有価証券報告書-第9期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 16:45
【資料】
PDFをみる
【項目】
143項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、創業以来培ってきたノウハウを活用し、金融事業と総合エネルギー事業を展開しております。
当社グループのセグメントは、前連結会計年度末まで、「再生可能エネルギー関連事業」、「電力取引関連事業」、「アセット・マネジメント事業」、「ディーリング事業」の4事業に区分しておりましたが、当連結会計年度より、「電力取引関連事業」から「小売事業」を分け、5事業に区分しております。従いまして、当連結会計年度における「電力取引関連事業」及び「小売事業」の経営成績については、前連結会計年度における「電力取引関連事業」の経営成績を当該各事業に組み替えて比較しております。
当連結会計年度の経営環境は以下のとおりです。
当連結会計年度(2020年4月1日~2021年3月31日)におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症が拡大する中で緊急事態宣言が発出され、経済活動に制約が生じ、雇用・所得環境は悪化しました。その後、Go Toキャンペーンが展開される等、経済社会活動に加わった制約は段階的に解除されましたが、年が明けると再び緊急事態宣言が発出され、一進一退の状況が続いています。
一方、株式市場は前期末に大幅に下落したことに対して、主要中央銀行の金融緩和によりマネーが流入したことで、大きな反発が見られ、当期末の日経平均株価は、29,178.80円と前期末比54.2%の増加と大幅に上昇しました。
当連結会計年度のセグメント毎の経営環境は以下のとおりです。
再生可能エネルギーを取り巻く環境については、改正FIT法に基づき、2019年度の太陽光発電のFIT価格は14円(税抜)、2020年度は12円(税抜)となり、入札制度の対象も出力500kW以上の設備から250kW以上の設備にまで拡大されました。また、未稼働案件に対して運転開始期限設定を義務化する新たな仕組みも定められたほか、2022年度に導入される市場連動型のFIP(Feed-in Premium)制度を踏まえた2021年度以降の制度の方向性案と、それを踏まえた調達価格等についての案が示されました。
既存案件については、当社グループ保有の太陽光発電設備が稼働する九州電力管轄内において、電力需給バランスの維持及び電力安定供給の必要性から、当連結会計年度において、熊本県の発電所には合計22回の出力抑制が発令されました。今後は、他の電力管轄内においても出力抑制発令の可能性が想定されます。
FIT価格は、制度スタート時の40円(税抜)から大幅に低下しておりますが、前述の様にFIT制度に加え、FIP制度の導入、「パリ協定」や「持続可能な開発目標(SDGs)」、「RE100(事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的なイニシアチブ)」など、世界的に推進されている脱炭素社会を目指す動きは、急速に広がりを見せてきています。わが国においても、2050年までに温暖化ガス排出量実質ゼロ、再生可能エネルギーを50~60%を目標とした主力電源化が政策目標とされています。新型コロナウイルス感染症の影響により、世界経済の不透明感が高まっていますが、再生可能エネルギーの重要性、脱炭素社会を目指す動きは、グローバルに今後一層進むことが見込まれます。
電力市場においては、2016年4月の電力小売全面自由化以降、小売電気事業者の事業者数は700を超え、電力の切替件数は順調に増加しています。市場での電力価格については、天候不順や新型コロナウイルス感染症の影響、燃料市場の高騰等によって価格変動リスクが高まっており、2020年12月後半には寒波の到来や発電所の燃料不足等、複数の要因が重なったことで電力需給がひっ迫し、電力スポット価格は数円から一時200円台まで高騰しました。小売電気事業者や発電事業者の経営においても、電力市場価格の「リスク管理」の重要性が認識されており、電力取引のヘッジニーズは高い状態が続くものと考えます。
商品市場においては、原油価格は、前期末に大幅下落した後、4月下旬から6月にかけて徐々に回復し、その後年始には60ドル台での堅調な値動きとなりました。金価格は、不安定な世界情勢から一時2,000ドルを超え、その後、反落したものの高値圏での堅調な推移が続いています。商品市場は、第1四半期に新型コロナウイルス感染症の影響で概して需給バランスが不安定になり、また商品の輸送や貯蔵にも影響が生じていること等もあり、一時的に市場間の価格差が大幅に拡大いたしました。その後も乖離はやや収まったものの不安定な状況が続きました。
経営成績は次のとおりです。
(単位:百万円)
2020年3月期
連結会計年度
2021年3月期
連結会計年度
増減増減率(%)増減の主要因ほか
