有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/08/20 15:01
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135項目
(1) 経営成績等の状況の概要
第21期事業年度および第22期第3四半期累計期間における当社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
第21期事業年度(自 2018年10月1日 至 2019年9月30日)
当事業年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善が見られるものの、地政学的リスクの高まり等の影響により、先行きが懸念される状態が続いております。米国において雇用環境や個人消費は堅調に推移する一方で、米中貿易摩擦の長期化、英国のEU離脱問題等の影響により世界経済の先行きは依然として不透明な状態が続いております。
当社を取り巻く事業環境において、プラットフォーム事業が属するデジタルコンテンツ市場につきましては、「令和元年版情報通信白書」(総務省)によると直近の市場規模は1兆935億円(前期比11.5%増)となりました。また当社のメディア広告事業が属するインターネット広告市場につきましては「2018年日本の広告費」(株式会社電通)によると2018年のインターネット広告費(媒体費のみ)は1兆4,480億円(前期比118.6%)となり、順調に成長を続けております。
こうした環境の下、当事業年度の業績は、売上高は713,772千円(前期比14.2%増)、営業利益は205,144千円(前期比13.1%増)、経常利益は206,037千円(前期比13.5%増)、当期純利益は146,068千円(前期比24.2%減)となりました。
セグメントごとの業績は、次のとおりであります。
(プラットフォーム事業)
プラットフォーム事業においては、メルマガ配信プラットフォーム「まぐまぐ!」および記事販売プラットフォーム「mine」が属しております。
当セグメントの基幹サービスである有料メルマガコンテンツに関して、有料メルマガコンテンツをメディアの記事として継続的に紹介する等の販売促進や、新規クリエイター獲得のための活動を促進させ一部売上に寄与したものの、一方で、バックナンバーの一時販売停止の影響等により、有料メルマガコンテンツの売上は僅かながら減少しました。
その結果としてプラットフォーム事業の当事業年度の業績は売上高が337,707千円(前期比2.6%減)、セグメント利益が215,760千円(前期比3.8%減)となりました。
(メディア広告事業)
メディア広告事業はWebメディアの「MAG2 NEWS」・「MONEY VOICE」・「TRiP EDiTOR」・「by them」の運営および「Webメディアコンテンツ」・「メルマガコンテンツ」の広告枠販売サービスが属しております。
Webメディアについては、2019年8月に「by them」をリリースしました。また、従来運営している「MAG2 NEWS」「MONEY VOICE」「TRiP EDiTOR」に関しては、話題になり得る旬の記事を適切なタイミングで数多く掲載できる体制を整えたこと、広告枠配置の最適化やアドセンス管理方法の見直しを行った結果として、PVおよびUU数が堅調に伸長しました。
その結果としてアドネットワーク広告の売上が伸長し、メディア広告事業の当事業年度の業績は売上高が371,694千円(前期比36.4%増)、セグメント利益が242,569千円(前期比37.8%増)と好調に推移しました。
(その他事業)
その他事業においては、イベント企画等が属しております。イベント企画は有料メルマガのクリエイターの活動の支援と促進を目的としています。当社がメルマガクリエイターの活動を支援し、活性化のサポートをすることで、メルマガクリエイターの知名度と信頼性を向上させ、ブランディングに貢献しております。
当事業年度中は、有料メルマガの人気クリエイターを講師に迎えた講演会・イベント等を15件開催し、それぞれの有料メルマガ読者とクリエイターのコミュニケーションの機会を創出いたしましたが、前事業年度と比較して7件のイベント開催が減少しております。
以上より、その他事業の当事業年度の業績は売上高は4,370千円(前期比22.5%減)、セグメント損失は4,109千円(前期比7.7%減)となりました。
第22期第3四半期累計期間(自 2019年10月1日 至 2020年6月30日)
当第3四半期累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う緊急事態宣言の発令を機に、外出自粛等の影響で経済活動が大幅に落ち込み、先行きが不透明な状況が続いております。また、緊急事態宣言解除後も、経済回復の動きは鈍く今後の見通しが立たない状態となっております。米国においても新型コロナウイルスの感染者数は増加を続けており、終息時期が不透明であることから、世界経済への影響が強く懸念される状況であります。
当社を取り巻く事業環境において、プラットフォーム事業が属するデジタルコンテンツ市場につきましては、「令和元年版情報通信白書」(総務省)によると直近の市場規模は前年比111.5%の1兆935億円となりました。また当社のメディア広告事業が属するインターネット広告市場につきましては「2019年日本の広告費」(株式会社電通)によると2019年のインターネット広告費(媒体費のみ)は前年比114.8%の1兆6,630億円となり、前年に引続き高い成長率で推移しております。しかしながら、足元では新型コロナウイルスの拡大が景気に悪影響を及ぼしており、事業環境の先行きに留意が必要な状況となっております。
このような状況下において、当第3四半期累計期間における当社の業績は、売上高は520,409千円、営業利益は123,193千円、経常利益は121,194千円、四半期純利益は79,018千円となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
(プラットフォーム事業)
プラットフォーム事業においては、メルマガ配信プラットフォーム「まぐまぐ!」および記事販売プラットフォーム「mine」が属しております。
当第3四半期会計期間では、2020年4月にライブ配信サービス「まぐまぐ!Live」をリリースしました。「まぐまぐ! Live」は、スマートフォンアプリやWebブラウザ上で映像や音声を視聴者へリアルタイムに配信できるサービスであります。クリエイターは、伝えたい情報を伝えたいタイミングで自由に発信することが可能であり、また視聴者はLive配信中にコメント機能等を活用することで、クリエイターと手軽にコミュニケーションを取れる仕様となっております。
当セグメントの主軸である有料メルマガサービスにおいても、新規クリエイター獲得のための活動の促進や有料メルマガコンテンツをメディア記事に継続的に紹介する等、サービスの拡大を図ってまいりました。さらに、有料メルマガコンテンツを一部抜粋して閲覧できる機能の実装やユーザーインターフェースの改善に取り組む等、継続的にプラットフォームの利便性の改善およびユーザビリティの向上に努めております。
