有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2023/05/23 15:00
【資料】
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【項目】
129項目
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
① 財政状態の状況
第6期事業年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
(資産)
当事業年度末の流動資産の残高は、前事業年度末に比べ251,478千円減少し、3,367,090千円となりました。これは主に、研究開発費や事業運営費の支出により現金及び預金が200,665千円減少したことによるものであります。固定資産は、前事業年度末に比べ67,909千円減少し、677,816千円となりました。これは主に、減価償却費の計上によるものであります。
この結果、総資産は、前事業年度末に比べ319,388千円減少し、4,044,906千円となりました。
(負債)
当事業年度末の流動負債の残高は、前事業年度末に比べ7,988千円増加し、112,410千円となりました。これは主に、未払金が34,469千円減少した一方で、預り金が39,556千円増加したことによるものであります。固定負債は、前事業年度末に比べ580千円減少し、36,949千円となりました。これは主に、繰延税金負債が652千円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は、前事業年度末に比べ7,408千円増加し、149,360千円となりました。
(純資産)
当事業年度末の純資産の残高は、前事業年度末に比べ326,796千円減少し、3,895,546千円となりました。これは主に、当期純損失375,337千円の計上によるものであります。
2021年10月11日に当社取締役及び従業員を対象に有償ストック・オプション(第1回新株予約権)を発行し、その一部が権利行使されております。これにより、資本金及び資本準備金がそれぞれ15,250千円増加しております。また、2022年2月14日開催の臨時株主総会において、資本金の額の減少を行うことを決議し、2022年3月1日付で資本金105,250千円をその他資本剰余金に振り替えております。この結果、当事業年度末の資本金は10,000千円、資本準備金は2,455,250千円、その他資本剰余金は2,449,145千円、新株予約権は15,792千円となりました。
第7期第3四半期累計期間(自 2022年4月1日 至 2022年12月31日)
(資産)
当第3四半期会計期間末の流動資産の残高は、前事業年度末に比べ330,179千円減少し、3,036,910千円となりました。これは主に、研究開発費や事業運営費の支出により現金及び預金が359,197千円減少したことによるものであります。固定資産は、前事業年度末に比べ51,578千円減少し、626,238千円となりました。これは主に、減価償却費の計上によるものであります。
この結果、総資産は、前事業年度末に比べ381,758千円減少し、3,663,148千円となりました。
(負債)
当第3四半期会計期間末の流動負債の残高は、前事業年度末に比べ34,125千円減少し、78,285千円となりました。これは主に、預り金が52,984千円減少したことによるものであります。固定負債は、前事業年度末に比べ435千円減少し、36,514千円となりました。
この結果、負債合計は、前事業年度末に比べ34,560千円減少し、114,799千円となりました。
(純資産)
当第3四半期会計期間末の純資産の残高は、前事業年度末に比べ347,197千円減少し、3,548,348千円となりました。これは主に、四半期純損失357,352千円の計上によるものであります。
② 経営成績の状況
第6期事業年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の長期化により、経済活動及び社会生活が引き続き制限されました。また、直近ではウクライナ情勢の深刻化による資源・エネルギー及び原材料価格の上昇等もあり、依然として景気の先行きは不透明な状況となっております。
当社は虚血性心疾患による重症心不全を適応症とするヒトiPS細胞由来心筋細胞シートの製造販売承認の取得に向け、大阪大学が実施する医師主導治験を継続して支援しております。当事業年度においては、商用を見据えたスケールでのヒトiPS細胞由来心筋細胞シートに係る高収率製法の確立、同製法による非臨床試験・治験用の細胞製造、非臨床試験(造腫瘍性試験等)の実施、品質管理体制の構築及び多施設共同医師主導治験に併せた治験製品輸送方法の確立に取り組んでまいりました。
同医師主導治験は、大阪大学が2019年10月に医薬品医療機器総合機構(PMDA)に医師主導治験計画届書を提出したものであり、2020年1月に第1例目の被験者に対しヒトiPS細胞由来心筋細胞シートの移植を行い、2020年11月までに計3症例の被験者に対して移植が行われました。これらの移植については、現在、その有効性や安全性を評価している段階にあります。
