有価証券報告書-第16期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当事業年度における売上高につきましては主として創薬支援事業における研究受託取引の拡大により、447,576千円(前期比234,725千円増加)となりました。営業損失につきましては、自社で開発中のCBA-1205における臨床試験開始に向けた準備費用を中心に研究開発費が増加したことにより、1,401,939千円(前事業年度は1,539,121千円の営業損失)となりました。また、経常損失は1,410,314千円(前事業年度は1,533,952千円の経常損失)、当期純損失は1,403,821千円(前事業年度は1,533,502千円の当期純損失)となりました。当事業年度における当社の事業活動の状況といたしましては、概況は次のとおりです。
当社は、医療のアンメットニーズの高い領域における抗体医薬品を創出する創薬事業と、製薬企業等に抗体創薬にかかわる技術サービスを提供する創薬支援事業の二つの事業を展開しております。
創薬事業においては、自社開発中のファースト・イン・クラス抗体であるCBA-1205は治験薬製造と治験届に必要なGLP下での毒性試験等の前臨床開発が進捗し、2020年3月24日に日本国内での治験届提出をいたしました。多重特異性抗体であるCBA-1535は、CMC開発に着手いたしました。探索段階にある創薬プロジェクトでは、がん領域のプロジェクトにおいて新規に特許出願を行い、その他のプロジェクトでもリード抗体の創出、および知財化に向けた研究開発に取り組んでまいりました。また、新たな創薬プロジェクト発足にむけた創薬企業やアカデミアとの共同研究を開始するなど、今後の開発パイプラインの質・量の拡充に向けた取り組みを進めてまいりました。
・開発パイプライン
2017年9月にスイスのADC Therapeutics社にADC用途に限定して導出したADCT-701については、IND申請準備に必要な毒性試験が終了したことによるマイルストーンを達成しました。
CBA-1205については、2020年内の第1相試験の開始を見込んでおります。
CBA-1535については、治験薬製造を委託するCMOの選定が完了し、製造準備を進めております。2021年後半以降の英国での臨床試験許認可(CTA)申請を目標とし、取り組んでまいります。
LIV-2008については、複数の海外製薬企業において導入評価試験等が実施されております。
BMAAについては、2018年3月にカナダのSemaThera社(以下、ST社)と共同開発ライセンス及び独占的オプション契約を締結しておりますが、当事業年度において評価2年目のオプション期間に対応するオプション料を受領しており、現在もST社が評価を継続して実施しております。
・創薬プロジェクト
その他、探索段階にある6つの創薬プロジェクトが進行しており、さらなるパイプライン拡充に向け研究開発に取り組んでおります。なお、創薬プロジェクトのうち、がんの標的分子(非開示)をターゲットとするプロジェクトにおいて新規特許出願を完了し、現在はADC領域でのフィージビリティー・スタディーを実施しております。今後は外部企業等との連携に取り組んでまいります。
以上の結果、創薬事業における当事業年度の業績は、売上高29,913千円(前期比27,633千円増加)、研究開発費1,299,069千円(前期比68,732千円増加)、セグメント損失は1,270,358千円(前事業年度は1,234,364千円のセグメント損失)となりました。
創薬支援事業は、当社の安定的な収益確保に資する事業であり、当社の独自の抗体作製手法であるADLib®システムやB cell cloning法等の抗体技術プラットフォームを活かした抗体作製業務のほか、タンパク質調製業務、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務を受託し、製薬企業等の研究支援を展開しております。引き続き高い品質のサービス提供を目指し、継続的な新規案件の受託拡大に向けた取り組みを進めてまいります。
当事業年度においては、富士レビオ株式会社(以下「富士レビオ」)における当社のADLib®システムを使用して開発したモノクローナル抗体を含む診断薬キット(以下「本製品」)の製品化(2品目となります)に伴い、当社は富士レビオと本製品に係る知的財産の実施に関する契約を新たに締結いたしました。本契約により、本製品の販売後には、当社は売上に応じたロイヤルティを受け取ることになります。
また、従来、当社は協和キリン株式会社(以下、「協和キリン」)と個別契約による研究支援業務を受託してまいりましたが、当社の技術・サービスに評価を得た結果、2019年7月に委受託基本契約の締結にいたりました。これにより、今後は迅速な抗体作製等の業務支援及び継続的な取引を行っていくことが可能となります。