営業収益11,93212,2803472.9①再生可能エネルギー関連事業(△245)
②電力取引関連事業(+283)
③アセット・マネジメント事業(+32)
④ディーリング事業(+214)
⑤小売事業(+145)
営業費用12,09812,017△81△0.7①再生可能エネルギー関連事業の外注工事費(△291)
②電力仕入の増加(+197)
営業利益又は
営業損失(△)
△166262428
経常利益又は
経常損失(△)
△18595281①営業利益(+428)
②持分法による投資損失の増加(△90)
特別利益1,028312△716△69.6前連結会計年度は子会社株式一部売却による特別利益
及び東京商品取引所の株式TOB買取による特別利益を
計上
特別損失229137△91△40.0
税金等調整前
当期純利益
613270△343△56.0
法人税等合計(※)371138△233△62.9
非支配株主に帰属する当期純利益又は非支配株主に帰属する当期純損失(△)△21013
親会社株主に帰属する当期純利益243121△122△50.3

※「法人税等合計」には、「法人税、住民税及び事業税」と「法人税等調整額」を含みます。
セグメント毎の経営成績及び取り組み状況は次のとおりです。
電力取引関連事業及びディーリング事業のセグメント利益は前年同期間比増加し、一方、小売事業及びアセット・マネジメント事業のセグメント損失は前年同期間比増加しました。
なお、セグメント損益は連結会計年度の経常利益又は経常損失(△)と調整を行っており、連結会社間の内部取引消去等の調整額が含まれております。各事業に帰属する特別利益および特別損失は含んでおりません。
(単位:百万円)
2020年3月期連結会計年度2021年3月期連結会計年度増減増減率(%)
再生可能エネルギー
関連事業
営業収益1,5801,370△209△13.3
セグメント損益34△0△35-
電力取引関連事業営業収益9,72010,0833623.7
セグメント損益76302225295.5
小売事業営業収益31521494,818.0
セグメント損益△57△196△138-
アセット・
マネジメント事業
営業収益1001333232.5
セグメント損益△27△115△87-
ディーリング事業営業収益42664121450.2
セグメント損益△56203259-
その他営業収益11729△87△74.8
セグメント損益△32△2111-
調整額営業収益△16△131△114-
セグメント損益△122△7745-
当期連結財務諸表営業収益11,93212,2803472.9
セグメント損益△18595281-

(注)「その他」は、地方創生事業など、報告セグメント化されていない事業を示しています。
<1 再生可能エネルギー関連事業>当事業は主にASTRA社(当社は2021年4月1日付でASTRA社を吸収合併しており、合併後は当社がASTRA社の事業を引き継いでおります。以下同様。)及びアストマックスえびの地熱株式会社(以下、「えびの地熱社」という。)が推進しております。再生可能エネルギーを取り巻く環境は上述のとおりですが、当事業は、企業理念と行動指針に基づき、エネルギー問題、気候変動問題を中心とした環境への取り組みにより、世界が「持続可能な開発目標(SDGs)」によって目指していく社会の実現に貢献したいと考えております。わが国のエネルギー基本計画に沿って、2030年までに最大年間66,000トン(太陽光発電100MW相当)のCO2削減を目指すとともに、再生可能エネルギーの導入及び拡大に寄与する方針であり、以下のとおり、継続的に再生可能エネルギー発電所の開発、取得、発電及び電気の供給(発電事業)、維持・運営管理(O&M事業)を行っております。
(太陽光発電事業)
当事業が従事した完工済みの案件は合計31.4MWであり、今後着工する案件は以下の①のとおり、1箇所、2.1MWになります。
改正FIT法の施行、競合他社の参入、優良案件の減少等、案件確保が容易ではない事業環境ではありますが、当事業では、長年に亘り培ってきた優良案件を見極める力とネットワークの力を活用して、引き続き、太陽光発電設備の自社開発を行ってまいります。また、これらに加え、未稼働ID(FIT認定済みの運転未稼働案件)及びセカンダリー市場(完成した発電所の売買市場)での案件確保に取り組むと共に、保有している既存発電設備についても、譲渡を行うこと等を含め、事業ポートフォリオの一部入替を検討する等、期間利益を確保しながら、事業採算性の向上にも取り組んでまいります。
自社開発(建設中):
① 栃木県大田原市 出力規模:約2.1MW 2024年5月完工予定
稼働後はASTRA社が維持・運営管理(O&M事業)を行います。
自社開発(運転開始):
当連結会計年度に運転開始した案件はありません。
セカンダリー市場:
新たな案件についても精査を行っております。
ポートフォリオの入替:
①2021年3月1日付にて栃木県内約2.0MWの譲渡が完了しました。売上総利益7百万円を計上しております。
