有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/11/15 15:00
【資料】
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【項目】
80項目
下記の文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の分析
第5期事業年度(自 2018年1月1日 至 2018年12月31日)
第5期事業年度における世界経済は、2017年までの堅調な経済成長の影響を受けて比較的安定していましたが、トランプ米大統領の米国第一主義外交、東シナ海問題、北朝鮮問題などに加え、後半は中国経済の成長鈍化や英国のEU離脱交渉難航なども指摘されるなど徐々に地政学的リスクが増し、継続的な世界経済の成長は不透明な状況です。
我が国の経済も、企業収益、個人消費、設備投資の回復、雇用・所得環境の改善等により緩やかな回復基調が続いておりましたが、国内外の政治・経済動向の不確実性や地政学リスクの拡大、金融資本市場の変動の懸念、欧州の政情不安、米国の政治・経済のリスク、米中貿易摩擦の懸念などもあり景気回復の制約要因となっております。2018年の日経平均株価は20,014円と7年ぶりに前年割れし、2019年の経済の先行きに不安を残す形となりました。
このような状況の中で、インターネット関連事業領域では、仮想通貨取引所からの複数回にわたる流出事件があったものの、スマートホームデバイスの普及拡大、動画メディアTikTokの急激な成長に加えてVチューバーなど新たな領域の拡大、サブスクリプションモデルのビジネスやQRコード決済・バーコード決済が普及し、「デジタルエコノミー新時代」(『インターネット白書2018』より)がより一層進んだ1年でした。金融、保険、農業、医療、不動産、交通といった既存産業とインターネットやビッグデータ、AIという最新技術を組み合わせることで新たなビジネスや価値を創出しようとする「〇〇×Tech」の波はますます加速し、既存企業のビジネスの根幹を変え始めているところであり、協業/競合相手が変化する構造改革が至る所で生じています。このような流れは、今後も様々なサービスの創出と市場の拡大と共に継続すると見込まれます。
当社事業においては、当事業年度後半に調達した資金を基に、開発体制及び広告宣伝活動の強化に継続して取組み、初の単月GMV2億円超を達成しました。
サービスについては、①ホストダッシュボード大規模リニューアル、②決済手段にJCBカードを追加、③株式会社ラクーンフィナンシャルが提供する「Paid」との連携による法人の「請求書後払い」の実現、④株式会社Paidyが提供する「Paidy」導入による個人の後払いの実現、⑤サービスのプラットフォーム化など、数多くの機能改善や決済手段の多様化等を行いました。
また、当社が加盟する(一社)シェアリングエコノミー協会は、全国の自治体にシェアリングエコノミーを推進してもらうシェアリングシティ認定(30自治体)や、官民共同による規制の試金石となるシェアリングエコノミー認証制度(19社20サービス)を実施し、さらに3回目となったシェア経済サミットを主催しました。当社は、このシェア経済サミットの企画運営を担うなど、(一社)シェアリングエコノミー協会の活動への協力を通じて市場全体の活性化にも取組みました。
さらに、「インドア花見」、「うちスタ」キャンペーンが奏功し、民放各社含めたメディアに多数取り上げられ、新しい文化・体験の創出に成功しました。8月には福岡県でTVCMを放映し、11月から12月にかけて首都圏・関西圏で本格的なTVCMを放映するなど、PRやマーケティング活動でも大きな成果を収めることができました。
加えて、社内体制として、2017年末の取締役会設置に加え、2018年3月には監査役会を設置してガバナンス体制を強化させるとともに、カスタマーサクセス部門では生産性向上によるさらなる業務効率化を推進しました。
以上の結果、当事業年度の売上高は578,247千円(前事業年度比47.3%増)、営業損失は268,659千円(前事業年度は営業損失147,645千円)、経常損失は271,923千円(前事業年度は経常損失148,188千円)、当期純損失は274,213千円(前事業年度は当期純損失148,598千円)となりました。
第6期第3四半期累計期間(自 2019年1月1日 至 2019年9月30日)
第6期第3四半期累計期間におけるわが国経済は、企業収益や雇用・所得環境の改善などを背景として緩やかに回復してまいりましたが、2019年10月の消費税引き上げや米中貿易摩擦をはじめとする海外の政治情勢の影響等により、景気の先行きについては依然として不透明な状況が続いております。
このような状況の中、当社は、「世界中のあらゆるスペースをシェアできるプラットフォームを創る」というミッションの下、貸切空間で仲間と一緒にスポーツ観戦等を楽しむ「プライベートビューイング」を提案したメディアへの露出や、デジタルマーケティングを中心とした広告宣伝投資を積極的に行いました。また、今後のサービスの拡充を見据え、組織体制強化のために人材採用に注力いたしました。
以上の結果、当第3四半期累計期間における売上高は550,995千円、営業利益は6,869千円、経常利益は5,204千円、四半期純利益は3,485千円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