創薬支援事業における当事業年度の業績は、中外製薬グループや小野薬品との取引を中心として拡大した結果、売上高417,663千円(前期比207,092千円増加)となり、セグメント利益は255,936千円(前期比140,632千円増加)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」)の残高は2,105,976千円となり、前事業年度末と比べ222,537千円減少いたしました。各キャッシュ・フローの状況とその主な要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は1,537,360千円となりました。主な内訳は、税引前当期純損失の計上や、たな卸資産の増加です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は26,423千円となりました。これは敷金及び保証金の増加による支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果取得した資金は1,341,245千円となりました。これは主に新株予約権の行使による株式の発行によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は研究開発を主体としており、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績の記載はしておりません。
b.受注実績
当社は研究開発を主体としており、受注実績を定義することが困難であるため、受注実績の記載はしておりません。
c.販売実績
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
a.経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
当社の事業は創薬事業と創薬支援事業により構成されており、当事業年度の当社業績は、447,576千円と前事業年度と比較し234,725千円の増収となりました。これは主に、創薬支援事業の取引拡大によるもので、同事業の売上高は417,663千円と前期比198.3%となりました。当社の強みである高い業務品質と柔軟な対応力を発揮するため、国内の大手抗体医薬企業との取引を重点的に深化させた結果であり、今後も拡大基調となることを見込んでおります。
コスト面においては、販売費及び一般管理費は1,686,586千円と前期比36,188千円の増加となり、特にCBA-1205やCBA-1535のCMC開発等の研究開発費の増加が主な要因となっております。
創薬事業は当社の成長をけん引する事業であり、アンメットニーズに光を当てるための医薬品の研究開発を推進しております。通常、医薬品の研究開発においては、研究資金の先行投資と成功時には大きなリターン、サイエンスの不確実性による開発遅延・中止リスク等と向き合うことになるため、継続的な成長のためには複数の開発パイプラインを確保するなどの手立てを打つことが重要であります。当事業年度においては、CBA-1205のCMC開発やGLP下での毒性試験、CBA-1535ではCMC開発、と2本の開発候補品の臨床開発に向けた取り組みが進んでおります。現時点で、当社が同事業において同時期に扱える臨床開発品目数は2本から3本と想定しており、予定通り臨床開発に向けた取り組みに至っております。なお、2020年3月24日に治験届を提出したCBA-1205は2020年内の第1相試験の開始を見込んでおります。これらの初期臨床開発実施後の導出を目指すことで、前臨床段階の導出と比較し、より大きな経済条件の獲得できることを目指しております。
また、探索段階にある創薬プロジェクトの絞り込みとステージアップ、新規の創薬プロジェクト発足にむけた共同研究の開始など、開発パイプラインの拡充にむけた取り組みが着実に進展しており、技術開発や創薬のための共同研究は10件実施しております。以上の結果、当事業年度における創薬事業の売上高は29,913千円、セグメント損失は1,270,358千円となりました。
創薬支援事業は、当社の安定的な収益確保に資する事業であり、当社の抗体の技術プラットフォームを活かして日本の製薬企業やアカデミアの研究支援を実施しております。タンパク質調製業務や抗体作製など個々の業務を担う競合他社が多数ありますが、製薬企業を中心とした当社顧客に対して、高い品質や柔軟な対応を行うサテライトラボとして高付加価値型サービスを提供することを目指し、他の競合企業との差別化を図っております。なお、高付加価値型ビジネスを遂行する上での目標として、セグメント利益を50%以上維持することとしております。当事業年度においては、日本国内の抗体医薬大手企業との取引の深耕化に重点を置いた結果、創薬支援事業の売上高は当初の業績予想額320,000千円(修正後400,000千円)を超過し417,663千円、達成率130.5%となりました。また、セグメント利益率は61.3%、セグメント利益は255,936千円(前年比140,632千円増)を確保しております。
