有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2018/08/02 15:00
【資料】
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【項目】
95項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
① 収益力の向上
a ブランドポートフォリオの構築
子供服の分野において、多様なライフスタイルへ対応し、収益が最大となるブランドポートフォリオを構築していきます。
b 販売チャネルポートフォリオの構築
子供とその家族の多様なライフスタイルに適した購買場所へ出店し、収益が最大となる最適な販売チャネルポートフォリオを構築いたします。(百貨店、ショッピングセンター、アウトレット、eコマースなど)
c 生産・物流の効率化
(a)国内物流機能の集約と効率化を目指します。
(b)当社は、国内商社及びOEM会社経由での生産管理を行っておりますので、取引先と連携することで中国集中から他国への展開も検討いたします。
② 人材育成方針
a 当社はSPAの業態であるため、顧客との接点である販売員の育成・強化が競争優位の源泉であると考えております。そのため、販売員への研修、他店舗での成功事例などの情報共有を強化することで、接客能力の向上を図ります。
b キッズファミリーのライフスタイルの時代の流れを読み、具体的な商品として提案できるよう、企画開発スタッフの人材育成を行います。
c また、事業規模の拡大に伴い、管理部門の人材を補充・強化し、企業規模に応じた人材の登用を図ってまいります。
③ 企業体質の強化
新市場開拓、新カテゴリーの開発への挑戦、海外市場進出への挑戦を進めることで、変化の激しい子供服市場において、競争力を強化し、オンリーワン・ナンバーワンを目指します。
(2)経営指標
当社は、収益性の指標として、売上高営業利益率(経営の効率性)及びEBITDA(安定した成長)を意識し、それらの向上を図ることが、企業価値の最大化につながるものと考え、マルチチャネル、マルチブランド展開を推進するうえで、ポートフォリオの最適化に留意しながら、経営資源の選択を行っております。
(3)経営戦略等
当社は、子供服業界において、マルチチャネル、マルチブランド展開を推進しております。従いまして、販売チャネル、ブランドのポートフォリオの最適化に留意しながら経営戦略を進めてまいります。
さらに今後は、子供とその家族をターゲットに提供すべき価値をモノ(洋服)からコト・サービスへと拡大することで、キッズライフスタイル企業へと成長したいと思います。
具体的なコト・サービス事業として検討中の案件の1つとして、フォトスタジオ事業があります。日常の幸せな風景を、素敵なスタジオで、思い出として写真を撮っていただく事業です。我々の洋服を購入していただいたお客様に、その洋服を着て写真を撮っていただく、あるいは、フォトスタジオで我々の洋服をレンタルしていただき、写真を撮った後に購入していただくという、既存事業とのシナジーも見込んでおります。また、ライセンスビジネスの強化を図るため、当社の資産である既存のキャラクターの活性化を意図したコンテンツビジネスも検討しております。
(4)経営環境の認識
子供服事業を営む当社を取り巻く経営環境は、国内市場においては、少子高齢化・人口減少の進行、消費税増税等による消費マインドの縮小、消費ニーズの多様化、外資系企業の参入、競争の激化などにより厳しい状況が続くものと思われます。
また生産地の大半を占める中国においては、人件費の高騰、為替変動による調達価格の高騰、カントリーリスクなど、業界全体を取り巻く環境も厳しい状況が続くものと思われます。
このような状況の下、当社は今後の事業展開における対処すべき特に重要な課題を下記のように認識し、解決に向けて取り組んでおります。
(5)事業上の対処すべき課題と具体的な取り組み状況
① 既存ブランドの停滞
当社は、新生児から中学生までの年代ごとに多様なブランドを展開しております。しかしながら、変化の激しい消費ニーズ・トレンドへの対応を誤った場合、ブランドが停滞することが想定されるため、既存ブランドの活性化と新規ブランドの投入を進めております。
具体的な取り組みは以下のとおりであります。
a 店頭において消費者動向、競合他社の動向を把握し、子供市場全体の消費ニーズ・トレンドを勘案し、商材の改廃をスピーディに進めております。
b ブランドポートフォリオマネジメントを徹底することで、攻めるブランド・撤退検討のブランドを明確にし、経営資源を最適に投下いたします。
c 市況や顧客動向などから新たなブランドを開発あるいはライセンスを獲得することで、市場へ投入いたします。
② 既存販売チャネルの停滞
当社は、百貨店、ショッピングセンター、アウトレットモール、eコマースとマルチチャネルで事業を営んでおりますが、小売業態は好不調の波が激しく、当社が出店している商業施設の業績に多分に影響を受けることが想定されるため、既存販売チャネルの活性化と新規店舗の拡大を進めております。
具体的な取り組みは以下のとおりであります。
