有価証券報告書-第63期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/29 14:12
【資料】
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【項目】
141項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、市販出版物及び電子書籍・アプリの販売、雑誌広告・WEB広告の販売、出版物に由来するブランドや商標権の権利許諾等を行う「メディア事業」、当社グループのコアコンピタンスである地図・ガイドデータベース製品の販売、同データベースを活用したシステム製品やソリューションの販売等を行う「ソリューション事業」、そして「その他事業」区分として、当社グループが保有する土地・建物等の有形固定資産について有効活用することを目的とした「不動産事業」等を行っております。(観光事業及びコールセンター事業につきましては、2022年3月期において連結事業から除外されております。)
近年、情報提供方法のメインストリームは従来の紙媒体から電子媒体へと移行し、多種多様な情報を多くの利用者に大量かつリアルタイムで提供することが可能となってきたために、これまでの事業形態をそのまま維持継続するのはますます困難な事業環境となっております。そこで旧来の体制における課題を打開すべく、事業ごとの最新状況の透明化と意思決定のさらなる迅速化を図りつつ、グループ全体の戦略マネジメント機能を事業経営から分離することを主眼として、当社グループは2020年4月1日より、持株会社が事業会社を子会社とするいわゆるホールディングス体制に移行いたしております。また、これに合わせて当社グループの経営の中核となる経営理念を『安心な暮らしと楽しい旅をサポートする企業』に刷新し、この新たな経営理念に基づき、下記を経営方針として取り決めております。
『当社グループは、地図や実用情報・サービスの提供により、人々の安心な暮らしを支える環境づくりに貢献するとともに、旅やお出かけの特選情報・サービスの提供により、人々の幸せの記憶づくりのお手伝いを行ってまいります。これを実現すべく、協力会社・提携企業との共生を図りながら、情報収集・提供のノウハウ・技術を獲得、蓄積してまいります』
当社グループを取り巻く経営環境及び対処すべき課題等については、以下の通りに認識しております。
まずWEBやスマホアプリの普及拡大により、絶えず情報無料化の波にさらされるようになったことがあげられます。無料情報を通じて大量のユーザーを囲い込み、広告やクーポン配布を通じて物品・サービスの購入に導くタイプのWEBやアプリ媒体が広範に普及したことに加えて、ブログ・SNS・動画配信アプリといったユーザー発信・共有型メディアが普及し、ユーザー相互間の情報交流が一般化するとともに一次情報に対するユーザーの評価・コメント等が二次情報として注目されるようになりました。こうした時代にあって単なる情報はすでに価値が乏しく、情報に合わせてどのような付加価値を提供していくかが重要な課題であると認識し対応してまいりました。例えば、独自の情報源や取捨選択ノウハウにより収集した特選情報を斬新な切り口で提供すること、ユーザー個々の価値観や趣味嗜好に寄り添うブランドを育成し公式SNSの運営等を通じて親しみを感じ信頼していただける情報として提供すること、情報のみならず独自のサービスやソリューション等の付加価値を添えて提供すること、等々であります。また同時に、電子媒体の普及はこれまでの版元、取次、書店といった出版物の流通のあり方にも大きな影響が及び、出版物の流通の一部をネット書店が担うようになり、電子書籍市場も着実に拡大してまいりました。このため従来のやり方を見直し、出版物の流通在庫を最適化する一方、営業や間接業務における合理化・省力化に積極的に取り組むことでコスト構造改革を進め、合わせて事業拠点の統廃合・再配置等も実施してまいりました。
さらに、最新のAI応用技術においては、従来とは桁違いのビッグデータを用いてユーザー個々のよりきめ細かなニーズに対応した情報やサービスの提供が可能になるばかりでなく、企業の生産・営業活動の様々な領域において現在ひとが従事している多くの業務を置き換えていくことさえ期待されております。こうした環境変化に対し、当社グループとしても、従来の市販出版物事業やソリューション事業を行うことと並行して、これまで以上にWEBやスマホアプリ、電子書籍等、電子媒体による情報提供に注力し、最新の技術やノウハウを蓄積することで、より使いやすく利便性の高い情報提供やソリューションのあり方に取り組んでいくことが重要な課題であると認識しております。加えて、グループ各社の事業を支える業務全般についてDX(デジタルトランスフォーメーション)を採り入れることでさらなる合理化・効率化への変革も進めております。具体的には、間接業務を含むすべての業務におけるテレワーク、オンライン会議、ペーパーレス化等、営業におけるWEB営業、ウェビナー、オンライン決済等、制作におけるWEB編集・校正等によるものであります。
こうした課題認識の中、2019年に初めて確認された新型コロナウイルス感染症が瞬く間に世界中に拡大してパンデミックとなりました。同感染症は国内でも数次にわたって波状的に流行し、それに対応する政府や自治体による緊急事態宣言やそれに準じる措置が繰り返し発出されたことで、飲食・宿泊サービス業、旅客輸送業、旅行関連業界が長期にわたる停滞を余儀なくされ、また、国境をまたぐ渡航については見通しが立たない局面が継続する等、当社グループを取り巻く事業環境が甚大な影響を受けることとなりました。当社グループとしても、喫緊の課題として上記DXを含めコスト構造改革となる施策を矢継ぎ早に実施してまいりましたが、かかる事態が長期に及んだため、さらなる事業再編、構造改革に踏み込んだ対策が必要との認識に立ち、市販出版物事業において営業及び物流拠点の統廃合を実施した上、事業戦略に沿った人員体制の適正化のために希望退職者の募集を行い、また、観光事業及びそのバックヤード業務が中心となるコールセンター事業においては、第三者割当増資や持ち株譲渡等の施策を通じて当社グループの事業から除外することとなりました。
世界中がコロナ禍に見舞われて以来二年余りが経過し、なお新変異株の出現による流行の波が訪れる懸念は残るものの、ワクチンの追加接種や治療薬の普及浸透により、事業環境に及ぼす影響は次第に軽微なものになっていくことが期待されております。当社グループとしては、今般の緊急事態を乗り切るための事業再編、構造改革を経た今、アフターコロナ時代に向け、引き続きDXによる様々な施策、新規事業開発、業務提携による商品・サービス開発等を積極的に推進しつつ、グループの柱となる各事業を早期に再生し、かつ再成長の軌道に乗せることが重要な課題であると認識し、この課題にグループ一丸となって取り組んでまいります。