有価証券報告書-第7期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/27 15:09
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当社は、創業以来、培ってきたノウハウを活用し、金融事業と総合エネルギー事業を展開しております。
当連結会計年度(2018年4月1日~2019年3月31日)における金融市場は、緩やかな景気拡大と低金利環境下で株高が進む「適温相場」が転換点を迎え、リスク資産は下半期に乱高下する展開となりました。
株式市場は、米国株に主導された形で、先進国を中心に上半期は堅調に推移しましたが、米中貿易戦争の激化や米欧の金融政策正常化と長期金利の上昇等が嫌気され、10~12月には世界的に下落しました。年明け以降、米欧中央銀行の金融政策スタンスがハト派色を強め、主要国の長期金利が低下に向かったことから投資家のリスク選好が回復し、年度末にかけて世界的に急反発しました。国内株式は、米株高や円安を背景に9月の日経平均株価が約27年ぶりに2万4千円台を回復する等、上半期は堅調に推移しました。しかし、10月以降は世界的な株安に連れ下げ幅を拡大しました。1月以降、世界的な株高の動きから反発に転じましたが、3月末の日経平均株価は2万1千円台と、前年度末比ほぼ変わらない水準となりました。
債券市場は堅調に推移しました。世界経済が拡大基調をたどり、米欧の金融政策正常化が進んだことから、上半期は世界的に債券利回りが上昇し(債券価格は低下)、米10年国債利回りは10月上旬に約7年ぶりとなる3.2%台を付けました。11月以降は、世界同時株安を受けた「質への逃避」や、世界的な景況感の悪化から債券利回りは低下基調をたどりました。年明け以降は、米欧中央銀行の金融政策スタンスの緩和への転換を受けて債券利回りは一段と低下しました。日本の長期国債利回りは、日銀の金融政策柔軟化を受けて7月には上昇しましたが、10月上旬をピークに低下基調をたどり、年明けには10年国債利回りは約1年半ぶりのマイナス圏入りとなりました。
商品市場は総じて軟調な動きとなりました。原油価格は期首より堅調に推移しましたが、供給過剰懸念や世界的な株安から年末にかけて大幅に下落しました。しかし、年明け以降はOPEC等による協調減産効果等から反騰しました。金価格は、米ドル高が進行した上半期は軟調に推移しましたが、年末にかけての世界的な株安局面で反発、年明け以降も米国の利上げ打ち止め観測等から続伸しました。大豆価格は、豊作見通しと中国の対米報復関税を受けて下落しましたが、9月以降は底堅く推移しました。銅、ニッケル等の非鉄金属価格は、米中貿易摩擦の激化や中国景気減速懸念から6月以降軟調に推移し、その後も上値の重い展開が続きました。
再生可能エネルギーを取り巻く環境については、2018年度の太陽光発電のFIT価格が18円(税抜)、2019年度については14円(税抜)となり、500kw以上は入札により調達価格を決定するものとなりました。また、国民負担の抑制に向けた対応の一環として、2012年度から2014年度にIDを取得した事業用太陽光発電案件のうち、運転開始期限が設定されていない未稼働案件に対する運転開始期限設定を義務化する新たな仕組みも定められました。
九州電力管轄内においては、再生可能エネルギー、とりわけ太陽光発電の接続量は着実に増加しているため、電力需給バランス維持、電力の安定供給の必要性により、出力抑制が発令されました。
上述のとおり、FIT価格は制度スタート時の40円(税抜)から大幅に低下しましたが、2015年に第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)にて採択された気候変動抑制に関する「パリ協定」が、欧州連合も含めた110の国及び団体によって批准されたことを受け、脱炭素社会を目指す動きが世界的に広がりをみせています。わが国においても「RE100(事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的なイニシアチブ)」に加盟する企業が増えている他、経済産業省資源エネルギー庁の掲げる「第5次エネルギー基本計画(2018年7月)」では、再生可能エネルギーについて「確実な主力電源化」を目指すために、「円滑な大量導入に向けた取組を引き続き積極的に推進していく。」と明記されたことに加え、「分散型エネルギーシステム」についての多くの記述があったことが注目されています。
わが国の電力市場においては、2016年4月の電力小売全面自由化以降、小売電力事業者の事業者数及び切替件数、共に、右肩上がりの順調な増加が継続しています。一方、電力価格については、日本卸電力取引所(JEPX)で取引されるスポット市場価格で、2018年夏、冬に発電状況や天候によって一時的に通常の数倍の価格が出現する等、小売電力事業者の経営おいても、電力市場価格の「リスク管理」の重要性が認識されており電力取引のヘッジニーズが高まってきています。