②2021年3月30日付にて鹿児島県内約2.2MWの譲渡が完了しました。特別利益212百万円を計上しております。
維持・運営管理(O&M事業):
ASTRA社では、ASTRA社が開発に携わった案件等17か所、合計31.6MWの太陽光発電所の維持・運営管理(O&M事業)を行っております。
(地熱発電事業等)
当事業では、ベースロード電源である地熱を利用した発電事業の取り組みも進めております。
宮崎県えびの市尾八重野地域では、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構による「地熱資源開発調査事業費助成金交付事業」(以下、「助成事業」という。)の採択を受け、2MW規模の地熱発電の事業化を目指して、2016~2018年度に3本の調査井掘削を完了し、1号調査井及び3号調査井については自噴を確認、2号調査井については熱水資源の還元ゾーンとしての十分な能力を確認してまいりました。
この結果を受け、ASTRA社は、事業規模の計画拡大及び、最大49%までの範囲による第三者からの事業参画をより容易にすることを目的として、2019年5月に、新設分割により設立したえびの地熱社に、宮崎県えびの市における地熱開発事業の全てを承継させました。2020年3月には大和エナジー・インフラ株式会社とえびの地熱社との間で、事業損益の10%を分配する匿名組合契約を締結いたしました。なお、匿名組合出資と損益分配の開始は発電所の運転開始時となります。
その後、えびの地熱社では、2019年度助成事業として掘削した4号調査井についても自噴を確認しており、これまでの調査結果から計画規模を4.8MWに拡大し、発電所建設のための検討を進めております。また2021年3月には、JFEエンジニアリング株式会社とえびの地熱社との間で、事業損益の10%を分配する匿名組合契約を締結し、第一回匿名組合出資を受けました。なお、損益分配の開始は発電所の運転開始時となります。
本件に関しては、当初計画の2MW分について、発電設備等を電力系統に連系するための工事費負担金契約を九州電力株式会社との間で締結しており、今後は、拡大後の計画規模に合わせた追加の系統確保や地元調整など、引き続き事業化に向けて取り組んでまいります。なお、既に締結している工事費負担金契約の工期に合わせ、現時点での運転開始は2026年度を予定しております。
再生可能エネルギー関連事業では、全般的に発電が好調であったものの、地熱開発を含む発電所の開発に係るコスト(建設コストを賄うための銀行借入に対する諸手数料や金利負担等)が計画の進捗に伴い増加していることに加え、後述の特別利益にかかる営業費用が計上されております。
以上の結果、当事業における当連結会計年度の営業収益は1,370百万円(前年同期間比209百万円(13.3%)の減少)、0百万円のセグメント損失(前年同期間は34百万円のセグメント利益)となりました。
なお、2021年3月に鹿児島県内の太陽光発電設備を譲渡したことによる譲渡益212百万円は特別利益に計上されております。
<2 電力取引関連事業>当事業は、日本卸電力取引所の会員であるASTRA社及びアストマックス・エナジー・サービス株式会社(以下、「AES社」という。)が推進しており、小売電気事業者をサポートするために、需給管理業務を中心とした業務代行サービスの提供、電力取引の提供を行っております。
当事業の内、業務代行サービスについては、既存顧客へのサービスの提供により収入を確保しながら、引き続き新規取引先を増やすべく、顧客ニーズにあったきめ細かいサービスの提案を行っております。
電力取引については、顧客の電力調達ニーズに対応し、価格変動リスク及び電力市場の需給状況等を考慮し、電力現物先渡取引、デリバティブ取引である電力スワップ取引、電力先物取引に取り組んでおります。電力取引の増加及び多様化に伴うリスク管理の重要性が増加していることに鑑み、当社グループでは、リスク管理体制の強化も推進しております。当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症拡大等による電力需要の減少などの影響で取引量の合計は前年比減少しましたが、12月以降は天候や発電所の燃料不足等から電力の需給がひっ迫した事を受け、電力取引は増加し、適切にリスクを管理したことにより利益を計上することができました。
なお、会計上現物取引である電力先渡取引は時価評価の対象ではなく、確定損益のみが損益計上されています。また、夏と冬は価格変動が大きく需要が増え結果として電力取引量が増加し、損益変動幅が拡大するといった季節的傾向があります。
また、AES社が中心となって行っていた米国ESG社とのシステム販売におけるパートナーシップ契約は5年間に亘る契約期間の満了をもって第3四半期連結会計期間に終了し、AES社で行っていた業務代行サービスはASTRA社へ随時移行しております。
