四半期報告書-第7期第3四半期(平成30年10月1日-平成30年12月31日)
文中における将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営成績の分析
当第3四半期連結累計期間(平成30年4月1日~平成30年12月31日)における金融市場は、米中貿易戦争などを背景に世界的な景気減速懸念が高まる中、12月末にかけてリスク資産価格が急落する値動きの荒い展開となりました。
株式市場は、12月末にかけて急落しました。先進国の株価は、好調な企業業績を背景に過去最高値を更新した米国株に主導されて、9月までは堅調に推移しました。しかし10月以降は、米中関係の悪化や世界的な景気減速懸念などを嫌気したリスク回避の動きから世界的に株安が進み、12月の米主要株価指数が年初来安値を更新するなど、冴えない動きとなりました。新興国株は、投資資金の流出懸念から新興国通貨安が進む中、総じて軟調に推移しました。国内株式は、米国株高や円安進行を背景に上昇基調をたどり、9月末の日経平均株価は約27年ぶりに2万4千円台を回復しましたが、その後の世界的な株安や円高進行などから連れ安となり、12月下旬の日経平均株価は一時2万円を割り込む水準まで下落しました。
債券市場は軟調推移の後、反発しました。米欧の金融政策の正常化が進む中、米10年国債利回りが10月には3.2%台まで上昇した流れを受けて、主要国債利回りも上昇(国債価格は低下)基調をたどりました。しかし、株価急落に伴う「質への逃避」や世界的な景況感の悪化から、12月末にかけて主要国債利回りは低下(国債価格は上昇)に向かいました。日本の長期国債利回りは、日銀の金融政策柔軟化を受けて7月には上昇しましたが、12月末にかけては0%に向けて低下しました。社債の信用スプレッドは10月以降に急拡大し、前期末比では社債市場は総じて軟調となりました。
商品市場はまちまちの値動きとなりました。原油価格は期首より総じて堅調に推移していましたが、主要産油国の原油生産が過去最高水準に達する中、米国がイラン産原油の禁輸措置を一部解除したことを契機に、供給過剰懸念から10月以降は下落基調に転じました。金価格は、米ドル高が進行した上半期は軟調に推移しましたが、10月以降の株価調整局面では安全資産として選好され反発に転じました。大豆価格は豊作見通しと中国の対米報復関税を受けて6月より大幅に下落しましたが、9月以降は中国による米国産大豆の輸入再開期待から底堅く推移しました。非鉄金属価格は米中貿易戦争の激化を受け6月以降は軟調に推移、一時反発する局面もありましたが、当期末にかけては中国景気の先行き不透明感から上値の重い展開となりました。
再生可能エネルギーを取り巻く環境については、今年度の太陽光発電のFIT価格が18円(税抜)、平成31年度については14円(税抜)となり、500kw以上は入札により調達価格を決定するものとなりました。また、国民負担の抑制に向けた対応の一環として、平成24~26年度にIDを取得した事業用太陽光発電案件のうち、運転開始期限が設定されていない未稼働案件に対する運転開始期限設定を義務化する新たな仕組みも定められました。
九州電力管轄内においては、再生可能エネルギー、とりわけ太陽光発電の接続量は着実に増加しているため、電力需給バランス維持、電力の安定供給の必要性により、出力抑制が発令されました。
FIT制度スタート時の40円(税抜)から大幅に低下しましたが、平成27年に第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)にて採択された気候変動抑制に関する「パリ協定」が、欧州連合も含めた110の国及び団体によって批准されたことを受け、脱炭素社会を目指す動きが世界的に広がりをみせています。わが国においても「RE100(事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的なイニシアチブ)」に加盟する企業が増えている他、経済産業省資源エネルギー庁の掲げる「第5次エネルギー基本計画(平成30年7月)」では、再生可能エネルギーについて「確実な主力電源化」を目指すために、「円滑な大量導入に向けた取組を引き続き積極的に推進していく。」と明記されたことに加え、「分散型エネルギーシステム」についての多くの記述があったことが注目されています。
このような市場環境等のもと、当社グループの当第3四半期連結累計期間の営業収益は7,807百万円(前年同期間比4,201百万円(116.5%)の増加)、営業費用は7,699百万円(前年同期間比4,183百万円(119.0%)の増加)、営業利益は108百万円(前年同期間比18百万円(20.2%)の増加)、経常利益は90百万円(前年同期間比83百万円(1,219.8%)の増加)となりました。税金等調整前四半期純利益は216百万円(前年同期間比209百万円(3,116.1%)の増加)、法人税等合計は93百万円(前年同期間比19百万円(27.2%)の増加)、非支配株主に帰属する四半期純利益は51百万円(前年同期間比10百万円(24.6%)の増加)となり、親会社株主に帰属する四半期純利益は71百万円(前年同期間は108百万円の親会社株主に帰属する四半期純損失)となりました。
