有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2023/02/22 15:00
【資料】
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【項目】
117項目
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、当社は、がん免疫療法創薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
なお、当社は、2023年2月15日開催の取締役会において第8期事業年度(2022年1月1日から2022年12月31日まで)の財務諸表を承認しております。その内容については「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (3)その他」をご参照ください。この財務諸表は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)に基づいて作成しておりますが、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査は未了であり、監査報告書は受領しておりません。以下は、第7期事業年度(2021年1月1日から2021年12月31日まで)及び第8期第3四半期累計期間(2022年1月1日から2022年9月30日まで)に係る経営成績等の状況の概要に加えて、第8期事業年度(2022年1月1日から2022年12月31日まで)に係る経営成績等の状況(未監査)の概要を、最近の参考情報として記載しております。第8期事業年度は、期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下(収益認識会計基準)という。)等を適用しております。収益認識会計基準等の適用による、第8期事業年度の損益及び期首利益剰余金に与える影響はありません。
①経営成績の状況
第7期事業年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)
当事業年度における日本経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、依然として厳しい状況にありました。
このような状況のもと、当社は、「がんを克服できる社会の創生に貢献する」(Create the Future to Overcome Cancer)という経営理念の下、当社の独自技術であるPRIME(Proliferation-inducing and migration-enhancing)技術を用いた、固形がんに対するCAR-TやTCR-Tなどの遺伝子改変免疫細胞療法の研究開発に取り組んでまいりました。
自社創薬におきましては、PRIME技術を搭載したパイプラインであるNIB101について、2021年8月に第Ⅰ相臨床試験の治験届を提出しました。また、2021年12月には、当社が創製し武田薬品に導出したNIB103の第Ⅰ相臨床試験が開始されました。さらに、これに続く新たな自社パイプラインに関する研究や次世代技術に関する研究を実施しております。
共同パイプラインにおきましては、共に2019年に開始した、Adaptimmune Therapeutics plcとの共同開発研究に関する契約に基づくPRIME技術を搭載した次世代型SPEAR T-cellの研究開発、及びAutolus Therapeutics plcとのライセンス契約に基づくPRIME技術を搭載した次世代型CAR-T細胞療法の研究開発が、当事業年度も引き続き進行しました。また、2020年に開始した中外製薬との技術評価契約に基づくPRIME技術の評価に関する研究も引き続き進行しました。2021年10月には、第一三共株式会社(以下、第一三共)との間で技術評価に関する提携を行い、同社によるPRIME技術の評価が開始しました。さらに、CAR-T細胞の大量生産・安定供給と低コスト化を目指した自動細胞製造システムの確立を目指して、2019年に澁谷工業との間で開始した共同開発について、当事業年度も引き続き開発を進めております。
以上の結果、当事業年度の業績については、事業収益は100,732千円(前事業年度比3.6%増)を計上したものの、PRIME技術を用いた研究開発活動の拡大のための研究人員の採用や各種試験の実施など外部委託の活用による研究開発費の計上、経営管理の充実のための人員採用や知的財産権保護のための特許取得費用などその他の販売費及び一般管理費の計上により事業費用が事業収益を上回り、営業損失は767,511千円(前事業年度は604,477千円の営業損失)となりました。また第三者割当増資に係る新株発行などのため営業外費用を25,191千円計上したことにより、経常損失は792,615千円(前事業年度は604,610千円の経常損失)となり、当期純損失は795,035千円(前事業年度は636,649千円の当期純損失)となりました。
第8期第3四半期累計期間(自 2022年1月1日 至 2022年9月30日)
当第3四半期累計期間において、当社は、PRIME技術を基盤とした自社創薬及び共同パイプラインをこれまでに引き続き推進いたしました。
自社創薬におきましては、当社リードパイプラインであるNIB101について第Ⅰ相臨床試験が進行しており、対象症例の同定を進めております。同じく当社が創製したNIB102及びNIB103については、導出先の武田薬品により研究開発が進められ、いずれも第I相臨床試験が進行しております。このほか、当社は自社パイプラインのさらなる拡充を図るべく、引き続き研究開発を進めております。
共同パイプラインにおきましては、2022年8月に、中外製薬との間でPRIME技術のライセンスに関する契約を締結し、契約一時金を受領しました。また、従前よりPRIME技術をライセンスしているAdaptimmune Therapeutics plc及びAutolus Therapeutics plcによる研究開発も引き続き進行しました。加えて、技術評価に関する契約を締結している第一三共において、PRIME技術の評価研究が実施されております。
以上の結果、当第3四半期累計期間末における事業収益は620,410千円となり、主に研究開発費並びにその他の販売費及び一般管理費からなる事業費用569,033千円を上回り、営業利益は51,377千円、経常利益は34,737千円、四半期純利益は32,916千円となりました。
(参考)第8期事業年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)(未監査)
当事業年度において、当社は、PRIME技術を基盤とした自社創薬及び共同パイプラインをこれまでに引き続き推進いたしました。
自社創薬におきましては、当社リードパイプラインであるNIB101について第Ⅰ相臨床試験が進行しており、対象症例の同定を進めております。同じく当社が創製したNIB102及びNIB103については、導出先である武田薬品により研究開発が進められ、いずれも第I相臨床試験が進行しております。このほか、当社は自社パイプラインのさらなる拡充を図るべく、引き続き研究開発を進めております。なお、2022年11月に開催された第37回米国がん免疫療法学会において、武田薬品よりNIB102の第Ⅰ相臨床試験の中間結果についてポスター発表が行われ、第Ⅰ相臨床試験の予備的データは、安全性及び細胞動態、薬力学検討にて推奨的な結果を示しており、用量漸増試験が進行中であることが発表されました。
