有価証券報告書-第154期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、米中貿易摩擦の深刻化、中国の景気減速、日韓関係の悪化に加え、新型コロナウイルスの感染拡大など、先行き不透明な状況のうちに推移しました。
このような環境の中、当社グループは、コストダウンを徹底するとともに、基盤強化の取り組みを加速させるなど業績の向上に懸命に取り組んでまいりましたが、中国の景気減速の影響や自動車エアバッグ用インフレータ(ガス発生装置)の他社リコール代替品供給の終息に伴う販売品種構成の変化などの影響を受けました。さらに第4四半期に新型コロナウイルス感染症拡大による中国での需要減少により、自動車エアバッグ用インフレータやエンジニアリングプラスチックなどの販売が減少したこともあり、当連結会計年度の業績は前年度と比較し減収減益となりました。
当連結会計年度の売上高は4,128億26百万円(前年度比11.2%減)、営業利益は296億44百万円(同42.1%減)、経常利益は317億81百万円(同40.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、火工品事業で147億57百万円の減損損失を特別損失として計上したこともあり、49億78百万円(同85.9%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
セルロース事業部門
酢酸セルロースは、たばこフィルター用途や、液晶表示向けフィルム用途の販売数量減少などにより、減収となりました。
たばこフィルター用トウは、世界的に需給が緩んでいる中、主要顧客でのシェア拡大や新規顧客開拓に取り組んだことにより、販売数量は増加し、増収となりました。
当部門の売上高は、757億44百万円(前年度比9.0%減)、営業利益は、酢酸セルロースの販売数量の減少などにより、114億71百万円(同28.3%減)となりました。
有機合成事業部門
主力製品の酢酸及び合成品は、市況の下落および中国の景気減速の影響などによる国内外の販売数量の減少により、減収となりました。
機能品は、需給の逼迫が続いている脂環式エポキシの販売数量が増加したものの、中国の景気減速などの影響により自動車分野、電子材料分野、化粧品分野向け製品の需要が減少し、全体としては、減収となりました。
光学異性体分離カラムなどのキラル分離事業は、充填剤の販売などが減少したものの、新規事業が順調に伸びたことにより、売上高は横這いとなりました。
当部門の売上高は、801億42百万円(前年度比10.5%減)、営業利益は、製品市況の下落などにより、101億円(同29.8%減)となりました。
合成樹脂事業部門
ポリアセタール樹脂、PBT樹脂、液晶ポリマーなどのエンジニアリングプラスチック事業は、中国の景気減速による自動車生産台数の減少やスマートフォンの需要低迷、第4四半期における新型コロナウイルス感染拡大の影響により、減収となりました。
ABS樹脂、エンプラアロイ樹脂を中心とした樹脂コンパウンド事業は、中国の景気減速や第4四半期における新型コロナウイルス感染拡大の影響などにより、販売数量が減少し、減収となりました。
シート、成形容器、フィルムなどの樹脂加工事業は、主に高機能フィルムの販売が増加したものの、シートなどの販売が減少したことにより、減収となりました。
当部門の売上高は、1,657億79百万円(前年度比5.7%減)、営業利益は、販売数量の減少などにより、201億9百万円(同2.5%減)となりました。
火工品事業部門
自動車エアバッグ用インフレータ(ガス発生装置)などの自動車安全部品事業は、新車用通常ビジネスでは国内や中国市場での拡販を進めたものの、第4四半期に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、販売数量は前年並みとなりました。事業全体としては、他社リコール代替品供給が終息に向かっているため、販売数量が減少し、減収となりました。
防衛関連製品などの特機事業は、販売数量の減少などにより、減収となりました。
当部門の売上高は、812億76百万円(前年度比24.7%減)、営業利益は、自動車エアバッグ用インフレータの他社リコール代替供給の縮小により、34億71百万円(同77.7%減)となりました。
その他部門
その他部門は、前年度に買収した海外の製剤事業会社が寄与したことなどにより、増収となりました。
当部門の売上高は、98億84百万円(前年度比18.2%増)、営業利益は、のれん償却負担の増加により、3億70百万円(同37.2%減)となりました。
財政状態は、次のとおりであります。
総資産は、有形固定資産の増加等がありましたが、現金及び預金や受取手形及び売掛金の減少等により、前連結会計年度末に比し567億99百万円減少し5,979億92百万円となりました。
負債は、支払手形及び買掛金、社債や環境対策引当金の減少等により、前連結会計年度末に比し261億39百万円減少し、2,054億8百万円となりました。
また純資産は、3,925億83百万円となりました。純資産から非支配株主持分を引いた自己資本は3,625億45百万円となり、自己資本比率は60.6%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比し393億42百万円減少し、806億74百万円(前連結会計年度末比32.8%減)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は571億93百万円(前連結会計年度は、585億23百万円の増加)となりました。資金増加の主な内容は、税金等調整前当期純利益166億56百万円および減価償却費293億96百万円であり、資金減少の主な内容は、法人税等の支払額98億20百万円であります。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は458億64百万円(前連結会計年度は、410億95百万円の減少)となりました。資金減少の主な内容は、有形固定資産の取得による支出441億27百万円であります。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は478億83百万円(前連結会計年度は、256億36百万円の減少)となりました。資金増加の主な内容は、長期借入れによる収入72億31百万円であり、資金減少の主な内容は、社債の償還による支出100億円、自己株式の取得による支出178億14百万円、配当金の支払額104億10百万円および非支配株主への配当金の支払額48億78百万円であります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
