有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2018/09/18 15:00
【資料】
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【項目】
93項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当社は、以下の経営理念に従い、仲介・コンサルティングから土地購入・開発まで、土地活用における最適なソリューションを提供する総合不動産ディベロッパーとして、商品及びサービスを提供してまいります。
①不動産ビジネスにインテリジェンスを吹き込む
②お客様に選んでいただける商品ブランドの確立
③社員のチャレンジスピリットを尊重した「完全成果主義」の実現
④パートナーとのWIN-WINの関係であり続け、高い信用力を保つ
現在のわが国経済は、雇用・所得環境の改善が続く中で、政府の経済政策と日銀の金融緩和政策を背景に、緩やかな回復基調が続いており、不動産業界においても、概ね堅調に推移し、市場の投資意欲は極めて底堅く、マンション・オフィスビル・商業店舗・ホテル・物流施設等、ほぼ全てのセクターにおいて活発な取引が継続いたしております。一方で、大都市圏における地価上昇や建築コストの高止まり等に加え、首都圏中古マンションの在庫件数も増加傾向にあり、リテール市場は活況ながらも慎重な見方が出始めており、先行きは不透明といえます。
そこで、今後当社と致しましては、既存の事業はもとより既存不動産事業とシナジー効果のある事業の多角化を行うため、「収縮と転換」、「多極化」及び「多角化推進」の3つの基本戦略テーマを定め、以下の施策により強固な経営基盤を築き、事業の拡大に努めてまいります。
・事業規模拡大を牽引
相続対策商品としての「LEGALAND」開発推進によるマーケットニーズの取り込み
■「LEGALAND」を相続対策商品のマーケットリーダーとして成長させる
■東京都心10区、ターミナル駅徒歩10分などの重点エリアについては積極的に物件を仕入れ、事業の収益性の向上を図る
■富裕層をターゲットとするビジネスモデルを本格化する
■大阪と東京の2大都市を事業の中心としながら、マーケットエリアを限定せず、その他都市圏においても、人口増減や不動産需給などのマーケット動向に注視して、優良物件を購入することにより事業規模の拡大を図る。
・持続的な成長の実現
持続的な不動産情報取得に向けた自社ネットワークの構築
■情報提供者と事業利益を分配するリーガルパートナー制度の推進により、不動産情報保有者を囲い込み継続的かつ優先的な不動産情報取得を図る
・安定収益の確保、不動産ソリューション事業・賃貸事業の収益性向上、持続的な成長の実現
不動産サービス(管理・役務提供)を軸とした持続・循環的な収益機会の構築
■不動産管理・役務提供サービスの開始により物件を接点とする持続的な収益機会を構築

■介護施設のオペレーションサービスにより、不動産事業との相乗効果を目指す
■不動産売買、賃貸、仲介だけでなく、既存の不動産事業とシナジー効果のある新規事業を行い、安定した経営基盤を築く。既に開始している介護事業に加え、平成30年7月期にプロパティ・マネジメント事業を開始し、その後もホテル運営事業など、さらなる事業の多角化を進め、事業の拡大と安定化を図る。
このような経営方針の下、当社が対処すべき主な課題は、以下の項目と認識しております。
(1) 内部管理体制の強化
当社事業の継続的な発展のためには、コーポレート・ガバナンス機能の強化は重要な課題であり、財務報告の信頼性を確保するため、内部統制システムの適切な運用が重要であると認識しております。コーポレート・ガバナンスに関しては、ステークホルダーに対して経営の適正性や健全性を確保しつつも、更に効率化された組織体制の構築に向けて内部管理体制の強化に取り組んでまいります。
(2) コンプライアンス体制の強化
当社は、法令、定款及び社内規程等の遵守は勿論のこと、日々の業務を適正かつ確実に遂行しており、クリーンで誠実な姿勢を企業行動の基本として、事故やトラブルを未然に防止する取り組みを強化してまいります。