このような市場環境等のもと、当社グループの当連結会計年度の営業収益は11,120百万円(前年同期間比4,934百万円(79.8%)の増加)、営業費用は10,960百万円(前年同期間比4,940百万円(82.1%)の増加)、営業利益は160百万円(前年同期間比5百万円(3.5%)の減少)、経常利益は130百万円(前年同期間は1百万円の経常損失)となりました。税金等調整前当期純利益は206百万円(前年同期間比90百万円(30.5%)の減少)、法人税等合計は△20百万円(前年同期間は110百万円)、非支配株主に帰属する当期純利益は59百万円(前年同期間比35百万円(145.3%)の増加)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は168百万円(前年同期間比5百万円(3.5%)の増加)となりました。
営業収益と営業費用の大幅な増加は、主として電力取引関連事業において、電力の販売と仕入れが増加したことによるものです。再生可能エネルギー関連事業にて前連結会計年度末に行った融資の借換により支払利息等が減少したこと等により、経常利益は前年同期間に比べ大幅に改善しました。また、再生可能エネルギー関連事業において、2018年12月に大分県中津市の太陽光発電所を譲渡したことによる譲渡益132百万円は特別利益に計上されております。一方、複数の農業関連企業への出資の評価損等により68百万円の特別損失(前年同期間比28百万円の増加)が発生しましたが、繰延税金資産が積み増されたことにより法人税等調整額が大幅に減少し、親会社株主に帰属する当期純利益は前年並みとなりました。
セグメント毎の経営成績及び取り組み状況は次のとおりです。
<アセット・マネジメント事業>当事業は、主にASTAM社が推進しており、金融商品取引業等を行っております。
日本や米国の国債への連動又は逆連動を目指すファンドへの資金流入等を受け、5月末時点における運用資産残高合計は4,000億円を超える水準となりました。その後は、スワップ取引を対象としたファンドの満期償還や米ドルへの連動を目指すファンドからの資金流出等もあったことから、9月末時点における運用資産残高合計は前連結会計年度末比199億円減少の3,742億円となりましたが、10月以降は日本の株式への連動を目指すファンドへの資金流入等を受け、12月末時点における運用資産残高合計は月末運用資産残高として過去最高額である4,266億円となりました。2019年1月以降は、日本の株式への連動を目指すファンド(安定運用移行済みのファンド)の満期償還等がありましたが、当連結会計年度末の運用資産残高は前連結会計年度末比232億円増加の4,173億円になりました。全体として運用資産残高が前年同期間を上回る水準で推移したことはプラス要因となったものの、報酬率が相対的に高い運用資産残高の減少等を受けて運用資産全体の報酬率が前年同期間と比較して低下したことから、営業収益の総額は、前年同期間比で減少しました。また、営業収益の総額の減少等を受けて売上原価が減少したこと等から営業費用も減少しました。
学校法人東京理科大学が主に出資する大学発ベンチャーキャピタルファンドについては、アストマックス・ファンド・マネジメント株式会社が営業者としてファンド運営業務等を担い、投資金額の順調な積み上げを継続しております。
以上の結果、当事業における当連結会計年度の営業収益は、1,974百万円(前年同期間比114百万円(5.5%)の減少)となり、セグメント利益は168百万円(前年同期間比16百万円(8.9%)の減少)となりました。
なお、当連結会計年度期間中に商品投資顧問業務は全て終了し、2019年3月31日をもって商品投資顧問業を廃止しました。
当事業では、投資信託の販売会社等との協業を通じて運用資産残高の積み上げに努めるとともに、収益基盤の拡充にも取り組んでまいります。なお、既存主力事業である機関投資家ビジネスに加え、個人投資家向けビジネスについても一層の強化を図るべく、投資未経験者を含む個人投資家の皆様に向けて、対面型営業による長期積立型投資信託事業に加え、ファイナンシャル・テクノロジーを活用した長期資産形成に貢献できる事業を展開してまいります。
また、2019年4月1日付で開示しましたとおり、当社はアセット・マネジメント事業を主として営むASTAM社の株式の一部をヤフー株式会社(以下、「ヤフー」という。)に追加譲渡し、当社の持分比率は49.9%となりました。ASTAM社は当社の持分法適用会社となりましたが、当社は、引き続きASTAM社の企業価値向上を目指し、ASTAM社において推進する協働事業に全力で取り組んでまいります。
<ディーリング事業>当事業は、ASTRA社が推進し、東京商品取引所、CME、ICE等、国内外の主要取引所において商品先物を中心に、株価指数等の金融先物を取引対象とした自己勘定取引を行っております。
