有価証券報告書-第91期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/16 13:55
【資料】
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【項目】
185項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の業績は、営業収益は339,645百万円(前期比△17,626百万円、4.9%減)、営業利益100,596百万円(前期比12,243百万円、13.8%増)、経常利益95,627百万円(前期比10,982百万円、12.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益63,619百万円(前期比4,813百万円、8.1%増)となりました。
財政状態については、当連結会計年度末の資産合計は、2,019,336百万円(前期末比243,064百万円、13.6%増)、負債合計は、1,530,293百万円(前期末比215,878百万円、16.4%増)、純資産合計は、489,043百万円(前期末比27,186百万円、5.8%増)となりました。
各セグメントの業績は、次の通りであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。
(各セグメントの営業収益は、セグメント間の内部営業収益、振替高を含みます。)
(不動産事業)
当社グループの中核事業は、東京23区を中心に、約250件(販売用不動産除く)の賃貸物件・賃貸可能面積約135万㎡を活用した不動産賃貸事業であります。マーケットニーズに即した用途バランスと競争優位性を有する賃貸ポートフォリオを再構築する観点から、ポートフォリオの組替をおこなうとともに、耐震・省エネに優れた開発・建替の加速による優良アセットの積み上げに取り組んでおります。また、高付加価値を創出して収益化するバリューアッド事業の強化にも取り組んでおります。
当連結会計年度の新規物件(固定資産)の取得につきましては、日本ヒューレット・パッカード本社ビル(東京都江東区)、銀座天國ビル(東京都中央区)、きらぼし銀行新宿本店(東京都新宿区)、相鉄フレッサイン新橋烏森口(東京都港区)、NEC相模原事業場(底地)(相模原市中央区)、南青山M-SQUARE(東京都港区)、晴海アイランド トリトンスクエア オフィスタワーY(東京都中央区)、チャームプレミア永福(東京都杉並区)及びチャームプレミア目黒柿の木坂(東京都目黒区)などを取得いたしました。
開発・建替事業(固定資産)につきましては、ふふ日光(栃木県日光市)が2020年8月、ヒューリックJP赤坂ビル(東京都港区)が2020年11月、ヒューリック銀座6丁目ビル(東京都中央区)が2020年12月に竣工いたしました。
そのほか、(仮称)宇田川町32開発計画(東京都渋谷区)、(仮称)新宿3-17開発計画(東京都新宿区)、(仮称)銀座8丁目開発計画(東京都中央区)、(仮称)銀座6丁目並木通り開発計画(東京都中央区)、ヒューリック札幌NORTH33ビル建替計画(札幌市中央区)、ヒューリック福岡ビル建替計画(福岡市中央区)及びヒューリック札幌ビル建替計画(札幌市中央区)などが順調に進行しております。
PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)事業につきましては、ふふ奈良(奈良県奈良市)が2020年3月、立誠ガーデン ヒューリック京都(京都市中京区)が2020年6月、ヒューリック両国リバーセンター(東京都墨田区)が2020年8月に竣工いたしました。
そのほか、(仮称)医誠会国際総合病院計画(大阪市北区)、(仮称)錦糸町開発計画(東京都墨田区)が順調に進行しております。
販売用不動産につきましては、ニューシティ多摩センタービル(東京都多摩市)及び相鉄フレッサイン大阪なんば駅前(大阪市浪速区)などを取得し、ヒューリック築地三丁目ビル(東京都中央区)、WeWork Shimbashi(東京都港区)、池袋GIGO(東京都豊島区)、ヒューリック兜町ビル(東京都中央区)、ヒューリック新川崎ビル(川崎市幸区)、ヒューリック難波ビル(大阪市中央区)及びニューシティ多摩センタービル(東京都多摩市)などを売却しております。
このように、当セグメントにおける事業は順調に進行しており、前連結会計年度及び当連結会計年度に竣工、取得した物件による不動産賃貸収入の増加に加え、販売用不動産の売却も順調に推移したことなどから、当連結会計年度の営業収益は314,819百万円(前期比△20,308百万円、6.0%減)、営業利益は115,374百万円(前期比19,662百万円、20.5%増)となりました。
(保険事業)
保険事業におきましては、連結子会社であるヒューリック保険サービス株式会社が、国内・外資系の保険会社と代理店契約を結んでおり、法人から個人まで多彩な保険商品を販売しております。保険業界の事業環境は引き続き厳しい環境にありますが、既存損保代理店の営業権取得を重点戦略として、法人取引を中心に営業展開をしております。
この結果、当セグメントにおける営業収益は2,966百万円(前期比△23百万円、0.7%減)、営業利益は667百万円(前期比48百万円、7.8%増)となりました。
(ホテル・旅館事業)
ホテル・旅館事業におきましては、連結子会社であるヒューリックホテルマネジメント株式会社は「THE GATE HOTEL」シリーズ、ヒューリックふふ株式会社は「ふふ」シリーズ、日本ビューホテル株式会社は「ビューホテル」シリーズを中心に、ホテル及び旅館の運営をおこなっております。