共同パイプラインにおきましては、2022年8月に、中外製薬との間でPRIME技術のライセンスに関する契約を締結し、契約一時金を受領しました。また、従前よりPRIME技術をライセンスしているAdaptimmune Therapeutics plc及びAutolus Therapeutics plcによる研究開発も引き続き進行しました。加えて、技術評価に関する契約を締結している第一三共において、PRIME技術の評価研究が実施されております。
以上の結果、当事業年度の業績については、事業収益は625,783千円(前事業年度比521.2%増)を計上し、また、研究開発費は、NIB101の臨床試験において被験者の登録が遅れたこと等から前事業年度比で減少したものの、上場準備に伴う人件費や外注費の増加によるその他の販売費及び一般管理費の計上により、営業損失は106,345千円(前事業年度は767,511千円の営業損失)となりました。さらに、営業外費用として上場関連費用を268,210千円計上したことにより、経常損失は384,202千円(前事業年度は792,615千円の経常損失)となり、当期純損失は386,622千円(前事業年度は795,035千円の当期純損失)となりました。
②財政状態の状況
第7期事業年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)
(資産)
当事業年度末の総資産は4,271,049千円となり、前事業年度末に比べ1,596,787千円増加しました。これは主に、資金調達を目的とする第三者割当増資の実施により現金及び預金が1,592,480千円増加し、また、研究開発費に係る長期預け金が24,780千円増加した一方で、共同研究活動の完了により仕掛品が7,492千円減少し、長期預け金への振替により前渡金が22,538千円減少したこと等によるものであります。
(負債)
当事業年度末の負債は85,715千円となり、前事業年度末に比べ9,832千円増加しました。これは主に、第三者割当増資により増加した資本金等の影響により外形標準課税が増加し未払法人税等が11,683千円増加し、また、研究開発の外部委託の増加により未払金が26,912千円増加した一方で、受注した共同研究案件が進捗したことにより前受金が31,840千円減少したこと等によるものであります。
(純資産)
当事業年度末の純資産は4,185,334千円となり、前事業年度末に比べ1,586,955千円増加しました。これは主に、第三者割当増資の実施により資本金が1,190,999千円及び資本準備金が1,190,991千円増加した一方で、当期純損失の計上により利益剰余金が795,035千円減少したことによるものであります。
第8期第3四半期累計期間(自 2022年1月1日 至 2022年9月30日)
(資産)
当第3四半期累計期間末における総資産は4,829,888千円となり、前事業年度末に比べ558,839千円増加しました。これは主に、現金及び預金がライセンス契約の締結等により584,252千円、研究開発費に係る外部評価のための前渡金が27,024千円増加した一方で、未収消費税等が還付により53,037千円減少したこと等によるものであります。
(負債)
当第3四半期累計期間末における負債は109,731千円となり、前事業年度末に比べ24,016千円増加しました。これは主に、事業収益の増加により未払消費税等が26,466千円、研究開発資材の外部保管により未払費用が18,592千円増加した一方で、未払金が15,604千円減少したこと等によるものであります。
(純資産)
当第3四半期累計期間末における純資産は4,720,156千円となり、前事業年度末に比べ534,822千円増加しました。これは主に、第三者割当増資の実施により資本金及び資本準備金がそれぞれ250,033千円、従業員等に対するストック・オプション発行により新株予約権が1,840千円、四半期純利益の計上により利益剰余金が32,916千円増加したことによるものであります。
(参考)第8期事業年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)(未監査)
(資産)
当事業年度末の総資産は4,641,032千円となり、前事業年度末に比べ369,983千円増加しました。これは主に、現金及び預金がライセンス契約の締結等により380,439‬千円、研究開発費に係る外部評価のための前渡金が25,804‬千円増加した一方で、未収消費税等が還付により53,037千円減少したこと等によるものであります。
(負債)
当事業年度末の負債は340,414千円となり、前事業年度末に比べ254,699‬千円増加しました。これは主に、監査報酬により未払費用が25,897千円増加したほか、当社の上場準備のため未払金が187,203‬千円、預り金が42,860千円増加したこと等によるものであります。
(純資産)
当事業年度末の純資産は4,300,617千円となり、前事業年度末に比べ115,283千円増加しました。これは主に、第三者割当増資の実施により資本金及び資本準備金がそれぞれ250,033‬千円、役員等に対するストック・オプション発行により新株予約権が1,840‬千円増加した一方、当期純損失の計上により利益剰余金が386,622千円減少したことによるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
第7期事業年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、本③において「資金」という。)は、4,140,558千円となり、前事業年度末に比べ1,592,480千円増加しました。当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動で使用した資金は、777,140千円(前事業年度は300,645千円の支出)となりました。これは主に、税引前当期純損失792,615千円、報酬の前受をしていた共同研究案件が進捗し前受金を取り崩した影響による前受金の減少31,840千円、外部委託試験の増加による未払金の増加26,912千円、法人税等の支払額1,900千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動に使用した資金は、4,032千円(前事業年度は収入・支出ともになし)となりました。これは、研究施設増床のための保証金の差入による支出4,032千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動で得た資金は、2,373,653千円(前事業年度は996,346千円の収入)となりました。これは、株式の発行による収入2,373,653千円によるものであります。