前述の市場環境の中、主たる取引市場である商品先物市場では、貴金属価格が上昇後安定、原油価格は上昇後下落、今年に入り反転する展開となり、市場間の値差を利用した裁定取引で一定の収益を確保することができました。先物価格における変動率の低下等によって、取引機会が少ない期間も多かったことから収益は伸び悩みましたが、ここ数年注力してきた大幅なコスト削減の成果もあり、セグメント黒字を確保することができました。
以上の結果、当事業における当連結会計年度の営業収益は485百万円(前年同期間比53百万円(9.9%)の減少)、セグメント利益は10百万円(前年同期間は41百万円のセグメント損失)となりました。
当事業では、今後も経費節減に努めると同時に、ディーリング資金の効率的な運用を行い、取引所の組織や制度変更にも適切に対応し、また収益力の増加を図るため中国先物市場の海外投資家への開放等の取引の好機を的確に捉え、引き続き収益力の回復を目指してまいります。
<再生可能エネルギー関連事業>当事業は主にASTRA社等が推進しております。当事業では主として再生可能エネルギー等を利用した発電及び電気の供給に関する事業を行っております。当事業の進捗状況については継続的に開示しておりますが、当連結会計年度における状況は以下のとおりです。
(太陽光発電事業)
太陽光発電事業につきましては、自社開発に加え、未稼働ID及びセカンダリー市場(完成した発電所の売買市場)での案件取得に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、以下の2のとおり自社開発した太陽光発電設備を譲渡し、以下の3のとおり新設の発電所を取得したほか、以下の4及び5のとおり既に売電を行っている太陽光発電所を2箇所取得しました。
改正FIT法の施行、競合他社の参入、優良案件の減少等により、環境的には案件確保は容易ではないと言えますが、今後におきましても、引き続き太陽光発電設備の未稼働ID及びセカンダリー市場での案件確保に取り組むと共に、保有している既存発電設備についても、譲渡を行うこと等を含めて、事業ポートフォリオの一部入替を検討する等、期間利益を確保しながら、事業採算の向上に取り組んでまいります。
(自社開発・新設取得)
1. 鹿児島県霧島市 出力規模:約2.2メガワット
既に開示しておりますとおり、2016年10月に着工となりました本案件につきましては、当社グループとしての事業リスクを限定するために、SPC(特別目的会社)及び匿名組合契約(ASTRA社を出資者とし、SPCを営業者とする契約)を使った投資スキームを利用しており、2016年12月16日付にて太陽光発電設備を設置する合同会社に対し出資をしております。稼働開始は、2018年3月を見込んでおりましたが、工程が変更となり2019年10月以降となる見込みです。稼働後はASTRA社による管理・オペレーション業務を行います。
2.大分県中津市 出力規模:約2.3メガワット
既に開示しておりますとおり、2018年12月5日付にて、太陽光発電設備の譲渡が完了し、2019年3月29日付で匿名組合出資の全てを回収しました。
3. 岡山県岡山市 出力規模:約1.2メガワット
2019年3月に設備を取得しました。稼働後はASTRA社による管理・オペレーション業務を行っております。
(セカンダリー市場)
4.栃木県栃木市 出力規模:約2.0メガワット
2018年12月に中古設備を取得しました。
5.岩手県奥州市 出力規模:約0.9メガワット
2018年12月に中古設備を取得しました。
(生産性向上)
6.既設案件への増設
栃木県佐野市の既設案件へ約0.1メガワット増設し、2018年11月に運転を開始しました。
熊本県菊池市の既設案件へ約0.3メガワット増設し、2018年11月に運転を開始しました。
(地熱発電事業等)
ASTRA社では、ベースロード電源である地熱を利用した発電事業の取り組みも進めております。
宮崎県えびの市尾八重野地域では、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構による「地熱資源開発調査事業費助成金交付事業」の採択を受け、2メガワット規模の地熱発電の事業化を目指し、2017年3月に1号調査井、2017年12月に2号調査井、2018年9月に3号調査井の掘削を完了しております。発電規模を確認するための仮噴気試験につきましては、2018年2月に1号調査井の自噴を確認し、2号井については2018年5月に高温熱水の存在を確認しました。3号調査井は熱水資源の還元ゾーンを調査する目的でしたが、掘削結果を受け、生産ゾーンの調査へと目的を切り替え、仮噴気試験を実施したところ、2019年1月に自噴を確認致しました。今後、2メガワット以上の開発も視野に入れつつ、引き続き事業化に向けて取り組んでまいります。なお、本件は、九州電力株式会社主宰の電源接続案件募集プロセス(2015年4月に設立された電力広域的運営推進機関により新たに規定されたルールであり、発電設備等を電力系統に連系するにあたり、系統連系希望者により工事費負担金を共同負担する手続き)の手続き中です。また、既に開示しておりますとおり、今後の事業規模の拡大を目指すことを前提に、最大49%までの範囲にて第三者からの事業参加を想定し、パートナー企業の参画をより容易にすることを目的に、宮崎県えびの市の地熱事業を新たに設立したえびの地熱社に承継させる新設分割を、2019年5月7日に実施いたしました。