両事業において、当社の強みである抗体作製にかかるコア技術をフル活用することにより、新たなビジネスの成果が芽生えつつある状況になってまいりました。短期的には初期臨床開発にかかる研究開発コストが増大することになりますが、創薬支援事業の拡大により当社が捻出できる研究開発資金を増大させるような取り組みを継続してまいります。
なお、経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりとなっております。
b.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は研究開発型ベンチャー企業であり、研究開発のための先行投資が必要となっております。資本の財源となる収益については、これまで主として提携先製薬企業等から委受託業務による収益を獲得しており、加えて、保有する創薬パイプラインの導出により契約一時金、マイルストーン収入等を計上しております。将来において、当社が保有する創薬パイプラインが新たに導出に至った場合には、契約一時金、マイルストーン収入の増加が見込まれ、また、医薬品が上市された場合には販売ロイヤルティを受領することとなります。導出に至るまでの先行投資期間においては研究開発費の支出等から営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスを計上する計画であり、当事業年度においては、CBA-1205やCBA-1535のCMC開発の進展などにより前事業年度よりも研究開発費が68,732千円増加、営業活動によるキャッシュ・フローは1,537,360千円の支出となりました。
なお、上記先行投資期間における営業活動によるキャッシュ・フローのマイナスについて、現在既に収益を得ている創薬支援事業における1社ごとの取引量や新たに取引先を拡大することで営業キャッシュ・フローの改善に努めております。また、財務活動によるキャッシュ・フローについては、助成金の獲得や必要に応じた資金調達等により補填を行っております。資金調達においては、新株予約権の発行によるエクイティファイナンスに加え、有利子負債の調達も含めて実施しており、調達上の安定性の確保の観点や財務レバレッジにも留意しております。
資金の流動性につきましては、当事業年度の営業活動によるキャッシュ・フローが1,537,360千円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが1,341,245千円の支出となり、現金及び現金同等物の期末残高は2,105,976千円となりました。
<用語解説>(50音、アルファベット順)
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当事業年度における売上高につきましては主として創薬支援事業における研究受託取引の拡大により、447,576千円(前期比234,725千円増加)となりました。営業損失につきましては、自社で開発中のCBA-1205における臨床試験開始に向けた準備費用を中心に研究開発費が増加したことにより、1,401,939千円(前事業年度は1,539,121千円の営業損失)となりました。また、経常損失は1,410,314千円(前事業年度は1,533,952千円の経常損失)、当期純損失は1,403,821千円(前事業年度は1,533,502千円の当期純損失)となりました。当事業年度における当社の事業活動の状況といたしましては、概況は次のとおりです。
当社は、医療のアンメットニーズの高い領域における抗体医薬品を創出する創薬事業と、製薬企業等に抗体創薬にかかわる技術サービスを提供する創薬支援事業の二つの事業を展開しております。
創薬事業においては、自社開発中のファースト・イン・クラス抗体であるCBA-1205は治験薬製造と治験届に必要なGLP下での毒性試験等の前臨床開発が進捗し、2020年3月24日に日本国内での治験届提出をいたしました。多重特異性抗体であるCBA-1535は、CMC開発に着手いたしました。探索段階にある創薬プロジェクトでは、がん領域のプロジェクトにおいて新規に特許出願を行い、その他のプロジェクトでもリード抗体の創出、および知財化に向けた研究開発に取り組んでまいりました。また、新たな創薬プロジェクト発足にむけた創薬企業やアカデミアとの共同研究を開始するなど、今後の開発パイプラインの質・量の拡充に向けた取り組みを進めてまいりました。
・開発パイプライン
2017年9月にスイスのADC Therapeutics社にADC用途に限定して導出したADCT-701については、IND申請準備に必要な毒性試験が終了したことによるマイルストーンを達成しました。
CBA-1205については、2020年内の第1相試験の開始を見込んでおります。
CBA-1535については、治験薬製造を委託するCMOの選定が完了し、製造準備を進めております。2021年後半以降の英国での臨床試験許認可(CTA)申請を目標とし、取り組んでまいります。
LIV-2008については、複数の海外製薬企業において導入評価試験等が実施されております。