当連結会計年度においては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、一部店舗の一時休業、稼働率の低下、レストランや宴会等のキャンセルが生じたことに加えて、「THE GATE HOTEL」や「ふふ」の新規店舗の開業が重なったことにより費用が増加いたしました。
この結果、当セグメントにおける営業収益は17,672百万円(前期比1,233百万円、7.5%増)、営業損失は7,492百万円(前期は営業損失0百万円)となりました。
(その他)
その他におきましては、主に連結子会社であるヒューリックビルド株式会社が、当社保有ビル等の営繕工事、テナント退去時の原状回復工事、新規入居時の内装工事を中心に受注実績を積み上げた結果、営業収益は10,214百万円(前期比1,928百万円、23.2%増)、営業利益は1,157百万円(前期比559百万円、93.6%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動により202,304百万円増加し、投資活動により343,137百万円減少し、財務活動において187,388百万円増加し、当連結会計年度末には94,704百万円となりました。
(単位:百万円)
2019年12月期2020年12月期
営業活動によるキャッシュ・フロー231,180202,304
投資活動によるキャッシュ・フロー△358,334△343,137
財務活動によるキャッシュ・フロー141,523187,388
現金及び現金同等物の期末残高48,38094,704

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは202,304百万円の収入(前期比△28,876百万円)となりました。これは主に、不動産賃貸収入及び販売用不動産の売却を主因とした税金等調整前当期純利益が91,280百万円、減価償却費が15,866百万円、たな卸資産の減少額が116,937百万円あったためであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは343,137百万円の支出(前期比15,197百万円)となりました。これは主に、賃貸ポートフォリオの再構築と開発事業及びバリューアッド事業の強靭化の観点から、ポートフォリオの組替や開発・建替等をおこなったためであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは187,388百万円の収入(前期比45,865百万円)となりました。これは主に、開発・建替や新規物件の取得に伴う資金調達をおこなった一方で、配当金の支払いがあったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年1月1日
至 2020年12月31日)
前期比(%)
不動産事業 (百万円)314,819△6.0
保険事業 (百万円)2,966△0.7
ホテル・旅館事業 (百万円)17,6727.5
その他 (百万円)10,21423.2
調整額 (百万円)△6,027-
合計 (百万円)339,645△4.9

(注)1.各セグメントの営業収益は、セグメント間の内部営業収益、振替高を含みます。
2.本表の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次の通りであります。
相手先前連結会計年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
当連結会計年度
(自 2020年1月1日
至 2020年12月31日)
金額
(百万円)
割合(%)金額
(百万円)
割合(%)
ジャパン・ホテル・リート投資法人62,64917.5--
ヒューリックリート投資法人--35,58310.4

4.販売実績が総販売実績の100分の10未満の相手先については記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、経済活動や消費活動が低迷し、外食産業や観光産業を中心に幅広い産業で厳しい状況が続きました。
不動産業界におきましては、一部の商業施設や宿泊施設においては収益が減少し、オフィスの空室率は上昇しているものの、不動産投資マーケットは、低金利を背景に、不動産投資家の旺盛な投資マインドが継続したため、引き続き安定した市場を形成しました。
こうした環境のもと、当社グループは、2020年度を初年度とする中長期経営計画に基づき、「変革」と「スピード」をベースに、環境変化に柔軟に対応した進化を通じて、持続的な企業価値向上の実現に注力してまいりました。
当連結会計年度の達成状況は以下の通りであります。
0102010_006.png経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)目標とする経営指標」に記載しております。
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次の通りであります。
a.経営成績の分析
(営業収益)
当連結会計年度の営業収益は、339,645百万円となり、対前期比で17,626百万円減少いたしました。これは、前連結会計年度及び当連結会計年度に竣工、取得した物件による不動産賃貸収入の増加があった一方で、前連結会計年度において、大型の販売用不動産の売却があったことによるものであります。
(営業利益)
当連結会計年度の営業利益は、100,596百万円となり、対前期比で12,243百万円増加いたしました。これは、物件の竣工、取得による不動産賃貸収入の増加及び販売用不動産の売上総利益が増加したことによるものであります。
(経常利益)