以上の結果、電力取引関連事業の当連結会計年度の営業収益は10,083百万円(前年同期間比362百万円(3.7%)の増加)となり、セグメント利益は302百万円(前年同期間比225百万円(295.5%)の増加)となりました。
<3 小売事業>ASTRA社は、2016年3月に小売電気事業者、2018年10月にガス小売事業者として経済産業省への登録を完了し、主に電力取引関連事業において電力の卸売販売を手掛けてまいりました。当社グループは、従来からの再生可能エネルギー関連事業、電力取引関連事業に加え、小売電気事業分野に本格的に参入することで、日本における電力のサプライチェーン全体に事業領域を広げ、より機能的なサービスの提供と収益機会の開拓を図る方針を決定し、2020年4月に、小売電気事業を展開するAE社を傘下に有するJust Energy Japan株式会社(2020年7月1日付で「アストマックス・エネルギー株式会社に商号変更。)の全発行済株式を取得し、その後1%譲渡いたしました。AE社では、個人を中心とした低圧市場の顧客への電力・ガス販売を手掛け、特高・高圧市場の電力顧客への販売はASTRA社で行っております。
(電力小売)
第1四半期連結会計期間は買収したAE社を当社傘下で運営する為の移行期間と位置づけ、システム移管と営業戦略構築に専念したため、顧客数は買収時から大きな変化はありませんでした。第2、第3四半期連結会計期間においては、7月の商号変更と共に新たな料金プランをリリースし新規顧客獲得への活動を開始しましたが、新料金プランのエリア展開及び販売チャンネルが限定的であったこともあり、顧客数の増加は限定的なものとなりました。第4四半期連結会計期間は、AE社のホームページ刷新、積極的な当社事業の周知及び販売チャンネルの拡大が奏功し、顧客数は増加しました。
(ガス小売)
当事業では、取次店候補である複数の企業と交渉を行っておりましたが、第4四半期連結会計期間からAE社を取次店のひとつとしてAE社の既存の電力顧客に対しガスのセット販売キャンペーンを行い、ガス小売の顧客数も増加しております。また、その他の代理店・取次店候補企業との契約締結に向けて、取り組んでまいります。
以上の結果、小売事業の当連結会計年度は、コスト先行となり、営業収益は152百万円(前年同期間比149百万円(4,818.0%)の増加)となり、196百万円のセグメント損失(前年同期間は57百万円のセグメント損失)となりました。
<4 アセット・マネジメント事業>アストマックス・ファンド・マネジメント株式会社(以下、「AFM社」という。)においては、学校法人東京理科大学が主に出資する大学発ベンチャーキャピタルファンドの営業者としてファンド運営業務等を担い、2020年3月より新たなファンドの運用業務も受託しており、投資金額の順調な積み上げを継続しております。
PPAM社においては、スワップ取引を対象としたファンドからの資金流出やファンドの満期償還等を受け、運用資産残高合計は6月末時点で前連結会計年度末比117億円減少の約2,986億円となりました。7月以降は、先進国の株式や債券を対象としたファンドや米ドルへの連動を目指すファンドへの資金流入等から運用資産残高は増加し、9月末時点の運用資産残高は前連結会計年度末比102億円増加の約3,206億円となり、その後も米ドルへの連動を目指すファンドや米国の株式への連動を目指すファンドへの資金流入等から運用資産残高の増加基調は継続し、12月末時点の運用資産残高は前連結会計年度末比335億円増加の約3,438億円となりました。しかしながら、その後の世界的な株式相場の上昇及びドル高を受けて、利益確定目的での解約に伴う資金流出と適格機関投資家向けの新規設定私募投信への資金流入の伸び悩みから、2021年3月末時点の運用資産残高合計は、前連結会計年度末比29億円増加の約3,132億円となりました。全体として運用資産残高が前年同期間を下回る水準で推移したことに加え、報酬率が相対的に高い運用資産残高の減少等を受けて運用資産全体の報酬率が前年同期に比べ低下したことから、PPAM社の営業収益の総額は、前年同期間比で減少しました。
以上の結果、当事業における当連結会計年度の営業収益は133百万円(前年同期間比32百万円(32.5%)の増加、持分法適用関連会社のPPAM社の営業収益は含まず)となり、115百万円のセグメント損失(前年同期間は27百万円のセグメント損失)となりました。
PPAM社では、低金利が継続している現状の金融市場環境において、各機関投資家の資産運用ニーズをより的確に捉えることが従来にも増して重要であり、こうしたニーズを十分に把握した上で、内外の外部運用機関との協働も含め、機関投資家の運用成果に貢献し、また中長期の投資対象となりうるファンド組成をタイムリーに行っていくことに注力しております。同時に投資信託の販売会社等との協業も強化することによって運用資産残高の積み上げに努め、収益基盤の拡充にも取り組んでいます。また、PPAM社ではこれまでの主力事業である機関投資家向けビジネスに加え、個人投資家向けビジネスについても一層の強化を図るべく、投資未経験者を含む個人投資家の皆様に向けて、ネット取引に加え対面型営業による長期積立型投資信託事業の展開も加速しております。今後の個人投資家向けビジネスについては、PayPayアセットマネジメント株式会社への社名変更を契機にZホールディングス株式会社グループとの協働をさらに推進し、事業基盤を拡大させてまいりたいと考えております。