BMAAについては、2018年3月にカナダのSemaThera社(以下、ST社)と共同開発ライセンス及び独占的オプション契約を締結しておりますが、当事業年度において評価2年目のオプション期間に対応するオプション料を受領しており、現在もST社が評価を継続して実施しております。
・創薬プロジェクト
その他、探索段階にある6つの創薬プロジェクトが進行しており、さらなるパイプライン拡充に向け研究開発に取り組んでおります。なお、創薬プロジェクトのうち、がんの標的分子(非開示)をターゲットとするプロジェクトにおいて新規特許出願を完了し、現在はADC領域でのフィージビリティー・スタディーを実施しております。今後は外部企業等との連携に取り組んでまいります。
以上の結果、創薬事業における当事業年度の業績は、売上高29,913千円(前期比27,633千円増加)、研究開発費1,299,069千円(前期比68,732千円増加)、セグメント損失は1,270,358千円(前事業年度は1,234,364千円のセグメント損失)となりました。
創薬支援事業は、当社の安定的な収益確保に資する事業であり、当社の独自の抗体作製手法であるADLib®システムやB cell cloning法等の抗体技術プラットフォームを活かした抗体作製業務のほか、タンパク質調製業務、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務を受託し、製薬企業等の研究支援を展開しております。引き続き高い品質のサービス提供を目指し、継続的な新規案件の受託拡大に向けた取り組みを進めてまいります。
当事業年度においては、富士レビオ株式会社(以下「富士レビオ」)における当社のADLib®システムを使用して開発したモノクローナル抗体を含む診断薬キット(以下「本製品」)の製品化(2品目となります)に伴い、当社は富士レビオと本製品に係る知的財産の実施に関する契約を新たに締結いたしました。本契約により、本製品の販売後には、当社は売上に応じたロイヤルティを受け取ることになります。
また、従来、当社は協和キリン株式会社(以下、「協和キリン」)と個別契約による研究支援業務を受託してまいりましたが、当社の技術・サービスに評価を得た結果、2019年7月に委受託基本契約の締結にいたりました。これにより、今後は迅速な抗体作製等の業務支援及び継続的な取引を行っていくことが可能となります。
創薬支援事業における当事業年度の業績は、中外製薬グループや小野薬品との取引を中心として拡大した結果、売上高417,663千円(前期比207,092千円増加)となり、セグメント利益は255,936千円(前期比140,632千円増加)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」)の残高は2,105,976千円となり、前事業年度末と比べ222,537千円減少いたしました。各キャッシュ・フローの状況とその主な要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は1,537,360千円となりました。主な内訳は、税引前当期純損失の計上や、たな卸資産の増加です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は26,423千円となりました。これは敷金及び保証金の増加による支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果取得した資金は1,341,245千円となりました。これは主に新株予約権の行使による株式の発行によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は研究開発を主体としており、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績の記載はしておりません。
b.受注実績
当社は研究開発を主体としており、受注実績を定義することが困難であるため、受注実績の記載はしておりません。
c.販売実績
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 当事業年度 (自 2019年1月1日 至 2019年12月31日) | |
| 販売高(千円) | 前年同期比(%) | |
| 創薬事業 | 29,913 | 1,311.9 |
| 創薬支援事業 | 417,663 | 198.3 |
| 合計 | 447,576 | 210.3 |
(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
| 相手先 | 前事業年度 (自 2018年1月1日 至 2018年12月31日) | 当事業年度 (自 2019年1月1日 至 2019年12月31日) | ||
| 販売高 (千円) | 割合(%) | 販売高 (千円) | 割合(%) | |
| 中外製薬グループ | 137,480 | 64.5 | 183,328 | 40.9 |