営業収益と営業費用の大幅な増加は、主として電力取引関連事業において、電力の販売と仕入れが増加したことによるものです。また、情報端末の見直しを含む全般的なコスト削減により、営業利益、経常利益のいずれもが前年同期間に比べ改善しました。セグメント毎の説明でも述べますが、再生可能エネルギー関連事業において、平成30年12月に大分県中津市の太陽光発電所を譲渡したことによる譲渡益132百万円は特別利益に計上されており、親会社株主に帰属する四半期純利益も前年同期間に比べ改善しました。
セグメント毎の業績及び取組み状況は次のとおりです。
①アセット・マネジメント事業
当事業は、主にアストマックス投信投資顧問株式会社が推進しており、金融商品取引業と商品投資顧問業等を行っております。
日本や米国の国債への連動又は逆連動を目指すファンドへの資金流入等を受け、5月末時点における運用資産残高合計は4,000億円を超える水準となりましたが、第2四半期連結累計期間においては、スワップ取引を対象としたファンドの満期償還や米ドルへの連動を目指すファンドからの資金流出等もあったことから、9月末時点における運用資産残高合計は前連結会計年度末比199億円減少の3,742億円となりました。しかし、10月以降は、日本の株式への連動を目指すファンドへの資金流入等を受け、12月末時点における運用資産残高合計は月末運用資産残高として過去最高額である4,267億円となりました。報酬率が相対的に高い運用資産残高の減少等を受けて運用資産全体の報酬率が前年同期間との比較ではマイナスで推移したものの、運用資産残高が前年同期間を上回る水準で推移したことに加えて、投資信託業務や投資助言業務において成功報酬を得られたことがプラス要因となり、営業収益の総額は、前年同期間比で増加しました。一方、運用権限の委託等(運用に係る助言を受けるものを含みます。)に係るファンドの運用資産残高の増加を受けて売上原価が増加したこと等から営業費用も増加しました。
学校法人東京理科大学が主に出資する大学発ベンチャーキャピタルファンドについては、アストマックス・ファンド・マネジメント株式会社が営業者としてファンド運営業務等を担い、投資金額の積み上げを継続しております。
以上の結果、当事業における当第3四半期連結累計期間の営業収益は、1,489百万円(前年同期間比64百万円(4.6%)の増加)となり、セグメント利益は135百万円(前年同期間比15百万円(10.1%)の減少)となりました。
当事業では、投資信託の販売会社等との協業を通じて運用資産残高の積み上げに努めるとともに、収益基盤の拡充にも取り組んでまいります。なお、既存主力事業である機関投資家ビジネスに加え、個人投資家向けビジネスについても、一層の強化を図るべく、投資未経験者を含む個人投資家の皆様に対して、対面型営業による長期積立型投資信託事業に加え、ファイナンシャル・テクノロジーを活用した長期資産形成に貢献できる事業を展開してまいります。
②ディーリング事業
当事業は、主にアストマックス・トレーディング株式会社(以下、「ASTRA社」という。)が推進し、東京商品取引所(以下、「TOCOM」という。)、CME、ICE等、国内外の主要取引所において商品先物を中心に、株価指数等の金融先物を取引対象とした自己勘定取引を行っております。
前述の市場環境の中、主たる取引市場である商品市場では、当第3四半期連結累計期間において貴金属価格が上昇、原油価格が下落する展開となり、市場間の値差を利用した裁定取引で一定の収益を確保することができました。当第3四半期連結累計期間を通じてみると取引機会は限定的であり収益は伸び悩みましたが、前連結会計年度以降注力してきた大幅なコスト削減の成果もあり、セグメント黒字を確保することができました。
以上の結果、当事業における当第3四半期連結累計期間の営業収益は370百万円(前年同期間比5百万円(1.5%)の増加)、セグメント利益は11百万円(前年同期間は72百万円のセグメント損失)となりました。
当事業では、今後も経費節減に努めると同時に、ディーリング資金の効率的な運用を行い、また収益力の増加を図るため、予定されているTOCOM電力先物等の新規上場及び、中国先物市場の海外投資家への開放などの好機を的確に捉え、引き続き収益力の回復を目指してまいります。
③再生可能エネルギー関連事業
当事業は主にASTRA社等が推進しております。当事業では主として再生可能エネルギー等を利用した発電及び電気の供給に関する事業を行っております。当事業の進捗状況については継続的に開示しておりますが、当第3四半期連結累計期間における状況は以下のとおりです。