<5 ディーリング事業>当事業は、ASTRA社が推進し、OSE、TOCOM、CME、ICE、INE等、国内外の主要取引所において商品先物を中心に、株価指数等の金融先物を取引対象とした自己勘定取引を行っております。
冒頭の市場環境の中、第1四半期連結会計期間に原油市場で市場間や限月間の価格差が開き、裁定取引の機会が大幅に増加しました。その後は、価格差は落ち着いてきたものの、年度を通じて裁定取引で継続的に安定した利益を計上することができました。貴金属の裁定取引では、通期をとおして市場間の値差が不安定であり、基準となる理論値からの乖離が続いたため、リスクを抑えて取引を行い、その後も、取引手法と資金、リスクをコントロールしながら安定して利益を計上することができました。
以上の結果、当事業における当連結会計年度の営業収益は641百万円(前年同期間比214百万円(50.2%)の増加)、セグメント利益は203百万円(前年同期間は56百万円のセグメント損失)となりました。
当事業では、今後も引き続き経費節減に努めると同時に、ディーリング資金の効率的な運用を行い引き続き収益力の強化を目指してまいります。
<6 その他(地方創生ほか)>当事業は報告セグメントとして独立しておりませんが、事業の状況について説明いたします。
当事業は北海道長万部町で実施されている「長万部地方創生事業」において、「町と東京理科大学の連携による再生可能エネルギーを活用した先進的アグリビジネス事業」の確立を目指し2017年11月に設立された長万部アグリ株式会社(以下、「アグリ社」という。)が主に推進しております。当社グループはアグリ社の設立当初より出資しておりましたが、2018年6月にアグリ社の第三者割当増資を引き受け、アグリ社は当社の子会社となりました。
アグリ社では、サンゴ及び焼成したホタテ貝殻のアルカリ培地を利用した新しい農法でミニトマトを生産・出荷しており、2020年2月にはアグリ社のミニトマト「ENRICH MINI TOMATO(エンリッチミニトマト)」が、一般財団法人格付けジャパン研究機構が主催する格付け認証により、ミニトマト部門における「糖度」「リコピン含有量」「GABA含有量」の総合評価において、「データプレミアムNo1」の認証を取得する等、一定の成果が出てきております。
新型コロナウイルス感染症の拡大下においては、百貨店・ホテル・観光関連施設・飲食店等の既存のお客様への販売を軸とした事業展開が難しい局面を迎えることとなりました。この環境下、アグリ社では、ご愛顧頂いてきたお客様への販売についても引き続き努力する一方で、継続的に商品販売の機会を確保することを目的として、Eコマースプラットフォームを活用した販路の拡大にも取り組んでおります。2020年8月には「長万部アグリYahoo!店」を開店、FacebookやInstagramを利用した情報発信も利用して、「免疫機能」維持に必要な「ストレス抑制」作用があるといわれる「GABA」を豊富に含む「ENRICH MINI TOMATO(エンリッチミニトマト)」及びトマトジュースの周知活動を行っております。
なお、前述いたしましたとおり、上記、セグメント利益又は損失は当該連結会計年度の経常利益又は経常損失と調整を行っており、連結会社間の内部取引消去等の調整額が含まれております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、3,226百万円(前年同期間比15.7%増)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主として長期預り金の増加による収入(740百万円)、自己先物取引差金(借方)の減少による収入(679百万円)、たな卸資産(売却目的で取得した太陽光発電設備)の減少による収入(642百万円)等により、921百万円(前年同期は669百万円)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主として太陽光発電事業に係る有形固定資産の売却による収入(894百万円)、定期預金の払戻による収入(680百万円)、地熱発電事業及び太陽光発電事業に係る有形固定資産の取得による支出(△470百万円)等により、1,153百万円(前年同期は△1,693百万円)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主として短期借入金の返済による支出(短期借入金による収入との純額は△1,741百万円)等により、△1,637百万円(前年同期は669百万円)となりました。
③ 営業収益の状況