| 小野薬品 | 14,912 | 7.0 | 169,432 | 37.8 |
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
a.経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
当社の事業は創薬事業と創薬支援事業により構成されており、当事業年度の当社業績は、447,576千円と前事業年度と比較し234,725千円の増収となりました。これは主に、創薬支援事業の取引拡大によるもので、同事業の売上高は417,663千円と前期比198.3%となりました。当社の強みである高い業務品質と柔軟な対応力を発揮するため、国内の大手抗体医薬企業との取引を重点的に深化させた結果であり、今後も拡大基調となることを見込んでおります。
コスト面においては、販売費及び一般管理費は1,686,586千円と前期比36,188千円の増加となり、特にCBA-1205やCBA-1535のCMC開発等の研究開発費の増加が主な要因となっております。
創薬事業は当社の成長をけん引する事業であり、アンメットニーズに光を当てるための医薬品の研究開発を推進しております。通常、医薬品の研究開発においては、研究資金の先行投資と成功時には大きなリターン、サイエンスの不確実性による開発遅延・中止リスク等と向き合うことになるため、継続的な成長のためには複数の開発パイプラインを確保するなどの手立てを打つことが重要であります。当事業年度においては、CBA-1205のCMC開発やGLP下での毒性試験、CBA-1535ではCMC開発、と2本の開発候補品の臨床開発に向けた取り組みが進んでおります。現時点で、当社が同事業において同時期に扱える臨床開発品目数は2本から3本と想定しており、予定通り臨床開発に向けた取り組みに至っております。なお、2020年3月24日に治験届を提出したCBA-1205は2020年内の第1相試験の開始を見込んでおります。これらの初期臨床開発実施後の導出を目指すことで、前臨床段階の導出と比較し、より大きな経済条件の獲得できることを目指しております。
また、探索段階にある創薬プロジェクトの絞り込みとステージアップ、新規の創薬プロジェクト発足にむけた共同研究の開始など、開発パイプラインの拡充にむけた取り組みが着実に進展しており、技術開発や創薬のための共同研究は10件実施しております。以上の結果、当事業年度における創薬事業の売上高は29,913千円、セグメント損失は1,270,358千円となりました。
創薬支援事業は、当社の安定的な収益確保に資する事業であり、当社の抗体の技術プラットフォームを活かして日本の製薬企業やアカデミアの研究支援を実施しております。タンパク質調製業務や抗体作製など個々の業務を担う競合他社が多数ありますが、製薬企業を中心とした当社顧客に対して、高い品質や柔軟な対応を行うサテライトラボとして高付加価値型サービスを提供することを目指し、他の競合企業との差別化を図っております。なお、高付加価値型ビジネスを遂行する上での目標として、セグメント利益を50%以上維持することとしております。当事業年度においては、日本国内の抗体医薬大手企業との取引の深耕化に重点を置いた結果、創薬支援事業の売上高は当初の業績予想額320,000千円(修正後400,000千円)を超過し417,663千円、達成率130.5%となりました。また、セグメント利益率は61.3%、セグメント利益は255,936千円(前年比140,632千円増)を確保しております。
両事業において、当社の強みである抗体作製にかかるコア技術をフル活用することにより、新たなビジネスの成果が芽生えつつある状況になってまいりました。短期的には初期臨床開発にかかる研究開発コストが増大することになりますが、創薬支援事業の拡大により当社が捻出できる研究開発資金を増大させるような取り組みを継続してまいります。
なお、経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりとなっております。
b.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は研究開発型ベンチャー企業であり、研究開発のための先行投資が必要となっております。資本の財源となる収益については、これまで主として提携先製薬企業等から委受託業務による収益を獲得しており、加えて、保有する創薬パイプラインの導出により契約一時金、マイルストーン収入等を計上しております。将来において、当社が保有する創薬パイプラインが新たに導出に至った場合には、契約一時金、マイルストーン収入の増加が見込まれ、また、医薬品が上市された場合には販売ロイヤルティを受領することとなります。導出に至るまでの先行投資期間においては研究開発費の支出等から営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスを計上する計画であり、当事業年度においては、CBA-1205やCBA-1535のCMC開発の進展などにより前事業年度よりも研究開発費が68,732千円増加、営業活動によるキャッシュ・フローは1,537,360千円の支出となりました。
