有価証券報告書-第10期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/29 15:13
【資料】
PDFをみる
【項目】
164項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「お客さまと共に新たな価値を創造します」、「ものづくりを究めます」、「限りない変革への挑戦を続けます」を企業理念とし、お客さまの信頼と、技術への情熱を大切に、新たな可能性に挑み続ける企業づくりを目指しております。電力ネットワークをトータルにサポートする企業として、これまでの電力流通システムのモノ売りから、エネルギー利用の高度化・多様化に対応した事業で、「サステナブル社会」に貢献してまいります。
(2) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
脱炭素化、分散化、デジタル化など電力エネルギー事業を取り巻く環境が急速に変化する中、地球温暖化防止への意識の高まりを受けて、再生可能エネルギー利用や電気自動車が急速に普及しております。また、自然災害の激甚化に伴う防災、電力供給のレジリエンスに関する社会的ニーズは一層高まっております。
当社グループは2021年4月にこれらの環境変化に対応していくため「2030VISION & 2023中期経営計画」を策定いたしました。コア事業の基盤再構築による変革と、6つの新領域の事業分野の開拓の両利きの経営により、総合エネルギー事業プロバイダーを目指した取り組みに注力しております。
また、2021年12月には「サステナビリティ基本方針」及び「事業ポートフォリオ基本方針」を策定し、両方針に基づいた事業展開・企業運営を推進しております。
引き続き「2030VISION & 2023中期経営計画」で掲げた「コア事業の深化・変革」、「事業基盤の構造転換」、「2030将来像開拓への挑戦」の基本方針のもとサステナブル社会への貢献と企業価値の向上に取り組んでまいります。
■サステナビリティ基本方針
東光高岳グループは、企業理念の実践を通して二つの使命を果たし、エネルギーの未来を切り拓いていきます。
変わらぬ使命:
電力の安定供給や効率的な利用を支える機器・システムの提供を通して、豊かで快適な暮らしや社会経済活動の発展に貢献する。
新たな使命:
カーボンニュートラル、地域の防災・レジリエンス強化等の新たな社会的課題に対するソリューションを創造し、持続可能な社会の実現に貢献する。

当社は、この使命を果たしつつ、社会とともに持続的な成長を遂げることを目的として策定した「東光高岳グループ企業行動憲章」の実践をサステナビリティの基本方針とします。
※東光高岳グループ企業行動憲章は、以下の通りです。
https://www.tktk.co.jp/company/charter/