<太陽光発電事業>太陽光発電事業につきましては、自社開発に加え、未稼働ID及びセカンダリー市場(完成した発電所の売買市場)での案件取得に取り組んでおります。当第3四半期連結累計期間においては、以下の3及び4のとおり、既に売電を行っている太陽光発電所を2箇所取得いたしました。改正FIT法の施行、競合他社の参入、優良案件の減少等により、環境的には案件確保は容易ではないと言えますが、今後におきましても、引き続き太陽光発電設備の未稼働ID及びセカンダリー市場での案件確保に取り組むと共に、譲渡を行うこと等を含め、保有している既存発電設備においても、投資事業ポートフォリオの一部入替等を検討する等、期間利益を確保しながら、事業採算の向上に取り組んでまいります。
(開発)
1. 鹿児島県霧島市 出力規模:約2.2メガワット
既に開示しておりますとおり、平成28年10月に着工となりました本案件につきましては、当社グループとしての事業リスクを限定するために、SPC(特別目的会社)及び匿名組合契約(ASTRA社を出資者とし、SPCを営業者とする契約)を使った投資スキームを利用しており、平成28年12月16日付にて太陽光発電設備を設置する合同会社に対し出資をしております。稼働開始は、平成30年3月を見込んでおりましたが、工程が変更となり平成31年以降となる見込みです。稼働後はASTRA社による管理・オペレーション業務を行います。
2. 大分県中津市 出力規模:約2.3メガワット
既に開示しておりますとおり、平成29年10月27日付にてSPCに対し匿名組合出資をしております本案件は、天候や造成工事に時間を要した影響で工程が変更となりましたが、平成30年12月に完工し、物件の引渡しが完了いたしました。本譲渡による譲渡益132百万円は特別利益に計上されております。稼働後はASTRA社による管理・オペレーション業務を行っております。
(セカンダリー市場)
3.栃木県栃木市 出力規模:約2.0メガワット
平成30年12月に中古設備を取得いたしました。
4.岩手県奥州市 出力規模:約0.9メガワット
平成30年12月に中古設備を取得いたしました。
(生産性向上)
5.既設案件への増設
栃木県佐野市の既設案件へ約0.1メガワット増設し、平成30年11月に運転を開始いたしました。
熊本県菊池市の既設案件へ約0.3メガワット増設し、平成30年11月に運転を開始いたしました。
<地熱発電事業等>ASTRA社では、ベースロード電源である地熱を利用した発電事業の取り組みも進めております。
宮崎県えびの市尾八重野地域では、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構による「地熱資源開発調査事業費助成金交付事業」の採択を受け、2メガワット規模の地熱発電の事業化を目指し、平成29年3月に1号調査井、平成29年12月に2号調査井、平成30年9月に3号調査井の掘削を完了しております。発電規模を確認するための仮噴気試験につきましては、平成30年2月に1号調査井の自噴を確認し、2号井については平成30年5月に高温熱水の存在を確認いたしました。3号調査井は熱水資源の還元ゾーンを調査する目的でしたが、掘削結果を受け、生産ゾーンの調査へと目的を切り替え、仮噴気試験を実施したところ、平成31年1月に自噴を確認致しました。今後、2メガワット以上の開発も視野に入れつつ、引き続き事業化に向けて取り組んでまいります。なお、本件は、九州電力株式会社主宰の電源接続案件募集プロセス(平成27年4月に設立された電力広域的運営推進機関により新たに規定されたルールであり、発電設備等を電力系統に連系するにあたり、系統連系希望者により工事費負担金を共同負担する手続き)の手続き中です。
開発中の案件は、前連結会計年度に続き発電所の開発に係るコスト(建設コストを賄うための銀行借入に対する諸手数料や金利負担等)を負担しております。平成30年3月に奈半利ソーラー発電所を譲渡したことや、西日本豪雨及び台風の影響により、当社グループ最大規模(約7.8メガワット)の熊本県の発電所は日射量に恵まれなかったため、営業収益は前年同期間比で減少しましたが、平成30年3月に実施した融資の借換により借入コストが減少したことや、当社が受託している発電所の保守見直しによりコストを低減できたこと等から、セグメント利益を確保することができました。
以上の結果、当事業における当第3四半期連結累計期間の営業収益は448百万円(前年同期間比65百万円(12.7%)の減少)、セグメント利益は24百万円(前年同期間は14百万円のセグメント損失)となりました。
なお、当社グループのセグメント損益は、経常損益をもって公表(特別損益を含まない)しております。特別利益として計上した奈半利ソーラー発電所の増設分の譲渡益12百万円及び大分県中津市の太陽光発電所の譲渡益132百万円、また特別損失として計上した農業関連企業への出資(平成27年12月より出資)の評価損18百万円は当事業に帰属するものとなります。
