四半期報告書-第155期第3四半期(令和2年10月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/02/12 9:58
【資料】
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【項目】
42項目
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当第3四半期連結累計期間における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
財政状態及び経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間の世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動停滞に一部で持ち直しの動きがみられるものの、引き続き厳しい状況で推移しており、先行きは不透明な状況にあります。
このような環境の中、期初の様々な産業における需要低迷の影響を受け、業績は前年同期比で減収減益(親会社株主に帰属する四半期純利益を除く)となりましたが、当社グループでは、徹底したコストダウンに取り組むとともに、自動車生産などの需要回復による販売機会を着実に捉え、期の経過とともに業績を回復させてまいりました。
当第3四半期連結累計期間の売上高は2,813億59百万円(前年同期比10.0%減)、営業利益は187億26百万円(同17.3%減)、経常利益は202億23百万円(同16.7%減)となりました。親会社株主に帰属する四半期純利益は、前年同期にモビリティ事業などにおいて構造改革に関する特別損失を計上していたことや、当期10月のポリプラスチックス株式会社の完全子会社化などもあり、前年同期比増益の112億34百万円(同141.7%増)となりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より報告セグメントを変更しております。
[メディカル・ヘルスケア事業]
コスメ・健康食品事業は、中国での需要の回復などにより化粧品原料の販売数量が増加したものの、その他地域での需要の減少により市況が下落し、減収となりました。
キラル分離事業は、キラルカラムの販売増加や、中国、インドでの事業が好調に推移したことにより、増収となりました。
当部門の売上高は、119億64百万円(前年同期比3.1%増)、営業利益は、販売価格の低下などにより、12億21百万円(同8.1%減)となりました。
[スマート事業]
液晶表示向けフィルム用の酢酸セルロースや高機能フィルムなどのディスプレイ事業は、ディスプレイ需要の低迷などにより、販売数量が減少し、減収となりました。
電子材料向け溶剤やレジスト材料などのIC/半導体事業は、半導体市場の需要が堅調に推移したことにより、販売数量が増加し、増収となりました。
当部門の売上高は、175億73百万円(前年同期比8.1%減)、営業利益は、販売数量の減少などにより、20億80百万円(同26.2%減)となりました。
[セイフティ事業]
自動車エアバッグ用インフレータ(ガス発生装置)などのモビリティ事業は、自動車生産台数の減少などにより、販売数量が減少し、減収となりました。
当部門の売上高は、466億98百万円(前年同期比19.5%減)、営業利益は、販売数量減少による稼働率低下などにより、5億64百万円(同81.2%減)となりました。
[マテリアル事業]
酢酸は、需要の減少や市況の下落などにより、減収となりました。
酢酸誘導体は、一部製品の需要増加により販売数量が増加したものの、酢酸市況の下落などで販売価格が低下したことにより、減収となりました。
アセテート・トウは、海外主要顧客での原料確保の動きなどもあり、販売数量は横這いで推移しましたが、為替の影響などにより、販売価格が低下し、減収となりました。
カプロラクトン誘導体やエポキシ化合物などは、一部用途での需要の回復が見られるものの、欧州市場やFRP向けなどの需要が引き続き低調であることから販売数量が減少し、減収となりました。
当部門の売上高は、749億1百万円(前年同期比8.0%減)、営業利益は、販売数量の減少などにより、108億64百万円(同0.8%減)となりました。
[エンジニアリングプラスチック事業]
ポリアセタール樹脂、PBT樹脂、液晶ポリマーなどのエンジニアリングプラスチック事業は、次世代通信用途での需要が増加したものの、自動車生産台数の減少やスマートフォンの需要低迷などにより、減収となりました。
ABS樹脂、エンプラアロイを中心とした樹脂コンパウンド事業は、自動車生産台数の減少や住宅着工件数の減少などにより、減収となりました。
シート、成形容器、包装フィルムなどの樹脂加工事業は、包装フィルムの販売減少などにより、減収となりました。
当部門の売上高は、1,211億61百万円(前年同期比9.9%減)、営業利益は、販売数量の減少などにより、140億44百万円(同12.3%減)となりました。
[その他]