a. 営業収益実績
当連結会計年度における営業収益実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
前年同期比(%)
再生可能エネルギー関連事業(千円)1,322,431△15.7
電力取引関連事業(千円)10,004,7582.9
小売事業(千円)149,0934,704.9
アセット・マネジメント事業(千円)133,61932.5
ディーリング事業(千円)641,05950.2
その他収益(千円)29,352△73.9

合 計(千円)12,280,3152.9

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 当社グループのアセット・マネジメント事業、ディーリング事業は生産・受注といった区分が困難であるため、「生産・受注及び販売の状況」に代わり「営業収益の状況」を記載しております。また、同様の理由で「主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合」について記載をしておりません。
b. 運用資産残高の状況[アセット・マネジメント事業]
以下の表は、当連結会計年度の運用資産残高の状況を示したものです。
2020年3月6月9月12月2021年3月
合計(百万円)310,366298,645320,659343,897313,291

c. 太陽光発電所発電量実績[再生可能エネルギー関連事業]
以下の表は、当社グループが保有する太陽光発電所の発電実績を示したものです。
発電所数パネル出力(MW)予想発電量(kWh)
(A)
発電量(kWh)
(B)
差異
(B)-(A)
CO2
削減効果
(kg-CO2)
2020年4月410.91,272,2791,135,434△ 136,845624,489
5月410.91,225,1371,222,719△ 2,418672,495
6月410.91,155,7431,065,318△ 90,425585,925
7月410.91,272,581744,114△ 528,467409,263
8月410.91,341,2801,439,76098,480791,868
9月410.91,062,262955,655△ 106,607525,610
10月410.9967,2421,165,798198,556641,189
11月410.9816,083880,75164,668484,413
12月410.9725,660822,14596,485452,180
2021年1月410.9750,168792,17442,006435,696
2月410.9922,449885,825△ 36,624487,204
3月410.91,101,986968,048△ 133,938532,426
合計--12,612,86912,077,741△ 535,1286,642,758

(注) 1 環境省の制定する「CO2削減効果算定マニュアル」に基づき算出しています。
CO2排出係数(代替値):0.55kg-CO2/kWh
2 譲渡目的で所有している発電所は一覧から除いています。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、本文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、連結営業収益は12,280百万円(前期比347百万円の増加)、営業費用は12,017百万円(前期比81百万円の減少)、営業利益は262百万円(前期は166百万円の営業損失)、経常利益は95百万円(前期は185百万円の経常損失)となりました。営業収益の増加は、主として電力取引関連事業による電力販売の増加とディーリング事業の収益の増加によるものです。営業費用の減少は、電力取引関連事業の電力の仕入れは増加したものの、再生可能エネルギー関連事業の外注工事費の減少や、ディーリング事業の支払い手数料の減少が上回ったことによるものです。
持分法適用関連会社による損失が増加したため営業外費用が増加しました。鹿児島県内の太陽光発電設備を譲渡したことによる212百万円と蓄電池リースに係る国庫補助金100百万円の合計312百万円を特別利益として計上し、蓄電池リースにかかる固定資産圧縮損100百万円を含む特別損失137百万円を計上したことにより、税金等調整前当期純利益は270百万円(前期比343百万円の減少)となりました。法人税等合計は138百万円(前期比233百万円の減少)、非支配株主に帰属する当期純利益が10百万円(前期は2百万円の純損失)となったことから、親会社株主に帰属する当期純利益は121百万円(前期比122百万円の減少)となりました。
配当後の非支配株主持分を除いた純資産額は2020年3月期末の5,415百万円から5,488百万円と73百万円増加し、純資産は6,073百万円となりました。