再生可能エネルギー関連事業では、前連結会計年度に続き発電所の開発に係るコスト(建設コストを賄うための銀行借入に対する諸手数料や金利負担等)を負担しております。2018年3月に奈半利ソーラー発電所を譲渡したことや、西日本豪雨及び台風の影響により、当社グループ最大規模(約7.8メガワット)の熊本県の発電所が日射量に恵まれなかったこと等により、営業収益は前年同期間比で減少しましたが、既存案件増設による採算性向上、上述のとおり、2018年3月に実施した融資の借換により借入コストが減少したこと、当社が受託している発電所の保守見直しによりコストを低減できたこと等から、セグメント利益を確保することができました。
以上の結果、当事業における当連結会計年度の営業収益は575百万円(前年同期間比93百万円(14.0%)の減少)、セグメント利益は7百万円(前年同期間は78百万円のセグメント損失)となりました。
なお、当社グループのセグメント損益は、特別損益を含まず、経常損益をもって表示しております。特別利益として計上した奈半利ソーラー発電所の増設分の譲渡益12百万円及び大分県中津市の太陽光発電所の譲渡益132百万円、また特別損失として計上した農業関連企業への出資の評価損の内20百万円は、当事業に帰属するものとなります。
<電力取引関連事業>当事業は、小売電気事業者等を対象にシステム及び付帯サービスを提供するアストマックス・エナジー・サービス株式会社(以下、「AES社」という。)と、小売電気事業者であり、日本卸電力取引所の会員でもあるASTRA社の協業により推進しております。
小売電気自由化が開始された2016年4月から2019年1月までのみなし小売電気事業者から新電力へのスイッチングの累積件数は916万件、全体に占める割合は14.6%となり、1年前に比べ347万件増加しております。一方、販売電力量に占める新電力のシェアは当連結会計年度の月次平均で14.3%のシェアを占め、前連結会計年度に比べ2.5%増加しました。
このような環境の中、AES社では、電力自由化の先進国である米国において実績のあるEnergy Services Group, LLCの電力・ガス小売事業サポートシステムの日本版を提供するとともに、ASTRA社と協業し、需要予測等を含む需給管理業務並びに顧客のための電力調達業務を行っておりますが、これらの業務を通じて小売電気事業者等のニーズに応えるべく、きめ細かなサービス及びソリューションの提供に取り組んでおります。また、2018年10月にはASTRA社の経済産業大臣へのガス小売事業者登録が完了し、商品ラインナップの1つとしてガス小売事業を開始するべく準備を行っております。
(電力事業)
当事業の内、システム販売及び代行サービスについては、既存顧客へのサービスの提供により収入を確保しながら、引き続き新規取引先を増やすべく、顧客ニーズにあったサービスの提案を行っています。
電力取引については、顧客の電力調達ニーズ、価格変動リスク及び電力市場の需給状況等を考慮し、電力先渡取引を行うと同時に、電力取引における価格変動リスクを抑える目的でデリバティブ取引である電力スワップ取引にも必要に応じて取り組んでおります。当連結会計年度においては、顧客の多様な電力調達ニーズに対応するために取り組んでいた電力の調達及び販売の多様化が評価され、多くの小売電気事業者との新たな電力取引が開始できたこと、また既存顧客との取引も活発化したこと等により、営業収益と営業費用はともに大幅に増加しました。 なお、会計上現物取引である上記電力先渡取引については、引き続き、当連結会計年度において時価評価の対象ではありません。
電力取引の増加及び多様化に伴い、リスク管理の重要性が増加していることに鑑み、社内に新たに「電力取引委員会」を立ち上げる等リスク管理体制の強化も推進しています。
(ガス事業)
2018年9月付でガス小売事業開始のお知らせを行い、10月には経済産業省へのガス小売事業者登録が完了し、都市ガスの卸売り及びガス消費機器の定期点検等の保守業務を委託する東京エナジーアライアンス株式会社と契約を締結しました。販売面においては、主に取次店方式で最終需要家への販売を進めていく計画ですが、9月には、そのパートナー候補である新電力会社を対象に今後の活動計画やパートナー企業との連携の考え方に関する説明会を開催し、多数のご参加をいただきました。現時点においては、引き続き事業開始に向け、複数の契約候補会社と契約内容及び事業計画の確認を進めております。