第5期事業年度(自 2018年1月1日 至 2018年12月31日)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」)は、前事業年度末に比べ610,384千円増の761,318千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、使用した資金は、278,964千円(前事業年度は153,698千円の使用)となりました。これは、税引前当期純損失271,923千円の計上によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は、7,295千円(前事業年度は1,502千円の使用)となりました。これは、主に敷金及び保証金の差入による支出4,628千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、得られた資金は、896,644千円(前事業年度は6,421千円の使用)となりました。これは、主に株式の発行による収入741,811千円、短期借入金の借入による収入190,000千円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
(b) 受注実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性質上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
(c) 販売実績
当事業年度の販売実績は次のとおりであります。なお、当社はスペースマーケット事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
サービスの名称第5期事業年度
(自 2018年1月1日
至 2018年12月31日)
第6期第3四半期累計期間
(自 2019年1月1日
至 2019年9月30日)
販売高(千円)前年同期比(%)販売高(千円)
プラットフォーム412,425254.33479,502
法人向けソリューション・他165,82271.9571,492
合計578,247147.27550,995

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
3.当社は単一セグメントであるため、サービスごとに記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を合理的に勘案し判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成にあたって採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況」に記載しております。
② 財政状態の分析
第5期事業年度(自 2018年1月1日 至 2018年12月31日)
(資産の部)
当事業年度末における総資産は、当期の資金調達による現金及び預金の増加を主因とし、前事業年度末比801,181千円増の1,083,453千円となりました。
(負債の部)
当事業年度末における負債合計は、未払金、短期借入金及び預り金の増加を主因とし、前事業年度末比332,503千円増の531,618千円となりました。
(純資産の部)
当事業年度末における純資産は、資本金及び資本剰余金の増加を主因とし、前事業年度末比468,678千円増の551,835千円となりました。
第6期第3四半期累計期間(自 2019年1月1日 至 2019年9月30日)
(資産の部)
当第3四半期会計期間末における資産合計は、デジタルマーケティングを中心とした広告投資に係る未払金及びスペース掲載ホストへの未払金の支払いが行われたこと、サービスの伸長による決済ボリューム増加に伴う未収入金残高の増加を主要因とし、前事業年度末比56,020千円減の1,027,433千円となりました。
(負債の部)
当第3四半期会計期間末における負債合計は大規模マーケティング投資及びスペース掲載ホストへの支払いによる未払金の減少、並びに借入金の返済が進み短期借入金が減少したことを主要因とし、前事業年度末比59,505千円減の472,112千円となりました。
(純資産の部)
当第3四半期会計期間末における純資産合計は当第3四半期累計期間において四半期純利益3,485千円を計上したことを主要因とし、前事業年度末比3,485千円増の555,320千円となりました。
③ 経営成績の分析
第5期事業年度(自 2018年1月1日 至 2018年12月31日)
(売上高)
売上高は前事業年度比47.3%増の578,247千円(前事業年度は392,638千円)となりました。これは順調な市場及び顧客層の拡大により、当社サービス「スペースマーケット」に係る売上高が増加したことが主因です。
(売上原価、売上総利益)
売上原価は同9.0%増の232,372千円(同213,249千円)となりました。これは主に、開発人員の増加等に伴う人件費の増加及び売上高の増加に伴うサーバーに係る費用の増加によるものであります。以上の結果、売上総利益は同92.8%増の345,875千円(同179,388千円)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損益)
販売費及び一般管理費は同87.9%増の614,534千円(同327,034千円)となりました。これは主に、支払手数料、マーケティング費用の増加によるものであります。以上の結果、営業損失は268,659千円(前事業年度は営業損失147,645千円)となりました。