再生可能エネルギー関連事業では、当連結会計年度においても、保有する太陽光発電所の売電収入に加え、ポートフォリオの入替を目的とした保有する太陽光発電所の設備の譲渡等により事業採算性の改善を図りましたが、営業収益は13.3%減となりました。ただし、当期売却した太陽光発電設備2件のうち1件の売却益は特別利益(212百万円)として計上されたため、当該特別利益を加味した当事業の利益は211百万円となりました。
2014年度から着手している宮崎県えびの市で進めている地熱発電事業は、4本の調査井の掘削および仮噴気試験が完了しております。2019年5月には今後の事業規模の拡大を目指すことを前提に、最大49%までの範囲にて第三者からの事業参加を想定し、パートナー企業の参画をより容易にすることを目的に、宮崎県えびの市の地熱事業を新たに設立したえびの地熱社に承継させる新設分割を実施いたしました。2020年3月にはえびの地熱社の事業損益の10%を分配する匿名組合契約を大和エナジー・インフラ株式会社と、また2021年3月にはJFEエンジニアリング株式会社と締結いたしました。
電力取引関連事業は、上半期は電力需給が減少したため、上半期の業績は厳しい結果となりましたが、下半期は、年末年始に電力の需給が逼迫し、電力価格が急騰したこともあり、電力取引額も増加しました。当社は効果的なポジション構築と適切なリスクコントロールにより収益を確保し、営業収益は前連結会計年度比3.7%増加し、302百万円のセグメント利益となりました。
アセット・マネジメント事業は、ファンド運用業務の新規受注などにより、営業収益は前連結会計年度比32.5%増加したものの、利益面では持分法適用関連会社による損失が増加し115百万円のセグメント損失となりました。
ディーリング事業は、市場の高変動率が続く中で、自己勘定取引の機会が増え、原油市場や貴金属市場を中心に成果を上げ、営業収益は前連結会計年度比50.2%と増加し、203百万円のセグメント利益となりました。
なお、当連結会計年度の経営成績と事業の種類別セグメント情報の詳細やその背景となる当社を取り巻く環境等につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、以下の事項であると考えております。
(再生可能エネルギー関連事業)
引き続き積極的に経営資源を投入し、太陽光発電事業の更なる拡大と地熱発電事業等への取り組みを継続しております。同事業は、市場の変動の影響を受けにくい安定収益源として営業収益への貢献が期待できる一方で、「事業等のリスク」に記載の通り、不測の事態が生じた場合は、同事業の業績にマイナスの影響を与える可能性があります。
(電力取引関連事業)
同事業においては、国内における電力契約の切替ニーズの変化や小売電気事業者数の増減等が当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。また、業務代行サービスを利用する顧客数及び顧客の取り扱う電力量や需給逼迫等による電力価格の高騰が経営成績に影響を与えることとなります。
(小売事業)
企業買収により小売電気ビジネスに当連結会計年度より本格参入いたしました。小売電気事業のビジネスモデルは、顧客獲得にかかる代理店・取次店等への販売報酬を営業費用として先行して認識し、顧客契約からの収益はその後一定期間をかけて回収するという特性がある為、顧客を継続的に増やしていく成長過程においては、小売電気事業者の損益計算書は費用先行になる傾向がありますが、中長期的には当社の企業価値向上に寄与するものと考えております。
(アセット・マネジメント事業)
PPAM社では顧客層の拡充・事業基盤の拡大に努めてはおりますが、依然として、投資家による利益確定または損失限定のための投資行動などにより解約が一定期間に集中することで、同事業の業績は影響を受ける可能性があります。また、PPAM社における信託報酬率の低下傾向が今後も続くような場合も同事業の業績に影響を与える可能性があります。なお、個人投資家を対象とする長期資産形成の事業は、一定規模の事業規模を達成するためには、時間を要する事業と認識しております。
(ディーリング事業)
当連結会計年度においては、一年を通して商品先物価格の市場変動率は高めで推移していましたが、ここ数年は総体的に保合相場となることが多く、ディーリング事業にとって取引機会が少ない展開が続いておりました。同事業においては、取引対象銘柄の出来高の大幅な減少や市場変動率の著しい低下などの市場環境によって、今後も同事業の業績は大きな影響を受ける可能性があります。一方、2020年度に貴金属を中心とする銘柄は日本取引所へ移管が完了しており、東京商品取引所と大阪取引所の旧東京商品取引所銘柄を合算した日次出来高と取組高は前連結会計年度末の数字をそれぞれ10%超上回っています。市場参加者の増加と流動性の向上は今後も期待され、同事業の業績も影響を受ける可能性があります。
経営者の問題認識と今後の方針については、以下のとおりであります。