④電力取引関連事業
当事業は、小売電気事業者等を対象にシステム及び付帯サービスを提供するアストマックス・エナジー・サービス株式会社(以下、「AES社」という。)と、小売電気事業者であり、日本卸電力取引所の会員でもあるASTRA社の協業により推進しております。
AES社では、電力自由化の先進国である米国において実績のあるEnergy Services Group, LLCの電力・ガス小売事業サポートシステムの日本版を提供するとともに、ASTRA社と協業し、需要予測等を含む需給管理業務並びに顧客のための電力調達業務を行っておりますが、これらの業務を通じて小売電気事業者等のニーズに応えるべくきめ細かなサービス及びソリューションの提供に取り組んでおります。
また、当第3四半期連結会計期間において、ASTRA社の経済産業大臣へのガス小売事業者登録が完了し、ガス小売事業を開始するべく準備を行っております。
<電力事業>当事業の内、システム販売及び代行サービスについては、当社の契約締結先会社による小売電気事業者登録が完了し、当第3四半期連結累計期間に事業が開始されたこと等を受け、徐々にではあるものの、同小売電気事業者から電力の供給を受ける最終需要家の数も増加してきています。
電力取引については、顧客の電力調達ニーズ、価格変動リスク及び電力市場の需給状況等を考慮し、電力先渡取引を行っていると同時に電力取引における価格変動リスクを可能な限り抑える目的でデリバティブ取引である電力スワップ取引にも必要に応じて取り組んでおります。当第3四半期連結累計期間においては、顧客の多様な電力調達ニーズに対応するために取り組んでいた電力の調達及び販売の多様化が更に評価され、各種電力取引が活発化しました。なお、会計上現物取引である上記電力先渡取引については、当第3四半期連結累計期間において引き続き時価評価を行っておりません。
電力取引の増加及び多様化に伴い、リスク管理の重要性が増加していることに鑑み、社内に新たに「電力取引委員会」を立ち上げるなどリスク管理体制の強化を推進しました。
<ガス事業>平成30年9月にガス小売事業開始のお知らせをしました。その後、10月には経済産業省へのガス小売事業者登録が完了し、都市ガスの卸売り及びガス消費機器の定期点検などの保守業務を委託する東京エナジーアライアンス株式会社と契約を締結いたしました。一方、販売面においては、主に取次店方式で最終需要家への販売を進めていく計画ですが、9月には、そのパートナー候補である新電力会社を対象に今後の活動計画やパートナー企業との連携の考え方に関する説明会を開催し、多数のご参加をいただきました。現時点においては、事業開始に向け、複数の契約候補会社と契約内容及び事業計画の確認を進めております。
以上の結果、当事業の当第3四半期連結累計期間は、前述のとおり電力取引(電力の販売と仕入)が増加しているため、営業収益及び営業費用が前年同期間比大幅に増加し、営業収益は5,487百万円(前年同期間比4,182百万円(320.4%)の増加)、セグメント損失は54百万円(前年同期間は57百万円のセグメント損失)となりました。
上記、セグメント利益又は損失は当四半期連結財務諸表の経常利益と調整を行っており、連結会社間の内部取引消去等の調整額が含まれております。
(2)財政状態の分析
(資産)
流動資産は、前連結会計年度末に比べて19.4%増加し、7,108百万円となりました。これは、製品(売却目的で取得した太陽光発電設備)が1,131百万円増加したこと等によります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて4.4%増加し、6,384百万円となりました。これは、建設仮勘定が141百万円増加したこと等によります。
この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて11.8%増加し、13,498百万円となりました。
(負債)
流動負債は、前連結会計年度末に比べて68.7%増加し、3,367百万円となりました。これは、短期借入金が827百万円増加、営業未払金が597百万円増加したこと等によります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べて2.3%増加し、4,233百万円となりました。これは、固定負債のその他に含まれる長期預り保証金が76百万円増加したこと等によります。
この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて23.9%増加し、7,600百万円となりました。
(純資産)