なお、上記先行投資期間における営業活動によるキャッシュ・フローのマイナスについて、現在既に収益を得ている創薬支援事業における1社ごとの取引量や新たに取引先を拡大することで営業キャッシュ・フローの改善に努めております。また、財務活動によるキャッシュ・フローについては、助成金の獲得や必要に応じた資金調達等により補填を行っております。資金調達においては、新株予約権の発行によるエクイティファイナンスに加え、有利子負債の調達も含めて実施しており、調達上の安定性の確保の観点や財務レバレッジにも留意しております。
資金の流動性につきましては、当事業年度の営業活動によるキャッシュ・フローが1,537,360千円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが1,341,245千円の支出となり、現金及び現金同等物の期末残高は2,105,976千円となりました。
<用語解説>(50音、アルファベット順)
| 用語 | 意味・内容 |
| アンメットニーズ | 現状の医療では満たされていない(未充足)ニーズのことです。具体的には、有効な治療法や薬剤がない場合、薬剤があっても使い勝手が悪い、または副作用が強い、一時的に症状を抑えても再発する、時間とともに悪化するような場合、あるいは治療費が非常に高額になるような場合等にアンメットニーズが存在するといいます。 |
| 幹細胞 | 幹細胞は未分化な細胞で、色々な細胞に分化できる能力と、いつまでも同じ状態で増殖を維持できる能力を持つ特殊な細胞です。 |
| シーズ | 事業化・製品化の可能性はあるものの、まだ“種または芽(シーズ)”の状態であり、現時点では大きな売上や価値を生み出さないものの、将来の可能性を秘めたモノ、技術やノウハウのことを指します。企業やアカデミアが見出したものの活用していないような技術や特許等も含まれ、当社の場合、研究初期段階のターゲット抗原やその候補、抗体等が有力な候補となります。 |
| 上市 | 承認された新薬の市場販売が開始されることをいいます。 |
| 前駆細胞 | 幹細胞から特定の体細胞や生殖細胞に分化する途中の段階にある細胞のことで、幹細胞よりも分化できる能力が限られています。 |
| 前臨床試験 | 医薬品の研究開発において、ヒトを対象とする臨床試験の前に行う試験のことです。動物を用いて、医薬品候補化合物等の有効性や安全性を評価します。非臨床試験ともいいます。 |
| 相同組換え | 相同組換え(相同的組換え)は、遺伝子配列がよく似た部位(相同部位)の間で起こる遺伝子の組換えメカニズムのことをいいます。ニワトリDT40細胞における抗体遺伝子における相同組換えは、抗体遺伝子の多様性を作り出すための仕組みとして機能しています。 |
| 探索研究 | 創薬研究の最初の段階として、医薬品の元となる生理活性を持つ物質を探索する研究段階があります。この研究を一般的に探索研究と呼びます。抗体医薬品の研究開発では、ターゲットである抗原について調べたり、様々な方法で抗体を作製したり、リード抗体を選別するための方法を確立したり、抗体の効果を試験管内の実験や予備的な動物実験により確かめたりする初期段階を探索研究と呼んでいます。 |
| 導出(ライセンスアウト) | 特許権やノウハウ等を他者に売却したり、実施許諾することをいいます。 |
| 導入(ライセンスイン) | 他者が持つ特許権やノウハウ等を買い取ったり実施許諾を受けたりすることをいいます。 |
| 動物免疫 | 動物に抗体を作らせる方法のことです。抗原タンパク質や抗原タンパク質を発現する細胞などを注射すると、その動物の免疫反応により体内に抗原に対する抗体が作り出されます。 |
| 特異的抗体 | ある特定の抗原に結合する抗体です。 |
| 毒性試験 | 前臨床試験として、医薬候補品をマウス・サルなどの動物に投与して毒性を評価します。「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施基準」に基づき試験が実施され、GLP-Tox(good laboratory practice toxicities)試験ともいいます。毒性試験で得られたデータは、審査当局への承認申請に用いられます。 |
| トリコスタチンA(TSA) | ニワトリDT40細胞にクロマチン弛緩を誘導するために利用する薬剤で、ヒストン脱アセチル化酵素という種類の酵素の働きを阻害する作用があります。ADLib®システムにおいて、ニワトリDT40細胞の抗体遺伝子組換えを活性化することによって、抗体タンパク質の多様性を増大させる役割を担う薬剤です。 |
| バイスペシフィック抗体 | 通常、抗体は抗原を認識する部位を2つ持っており、それらは同じ抗原を認識します。それに対し、2つの抗原認識部位がそれぞれ別のターゲット(抗原)を認識するものをバイスペシフィック抗体といいます。 |
| 用語 | 意味・内容 |