その他部門は、防衛関連事業での販売数量が増加したことなどにより、増収となりました。
当部門の売上高は、90億61百万円(前年同期比10.8%増)、営業利益は、12億87百万円(同204.3%増)となりました。
財政状態は、次のとおりであります。
総資産は、たな卸資産等の減少がありましたが、受取手形及び売掛金や有形固定資産等の増加により、前連結会計年度末に比し119億40百万円増加し、6,099億32百万円となりました。
負債は、主に社債や短期借入金等の増加により、前連結会計年度末に比し1,827億64百万円増加し、3,881億72百万円となりました。
また純資産は、2,217億60百万円となりました。純資産から非支配株主持分を引いた自己資本は、2,150億72百万円となり自己資本比率は35.3%となりました。
(2) 経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(4) 財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第3四半期連結累計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について重要な変更を行いました。その内容は次のとおりであります。
当社は、当社の企業価値向上および当社株主の共同の利益を守るための取組みの一つとして、当社株券等の大規模買付行為への対応方針(買収防衛策)を導入しておりましたが、2020年6月19日開催の定時株主総会終結の時をもって、本対応方針を継続せず、廃止いたしました。この廃止に伴い、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針を、以下の通りといたしました。
①基本方針の内容
当社は、「価値共創によって人々を幸せにする会社~Sustainable Value Together~」を基本理念とし、この理念のもとで企業価値を向上させる経営を行うためには、現有事業や将来事業化が期待される企画開発案件等に関する専門知識、経験、ノウハウ、および国内外の顧客、取引先、従業員等のステークホルダーとの間に築かれた関係を維持、発展させていくことが不可欠であると考えます。
当社は、上場会社として、当社株式の売買は原則として市場における株主および投資家の皆様の自由な判断に委ねるべきものと考えており、特定の者による大規模な株式買付行為に応じて当社株式の売却を行うか否かは、最終的には当社株式を保有する当社株主の皆様の判断に委ねられるべきものであると考えます。しかしながら、大規模な株式買付行為の中には、その目的等から見て大規模な株式買付の対象となる会社の企業価値または株主様共同の利益(株主共同の利益)に資さないものもあります。
当社は、当社の企業価値または株主共同の利益を毀損するおそれのある大規模な株式買付行為またはこれに類似する行為を行う者は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者として適切ではないと考えます。
②基本方針の実現に資する特別な取り組み
当社は、2020年6月、長期ビジョン『DAICEL VISION 4.0』を策定いたしました。当社グループは、この『DAICEL VISION 4.0』の中で、「価値共創によって人々を幸せにする会社~Sustainable Value Together~」を新たな基本理念として制定し、持続可能な社会の実現と当社の事業拡大を両立するための「サステナブル経営方針」を基本理念の次に重要なものと位置付けました。「サステナブル経営方針」にある、「働く人の幸せ」「幸せを提供する環境」「社会と人々の幸せ」というスパイラルアップを実現していくことが企業価値全体の向上、そして株主共同の利益の一層の向上に繋がるものと確信しております。そして、『DAICEL VISION 4.0』の実現に向けて3つのオペレーション(OP-Ⅰ・原ダイセル、OP-Ⅱ・新ダイセル、OP-Ⅲ・新企業集団)を定義し、各オペレーション実行のために、『DAICEL VISION 4.0』期間中に、適時に中期戦略を策定・遂行してまいります。
当社は、これらの長期ビジョン、中期戦略を達成していくことが、当社の企業価値の一層の向上に繋がるものと確信しております。
③不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み
当社株式の大規模な買付行為を行い、または行おうとする者に対しては、当該大規模買付行為の是非を株主の皆様が適切に判断するために必要かつ十分な情報の提供を求め、併せて取締役会の意見を開示し、株主の皆様の検討のために必要な情報と時間の確保に努める等、金融商品取引法、会社法その他関連法令に基づき、適切な措置を講じてまいります。
④上記取組みについての取締役会の判断およびその判断に係る理由
1)上記②の取組みについての取締役会の判断およびその判断に係る理由
当社取締役会は、上記②の取組みが、専門知識、経験、ノウハウ、および国内外の顧客、取引先、従業員等のステークホルダーとの信頼関係に基づくものであり、当社の企業価値の向上を目的とするものであることから、基本方針に沿うものであり、また当社株主共同の利益を損なうものではないと考えます。