その結果として、プラットフォーム事業の売上高は251,059千円、セグメント利益は143,067千円となりました。
(メディア広告事業)
メディア広告事業においては、Webメディアの運営および「Webメディアコンテンツ」・「メルマガコンテンツ」の広告枠販売サービスが属しております。
アドネットワーク広告においては、自社メディア「MAG2 NEWS」「MONEY VOICE」「TRiP EDiTOR」「by them」の知名度およびユーザー満足度の向上を模索してまいりました。話題になり得る旬の記事を適切なタイミングで数多く掲載し、新たなライターの獲得や外部メディアとの提携記事を掲載する等、自社メディアの強化に注力した結果、PVおよびUU数は堅調に推移しました。一方で、新型コロナウイルスの影響により企業の広告出稿が減少したことで、広告単価が低下するなどの影響が発生しております。また、Webメディアコンテンツ・メルマガコンテンツの広告枠販売においては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、一部対面による営業活動が制限され、受注機会の減少やリードの長期化等の影響を受けております。
その結果として、メディア広告事業の売上高は255,656千円、セグメント利益は140,722千円となりました。
(その他事業)
その他事業においては、イベント企画等が属しております。イベント企画は有料メルマガクリエイターの活動の支援と促進を目的としています。当社がメルマガクリエイターの活動を支援し、活性化のサポートをすることで、メルマガクリエイターの知名度と信頼性を向上させ、ブランディングに貢献しております。当第3四半期累計期間においては、有料メルマガの人気クリエイターを講師に迎えた講演会・イベント等を2件開催し、それぞれの有料メルマガ読者とクリエイターのコミュニケーションの機会を創出しましたが、その一方で、新型コロナウイルスの感染拡大のため、2月以降のイベントを中止したことによる影響を受けております。
その結果として、その他事業の売上高は13,694千円、セグメント損失は644千円となりました。
② 財政状態の状況
第21期事業年度(自 2018年10月1日 至 2019年9月30日)
(資産)
当事業年度末における総資産につきましては、前事業年度末に比べ156,074千円増加し、975,499千円となりました。これは主に、現金及び預金が171,860千円増加したことによるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債につきましては、前事業年度末に比べ10,006千円増加し、205,757千円となりました。これは主に、その他流動負債が7,848千円、未払金が6,503千円減少したものの、未払費用が13,667千円、未払法人税等が13,142千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末に比べ146,068千円増加し、769,742千円となりました。これは主に、利益剰余金が146,068千円増加したことによるものであります。
第22期第3四半期累計期間(自 2019年10月1日 至 2020年6月30日)
(資産)
当第3四半期会計期間末における総資産につきましては、前事業年度末に比べ77,744千円増加し、1,053,243千円となりました。これは主に、現金及び預金の増加75,312千円、無形固定資産の増加10,345千円によるものであります。
(負債)
当第3四半期会計期間末における負債につきましては、前事業年度末に比べ1,274千円減少し、204,482千円となりました。これは主に、未払法人税等が22,349千円増加したものの、その他流動負債が23,933千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当第3四半期会計期間末における純資産合計は、前事業年度末に比べ79,018千円増加し、848,760千円となりました。これは主に、利益剰余金が79,018千円増加したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
第21期事業年度(自 2018年10月1日 至 2019年9月30日)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前事業年度末に比べ171,860千円増加し、752,392千円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動により獲得した資金は、前事業年度に比べ84,607千円減少し、217,371千円となりました。この主な要因は、税引前当期純利益を206,037千円計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動により使用した資金は、前事業年度に比べ27,411千円増加し、45,511千円となりました。この主な要因は、無形固定資産の取得として42,138千円支出したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動により獲得および使用した資金はありません。

④ 生産、受注および販売の実績
a 生産実績および受注実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性質上、生産実績および受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
b 販売実績
第21期事業年度および第22期第3四半期累計期間における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称第21期事業年度
(自 2018年10月1日
至 2019年9月30日)
第22期第3四半期累計期間
(自 2019年10月1日
至 2020年6月30日)
金額(千円)前期比(%)金額(千円)
プラットフォーム事業337,70797.4251,059
メディア広告事業371,694136.4255,656
その他事業4,37077.513,694
合計713,772114.2520,409

(注) 1.最近2事業年度および第22期第3四半期累計期間の主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合
相手先第20期事業年度
(自 2017年10月1日
至 2018年9月30日)
第21期事業年度
(自 2018年10月1日
至 2019年9月30日)
第22期第3四半期累計期間
(自 2019年10月1日
至 2020年6月30日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
Google Asia Pacific
Pte. Ltd.