| パイプライン | 新薬として開発している医薬品候補化合物等のことを「パイプライン」といいます。創薬研究から臨床開発を経て関係当局の承認を受けるまでの活動を「創薬」と呼び、「創薬パイプライン」とは創薬のいずれかの段階にあるパイプラインのことをいいます。また、創薬パイプラインのうち開発段階に入ったパイプラインのことを、特に「開発パイプライン」ということがあります。 |
| ハイブリドーマ法 | 抗原を免疫した動物から抗体を作り出すB細胞を取り出し、増殖し続ける能力を持った特殊な細胞(ミエローマ細胞)と融合させて、抗体を作り続ける細胞(ハイブリドーマ)を作製する方法です。 |
| ヒト化抗体 | 遺伝子工学の技術により、マウス等の抗体分子の抗原結合部位をヒトの抗体分子に移植した抗体。マウス等由来のアミノ酸配列は全体の5%ほどで、残り95%はヒト由来のアミノ酸配列となるため、ヒトに投与した場合に異物として認識される可能性が軽減されます。 |
| ファースト・イン・クラス | 一般的には、その作用機序の医薬品の中で市場に最初に登場した医薬品を指します。類似薬がないことから高い薬価と高い売上が期待できます。抗体の場合は、あるタンパク質(抗原)をターゲットとする初めての抗体医薬をファースト・イン・クラス抗体と呼びます。ファースト・イン・クラス抗体のターゲット抗原の候補は、潜在的なものも含めてアカデミアを中心とした様々な疾患研究の中に多く存在していると考えられます。当社ではそうした抗原をターゲットとすることで、これまでにない医薬品候補抗体の開発を目指し、治療充足度が十分でない疾患の治療に貢献します。 |
| マイルストーン | 導出後の臨床試験等の進捗に伴い、その節目(マイルストーン)ごとに受領する収入のことをいいます。 |
| 免疫寛容 | 特定の抗原(例えば、自身の体の構成成分やそれに似ているもの)に対して免疫反応が起こらない状態をいいます。 |
| 免疫チェックポイント阻害剤 | いわゆる免疫療法の一種です。最近話題になっているこの治療薬は、これまでの免疫療法では免疫細胞の攻撃力を高める、アクセルを踏む働きが中心であったのに対し、例えばがん細胞によって免疫細胞にかけられたブレーキを外す働きをもっています。従来の治療法では効果が十分見られなかった患者様にも治療効果をあげることに成功しています。 |
| 免疫反応 | 生体に侵入してきた異物を排除する生体反応のことをいいます。 |
| モノクローナル抗体 | 単一の抗体産生細胞から得られた抗体のことをいいます。モノクローナル抗体は1つの抗原にのみ結合し、また結合する場所が決まっているため、均一で再現性の高い抗体になります。そのため、抗体医薬品の多くは、モノクローナル抗体が使われています。当社では、ADLib®システム、ハイブリドーマ法、B cell cloning法によりモノクローナル抗体を取得することができます。 |
| ライブラリ | ADLib®システムでは、多種多様な抗体を産生する細胞集団のことをライブラリと呼びます。ライブラリに含まれる細胞が産生する抗体の種類が多いほど、目的に合った抗体を取得できる確率が高くなります。当社では、トリライブラリ、マウスキメラライブラリ、ヒトライブラリを所有しており、顧客ニーズに合わせてライブラリを選択し、抗体作製を行っています。 |
| リード抗体 | ADLib®システム、ハイブリドーマ法、B cell cloning法、ファージディスプレイ法などの様々な手法で作成した抗体の中から、親和性、特異性、生物活性、安定性などのスクリーニングによって見出された医薬品になる可能性を有する抗体群をリード候補抗体と呼び、これらのリード候補抗体群のうち、医薬品としてその後の最適化などのステップに進めるための抗体をリード抗体と呼びます。 |
| 用語 | 意味・内容 |
| 臨床試験 | 臨床試験には、次の3段階があります。 第1相試験(フェーズ1):少数の治験参加者(*)を対象に、治験薬の安全性と治験薬が体内に入ってどのような動きをするのかを確認する試験 第2相試験(フェーズ2):第1相試験で安全性が確認された用量の範囲で、比較的少数の患者さんを対象に、治験薬の有効性(効果)、安全性、用法(投与の仕方:投与回数、投与期間、投与間隔など)・用量(最も効果的な投与量)を確認する試験 第3相試験(フェーズ3):第2相試験で確認された用法・用量で、多数の患者さんに治験薬を対象に、有効性と安全性を検証する試験 初期臨床試験は主に第1相試験および初期の第2相試験のことを指し、治験薬の安全性を主に、有効性の兆しを観察します。 (*)おおまかには、がん治療薬の第1相試験の場合には治験参加者は患者さんであり、がん以外の領域の治療薬の第1相試験の場合には治験参加者は健康なボランティアの方です。 |
| ロイヤルティ | 製品が販売(上市)された後に、その販売額の一定比率を受領する収入のことをいいます。 |
