有価証券報告書-第76期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/29 11:50
【資料】
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【項目】
124項目

研究開発活動

当社グループの研究開発は、工事施工の能率および安全性の向上を目的とした機械・工具等の開発・改良と、受注領域拡大のための新分野技術の研究・習得を主体として行っております。開発品および開発工法を通じ、社員指導教育も合わせて実施することで社員の専門知識の向上、技術レベルの向上を目指し活動を行っております。
当連結会計年度における各種プラント設備の建設、補修、維持関連の研究開発費はグループ全体で223百万円であり、その主なものは次のとおりであります。なお、当社グループの研究開発活動においては、各セグメントに関連したものが非常に多いため、セグメント別の記載はしておりません。
(1) クリンカ落とし装置の開発
火力発電所では、石炭の燃焼で生じた灰が固まりクリンカが生成され、壁面に付着します。付着したクリンカは落下する危険があり、安全性を確保するため、定期点検着手前に付着したクリンカを除去する必要があります。
本年は、開発したモルタル玉の投てきによるクリンカ落とし装置の実用性向上を図りました。
石炭火力発電所で使用される石炭は、発電コストに直結するため、より安価なグレードの物が使用される傾向にあり、結果として石炭に含まれる不純成分により大量に硬いクリンカが発生し除去が難しくなるケースもあります。
このような条件でも有効にクリンカ落としが出来るよう試験を重ね、モルタル玉の軌道変更拡大を図る等の実施方法を確立しました。
(2) 迷走電流防止システムの開発
TIG溶接機、アーク溶接機を安全に使用するためには、溶接電流の帰り道となる帰線(被溶接物と溶接機の間の電線)の取扱いが重要となります。帰線を正しく使用しているつもりでも、被溶接物の形状によっては誤った溶接電路(溶接電流が流れる経路)が形成され、溶接電流が思わぬ所へ流れ込み、スパークや過熱による火災、感電事故が発生する場合があります。
そこで、当社では溶接電路の状況を自動で判別する装置「3線式迷走電流防止システム」を開発しました。本装置は、溶接電路に異常があった場合、溶接機の電源を自動的に遮断するため、火災や感電事故を未然に防止することが可能です。また、本装置の基本システムについて特許の出願も行いました。
今後は構成部品のコンパクト化を図り、作業効率の向上を図ってまいります。
(3) 強制振動によるカップリング抜取方法
カップリング(軸継手)とは、モータなどの駆動軸と従動軸をつなぎ、動力を伝達する機械要素部品です。モータの点検等でカップリングを取り外す時、カップリング自体をガスバーナー等により加熱することでカップリングの穴を広げ、軸との隙間を作ってから引き抜きます。しかし、カップリングと軸の隙間が十分でない状態でカップリングを無理に引き抜くと、軸やカップリングを傷つける恐れがあります。
そこで、当社ではカップリングに与えた振動の軸への伝わり方が隙間の発生により変化することに着目し、振動の変化を捉えて適切なタイミングで軸からカップリングを引き抜く工法を開発しました。今年度は、工場での実証試験を重ねるとともに、本件に関する工法の特許を3件出願しました。
これにより、無理な引抜による損傷のリスクを大幅に低減することができます。
今後は実証試験を重ねて現場で使用しやすいように改善し、水平展開を図ってまいります。