また、大阪府箕面市で稼働している当社の商業用細胞培養加工施設(「CLiC-1」:Cuorips Labo-integrated Cell Processing Facility for Advanced Therapy-1st)が、2021年9月22日付で、厚生労働省近畿厚生局より「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療等安全性確保法)第35条第1項に基づく「特定細胞加工物製造許可」を取得し、当第3四半期会計期間より製造開発受託(CDMO)事業を開始いたしました。当社がこれまでに培ったヒトiPS細胞由来心筋細胞の製造・品質管理技術及びノウハウと、プロセス開発から細胞加工物の製造・品質管理までワンストップで実施できる「ラボ一体型」のCLiC-1を活用し、様々な細胞加工物を対象としたCDMO事業を提供しております。
この結果、当事業年度の経営成績は、売上高13,913千円(前年同期比6,224.3%増)、営業損失373,264千円(前年同期は281,840千円の損失)、経常損失373,140千円(前年同期は295,845千円の損失)、当期純損失375,337千円(前年同期は307,834千円の損失)となりました。
当事業年度において発生した研究開発費(総額)は655,546千円(前年同期比1.4%減)でありましたが、当社は共同研究開発のパートナー企業から共同研究開発費(以下、共同研究開発費受入額)を受領しており、共同研究開発費受入額を控除した金額112,805千円(前年同期比55.3%増)を販売費及び一般管理費において研究開発費として計上しております。
なお、当社は、再生医療等製品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
第7期第3四半期累計期間(自 2022年4月1日 至 2022年12月31日)
当第3四半期累計期間における我が国経済は、新型コロナウィルス感染症による行動制限が緩和され、サプライチェーンの混乱による供給制約も次第に解消されつつあります。しかしながら、為替相場の急激な変動や資源・エネルギー及び原材料価格の高騰等、当社を取り巻く経営環境においては不確定な要因も多く、今後の動向を引き続き注視してまいります。
当社は、虚血性心疾患による重症心不全を適応症とするヒトiPS細胞由来心筋細胞シートの製造販売承認の取得に向け、大阪大学が実施する医師主導治験を継続して支援しております。当第3四半期累計期間においては、同医師主導治験の進捗を加速させるために、当社は治験参加施設の拡充や治験参加施設に対する同医師主導治験のサポート業務を行いました。
同医師主導治験は、前半部分(コホートA)と後半部分(コホートB)に分かれており、コホートAでは2020年11月までに計3症例の被験者に対して移植が行われました。コホートBでは計5症例の被験者に対して移植が行われる計画になっており、2022年8月には同治験参加施設である順天堂大学医学部附属順天堂医院において第1症例目の移植が行われ、2022年12月にも同院において第2症例目の移植が行われました。
また、コホートAについては、現在、その有効性や安全性を評価している段階にありますが、大阪大学の研究チームがコホートAの第1症例目を対象に有効性及び安全性について解析した結果、肯定的な評価を示唆する論文を発表しております。( https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.12.27.21268295v1.full )
本論文では、移植後にヒトiPS細胞由来心筋細胞シートに関連する有害事象は認められず、また、心機能だけでなく、運動耐容能も改善し得る可能性が示唆されています。
本論文は、2022年8月2日に「Frontiers in Cardiovascular Medicine」誌の査読後、アクセプトされ、より詳細な情報を含んだ上で、公開されております。
( https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fcvm.2022.950829/abstract )
その他の研究開発活動におきましては、ヒトiPS細胞由来心筋細胞シートに続く新たな研究開発パイプラインの製品化に向けた取り組みを本格的に開始しております。当第3四半期累計期間においては、主に、カテーテル、体内再生因子誘導剤、虚血性心疾患(海外)に関する研究開発活動を進めてまいりました。
売上高について、前事業年度より提供を開始した製造開発受託サービス(CDMOサービス)は、当第3四半期累計期間においても堅調に推移いたしました。
この結果、当第3四半期累計期間の経営成績は、売上高13,488千円、営業損失356,252千円、経常損失356,243千円、四半期純損失357,352千円となりました。
当第3四半期累計期間において発生した研究開発費(総額)は490,762千円でありましたが、当社は共同研究開発のパートナー企業から共同研究開発費(以下、共同研究開発費受入額)を受領しており、共同研究開発費受入額を控除した金額134,162千円を販売費及び一般管理費において研究開発費として計上しております。
なお、当社は、再生医療等製品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
③ キャッシュ・フローの状況
第6期事業年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