(黒はリスク低減サイド、青は収益機会サイドとなります。)
※具体的な取組みにつきましては、東光高岳レポートに記載しております。
https://www.tktk.co.jp/csr/report/
■気候変動への取組みとTCFDへの対応
「気候変動」はグローバル社会が直面している重要な社会課題の1つであり、当社グループでは重要な経営課題の1つと認識しています。当社グループでは、2050年カーボンニュートラルを目指し、 「東光高岳グループ環境方針」における「脱炭素社会の構築」「循環型社会の構築」「環境保全の推進」という3つの柱に基づき、「東光高岳環境目標」の達成に向けて取り組んでいます。
具体的には、「2030年度のエネルギー由来CO2排出量を2014年度比46%以上削減する」、「地球温暖化係数の高いSF6ガス大気排出量を、購入量の3%未満とする」などの指標を定め、引き続き企業活動全般を通じた環境負荷の継続的低減に努めるとともに、環境負荷低減を実現する商品・サービスの提供や、技術開発を推進していきます。
また、当社は、2022年6月にG20の要請により金融安定理事会が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures 以下、TCFD)」の提言への賛同を表明し、また、TCFDコンソーシアムに入会いたしました。現在、TCFDの提言に基づいてシナリオ分析を行い、事業活動に与えるリスクと機会を抽出し、経営戦略へ盛り込む活動を実施しています。財務への影響を検証しながら、「ガバナンス」「事業戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目について、積極的に情報開示を行っていきます。
① ガバナンス
重要な気候関連リスク・機会を特定し、適切にマネジメントするため、当社グループでは「リスク管理委員会」「環境管理委員会」を設置しています。各委員会では、年度計画の策定、重点課題に関するグループ全体の取り組みを推進・サポートし、進捗をモニタリングするとともに、対応方針の立案や関連部署への展開を行います。また、これらの結果を定期的に取締役会に報告し、取締役会において当該報告内容に関する管理・監督を行います。
② 事業戦略
気候変動による影響は、電力の安定供給を支える製品・サービスをコア事業とする当社グループにとって大きなリスクになるとともに、エネルギー市場の大きな変化にも繋がるため、「総合エネルギー事業プロバイダー」を目指す当社グループにとっては、新たなビジネスの機会にもなりえます。
気候変動が当社グループに与えるリスク・機会とそのインパクトの把握、及び2030年の世界を想定した当社グループの戦略と追加施策の必要性検討を目的として、シナリオ分析を実施します。シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照の上、当社グループとしての想定シナリオを作成し、事業計画に組み込んでいきます。
③ リスク管理
当社グループは、事業が気候変動によって受ける影響を把握・評価するため、シナリオの分析を行い、気候変動リスク・機会を特定していきます。特定したリスク・機会は、戦略策定・個別事業運営の両面で管理していく予定です。
事業におけるリスク・機会は、当社グループの課題やステークホルダーからの要求・期待、事業における環境側面の影響評価などにより特定し、経営に及ぼす影響を総合的に判断し、優先度合いをつけて課題の対応に取り組んでいきます。また、企業戦略に影響する気候変動を含めた世の中の動向や法制度・規則変更などの外部要因や、当社グループの施策進捗状況、今後のリスク・機会などの内部要因の両側面から課題を抽出し、グループ全体で課題解決に向けて取り組んでいきます。
④ 指標と目標
当社は、2050年カーボンニュートラルを目指し、「2014年度比CO2 46%減」及び「エネルギー原単位年1%削減」を2030年度までの当初目標として設定しております(なお、CO2排出量の削減に関する政府目標は2013年度比46%減の設定となっておりますが、当該年度は当社が持株会社の時期であり、当該持株会社が直接保有する2つの事業会社を吸収合併し、完全統合した2014年を基準年として設定しております)。既に規定している「東光高岳グループ環境方針」も考慮しつつ、サプライチェーン全体のCO2排出削減を目指し取り組んでいきます。
■事業ポートフォリオ基本方針
東光高岳グループは、従来のモノ売りからコト売りへ、そして電力のカテゴリーを超える「総合エネルギー事業プロバイダー」を目指します。
この実現に向け、お客さま起点で「創って、作って、売る」の基本戦略を実行し、既存事業の磨き込みと構造改革を加速することで創出したリソースを新規事業へ投資します。
当社が掲げる、右手では既存事業の「変革」、左手では新規事業の「開拓」を同時に行う両利きの経営を確実に実行できるよう、事業の羅針盤である事業ポートフォリオについては定期的に見直しをしていきます。


(※1)Public Private Partnershipの略称。公民連携により、民間の多種多様なノウハウ・技術を活用して行政サービスの向上や財政資金の効率的使用などを図る概念。
(※2)Private Finance Initiativeの略称。公共施設の建設や維持管理・運営等を、民間の資金や経営能力・技術的能力を活用して行う手法。
事業領域1 EV社会を支えるインフラ事業
EV用急速充電器市場において、現在当社は国内シェア第1位(40%)ですが、今後の市場形成・活性化を見据え、製品ラインナップの拡充に加え、顧客利便性の向上や保守・メンテナンスの効率化を図ります。2021年度については、新商品として集合住宅向け充電システム用コントローラー「WeCharge HUB(ウィーチャージハブ)」や大容量急速充電器(1基で2台の電気自動車に同時充電可能)の販売を開始しております。今後も新サービスの展開などによりトップシェアを維持しつつ、EV社会の実現に貢献します。

(※)V2G:Vehicle to Gridの略。電気自動車の蓄電池に蓄積されている電力エネルギーを「スマートグリッド」と呼ばれる次世代電力網に送電すること。
事業領域2 PPP/PFI事業
当社はスタジアム等の照明設備・電光掲示板の設備更新に関する公募型プロポーザル方式の入札・受注の実績を重ね、プロジェクトマネジメントのノウハウを磨いてきました。2021年度については、当社がプロポーザル代表企業を務める韮崎市公共施設一括LED化事業が竣工しております。将来はさらなる商材拡充によりPPP/PFIによる大規模複合案件にも進出し、事業領域を拡大します。