以上の結果、当事業の当連結会計年度は、前述のとおり電力取引(電力の販売と仕入)が増加しているため、営業収益及び営業費用が前年同期間比大幅に増加し、営業収益は8,067百万円(前年同期間比5,179百万円(179.3%)の増加)となりました。2018年12月以降、当事業は単月黒字となりましたが、それまでの損失を補うことは出来ず、14百万円のセグメント損失(前年同期間は60百万円のセグメント損失)となりました。
上記、セグメント利益又は損失は当連結会計年度の経常利益と調整を行っており、連結会社間の内部取引消去等の調整額が含まれております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、3,143百万円(前年同期間比8.7%減)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主としてたな卸資産(売却目的で取得した太陽光発電設備)の増加による支出(△1,435百万円)等により、△61百万円(前年同期は801百万円)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主として太陽光発電事業に係る有形固定資産の取得による支出(△1,385百万円)、投資有価証券の取得による支出(△228百万円)、太陽光発電事業に係る有形固定資産の売却による収入(1,130百万円)等により、△478百万円(前年同期は△38百万円)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主として短期借入れによる収入(短期借入金の返済による支出との純額は662百万円)等により、239百万円(前年同期は△1,004百万円)となりました。
③ 営業収益の状況
a. 営業収益実績
当連結会計年度における営業収益実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
前年同期比(%)
アセット・マネジメント事業(千円)1,974,352△5.5
うち管理報酬(千円)149,375△4.1
うち成功報酬(千円)22,037-
うちその他(千円)973△64.5
うち投信委託者報酬(千円)1,801,966△6.6
ディーリング事業(千円)485,432△9.9
再生可能エネルギー関連事業(千円)561,730△15.2
電力取引関連事業(千円)8,067,973179.3
その他収益(千円)31,220247.9

合 計(千円)11,120,710

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 当社グループのアセット・マネジメント事業、ディーリング事業は生産・受注といった区分が困難であるため、「生産・受注及び販売の状況」に代わり「営業収益の状況」を記載しております。また、同様の理由で「主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合」について記載をしておりません。
b. 運用資産残高の状況[アセット・マネジメント事業]
以下の表は、当連結会計年度の運用資産残高の状況を示したものです。
2018年
3月
6月9月12月2019年
3月
商品(百万円)489----
証券(百万円)393,670395,579374,233426,650417,366
合計(百万円)394,160395,579374,233426,650417,366

c. 自己資産運用における取引高比率の推移[ディーリング事業]
以下の表は、東京商品取引所の総取引高における自己勘定投資事業の取引高の比率の推移を示したものです。
2018年
4月
5月6月7月8月9月
取引所における
総取引高(枚)
3,616,1303,943,7264,227,9623,575,8323,986,6902,920,222
ディーリング事業が占める取引高の比率(%)4.304.563.792.372.723.47
10月11月12月2019年
1月
2月3月年間
取引所における
総取引高(枚)
3,780,6723,484,6903,202,9383,045,9063,031,5843,160,42641,976,778
ディーリング事業が占める取引高の比率(%)3.943.002.853.853.052.623.40

(注) 1 上記に記載した取引所における総取引高は、東京商品取引所発表の取引高を記載しております。
2 上記は、当社グループにおける東京商品取引所での自己売買取引の比率を記載しておりますが、それ以外にも国内取引所や海外取引所において取引を実施しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、本文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。
当社の経営者は、連結財務諸表の作成に当たり、会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に関する見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
