険制度により、日本国民ならだれでも、健康保険(会社で働く人が加入する組合管掌健康保険と全国健康保険協会)、共済組合(公務員等)、船員保険、国民健康保険(健康保険、共済組合、船員保険に介入していない全ての人)のいずれかの医療保険制度に加入することになっております。
次の図は、医療保険制度に加入した国民(被保険者)が保険料を支払い、医療機関が診療報酬を受けとる流れを表したものであります。
0101010_002.png① 被保険者は、保険者に毎月、保険料を支払います。
健康保険組合、全国健康保険協会の加入者は事業主を通じて保険者に支払い、国民健康保険の加入者は直接保険者に支払います。
② 患者(被保険者とその扶養家族)は、病気やケガをすると、医療機関で診察・投薬等を受けます。
③ 患者は医療機関に自己負担分(多くは3割)を支払います。
④ 医療機関は診療報酬の請求のために毎月患者ごとにレセプトを作成し、審査支払機関(*9)に提出します。
⑤ 審査支払機関は、レセプトに誤りがないかを審査し、誤ったレセプトは医療機関に差し戻します。
⑥ 審査支払機関は、合格した審査済レセプトを保険者に送付します。
⑦ 保険者は、レセプトの合計金額を審査支払機関に支払います。
⑧ 審査支払機関は、診療報酬を医療機関ごとに支払います。
⑨ 保険者は、被保険者に健康診断と保健指導を行います。なお、平成20年4月から40歳以上の被保険者に対して、特定健診、特定保健指導が義務付けられました。
(注) 用語の解説
*1 医療関連データベース
平成8年から蓄積してきた、平成28年3月31日現在の当社の10万件におよぶ傷病、診療行為辞書データベース、360万件におよぶ傷病と診療行為、医薬品チェックデータベース、そして年間約1億4,700万件のレセプト分析情報などの医療関連データベースは当社の主要な製品・サービスに使用されています。
*2 保険者
保険者とは,保険制度を運営する主体のことで、全国健康保険協会、健康保険組合、共済組合(公務員等)、市町村および特別区(国民健康保険)などです。
*3 レセプト
レセプトは、医療機関から、月に一度、審査支払機関へ提出する患者ごとの請求書のことで、診療報酬明細書とも言われます。
その内容は、診療報酬点数表に基づき、薬、処置、検査などを点数化して、医療費を計算したものです。
*4 レセプトOCR変換技術
画像データを単にテキスト化することは他社でも可能であります。しかし、レセプトの画像から文字だけを抜き出し、その文字を病名、診療行為、医薬品などに分類し、病名と診療行為および医薬品を結びつけてテキスト化するのは困難です。
これを、当社では、医療関連データベースを基にした技術で自動的にテキスト化しています。
*5 未コード化病名
いわゆるワープロ病名で、傷病名マスターに収載されていない病名を使用する場合に、未コード化傷病名コードを使用して、病名がワープロ入力されたものです。
*6 医療費分解
レセプトには、複数の傷病名が記載され、使用した医薬品、検査、処置、保険点数は傷病名ごとに分類されることなく記載されており、傷病名ごとの医療費は明確ではありません。
医療費分解とは、傷病名ごとに医薬品、検査、処置などの保険点数を分解し、傷病名ごとの医療費を計算することと当社で定義しております。
また、当社は、医療費分解解析装置、医療費分解解析方法およびコンピュータプログラムに関する特許を日本国内において、設定登録(特許第4312757号)しております。
*7 傷病管理システム
傷病管理システムは、レセプト(診療報酬明細書)に記載の傷病識別情報、医薬品識別情報および診療行為識別情報に基づき、傷病のステージ別の患者を抽出・階層化するもので、特許として設定登録(特許第5203481号)されております。
*8 ジェネリック医薬品
ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは、成分そのものやその製造方法を対象とする特許権が消滅した先発医薬品について、特許権者ではなかった製薬会社がその特許の内容を利用して製造した、同じ主成分を含んだ医薬品です。
ジェネリック医薬品は新薬に比べ実施する試験項目が少ないため、開発費が少なく、価格は先発医薬品に対して2割~8割の価格になっています。
現状でジェネリック医薬品の普及が進んでいる国は、米国、英国、ドイツなどで、普及率(数量ベース)は、次のとおりです。
日本49%、米国92%、英国73%、ドイツ83%
(出典)IMS Health, MIDAS, Market Segmentation,MAT Sep 2014,RX only
*9 審査支払機関
審査支払機関は、レセプトの審査と、医療機関への診療報酬の支払業務を保険者に代わって行い、「社会保険診療報酬支払基金」「国民健康保険団体連合会」があります。