当社の経営者は、現状の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するよう努めております。
電力を中心とした総合エネルギー事業をより発展させるには、当社のトレーディング及びリスク管理ノウハウを生かしつつ新たなビジネスモデルの構築を早急に進めていく必要があります。加えて、当社は持続可能な社会の成長に資する脱炭素社会の実現を視野に、エネルギー資源の有効活用を図ると共に、効率的かつ利便性に優れたサービスの提供者になる必要があると考えております。そのためには当社グループの事業領域における近未来のサービスの在り方をいち早く見極め、人財育成と確保、そして当社の事業展開を補完する事業パートナーの発掘を含め、スピード感をもって事業領域を広げると同時に深めていくことに努めてまいります。
また、当社の各市場に関連する事業の成果は、内外の金融商品市場、電力関連市場及び商品先物市場等の動向等の諸経済情勢の影響を大きく受けるものとなっております。このため、これらの市場等に関する情報を幅広く入手し、市場動向に迅速に対応すべく努力することは以前にも増して重要となっております。
業績と事業計画に大きな乖離が生じる可能性がある場合には、事業計画を抜本的に見直すことも含めて、環境変化への対応を適切に行ってまいります。
② キャッシュ・フローの状況分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(資産、負債及び純資産の状況)
当連結会計年度においては、太陽光発電設備の売却を行い、その売却代金を借入金の返済に充てたことが主要因となり、以下のとおりとなりました。
総資産は、霧島福山太陽光発電所(太陽光発電設備)の売却を主な要因とした機械及び装置(純額)の減少(932百万円)及び販売目的で取得していた太陽光発電設備(メガ栃木・立出発電所)の売却に伴う製品の減少(688百万円)等により、11,923百万円(前年同期比11.9%減)となりました。
負債は、主に太陽光発電事業及び地熱発電事業の推進に伴い借入れていた短期借入金の減少(1,741百万円)及び主に太陽光発電設備の売却に伴う返済による長期借入金の減少(693百万円)等により、5,849百万円(前年同期比25.3%減)となりました。
純資産は、非支配株主持分の増加(300百万円)及び利益剰余金の増加(44百万円)等により、6,073百万円(前年同期比6.6%増)となりました。
(キャッシュ・フローの状況)
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、3,226百万円(前年同期間比15.7%増)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主として長期預り金の増加による収入(740百万円)、自己先物取引差金の減少による収入(679百万円)、たな卸資産(売却目的で取得した太陽光発電設備)の減少による収入(642百万円)等により、921百万円(前年同期は669百万円)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主として太陽光発電事業に係る有形固定資産の売却による収入(894百万円)、定期預金の払戻による収入(680百万円)、地熱発電事業及び太陽光発電事業に係る有形固定資産の取得による支出(△470百万円)等により、1,153百万円(前年同期は△1,693百万円)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主として短期借入金の返済による支出(短期借入金による収入との純額は△1,741百万円)等により、△1,637百万円(前年同期は669百万円)となりました。
再生可能エネルギー関連事業における資金需要については、主としてプロジェクトファイナンスによって投資資金を確保することを想定しております。なお、手元流動性を超える資金需要の増加が見込まれる場合におきましては、銀行借り入れ等による財務活動を通じた資金調達も視野に入れております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(減損の認識)
当社グループでは、「固定資産の減損に係る会計基準」及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」に基づき、収益性が著しく低下した資産又は資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
なお、当社グループは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係) ※5 減損損失」に記載のとおり、当連結会計年度において減損損失(21,567千円)を計上しております。
また、地熱発電開発事業に係る固定資産の評価に関する会計上の見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。