純資産合計は、前連結会計年度末に比べて0.7%減少し、5,898百万円となりました。これは、株主配当により利益剰余金が144百万円減少したこと等によるものです。
(1)経営成績の分析
当第3四半期連結累計期間(平成30年4月1日~平成30年12月31日)における金融市場は、米中貿易戦争などを背景に世界的な景気減速懸念が高まる中、12月末にかけてリスク資産価格が急落する値動きの荒い展開となりました。
株式市場は、12月末にかけて急落しました。先進国の株価は、好調な企業業績を背景に過去最高値を更新した米国株に主導されて、9月までは堅調に推移しました。しかし10月以降は、米中関係の悪化や世界的な景気減速懸念などを嫌気したリスク回避の動きから世界的に株安が進み、12月の米主要株価指数が年初来安値を更新するなど、冴えない動きとなりました。新興国株は、投資資金の流出懸念から新興国通貨安が進む中、総じて軟調に推移しました。国内株式は、米国株高や円安進行を背景に上昇基調をたどり、9月末の日経平均株価は約27年ぶりに2万4千円台を回復しましたが、その後の世界的な株安や円高進行などから連れ安となり、12月下旬の日経平均株価は一時2万円を割り込む水準まで下落しました。
債券市場は軟調推移の後、反発しました。米欧の金融政策の正常化が進む中、米10年国債利回りが10月には3.2%台まで上昇した流れを受けて、主要国債利回りも上昇(国債価格は低下)基調をたどりました。しかし、株価急落に伴う「質への逃避」や世界的な景況感の悪化から、12月末にかけて主要国債利回りは低下(国債価格は上昇)に向かいました。日本の長期国債利回りは、日銀の金融政策柔軟化を受けて7月には上昇しましたが、12月末にかけては0%に向けて低下しました。社債の信用スプレッドは10月以降に急拡大し、前期末比では社債市場は総じて軟調となりました。
商品市場はまちまちの値動きとなりました。原油価格は期首より総じて堅調に推移していましたが、主要産油国の原油生産が過去最高水準に達する中、米国がイラン産原油の禁輸措置を一部解除したことを契機に、供給過剰懸念から10月以降は下落基調に転じました。金価格は、米ドル高が進行した上半期は軟調に推移しましたが、10月以降の株価調整局面では安全資産として選好され反発に転じました。大豆価格は豊作見通しと中国の対米報復関税を受けて6月より大幅に下落しましたが、9月以降は中国による米国産大豆の輸入再開期待から底堅く推移しました。非鉄金属価格は米中貿易戦争の激化を受け6月以降は軟調に推移、一時反発する局面もありましたが、当期末にかけては中国景気の先行き不透明感から上値の重い展開となりました。
再生可能エネルギーを取り巻く環境については、今年度の太陽光発電のFIT価格が18円(税抜)、平成31年度については14円(税抜)となり、500kw以上は入札により調達価格を決定するものとなりました。また、国民負担の抑制に向けた対応の一環として、平成24~26年度にIDを取得した事業用太陽光発電案件のうち、運転開始期限が設定されていない未稼働案件に対する運転開始期限設定を義務化する新たな仕組みも定められました。
九州電力管轄内においては、再生可能エネルギー、とりわけ太陽光発電の接続量は着実に増加しているため、電力需給バランス維持、電力の安定供給の必要性により、出力抑制が発令されました。
FIT制度スタート時の40円(税抜)から大幅に低下しましたが、平成27年に第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)にて採択された気候変動抑制に関する「パリ協定」が、欧州連合も含めた110の国及び団体によって批准されたことを受け、脱炭素社会を目指す動きが世界的に広がりをみせています。わが国においても「RE100(事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的なイニシアチブ)」に加盟する企業が増えている他、経済産業省資源エネルギー庁の掲げる「第5次エネルギー基本計画(平成30年7月)」では、再生可能エネルギーについて「確実な主力電源化」を目指すために、「円滑な大量導入に向けた取組を引き続き積極的に推進していく。」と明記されたことに加え、「分散型エネルギーシステム」についての多くの記述があったことが注目されています。
このような市場環境等のもと、当社グループの当第3四半期連結累計期間の営業収益は7,807百万円(前年同期間比4,201百万円(116.5%)の増加)、営業費用は7,699百万円(前年同期間比4,183百万円(119.0%)の増加)、営業利益は108百万円(前年同期間比18百万円(20.2%)の増加)、経常利益は90百万円(前年同期間比83百万円(1,219.8%)の増加)となりました。税金等調整前四半期純利益は216百万円(前年同期間比209百万円(3,116.1%)の増加)、法人税等合計は93百万円(前年同期間比19百万円(27.2%)の増加)、非支配株主に帰属する四半期純利益は51百万円(前年同期間比10百万円(24.6%)の増加)となり、親会社株主に帰属する四半期純利益は71百万円(前年同期間は108百万円の親会社株主に帰属する四半期純損失)となりました。
