有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2018/11/14 15:00
【資料】
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【項目】
90項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
「ビッグデータ・AIソリューション事業」を推進する当社は、「新しい価値を創造し、変化をもたらす次世代のチャレンジャー」を経営ビジョンとして定めており、企業の行動規範となる「Compliance」と「CSR」や、当社の強みである「CoreCompetence」を武器として、新しい価値を見出す創造性を大切にする経営方針(TripleC+C)を定めています。
経営方針[TripleC+C]
① Compliance法令遵守だけでなく、社会人としての倫理観・正義・マナーの社会的規範などの遵守を求めます。
② CSR本業を通じて社会に貢献していく。顧客満足の向上を目指し、ソリューションを競争力ある価値の高いものにします。
③ CoreCompetence①②で培った企業土壌を柱として、自社を特徴づける3つの特長「技術」・「人材」・「ネットワーク」を強化します。
④ Creating New Values当社の強みを武器として、新しい価値を見出す創造性を大切に事業を推進します。


創業間もない企業ですが、競争力を高め、さらなる事業拡大を進めていく所存であります。
(目標とする経営指標)
当社は平成31年3月期を初年度とする三ヵ年の中期経営計画を策定しており、最終年度の平成33年3月期については、売上高20億円、営業利益3億円を目指します。
特に、持続的に成長できる収益基盤を確立し、高付加価値のビジネス推進を狙いとして、以下の二つを重要指標として掲げております。
① 成長性の高い会社
対前年売上高成長率 20%以上(年平均成長率25%以上)を目指す
② 収益性の高い会社
売上高営業利益率 12%以上、平成33年3月期 15%を目指す
(中長期的な経営戦略)
経営ビジョン実現に向けて、成長戦略を策定し、飛躍的な成長を目指します。
当社は経営戦略の方針として、知識集約型ビジネス(AI製品等によるロイヤリティサービスを代表とするストック型サービス)と労働集約型ビジネス(ビッグデータ・AIソリューションサービスを代表とするフロー型サービス)の相乗効果が起きるようビジネスを目指します。設立以来、常に最先端の解析技術を駆使したサービスを提供することを重要戦略として位置付けており、様々な業種・業界で得られた経験を通じて、新たなプロダクト構想に向けたアイデア抽出を進めており、あるいはプロジェクトの効率化運営に活かすこととしています。
図:経営戦略イメージ

(知識集約型ビジネス)
当社は顧客・協業先と進めてきた数多くのプロジェクトを通じ、解析技術等のノウハウをライブラリーとして蓄積し、自社AI製品「scorobo」やAIモジュール充実を図っており、協業先と共同でサービス展開を進めていきます。また、先進のビッグデータ活用技術やAI技術を持った国内外企業の調査を進めており、当該企業が保有するサービス及びプロダクトを取り込んだソリューション展開を図っていくことで、ビジネス拡大を図ってまいります。知識集約型ビジネスは、当社の将来基盤を築き上げる成長事業として最も注力していきます。
(労働集約型ビジネス)
現在の中核ビジネスである労働集約型ビジネスは、優先的に取引獲得を進める企業を重点強化企業として指定し、全社一丸となった取組を進めることとしています。案件の選択と集中を進めることで営業効率を高め、受注金額の高い大型案件の獲得を目指します。またコンサルティングメニューを強化し、中長期にわたり顧客への経営支援を行う体制を構築し、安定的な収益基盤として強化していきます。さらに顧客と共にサービス展開を実施していく事業参加型案件の獲得とそれを担う人材の獲得及び育成による生産性向上策を進めていきます。
また蓄積したライブラリーを活用したプロジェクト運営の効率化、また自社開発した解析用AIエンジンの活用を進め、プロジェクト毎の工数を短縮し、利益率の向上を図ってまいります。
図:今後の収益拡大のイメージ