2)上記③の取組みについての取締役会の判断およびその判断に係る理由
上記③の取組みは、当社株式の大規模買付行為がなされた際に、当該大規模買付行為に応じるか否かを株主の皆様が適切に判断し、または当社取締役会が代替案を提案するために必要な情報や時間を確保すること、ならびに株主の皆様のために大規模買付者と交渉等を行うこと等を可能にすることにより、当社の企業価値および株主共同の利益を守ることを目的としております。
したがいまして、当社取締役会は、この取組みが基本方針に沿うものであり、当社株主共同の利益を損なうものではなく、また当社取締役の地位の維持を目的とするものではないと考えます。
(5) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、14,608百万円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況で特筆すべき内容は、次のとおりであります。
2020年4月1日付の組織変更により設置された「戦略ビジネスユニット(SBU)」は、事業企画・マーケティング・研究開発の機能を有しております。対象とする市場やお客様に主眼を置いた「マーケットイン」型の研究開発をより強化してまいります。
また、長期ビジョン『DAICEL VISION 4.0』に基づき、新たに策定した中期戦略『Accelerate 2025』の機能別戦略において、事業創出力として研究開発に係る方策をまとめております。未来社会課題からの要求の実用化を目指し、ユーザー目線でシーズを掘り起こすR(Research、研究)と、Rで掘り起こしたシーズを活用するとともに、事業化力を磨き、お客様とニーズを具現していくD(Development、開発)との相互作用による事業創出を進めてまいります。さらに、「攻め」の知的財産活動であるProactive IP活動(技術、知的財産情報、事業化のアンテナ機能)により、事業創出を加速していきます。
さらに、2020年7月1日付の組織変更により、生産技術に関わる技術者を事業創出本部で一元管理して、当社グループ横断的な体制で、プロセス革新による新規プロセス・技術構築を加速し、地球環境と共生する循環型プロセス構築も図ってまいります。
パイロテクニックを活用した薬剤の投与制御技術をベースとした新規投与デバイスでは、大阪大学とアンジェス株式会社による新型コロナウイルス(COVID-19)向けDNAワクチン共同開発プロジェクトに参画しております。2020年12月、大阪大学医学部附属病院が実施する「COVID-19 DNAワクチンの第I/II 相試験」(医師主導治験)において、症例登録された被験者(健康成人)に対して、当社新規投与デバイスを用いたワクチン投与が開始されました。
(6) 経営成績に重要な影響を与える要因
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について重要な変更はありません。
(7) 資本の財源及び資金の流動性
資金需要
当社グループにおける主な運転資金需要は、製品製造のための原材料の購入、労務費などの製造費用と、製品の仕入、販売費及び一般管理費等の支払いであります。
当社グループでは、製造設備の増強および更新などのほか、安全向上対策ならびに現業各設備の合理化・省力化を継続的に行っております。当第3四半期連結累計期間の設備投資額は前第3四半期連結累計期間に比し103億円減少し、304億円(前第3四半期連結累計期間比25.3%減)、減価償却費は前第3四半期連結累計期間に比し28億円減少し、191億円(前第3四半期連結累計期間比12.6%減)となりました。
財務政策
当社グループは、設備投資計画に照らして、必要な資金を銀行借入や社債発行により調達しております。短期的な運転資金は、キャッシュマネジメントサービスを通じてグループ内で余剰資金を活用しておりますが、地域、通貨、金利動向等を考慮した結果、銀行借入による調達を行う場合があります。当第3四半期連結会計期間末における借入金およびリース債務を含む有利子負債の残高は2,788億円であります。
利益配分に関しては、各事業年度の連結業績を反映した配当と、より強固な収益基盤を確立して中長期的な株主価値向上に資するための内部留保の充実とを総合的に勘案した、バランスのとれた利益配分を基本方針としております。また、自己株式の取得につきましても、配当を補完する株主還元策として機動的に実施してまいります。
なお、2017年度から3年間の中期計画『3D-Ⅲ』におきましては、配当性向30%を目標とし、自己株式の取得につきましても機動的に実施してまいりました。2020年度を初年度とする中期戦略『Accelerate 2025』におきましても基本的な考え方は変わらず、資産効率の最大化と最適資本構成の実現、資金調達力維持のための財務健全性確保、安定的かつ連結業績を反映した配当を総合的に勘案し、利益配分を決定してまいります。