当事業年度における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ200,665千円減少し、3,341,782千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、220,762千円の支出(前年同期は282,797千円の支出)となりました。これは主に、増加要因として減価償却費92,739千円(前年同期は73,914千円)及び未収消費税等の減少額56,105千円(前年同期は未収消費税等の増加額54,762千円)があった一方で、減少要因として税引前当期純損失373,140千円(前年同期は295,845千円)を計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、28,444千円の支出(前年同期は670,208千円の支出)となりました。これは主に、CLiC-1において有形固定資産の取得による支出28,691千円(前年同期は668,177千円の支出)によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、48,541千円の収入(前年同期は3,766,740千円の収入)となりました。これは主に、新株予約権の発行による収入16,594千円(前年同期は-千円)、新株予約権の行使による株式の発行による収入29,700千円(前年同期は-千円)によるものであります。

④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
b.受注実績
CDMOサービスにおいては、一部受注生産を行っておりますが、ほとんどの場合において、生産に要する期間が短く、受注実績が僅少であることから記載を省略しております。
c.販売実績
第6期事業年度及び第7期第3四半期累計期間の販売実績は、以下のとおりであります。なお、当社は再生医療等製品事業の単一セグメントであるため、サービス別に記載しております。
サービスの名称第6期事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
第7期第3四半期累計期間
(自 2022年4月1日
至 2022年12月31日)
金額(千円)前年同期比(%)金額(千円)
CDMO・コンサルティングサービス13,9136,224.313,488

(注)1.当事業年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは、当事業年度よりCDMO・コンサルティングサービスを本格的に開始したことによるものであります。
2.最近2事業年度及び第7期第3四半期累計期間の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
相手先第5期事業年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
第6期事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
第7期
第3四半期累計期間
(自 2022年4月1日
至 2022年12月31日)
金額
(千円)
割合
(%)
金額
(千円)
割合
(%)
金額
(千円)
割合
(%)
株式会社
VC Cell Therapy
--11,32781.46,24846.3
セルソース株式会社----3,78028.0
カノンキュア株式会社--1,80012.93,46025.7


(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
第6期事業年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
当事業年度の財政状態及び経営成績は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
また、当社の経営成績に重要な影響を与える要因として、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク (3)業績・財政状態に関するリスク」に記載のとおりであります。
第7期第3四半期累計期間(自 2022年4月1日 至 2022年12月31日)
当第3四半期累計期間の財政状態及び経営成績は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社は、研究開発を行う上で必要な資金は、他の製薬企業との共同研究開発契約を通じて確保しております。また、設備投資や事業運営費等の資金は、第三者割当増資により資金調達を図っております。また、研究開発パイプラインの拡充に向けて、株式上場時の公募増資等により財務基盤の強化が必要であると認識しております。
資金の流動性については、一時的な余資は主に流動性の高い金融資産で運用しており、投機的な取引は行わない方針であり、資産効率を考慮しながら、現金及び現金同等物によって確保を図っております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成されております。資産・負債及び収益・費用の測定にあたり、金額を直接観察できない場合には、経営者は過去の実績やその他の様々な仮定を設定し、合理的に算定しておりますが、見積金額の測定には、固有の限界があるため、将来においてこれらの見積りとは異なる場合があります。
財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。