営業収益と営業費用の大幅な増加は、主として電力取引関連事業において、電力の販売と仕入れが増加したことによるものです。また、情報端末の見直しを含む全般的なコスト削減により、営業利益、経常利益のいずれもが前年同期間に比べ改善しました。セグメント毎の説明でも述べますが、再生可能エネルギー関連事業において、平成30年12月に大分県中津市の太陽光発電所を譲渡したことによる譲渡益132百万円は特別利益に計上されており、親会社株主に帰属する四半期純利益も前年同期間に比べ改善しました。
セグメント毎の業績及び取組み状況は次のとおりです。
①アセット・マネジメント事業
当事業は、主にアストマックス投信投資顧問株式会社が推進しており、金融商品取引業と商品投資顧問業等を行っております。
日本や米国の国債への連動又は逆連動を目指すファンドへの資金流入等を受け、5月末時点における運用資産残高合計は4,000億円を超える水準となりましたが、第2四半期連結累計期間においては、スワップ取引を対象としたファンドの満期償還や米ドルへの連動を目指すファンドからの資金流出等もあったことから、9月末時点における運用資産残高合計は前連結会計年度末比199億円減少の3,742億円となりました。しかし、10月以降は、日本の株式への連動を目指すファンドへの資金流入等を受け、12月末時点における運用資産残高合計は月末運用資産残高として過去最高額である4,267億円となりました。報酬率が相対的に高い運用資産残高の減少等を受けて運用資産全体の報酬率が前年同期間との比較ではマイナスで推移したものの、運用資産残高が前年同期間を上回る水準で推移したことに加えて、投資信託業務や投資助言業務において成功報酬を得られたことがプラス要因となり、営業収益の総額は、前年同期間比で増加しました。一方、運用権限の委託等(運用に係る助言を受けるものを含みます。)に係るファンドの運用資産残高の増加を受けて売上原価が増加したこと等から営業費用も増加しました。
学校法人東京理科大学が主に出資する大学発ベンチャーキャピタルファンドについては、アストマックス・ファンド・マネジメント株式会社が営業者としてファンド運営業務等を担い、投資金額の積み上げを継続しております。
以上の結果、当事業における当第3四半期連結累計期間の営業収益は、1,489百万円(前年同期間比64百万円(4.6%)の増加)となり、セグメント利益は135百万円(前年同期間比15百万円(10.1%)の減少)となりました。
当事業では、投資信託の販売会社等との協業を通じて運用資産残高の積み上げに努めるとともに、収益基盤の拡充にも取り組んでまいります。なお、既存主力事業である機関投資家ビジネスに加え、個人投資家向けビジネスについても、一層の強化を図るべく、投資未経験者を含む個人投資家の皆様に対して、対面型営業による長期積立型投資信託事業に加え、ファイナンシャル・テクノロジーを活用した長期資産形成に貢献できる事業を展開してまいります。
②ディーリング事業
当事業は、主にアストマックス・トレーディング株式会社(以下、「ASTRA社」という。)が推進し、東京商品取引所(以下、「TOCOM」という。)、CME、ICE等、国内外の主要取引所において商品先物を中心に、株価指数等の金融先物を取引対象とした自己勘定取引を行っております。
前述の市場環境の中、主たる取引市場である商品市場では、当第3四半期連結累計期間において貴金属価格が上昇、原油価格が下落する展開となり、市場間の値差を利用した裁定取引で一定の収益を確保することができました。当第3四半期連結累計期間を通じてみると取引機会は限定的であり収益は伸び悩みましたが、前連結会計年度以降注力してきた大幅なコスト削減の成果もあり、セグメント黒字を確保することができました。
以上の結果、当事業における当第3四半期連結累計期間の営業収益は370百万円(前年同期間比5百万円(1.5%)の増加)、セグメント利益は11百万円(前年同期間は72百万円のセグメント損失)となりました。
当事業では、今後も経費節減に努めると同時に、ディーリング資金の効率的な運用を行い、また収益力の増加を図るため、予定されているTOCOM電力先物等の新規上場及び、中国先物市場の海外投資家への開放などの好機を的確に捉え、引き続き収益力の回復を目指してまいります。
③再生可能エネルギー関連事業
当事業は主にASTRA社等が推進しております。当事業では主として再生可能エネルギー等を利用した発電及び電気の供給に関する事業を行っております。当事業の進捗状況については継続的に開示しておりますが、当第3四半期連結累計期間における状況は以下のとおりです。