今後、更なる事業拡大と企業価値の向上に向けて、引き続き日常業務における関連法令の遵守を徹底するとともに、リスク・コンプライアンス委員会の定期的開催、各種取引の健全性の確保、情報の共有化、再発防止策の策定などを行い、また、社内啓蒙活動を実施し、厳正な管理による社会の「公器」としての責任を重視した透明性のある管理体制の構築を図ってまいります。
(3) 仕入力及び販売力の増強
当社は、不動産を取り巻く環境の変化に柔軟に対応しながら、優良な物件を仕入れるため、数多くの物件情報を収集できるネットワークを一層強化し、不動産鑑定及び収益力のある物件を発掘する目利きを活かして、個人富裕層のニーズに合致した物件の仕入れを積極的に行ってまいります。
また、物件ごとにソフト・ハードの両面において適切なバリューアップを施すことで、資産価値を高める一方、最適な投資利回りを確保し、投資対象として魅力のある物件を提供できるよう努めております。
(4) 収益構造の転換
収益不動産の販売に依存する収益モデルは、少なからず市況に影響を受けるビジネスモデルであるため、当該収益構造に過度に依存することはリスクが高いと考えております。
そのため、収益不動産の売却益に加えて、収益不動産残高の拡大を通して賃料収入の増加を図り、収益基盤の安定化を実現することが当社にとって最重要課題であると位置づけております。
収益基盤の安定化を図るためには、収益不動産残高の積み上げを積極的に進めるなかで、短期/中期販売用及び長期保有用収益不動産の保有割合のバランスを取りながら、それらの収益不動産からの賃料収入を増加させることが有効な手段であります。
このような収益安定化モデルへの転換を図ることによって、市況の影響に左右されにくい、安定した収益基盤を早期に確立できるよう、引き続き取り組んでまいります。
(5) 財務体質の健全化
当社は、これまで事業・業容の拡大に際して、事業用地の取得及び運転資金を主として金融機関からの借入れによって賄ってきたため、平成29年7月期において自己資本比率が3.8%と低く、有利子負債比率も2,334.9%と高い水準となっております。このため、景気の変動による業績悪化や金利動向に大きな影響を受ける財務構造となっており、今後の企業間競争に耐えうるべく財務体質の改善が急務であると認識しております。
そのため、今後の経営の安定化のためにも、利益の蓄積及び直接金融による多様な調達手法を活用し株主資本を充実すること及び仕入れと売却のバランスを意識し、厳格な管理による在庫コントロールをさらに徹底し、営業キャッシュ・フローの改善を図ってまいります。
また、今後も不動産賃貸事業におけるストックビジネスを強化し、急激な外部環境の変化等に耐えうるよう安定的な収益性の確保に努めてまいります。
(有利子負債比率=有利子負債額÷自己資本×100)
(6) 安定した資金調達の確保
当社が掲げる経営戦略を実現するためには、従来にも増して、収益不動産残高の積み増しを進めるにあたり、物件の仕入資金の調達力が必要不可欠であります。
市況の変化に大きく左右されることなく安定した資金調達を行うために、物件単位の資金調達に加えて、フリーキャッシュである手元資金の増強が有効であると認識しております。
そのためには、金融機関からの借入のみならず、多様な資金調達手法を検討していくことが重要であると考えております。
(7) 人材の確保と育成
上記の課題を克服するためには、優秀な人材を継続的に確保し、育成することが最も重要な課題として認識しております。
そのために当社では、従業員のプロフェッショナル化として不動産運用に係る従業員に対し不動産に関する専門知識の習得を求めるだけでなく、すべての業務に携わる従業員に対し、自己研鑽を重ね、高い専門性を身に着けること、自律的に行動していくことを求めております。
これにより、従業員個々の能力向上を図り、当社の人材レベルの向上、ひいてはサービスの質向上、維持に繋げていきたいと考えております。
その実現には、人材に対する投資が必要不可欠であると考え、毎年策定する人員計画に教育研修を盛り込み、継続して人材のレベルアップに取り組んでおります。
また併せて、経営理念やコンプライアンスに基づいた業務運営体制の徹底のため、リスク認識などに対する全社員の意識向上にも努めております。