45,1437.2121,55617.094,56318.17

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針および見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額および開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りによる不確実性のため、実績の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。この財務諸表の作成にあたる重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
第21期事業年度(自 2018年10月1日 至 2019年9月30日)
(売上高)
当事業年度の売上高は713,772千円(前期比14.2%増)となりました。
これは主に、メディア広告事業において、当社が運営するWEBメディアの運営体制を整えたことによるUU数の増加(前期比47.4%増)および広告単価の上昇の結果、アドネットワーク広告の売上が伸長したことによるものであります。
(売上総利益)
当事業年度における売上原価は226,336千円(前期比18.8%増)となりました。
これは主に、Webメディアの運営体制の整備を目的として人件費および外注費が増加したことによるものであります。
その結果、当事業年度の売上総利益は487,436千円(前期比12.2%増)となりました。
(営業利益)
当事業年度における販売費及び一般管理費は282,292千円(前期比11.6%増)となりました。
これは主に、コーポレート・ガバナンスの強化に対応するため管理部門の人員を増加したことに伴う人件費増加によるものであります。
その結果、当事業年度の営業利益は205,144千円(前期比13.1%増)となりました。
(経常利益)
当事業年度の営業外収益は893千円(前期比613.4%増)となりました。
当事業年度に計上した営業外費用はありません。
この結果、当事業年度の経常利益は206,037千円(前期比13.5%増)となりました。
(当期純利益)
これらの結果を受け、当事業年度の当期純利益は146,068千円(前期比24.2%減)となりました。なお、法人税等調整額を含む法人税等合計は、59,968千円(前期は△24,143千円)であります。
第22期第3四半期累計期間(自 2019年10月1日 至 2020年6月30日)
(売上高)
当第3四半期累計期間における売上高は520,409千円となりました。
メディア広告事業の売上が新型コロナウイルス感染拡大による経済的影響を受けたものの、プラットフォーム事業において、新規クリエイター獲得のための営業活動の促進、課金読者数増加のための施策および新たにクリエイターにライブ配信サービスの利用を促す等の施策を実行した結果、「まぐまぐ!」の有料会員数が堅調に推移いたしました。
(売上総利益)
当第3四半期累計期間における売上原価は212,011千円となりました。
これは主に、プラットフォーム事業において2020年4月にリリースしたライブ配信サービスに係るシステム保守費の増加および人員増加に伴う人件費の増加によるものであります。
その結果、当第3四半期累計期間の売上総利益は308,398千円となりました。
(営業利益)
当第3四半期累計期間における販売費及び一般管理費は185,204千円となりました。
これは主に、管理部門の人員増加に伴う人件費の増加および採用費の増加によるものであります。
その結果、当第3四半期累計期間の営業利益は123,193千円となりました。
(経常利益)
当第3四半期累計期間における営業外収益は0千円となりました。
当第3四半期累計期間における営業外費用は、上場関連費用により2,000千円となりました。
この結果、当第3四半期累計期間の経常利益は121,194千円となりました。
(四半期純利益)
これらの結果を受け、当第3四半期累計期間の四半期純利益は79,018千円となりました。。
③ キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
④ 資本の財源および資金の流動性
当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。当社の資金需要のうち主なものは、プラットフォーム事業の機能強化や新規サービスの開発に係る開発保守費用、人件費および決済手数料等の営業費用であります。これらの資金需要に対しては現状では自己資金の範囲内で賄えておりますが、資金需要の額や使途に合わせて多様な調達手段を検討してまいります。第21期事業年度末における現金及び預金残高は752,392千円であり、充分な流動性を確保しております。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について
「2 事業等のリスク」に記載したとおり、事業内容、事業運営・組織体制等、様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に市場動向や業界動向を注視しつつ、優秀な人材の確保と適切な教育を実施するとともに、事業運営体制の強化と整備を進めることで、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に適切な対応を図ってまいります。
⑦ 経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。