当連結会計年度の経常利益は、95,627百万円となり、対前期比で10,982百万円増加いたしました。これは、上記営業利益の増加があった一方で、支払利息の増加等により営業外費用が増加したことによるものであります。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、63,619百万円となり、対前期比で4,813百万円増加いたしました。これは、上記経常利益の増加があった一方で、税金費用が増加したことによるものであります。b.財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は、2,019,336百万円となり、対前期末比243,064百万円増加いたしました。当社グループにおきましては、賃貸ポートフォリオの再構築と開発事業及びバリューアッド事業の強靭化の観点から、ポートフォリオの組替や開発・建替及びバリューアッド事業を推進しております。
また、ヒューリックリート投資法人及びヒューリックプライベートリート投資法人の中長期的な収益向上と優良アセットの着実な積上げを実現するために、スポンサーとしてのサポートやバックアップにも努めております。
主な項目の増減は以下の通りであります。
・現金及び預金46,323百万円増加(新型コロナウイルス感染症再拡大に備えた手元資金の積み増し等)
・販売用不動産19,002百万円増加(固定資産との振替、物件の取得及び売却等)
・建物及び構築物10,914百万円増加(物件の取得、竣工及び販売用不動産との振替等)
・土地160,318百万円増加(物件の取得及び販売用不動産との振替等)
・借地権6,031百万円減少(販売用不動産への振替等)
・投資有価証券5,033百万円増加(投資有価証券の取得、売却及び有価証券の含み益の減少等)

(負債)
当連結会計年度末の負債合計は、1,530,293百万円となり、対前期末比215,878百万円増加いたしました。これは主に、設備投資等に伴い、資金調達をおこなったことによるものであります。
当社グループの借入金残高は1,015,188百万円となっておりますが、このうち特別目的会社(SPC)のノンリコースローンが23,145百万円含まれております。金融機関からの資金調達については、高い収益力を背景として安定的に低コストで調達をおこなっております。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産合計は、489,043百万円となり、対前期末比27,186百万円増加いたしました。このうち株主資本合計は、456,991百万円となり、対前期末比で39,691百万円増加しております。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益による利益剰余金の増加及び配当金の支払による利益剰余金の減少によるものであります。
また、その他の包括利益累計額合計は、29,495百万円となり、対前期末比で12,297百万円減少いたしました。これは主に、有価証券の含み益が16,165百万円減少したことによるその他有価証券評価差額金の減少によるものであります。
c.経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載の通りであります。
d.セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載の通りであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、必要な資金を主に銀行借入、社債や短期社債(コマーシャル・ペーパー)等の発行によって調達する方針としており、当社グループの今後の資金需要は、主に不動産事業に係る設備投資であり、「第3 設備の状況 3.設備の新設、除却等の計画」に記載しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4.会計方針に関する事項」に記載の通りであります。この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断をおこなっておりますが、不確実性が内在しているため、将来生じる実際の結果と異なる可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載の通りであります。
連結財務諸表の作成に用いた会計上の見積り及び仮定のうち、特に重要なものは以下の通りと考えております。
a.たな卸資産の評価
当社グループは、販売目的で保有している販売用不動産等について、収益性の低下により期末における正味売却価額の見積り額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額の見積り額をもって貸借対照表価額とし、その差額は簿価切下げとして営業原価に計上しております。
そのため事業環境の変化などにより、上記見積り額の前提や仮定に変更が生じた場合には、簿価切下げに伴う営業原価の計上が必要となる可能性があります。
b.固定資産の減損会計
当社グループは、減損が生じている可能性を示す事象(減損の兆候)がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。回収可能価額には正味売却価額と使用価値のいずれか高い方を用いており、使用価値については、継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値を見積もっております。
そのため事業環境の変化などにより、上記見積り額の前提や仮定に変更が生じた場合には、減損損失の計上が必要となる可能性があります。