当社はAI製品やAIモジュールの提供開始時において、顧客企業より初期設定費としてコンサルフィーを受領し、その後、顧客から継続的な使用料や運用保守料を受領するサービスの形態をストック型サービスとフロー型サービスの融合と考えており、この形態のビジネスを多くの顧客企業に展開することで収益の拡大を図ってまいります。
(2) 経営環境
情報サービス業界におきましては、企業収益の改善を背景に大企業を中心にIT投資を推進する動きが活発化しております。また、国境・地域を越えた企業間競争が激しさを増すなか、大手企業を中心にAI・IoT分野及びビッグデータの活用に向けての投資が大きく増えるといわれており、当社が事業を営むビジネスアナリティクス市場・AI・ビッグデータ市場は、今後、大きく成長することが予想されています。
先端解析技術革新の潮流を背景に、当社の事業領域である国内AIビジネス市場は急速な成長が見込まれ、当社の経営環境には追い風が吹いていると認識しております。今後も当社のデータサイエンティストによるサービスレベルの高さ、またAI製品「scorobo」の性能への注目がより一層高まるように努め、事業拡大に注力してまいります。
AI(人工知能)ビジネス国内市場予測について
2016年度の国内AI(人工知能)ビジネス市場規模は2,704億円でした。AI関連技術で多くの実証実験がスタートし、2017年度はAIの本格運用に向けた導入期となりました。2019年度から2021年度にかけて市場は成長期を迎え、AI関連技術は企業経営に不可欠なIT技術として浸透していくとみられており、2021年度の市場規模は1兆1,030億円、2030年度には2兆250億円になると予測されます。サービスは、SI(システムインテグレーション)を中心に市場が拡大するとみられます。AI実装に向けたコンサルティングや導入検証を経て、AI環境の本格的な構築が進むとみられます。


※出典:株式会社富士キメラ総研「2018 人工知能ビジネス総調査まとまる」(2018年1月公表)
国内ビッグデータ/アナリティクスソフトウェア市場予測について
2017年の市場規模は2,517億7,600万円となり、前年比成長率9.4%の高成長となりました。データウェアハウスなどのプラットフォーム分野から、CRMなどのアプリケーション分野までパブリッククラウドサービスの利用が急速に拡大しました。今後、企業のデジタルトランスフォーメーション実現にむけたIT投資が加速することから、市場規模は年間平均成長率8.6%で成長し、2022年に3,800億2,400万円に達すると予測しています。