② 経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、連結営業収益は11,120百万円(前期比4,934百万円の増加)、営業費用は10,960百万円(前期比4,940百万円の増加)、営業利益は160百万円(前期比5百万円の減少)、経常利益は130百万円(前年同期は1百万円の損失)となりました。営業収益及び営業費用の増加は、主として電力取引関連事業において、電力の販売と仕入れが増加したことによるものです。
税金等調整前当期純利益は、再生可能エネルギー関連事業における事業ポートフォリオの入替の一環として実施した大分県中津市の太陽光発電所や奈半利ソーラー発電所の増設分の設備譲渡に伴う特別利益144百万円等の計上により、206百万円(前期比90百万円の減少)となりました。また、法人税等合計が△20百万円(前期は110百万円)、非支配株主に帰属する当期純利益が59百万円(前期比35百万円の増加)となったことから、親会社株主に帰属する当期純利益は168百万円(前期比5百万円の増加)となりました。
なお、当社が最も重視している財務指標の1つである株主資本は、前期比24百万円増加し5,442百万円となりました。
当社グループは、2020年に向けた中期ビジョンを策定し、「持続的な企業価値の向上」と「外部環境に耐性のある安定的収益基盤の強化」を謳っております。
アセット・マネジメント事業は、営業収益が前連結会計年度比5.5%減少しましたが、マイナス金利等の外部環境の影響もあり、運用資産全体の報酬率が前年同期間比で低下したこと等からセグメント利益は前連結会計年度比8.9%減少しました。
ディーリング事業における営業収益は前連結会計年度比9.9%減少となりました。当事業においては、株式市場や仮想通貨、FX市場等への資金流入が続いたことの影響もあり、国内商品先物価格の市場変動率が相対的に低い状況であったこと等、厳しいビジネス環境にあったとの認識を有しております。
このような認識の下、当事業では販売管理費を前連結会計年度比2割程度削減する等、さらに経費率を改善し2期ぶりにセグメント黒字に転じました。今後も一層の経費率改善を目指すとともに、ディーリング資金のより効率的な活用を図ることによって事業の収益率を向上させてまいりたいと考えております。
再生可能エネルギー関連事業の営業収益は、2018年3月に奈半利ソーラー発電所を譲渡したことにより前連結会計年度比14.0%の減益となりました。当連結会計年度においては、保有する太陽光発電所の売電収入に加え、ポートフォリオの入替を目的とした保有する太陽光発電所の設備譲渡(大分県中津市)、既存発電所の増設や融資の借換等により事業採算性の改善を図ってまいりました。
当社グループのセグメント損益は、特別損益を含まない経常損益をもって公表しておりますが、太陽光発電所の設備譲渡に伴う特別利益及び農業関連企業へ出資の評価損を勘案した場合、当事業における税金等調整前当期純利益は、約132百万円となります。
2014年度から着手している宮崎県えびの市で進めている地熱発電事業は、3本の調査井の掘削および仮噴気試験が完了しております。既に開示しておりますとおり、今後の事業規模の拡大を目指すことを前提に、最大49%までの範囲にて第三者からの事業参加を想定し、パートナー企業の参画をより容易にすることを目的に、宮崎県えびの市の地熱事業を新たに設立したえびの地熱社に承継させる新設分割を、2019年5月7日に実施いたしました。
電力取引関連事業においては、顧客の電力調達ニーズが多様化してきたこと等も受け電力取引も活発化してきており、営業収益は前連結会計年度比179.3%と前年に続き大幅に増加しました。増加の大半を電力販売が占めており、電力販売量に見合う電力仕入れも大幅に増加したことから、電力仕入による営業費用も増加しております。新電力へのスイッチング件数や小売電気事業者の数は1年前と比べ増加傾向が継続していることから、今後も事業機会を的確に捉えると同時に新規顧客確保に努め、年間を通した黒字化を達成してまいりたいと考えております。
なお、当連結会計年度の経営成績と事業の種類別セグメント情報の詳細やその背景となる当社を取り巻く環境等につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、以下の事項であると考えております。
(アセット・マネジメント事業)
顧客層の拡充・事業基盤の拡大に努めてはおりますが、依然として、債券市場・外国為替市場・株式市場・商品市場等の動きによっては、投資家による利益確定または損失限定のための投資行動などにより解約が集中することで、同事業の業績が影響を受ける可能性があります。また、信託報酬率の低下傾向が今後も続くような場合も同事業の収益に影響を与える可能性があります。なお、個人投資家を対象とする長期資産形成の事業は、一定規模の事業規模を達成するためには、時間を要する事業と認識しております。