事業領域3 次世代配電事業
当社は、これまで島嶼(とうしょ)、オフグリッド(※1)、セミオフグリッド(※2)、P2G(※3)等の実証事業に参画し、EMS(※4)技術の向上に取り組んできました。2021年度については、当社が地産地消エネルギーシステムを納入した「リソルの森」(千葉県長生郡)が、地産地消モデルとしての独創性を評価され、新エネルギー財団の「新エネルギー財団会長賞」を受賞しました。自律型地域エネルギー事業の市場拡大が見込まれる中、今後はDAS(※5)/DERMS(※6)技術を活かした次世代配電事業を展開します。

(※1)オフグリッド:施設などが電力会社の送電網を利用せず、電力を自給自足している状態のこと。
(※2)セミオフグリッド:電力会社の送電網と自家発電の双方を利用できる状態のこと。
(※3)P2G:Power to Gasの略。余剰電力を水素に変換して貯蔵・利用すること。
(※4)EMS:Energy Management Systemの略。電力使用量の可視化、節電のための機器の制御、再生可能エネルギーや蓄電池の制御などを行うシステム。
(※5)DAS:Distribution Automation Systemの略。配電自動化システムのこと。
(※6)DERMS:Distributed Energy Resource Management Systemsの略。分散型電源を統合する管理システムのこと。
事業領域4 電気・ガス・水道含めた新計量ビジネス
電気の次世代スマートメーターの導入に加え、ガス・水道のスマートメーター化に伴う新たな価値・サービスを提供します。2021年3月、当社グループはアズビル株式会社と新たな事業コンセプト「DX-EGA」で協業することを発表しました。当該コンセプトに基づく事業化の準備を進めておりますが、現在進行中の案件としては、株式会社三井住友銀行のCO2排出量算定・削減支援クラウドサービス「Sustana(サスタナ)」の共同開発に参加しております。

(※)VPP:Virtual Power Plantの略。点在する小規模な再エネ発電や蓄電池、燃料電池等の設備と、電力の需要を管理するネットワークシステムを、一つの発電所であるかのように、まとめて制御すること。
事業領域5 国際標準に対応したデジタル変電所
変電所の監視・計測・制御のデジタル化、及び電力設備へのセンサ搭載による常時監視・AI診断により、変電所の保守省力化・施工省力化・運転高度化を実現します。海外企業との協業によるSAS(※1)/SCADA(※2)、国際標準対応などを通じて、海外展開も視野に入れています。

(※1)SAS:Substation Automation Systemの略。デジタル変電所自動化システムのこと。
(※2)SCADA:Supervisory Control And Data Acquisitionの略。製造や産業の現場で、集中監視とプロセス制御を行うシステムのこと。
事業領域6 海外アライアンス
海外EPC(※1)(ODA案件)が主体で売上高が1割未満だった海外事業を再編成。2030年に向けて、事業売上高1割以上を目指します。海外生産拠点の新規構築・既存拠点拡大等によるOut-In、Out-Outの販売展開や、EPC事業の深化、領域拡大をさらに推進します。

(※1)EPC:設計(Engineering)、調達(Procurement)、建設(Construction)を含む、プロジェクトの建設工事請負契約のこと。
(※2)DAS:Distribution Automation Systemsの略。配電系統の状態監視とそれに基づく制御により、事故時の早期復旧を実現するシステムのこと。
(3) 目標とする経営指標
2023中期経営計画の目標とする経営指標については以下の通りであります。2023年度につきましては、2022年4月27日に修正いたしました。
2021年度2022年度2023年度
(実績)(予想)(当初計画)(修正後)
売上高919億円930億円900億円950億円
営業利益
(営業利益率)
46億円
(5.0%)
44億円
(4.7%)
40億円
(4.4%)
50億円
(5.3%)
親会社株主に帰属する当期純利益32億円30億円25億円35億円
ROE
<自己資本利益率>
6.5%5.7%5.0%6.4%
ROA
<純利益ベース>
3.3%3.0%2.4%3.4%