<太陽光発電事業>太陽光発電事業につきましては、自社開発に加え、未稼働ID及びセカンダリー市場(完成した発電所の売買市場)での案件取得に取り組んでおります。当第3四半期連結累計期間においては、以下の3及び4のとおり、既に売電を行っている太陽光発電所を2箇所取得いたしました。改正FIT法の施行、競合他社の参入、優良案件の減少等により、環境的には案件確保は容易ではないと言えますが、今後におきましても、引き続き太陽光発電設備の未稼働ID及びセカンダリー市場での案件確保に取り組むと共に、譲渡を行うこと等を含め、保有している既存発電設備においても、投資事業ポートフォリオの一部入替等を検討する等、期間利益を確保しながら、事業採算の向上に取り組んでまいります。
(開発)
1. 鹿児島県霧島市 出力規模:約2.2メガワット
既に開示しておりますとおり、平成28年10月に着工となりました本案件につきましては、当社グループとしての事業リスクを限定するために、SPC(特別目的会社)及び匿名組合契約(ASTRA社を出資者とし、SPCを営業者とする契約)を使った投資スキームを利用しており、平成28年12月16日付にて太陽光発電設備を設置する合同会社に対し出資をしております。稼働開始は、平成30年3月を見込んでおりましたが、工程が変更となり平成31年以降となる見込みです。稼働後はASTRA社による管理・オペレーション業務を行います。
2. 大分県中津市 出力規模:約2.3メガワット
既に開示しておりますとおり、平成29年10月27日付にてSPCに対し匿名組合出資をしております本案件は、天候や造成工事に時間を要した影響で工程が変更となりましたが、平成30年12月に完工し、物件の引渡しが完了いたしました。本譲渡による譲渡益132百万円は特別利益に計上されております。稼働後はASTRA社による管理・オペレーション業務を行っております。
(セカンダリー市場)
3.栃木県栃木市 出力規模:約2.0メガワット
平成30年12月に中古設備を取得いたしました。
4.岩手県奥州市 出力規模:約0.9メガワット
平成30年12月に中古設備を取得いたしました。
(生産性向上)
5.既設案件への増設
栃木県佐野市の既設案件へ約0.1メガワット増設し、平成30年11月に運転を開始いたしました。
熊本県菊池市の既設案件へ約0.3メガワット増設し、平成30年11月に運転を開始いたしました。
<地熱発電事業等>ASTRA社では、ベースロード電源である地熱を利用した発電事業の取り組みも進めております。
宮崎県えびの市尾八重野地域では、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構による「地熱資源開発調査事業費助成金交付事業」の採択を受け、2メガワット規模の地熱発電の事業化を目指し、平成29年3月に1号調査井、平成29年12月に2号調査井、平成30年9月に3号調査井の掘削を完了しております。発電規模を確認するための仮噴気試験につきましては、平成30年2月に1号調査井の自噴を確認し、2号井については平成30年5月に高温熱水の存在を確認いたしました。3号調査井は熱水資源の還元ゾーンを調査する目的でしたが、掘削結果を受け、生産ゾーンの調査へと目的を切り替え、仮噴気試験を実施したところ、平成31年1月に自噴を確認致しました。今後、2メガワット以上の開発も視野に入れつつ、引き続き事業化に向けて取り組んでまいります。なお、本件は、九州電力株式会社主宰の電源接続案件募集プロセス(平成27年4月に設立された電力広域的運営推進機関により新たに規定されたルールであり、発電設備等を電力系統に連系するにあたり、系統連系希望者により工事費負担金を共同負担する手続き)の手続き中です。
開発中の案件は、前連結会計年度に続き発電所の開発に係るコスト(建設コストを賄うための銀行借入に対する諸手数料や金利負担等)を負担しております。平成30年3月に奈半利ソーラー発電所を譲渡したことや、西日本豪雨及び台風の影響により、当社グループ最大規模(約7.8メガワット)の熊本県の発電所は日射量に恵まれなかったため、営業収益は前年同期間比で減少しましたが、平成30年3月に実施した融資の借換により借入コストが減少したことや、当社が受託している発電所の保守見直しによりコストを低減できたこと等から、セグメント利益を確保することができました。
以上の結果、当事業における当第3四半期連結累計期間の営業収益は448百万円(前年同期間比65百万円(12.7%)の減少)、セグメント利益は24百万円(前年同期間は14百万円のセグメント損失)となりました。
なお、当社グループのセグメント損益は、経常損益をもって公表(特別損益を含まない)しております。特別利益として計上した奈半利ソーラー発電所の増設分の譲渡益12百万円及び大分県中津市の太陽光発電所の譲渡益132百万円、また特別損失として計上した農業関連企業への出資(平成27年12月より出資)の評価損18百万円は当事業に帰属するものとなります。