※出典:IDC Japan株式会社 国内ビッグデータ/アナリティクスソフトウェア市場予測2017年~2021年
(2018年8月公表)
(3) 対処すべき課題
① 売上拡大について
昨今のビッグデータ、AIの活用が期待される中において、データ解析市場はさらなる成長を続けるものと予想されます。このような中、当社はビッグデータ活用技術とAI技術を駆使して、“大型及び中長期案件の獲得”を営業基本方針として定めています。売上拡大にむけては、顧客と共にサービス展開を実施していく事業参加型案件の獲得と、それらを担う人材の獲得及び育成による生産性向上策を進めています。
解析技術を使い、課題テーマの分析結果を提供するだけでは、顧客企業の経営課題を本質的に解決することはできないことが多いため、当社人材によるコンサルティングメニューを強化させ、データ経営コンサルティング及びデータ活用人材教育及び組織組成支援、デジタル戦略システム構築等、中長期にわたり経営支援を行うことで収益基盤の強化を図ってまいります。
② 利益率向上にむけて
データ解析支援やデジタル戦略システム構築においては、自社社員に限定することなく、協力会社や海外人材などの外部のリソースを有効活用することで、プロジェクト採算性の向上に努めています。また、これまでに蓄積した様々な業界・業種のライブラリーを活かし、プロジェクト運営の効率化を進めております。
今後、当社は成長戦略の方針として、知識集約型ビジネス(ストック型サービス)の拡充を図り、市場拡大を図ってまいります。具体的には、当社独自のAI製品「scorobo」や業務特有に応じたAIモジュール充実を図ることや「SAS」「Netbase」をはじめとする他社ビジネスアナリティクス製品やAI製品の活用により、ロイヤリティサービスの契約先を増やし、これらの利用料収入の増加により、利益率の向上を図ってまいります。
③ 新規事業展開について
当社のサービスにおいて蓄積された解析実績や保有する技術は、様々な業界での応用が可能で、昨今AI技術の利用用途が拡大していく中、様々な業界に当社の応用技術及び製品を普及させていきたいと考えております。この事業機会は今後の当社の成長戦略の基軸になるものであり、そのためには当社保有の技術が優位性をもって発揮できる業界に対して積極的に研究開発を推進していく方針です。
当社の成長を促進できる領域を定め、AI製品等のロイヤリティサービスによるストックビジネスとして収益化していく計画を進めています。そのために効果的な営業活動と更なるマーケティング施策を実施し、それぞれを段階的に新たな柱としていきます。当社は中核となる解析実績を蓄積したライブラリーをさらに充実させていくことで、ビジネスチャンス拡大を図っていく方針です。
④ 営業力の強化
・協業先の更なる拡大による営業体制の強化
当社が事業拡大を進めていくにあたっては、その他の関係会社である株式会社テクノスジャパンとのシナジーを生むことに加え、協業先(日本マイクロソフト株式会社・SAS Institute Japan 株式会社・エヌビディア合同会社等)とのビジネス連携が欠かせません。協業先の拡大に伴う販売チャネル拡充及び営業活動により、より多くの新規顧客の獲得と既存案件を深耕することで、事業規模の大幅な拡大を図ってまいります。
・認知度の向上
当社が今後も成長を続けていく上では、当社の認知度を向上させることが必要不可欠であると考えています。国内各地のイベントやセミナーへの参加、WEB広告をはじめとした露出等、専門メディアと連携した販売促進活動を実施していく方針です。
⑤ 技術力の強化
・人員の拡充と組織の強化
ビッグデータ・AIソリューションサービスにおいては、複数の大規模プロジェクトに対応するためにデータサイエンス部門の人員拡充及びそれを支えるエンジニアリング部門の体制強化が重要課題となっています。当社は、有能なデータサイエンティスト及びエンジニアの採用を強化しつつ、プロジェクトに合致した技術を有している協力企業も有効に活用していく方針です。
・研究開発部門の強化
当社は創業以来、研究開発活動により先進的な技術を獲得していく方針を貫いていることを他社との差別化の根幹であると考え、国内及び米国のシリコンバレーを始めとする欧米各国にて調査研究活動に注力してまいりました。今後も新しい分野において積極的に研究開発を行い、新サービスを創出し、研究開発に関わる人員及び体制を強化してまいります。
・人材育成等について
当社が属するIT業界は、常に革新的な技術・サービスが求められるものであり、技術革新に速やかに対応しながら、より先進的な技術を創出する必要があります。そのために、高度かつ専門的な知識・技術を有する人材の教育を行っています。また新規事業領域への展開にむけて業界動向に精通した専門知識及びスキルを有した人材を通じ、業界の慣例・知識の習得及び教育を進めてまいります。
⑥ 円滑な組織運営
当社が提供するサービスは、競合他社も多く、顧客企業のニーズも多様化しています。これらのニーズにいち早く対応するためには、研究開発資源を集中させ、短期間で新技術取得や機能開発を進める必要があります。そのためにも、フレキシブルな人員配置を行える体制を構築し、競合先と渡り合える製品・サービスの開発を行ってまいります。
さらに、当社の業績面での拡大成長に直接寄与できる体制の構築と強化を進めてまいります。
⑦ 組織マネジメント
・情報入手体制の整備
ビッグデータ・AI市場においては、技術革新のスピードが速く、それに基づく新サービスが多く生まれています。これら最新の情報を的確に察知し、迅速な意思決定を行える体制を整えることで、潮流に合わせることが当社の成長に繋がります。これを実現するために、国内にとどまらず海外から最新情報を確保する体制を強化してまいります。
・内部管理体制の強化
当社は成長段階にあり、業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制強化は重要な課題であります。当社の事業の成長、事業規模拡大に伴い、求められる内部管理機能の範囲が拡大し、専門的スキル及び知見も求められます。当社は、内部監査による定期的モニタリングの実施と監査役や監査法人との緊張感をもち、良好な意思疎通を図り、経営の健全性を確保しつつも、ベンチャー企業としての俊敏さも兼ね備えた組織体制構築に取り組んでまいります。