(経常損益)
営業外収益は主に受取利息の計上により3千円、営業外費用は主に支払利息の計上及び新株発行費の計上により3,267千円となりました。以上の結果、経常損失は271,923千円(前事業年度は経常損失148,188千円)となりました。
(当期純損益)
以上の結果、当期純損失は274,213千円(前事業年度は当期純損失148,598千円)となりました。
第6期第3四半期累計期間(自 2019年1月1日 至 2019年9月30日)
(売上高)
売上高は550,995千円となりました。順調な市場及び顧客層の拡大の下、当社サービス「スペースマーケット」に係る売上高は前年同期比で増加基調にあります。
(売上原価、売上総利益)
売上原価は156,789千円となりました。売上原価の主な項目は開発人員等の人件費、サーバーに係る費用及び法人向けソリューションサービスに係る費用であります。第6期第3四半期累計期間の金額はそれぞれ85,931千円(第1四半期会計期間:28,275千円、第2四半期会計期間:28,404千円、第3四半期会計期間:29,251千円)、21,557千円(第1四半期会計期間:8,214千円、第2四半期会計期間:6,059千円、第3四半期会計期間:7,283千円、)、37,363千円(第1四半期会計期間:8,065千円、第2四半期会計期間:16,579千円、第3四半期会計期間:12,719千円)、上記以外の売上原価は11,937千円(第1四半期会計期間:3,792千円、第2四半期会計期間:3,952千円、第3四半期会計期間:4,192千円)となりました。
以上の結果、売上総利益は394,205千円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損益)
販売費及び一般管理費は387,335千円となりました。販売費及び一般管理費の主な項目は、支払手数料、広告宣伝費・販売促進費、人件費であります。第6期第3四半期累計期間の金額はそれぞれ80,583千円(第1四半期会計期間:25,512千円、第2四半期会計期間:26,043千円、第3四半期会計期間:29,027千円)、78,046千円(第1四半期会計期間:30,777千円、第2四半期会計期間:19,336千円、第3四半期会計期間:27,932千円)、152,507千円(第1四半期会計期間:51,544千円、第2四半期会計期間:51,780千円、第3四半期会計期間:49,182千円)、上記以外の販売費及び一般管理費の項目は合計76,199千円(第1四半期会計期間:26,770千円、第2四半期会計期間:22,619千円、第3四半期会計期間:26,808千円)となりました。
以上の結果、営業利益は6,869千円となりました。
(経常損益)
営業外収益は主に受取利息の計上により8千円、営業外費用は主に支払利息の計上により1,674千円となりました。以上の結果、経常利益は5,204千円となりました。
(当期純損益)
以上の結果、当期純利益は3,485千円となりました。
④ キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社は常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制の強化、優秀な人材の確保、市場のニーズにあったサービスの展開等により、当社の経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。
⑥ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の運転資金需要のうち主なものには、人件費、支払手数料、広告宣伝費等があります。運転資金は、主として内部資金及び借入により調達しております。
当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は761,318千円であり、当社の事業を推進していく上で十分な流動性を確保していると考えております。
⑦ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社はプラットフォームとしての価値を計る指標としてGMVを重視した経営を行っており、GMVをさらに因数分解し、利用スペース数、利用スペースあたりのGMV等の客観的な指標を重要な経営指標と位置付けております。当事業年度においては、「スペースマーケット」のプラットフォーム上の利用スペース数が年間累計で21.4千スペースに達し、第6期事業年度第3四半期累計期間の利用スペース数も継続して増加した結果、売上高も堅調に推移したことから、目標の達成状況に関して一定の評価をしておりますが、今後も株主価値向上のための経営施策を実施してまいります。
重視する指標の推移
期間GMV
(単位:千円)
利用スペース数
(単位:千スペース)
利用スペースあたりのGMV
(単位:千円)
2017年12月期518,0428.560.7
2018年12月期1,386,47821.464.7
2019年12月期
第1四半期会計期間520,9637.965.2
第2四半期会計期間521,7888.362.5
第3四半期会計期間592,5778.966.2

(注)1.GMVには消費税等は含まれておりません。
2.利用スペース数、利用スペースあたりのGMVは小数第2位を切り捨てしております。