(ディーリング事業)
当連結会計年度においては、一時的に商品先物価格の市場変動率上昇することはありましたが、東京商品取引所の取引は総体的に保合相場となることが多く、ディーリング事業にとって取引機会が少ない展開が続いておりました。今後も同取引所における出来高が大きく減少したり、市場変動率が著しく低下するなどの市場環境によっては、同事業の収益が大きく影響を受ける可能性があります。
(再生可能エネルギー関連事業)
引き続き積極的に経営資源を投入し、太陽光発電事業の更なる拡大と地熱発電事業等への取り組みを継続しております。同事業は、市場の変動の影響を受けにくい安定収益源として営業収益への貢献が期待できる一方で、「事業等のリスク」に記載の通り、不測の事態が生じた場合は、同事業の業績にマイナスの影響を与える可能性があります。
(電力取引関連事業)
同事業においては、国内における電力契約の切替ニーズの変化や小売電気事業者数の増減等が当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。また、システムや業務代行サービスを利用いただく顧客数及び顧客の取り扱う電力量が経営成績に影響を与えることとなります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりであります。
(資産、負債及び純資産の状況)
当連結会計年度における総資産は、製品(売却目的で取得した太陽光発電設備)の増加(1,415百万円)及び太陽光発電事業と地熱発電事業の推進に伴う建設仮勘定の増加(228百万円)等により、13,167百万円(前年同期比9.0%増)となりました。
負債は、主に太陽光発電事業の推進に伴う短期借入金の増加(662百万円)及び主に電力取引関連事業における営業未払金の増加(590百万円)等により、7,173百万円(前年同期比16.9%増)となりました。
純資産は、非支配株主持分の増加(26百万円)及び利益剰余金の増加(23百万円)等により、5,993百万円(前年同期比0.9%増)となりました。
(キャッシュ・フローの状況)
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、3,143百万円(前年同期間比8.7%減)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主としてたな卸資産(売却目的で取得した太陽光発電設備)の増加による支出(△1,435百万円)等により、△61百万円(前年同期は801百万円)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主として太陽光発電事業に係る有形固定資産の取得による支出(△1,385百万円)、投資有価証券の取得による支出(△228百万円)、太陽光発電事業に係る有形固定資産の売却による収入(1,130百万円)等により、△478百万円(前年同期は△38百万円)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主として短期借入れによる収入(短期借入金の返済による支出との純額は662百万円)等により、239百万円(前年同期は△1,004百万円)となりました。
ASTAM社株式の一部譲渡によって増加した手元流動性は、今後も引き続き電力取引関連事業におけるファイナンスに伴う資金需要、再生可能エネルギー関連事業への投資等に充当することに加え、株主還元及び資本効率の向上にも充当したいと考えております。再生可能エネルギー関連事業における資金需要については、主としてプロジェクトファイナンスによって投資資金を確保することを想定しております。なお、手元流動性を超える資金需要の増加が見込まれる場合におきましては、銀行借り入れ等による財務活動を通じた資金調達も視野にいれております。
経営者の問題認識と今後の方針については、以下のとおりであります。
当社の経営者は、現状の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するよう努めておりますが、当社を取り巻く経営環境は、依然として、内外の金融商品市場及び商品先物市場等の動向等の諸経済情勢により大きく影響を受けるものとなっております。このため、金融商品市場及び商品先物市場等に関する情報を幅広く入手し、市場動向に迅速に対応すべく努力する一方、前述のとおり、当社グループの事業について、市場動向の影響を受けにくい体質への改善を進めております。また、アセット・マネジメント事業におきましては、投資運用業者が求められる社会的役割を十分に認識し、今後一層、個人投資家向け長期資産形成事業への注力度を上げてまいります。上記のほか我が国の再生可能エネルギー等に対する政策の動向も踏まえつつ、業績と事業計画に大きな乖離が生じる可能性がある場合には、事業計画を抜本的に見直すことも含めて、環境変化への対応を適切に行ってまいります。