(参考)第8期事業年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)(未監査)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、本「(参考)第8期事業年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)(未監査)」において「資金」という。)は、4,520,997千円となり、前事業年度末に比べ380,439千円増加しました。当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動で使用した資金は、107,176千円(前事業年度は777,140千円の支出)となりました。これは主に、研究開発費の減少による税引前当期純損失408,413‬千円の減少、上場関連費用268,210千円、前渡金25,804千円の増加等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動に使用した資金は、収入・支出ともになしとなりました。これは、前事業年度に計上された、研究施設増床のための保証金の差入による支出4,032千円が、当事業年度では計上されなかったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動で得た資金は、487,615千円(前事業年度は2,373,653千円の収入)となりました。これは、主に株式の発行による収入498,315千円によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
c.販売実績
当社の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社はがん免疫療法創薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
セグメントの名称第7期事業年度
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
前年同期比(%)第8期第3四半期累計期間
(自 2022年1月1日
至 2022年9月30日)
がん免疫療法創薬事業 (千円)100,732103.6620,410
合計 (千円)100,732103.6620,410

(注)1.最近2事業年度及び第8期第3四半期累計期間の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先第6期事業年度
(自 2020年1月1日
至 2020年12月31日)
第7期事業年度
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
第8期第3四半期累計期間
(自 2022年1月1日
至 2022年9月30日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
Adaptimmune Therapeutics plc25,45126.219,03218.9--
Millennium Pharmaceuticals, Inc.65,36267.2----
中外製薬3,0003.161,00060.6599,12196.6
A社3,4633.617,70017.612,1892.0
第一三共--3,0003.09,0001.4

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.守秘義務を負っているため、A社の社名の公表は控えさせていただきます。
4.(参考)第8期事業年度における販売実績(未監査)
第8期事業年度における販売実績は、事業収益625,783千円(前事業年度比521.2%増)であります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものの内容は下記「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。また、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、特に重要なものの内容及び金額は下記「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社は、がん免疫療法分野において次世代を担うリーディングカンパニーを目指し、事業に取り組んでおります。PRIME技術により固形がんに対するCAR-Tの有効性を高め、様々な固形がんに対するCAR-T細胞療法を創成するとともに開発能力を拡大するため、日々研究開発を進めております。
第7期事業年度の経営成績及び財政状態に関する認識及び分析・検討内容については、上記「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載しております。
第8期第3四半期累計期間においても、共同研究パートナーである製薬企業やバイオテクノロジー企業と連携を進めながら研究開発は順調に進んでおります。第8期第3四半期累計期間の、経営成績及び財政状態に関する認識及び分析・検討内容については、上記 「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載しております。
なお、第8期事業年度の経営成績及び財政状態(いずれも未監査)に関する認識及び分析・検討内容について
も、最近の参考情報として、上記「(1)経営成績等の状況の概要①経営成績の状況」に記載しております。
③キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
④経営成績に重要な影響を与える要因について
上記「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載の通りであります。
⑤資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社はがん免疫療法に特化した研究開発型ベンチャー企業であり、資金需要の主なものは、研究人員にかかる人件費、研究用設備費用や研究開発のための外部委託費用などの研究開発費や、経営管理にかかる販売費及び一般管理費などの運転資金(事業費用)であります。
当社は、今後の外部環境の変化に備えて、事業上必要な資金については手元資金で賄う方針としており、事業収益が限定される現在では、事業収益による資金の獲得のほか、第三者割当増資による調達を行っております。手元資金については、資金需要に迅速かつ確実に対応するため、流動性の高い銀行預金により管理しております。
今後は、さらなる新規パイプラインの獲得に向けて一時的に資金を要する場合や、急激な景気変動等により手元資金が不足する場合には、経費コントロールによる支出の抑制や第三者割当増資に伴う新株発行によるエクイティファイナンスを含めた多様な調達方法を、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に活用し、対応していく予定であります。
⑥経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等についての分析
上記「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を把握するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。