④電力取引関連事業
当事業は、小売電気事業者等を対象にシステム及び付帯サービスを提供するアストマックス・エナジー・サービス株式会社(以下、「AES社」という。)と、小売電気事業者であり、日本卸電力取引所の会員でもあるASTRA社の協業により推進しております。
AES社では、電力自由化の先進国である米国において実績のあるEnergy Services Group, LLCの電力・ガス小売事業サポートシステムの日本版を提供するとともに、ASTRA社と協業し、需要予測等を含む需給管理業務並びに顧客のための電力調達業務を行っておりますが、これらの業務を通じて小売電気事業者等のニーズに応えるべくきめ細かなサービス及びソリューションの提供に取り組んでおります。
また、当第3四半期連結会計期間において、ASTRA社の経済産業大臣へのガス小売事業者登録が完了し、ガス小売事業を開始するべく準備を行っております。
<電力事業>当事業の内、システム販売及び代行サービスについては、当社の契約締結先会社による小売電気事業者登録が完了し、当第3四半期連結累計期間に事業が開始されたこと等を受け、徐々にではあるものの、同小売電気事業者から電力の供給を受ける最終需要家の数も増加してきています。
電力取引については、顧客の電力調達ニーズ、価格変動リスク及び電力市場の需給状況等を考慮し、電力先渡取引を行っていると同時に電力取引における価格変動リスクを可能な限り抑える目的でデリバティブ取引である電力スワップ取引にも必要に応じて取り組んでおります。当第3四半期連結累計期間においては、顧客の多様な電力調達ニーズに対応するために取り組んでいた電力の調達及び販売の多様化が更に評価され、各種電力取引が活発化しました。なお、会計上現物取引である上記電力先渡取引については、当第3四半期連結累計期間において引き続き時価評価を行っておりません。
電力取引の増加及び多様化に伴い、リスク管理の重要性が増加していることに鑑み、社内に新たに「電力取引委員会」を立ち上げるなどリスク管理体制の強化を推進しました。
<ガス事業>平成30年9月にガス小売事業開始のお知らせをしました。その後、10月には経済産業省へのガス小売事業者登録が完了し、都市ガスの卸売り及びガス消費機器の定期点検などの保守業務を委託する東京エナジーアライアンス株式会社と契約を締結いたしました。一方、販売面においては、主に取次店方式で最終需要家への販売を進めていく計画ですが、9月には、そのパートナー候補である新電力会社を対象に今後の活動計画やパートナー企業との連携の考え方に関する説明会を開催し、多数のご参加をいただきました。現時点においては、事業開始に向け、複数の契約候補会社と契約内容及び事業計画の確認を進めております。
以上の結果、当事業の当第3四半期連結累計期間は、前述のとおり電力取引(電力の販売と仕入)が増加しているため、営業収益及び営業費用が前年同期間比大幅に増加し、営業収益は5,487百万円(前年同期間比4,182百万円(320.4%)の増加)、セグメント損失は54百万円(前年同期間は57百万円のセグメント損失)となりました。
上記、セグメント利益又は損失は当四半期連結財務諸表の経常利益と調整を行っており、連結会社間の内部取引消去等の調整額が含まれております。
(2)財政状態の分析
(資産)
流動資産は、前連結会計年度末に比べて19.4%増加し、7,108百万円となりました。これは、製品(売却目的で取得した太陽光発電設備)が1,131百万円増加したこと等によります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて4.4%増加し、6,384百万円となりました。これは、建設仮勘定が141百万円増加したこと等によります。
この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて11.8%増加し、13,498百万円となりました。
(負債)
流動負債は、前連結会計年度末に比べて68.7%増加し、3,367百万円となりました。これは、短期借入金が827百万円増加、営業未払金が597百万円増加したこと等によります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べて2.3%増加し、4,233百万円となりました。これは、固定負債のその他に含まれる長期預り保証金が76百万円増加したこと等によります。
この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて23.9%増加し、7,600百万円となりました。
(純資産)
純資産合計は、前連結会計年度末に比べて0.7%減少し、5,898百万円となりました。これは、株主配当により利益剰余金が144百万円減少したこと等によるものです。