| ADC | 抗体薬物複合体(Antibody drug conjugate)のことを指します。例えば、悪性腫瘍の細胞表面だけに存在するタンパク質(抗原)に特異的に結合する抗体に毒性の高い薬剤を結合させると、そのADCは悪性腫瘍だけを死滅させることができます。このため、比較的副作用が少なく効き目の強い薬剤となる可能性があります。 |
| ADCC活性 | 抗体依存性細胞傷害活性(Antibody Dependent Cellular Cytotoxicity)のことです。抗体薬には、がん細胞の表面に発現する標的抗原(標的分子)に結合し抗腫瘍効果を示す直接的な作用のほかに、患者さん自身の免疫細胞(マクロファージやNK細胞等)を介して抗腫瘍効果を発揮する作用があります。そのため、標的抗原の発現量だけでなく、患者さん自身の免疫状態、特に抗体薬が生体内の免疫細胞をがん周囲に呼び寄せ、集まった免疫細胞を活性化することで大きな治療効果を期待できることがあります。このような作用をADCC活性といいます。 |
| ADLib®(アドリブ)システム | ライブラリから特定の抗原を固定した磁気ビーズを用いて目的の抗原に結合する抗体産生細胞を取り出す仕組みです。ADLib®システムで用いるライブラリは、ニワトリのBリンパ細胞由来のDT40細胞の持つ抗体遺伝子の相同組換えを活性化することによって、抗体タンパク質の多様性が増大しております。国立研究開発法人理化学研究所で開発された技術で、当社はその独占的な実施権を保有しております。既存の方法に比べ、迅速性に優れていることおよび従来困難であった抗体取得が可能になる場合があること等の点に特徴があると考えております。 |
| B細胞 | リンパ球の1種で骨髄由来の細胞です。抗原の侵入に応答して増殖し、抗体(免疫グロブリン)を生産する細胞へと分化して抗体を産生します。 |
| B cell cloning法 | 目的の抗原への結合性抗体を産生する単一のBリンパ細胞を選択し、抗体遺伝子をクローニングする手法のことです。抗原をトリやマウスなどの実験動物に免疫した後、その動物からBリンパ細胞を含む脾臓やリンパ節を取り出して行います。ハイブリドーマ法と異なり、増殖し続ける能力を持った特殊な細胞(ミエローマ細胞)と融合させる工程を省くことができます。 |
| 用語 | 意味・内容 |
| BMAA(抗セマフォリン3A抗体) | セマフォリン3Aは神経の先端の伸長を制御する因子として発見されました。これまでの研究により、セマフォリン3Aを阻害することにより神経再生が起こること、また炎症・免疫反応やがん、骨の形成、アルツハイマー病、糖尿病合併症等とも関連していることが報告されております。抗セマフォリン3A抗体は、この因子の働きを抑えることによりアンメットニーズの高い各種疾患の治療薬開発に結びつくことが期待される抗体です。本抗体は、当社独自の抗体作製技術であるADLib®システムで取得されました。 |
| CMC | Chemistry, Manufacturing and Controlの略で、医薬品の原薬・製剤の化学・製造およびその品質管理を指します。 |
| GLP | Good Laboratory Practiceの略称で、医薬品の安全性に関する前臨床試験の実施の基準を指します。安全性評価試験の信頼性を確保するため、試験施設が備えるべき設備、機器、組織、試験の手順等について基準を定めたものです。 |
| CMO | Contract Manufacturing Organizationの略称で、製薬会社から医薬品(治験薬・市販薬を含 む)の製造を受託する企業を指します。医薬品を製造するためには、GMP(医薬品等の製造管理 および品質管理に関する基準)をクリアする必要があり、CMOはGMPに対応できる技術力と、開発ライン・製造ラインの設備を備えています。 |
| CRO | 製薬企業が行う臨床試験を支援する組織(Contract Research Organization)のことです。質の高い臨床試験が実施できるように試験計画などのコンサルティングなどを行い、臨床試験のスピード化、質の向上、人件費の最小化などの役割を担っています。 |
| DT40細胞 | ニワトリのファブリキウス嚢(鳥類に特有な一次免疫器官)から取り出され、がん遺伝子の導入により不死化されたB細胞の1つです。このDT40細胞株では抗体遺伝子の相同組換えが高頻度で起きることが知られており、当社ではさらに薬剤により抗体遺伝子組換えを人為的に誘導して、多様な抗体を産生する細胞集団(ライブラリ)を作り出しています。これがADLib®システムの技術の基になっています。 |
| Naked抗体 | ADC抗体とは異なり、特別な修飾など加工をしていない(飾りつけていない)抗体をいいます。 |
| Tribody | 英国のBiotecnol社が開発した多重特異性抗体を作製する技術であるTrisoma®で作製された抗体の総称です。バイスペシフィック抗体と同様に複数の標的(抗原)に結合することができますが、Tribodyは抗原結合部位が3ヶ所あるので最大3種類の抗原に結合することができます。さらに、通常のバイスペシフィック抗体よりも分子量が大きいので腎代謝を受けにくい特徴があります。 |