a 既存店舗においては、接客力を強化しブランドロイヤリティを高める施策を実施いたします。また、展開ブランドの改廃などを行い、適正なブランドポートフォリオを実施いたします。
b 成長する業態への出店を積極的に実施するため、専門部署(店舗開発部)において全国の商業施設の情報の把握を強化し、さらなる出店攻勢を行ってまいります。
③ eコマースにおける取組み
成長著しいeコマース市場では、子供服カテゴリーも近年拡大傾向であります。しかし、テクノロジーの進化が著しい市場であるため、決済方法やサービスなど新しい取り組みに乗り遅れた場合、停滞することが想定され、当社では、eコマース戦略の一環として、次の取り組みを行ってまいります。
a 消費者が選びやすく、購入しやすいサイト構築を実現いたします。とりわけ、スマートフォンからの購入者が増加しているため、スマートフォン向けサイトの利便性を高めてまいります。
b 消費者の購買履歴などから最適な商品提案を行い、ポイント特典など顧客サービスを充実することで、優良顧客の取り込みを進めてまいります。
c eコマースと店舗の顧客IDを統合し、顧客データの活用強化を図ります。その結果、eコマースと店舗の在庫一元化を図り、最適な顧客リレーションを実現するため、オムニチャネル化を進めてまいります。
④ アジア市場への進出
アジア近隣諸国における子供人口の増加は顕著であり、少子高齢化による国内市場規模の縮小傾向を勘案した場合、アジア近隣諸国への進出は、当社の企業価値向上のために必要不可欠なファクターであると考えております。しかしながら、現地の商慣習、消費トレンドへの対応を誤ると事業展開が停滞することが想定されるため当社では、次の取り組みを行ってまいります。
a 年間の出生数が日本の約18倍という子供向けビジネスとしての大きな市場である中国への進出を再検討しております。以前進出した際は、現地百貨店での店舗販売を行っておりましたが、商慣習や物流面において苦戦をした結果、撤退しております。今回の再進出に際しては、中国最大のeコマースサイトである「Tモール」へ進出するため、現地のビジネスパートナーとライセンス契約を締結いたしました。平成30年8月には、現地のビジネスパートナーが「Tモール」へ出店いたします。当社は既存ブランド(特定のブランドから)の企画・デザイン・生産発注業務を行い、ビジネスパートナーがeコマースでの販売・広告宣伝を担う形態で事業を進めてまいります。さしあたり、中国市場の嗜好性の調査や認知度拡大のため、中国本土の「Tモール」で取扱うブランド以外の商品を、中国越境EC(注)において取扱う予定であります。その結果を踏まえ、売上が期待できるブランドを中国本国での「Tモール」へ追加投入していきたいと考えております。
(注)中国人消費者がインターネットを通じて海外製の商品を購入し、その商品が国外から配送されているeコマースの形態を表します。
b インバウンド需要への対応を強化いたします。昨今、外国人観光客が増加しており、家族旅行者も多く見受けられます。このような旅行者への対応を強化するため、インバウンド向けのプロモーションなどの施策を強化いたします。
c 他アジア近隣諸国へのリサーチを開始いたします。市場トレンド、消費ニーズ、また現地パートナーについて調査を進め、進出計画の詳細化を進めてまいります。
⑤ 原産国のカントリーリスク
当社が販売する商品の大半は、原産国を中国としておりますが、主に繊維専門商社等から円建てで仕入れております。従いまして、直接カントリーリスクを受けにくい取引形態でありますが、今後において、円安の進行や中国における人件費等がさらに高騰した場合、価格面において中国産の商品を仕入れるメリットが低下することや、さらには、政治的な不安定要素の存在も否めません。今後において原価率上昇による収益性の低下を回避するため、また、原産国の政治的要因によるリスクを回避するために、当社では次の取組を行ってまいります。
a 東南アジアを原産国とする商品の仕入を視野にいれ、価格、技術力及び品質の安全性等の条件を勘案した上で、新たな生産工場の開拓を行ってまいります。
b 直接貿易による原価の低減化と、為替変動リスクヘッジ、さらには、そのための人材の育成に取り組んでまいります。
⑥ 人材の確保と育成
子供服事業では、商品知識及び顧客ニーズを的確に把握した上で商品を提案する能力が必要であります。また店頭での子供とのコミュニケーション能力も当社としては必要な能力と定義しております。そのため、事業拡大のためには優秀な人材の確保と育成は、必須であります。しかしながら昨今の人材売り手市場などの環境から、優秀な人材を継続的に確保することが困難になる可能性があるため、当社では、次の取り組みを行ってまいります。
a 人材確保のため、新卒採用を積極的に実施しております。当社の商品を幼少時に購入していた学生が多いこともあり、新卒の応募は好調であります。今後はさらに優秀な人材を確保するために、企業ブランド価値向上のためのホームページの刷新、インターンシップの活用、地方での企業説明会を行ってまいります。
b 接客研修などを定期的に実施することで、社員の育成に努めてまいります。