(注)1 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
受注生産を行っているのは専ら火工品事業のうちの特機関連部門であり、主として発射薬等で受注状況は次のとおりであります。
(注) 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績等
中期計画『3D-Ⅲ』では、最終年度となる2019年度の売上高5,000億円、営業利益700億円を目標とし、ROE(自己資本利益率)と売上高営業利益率を重視する経営指標としておりました。
本中期計画の最終年度である当連結会計年度は、『3D-Ⅲ』目標値の達成に向け取り組んでまいりましたが、中国の景気減速や自動車エアバッグ用インフレータの品種構成の変化、新型コロナウイルス感染症拡大により自動車エアバッグ用インフレータやエンジニアリングプラスチック等の販売が減少したことなどを受け、減収減益となりました。
当社グループは、中長期的に資本コストを上回るROEの向上に取り組むため、当連結会計年度までROE10%以上を継続させることを目指しておりましたが、上記の減益要因に加え、減損損失計上により親会社株主に帰属する当期純利益が減少したことで、当連結会計年度におけるROEは1.3%(前連結会計年度比7.8ポイント低下)となりました。また、当連結会計年度の売上高営業利益率は7.2%(前連結会計年度比3.8ポイント低下)となりました。
2020年度を開始年度とする新長期ビジョン『DAICEL VISION 4.0』および新中期戦略『Accelerate 2025』を策定し、2025年度ターゲットとして、ROIC10.0%、EBITDA1,000億円超、営業利益の最高益更新を掲げております。これらの実現へ向け、業績回復と次の成長に向けた取り組みを強力に推進してまいります。
経営成績
売上高および営業利益
売上高、営業利益の概況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
営業外損益
営業外損益は21億円の収益(純額)となり、前連結会計年度に比し1億円悪化いたしました。
主に為替損益の悪化によるものであります。
特別損益
特別利益は27億円を計上いたしました。投資有価証券売却益26億円などによるものであります。
特別損失は179億円を計上いたしました。固定資産除却損31億円のほか、減損損失148億円などによるものであります。
法人税等
税効果会計適用後法人税の負担率(実効税率)は31.3%と、前連結会計年度に比し9.3ポイント増加いたしました。
非支配株主に帰属する当期純利益
非支配株主に帰属する当期純利益は65億円と、前連結会計年度に比し2億円(2.5%)減少いたしました。
親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は50億円と、前連結会計年度に比し303億円(85.9%)の減益となりました。
また、ROEは1.3%となり、前連結会計年度に比し7.8ポイント低下いたしました。
財政状態
資産、負債および純資産の状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
なお、有利子負債比率は15.5%となりました。
また、2019年2月21日および2019年11月1日取締役会決議に基づく自己株式の取得を178億円実施しております。
② 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性
キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資金需要
当社グループにおける主な運転資金需要は、製品製造のための原材料の購入、労務費など製造費用と、製品の仕入、販売費及び一般管理費等の支払いであります。
当社グループでは、製造設備の増強および更新などのほか、安全向上対策ならびに現業各設備の合理化・省力化を継続的に行っております。当連結会計年度の設備投資額は前連結会計年度に比し29億円増加し、476億円(前連結会計年度比6.4%増)、減価償却費は前連結会計年度に比し10億円減少し、290億円(前連結会計年度比3.5%減)となりました。
当社グループでは、既存事業の強化拡大および新事業創出のための研究開発に取り組んでおります。当連結会計年度の研究開発費は前連結会計年度に比し5億円増加し、213億円(前連結会計年度比2.6%増)となりました。
財務政策
当社グループは、設備投資計画に照らして、必要な資金を銀行借入や社債発行により調達しております。短期的な運転資金は、キャッシュマネジメントサービスを通じてグループ内で余剰資金を活用しておりますが、地域、通貨、金利動向等を考慮した結果、銀行借入による調達を行う場合があります。当連結会計年度末における借入金およびリース債務を含む有利子負債の残高は928億円であります。
利益配分に関しては、2020年度から6年間の中期戦略『Accelerate 2025』におきましては、
・資産効率の最大化と最適資本構成の実現(ROE≧ROIC≧ROA>WACC)
・資金調達力維持のための健全性確保
・安定的かつ連結業績を反映した配当
これら方針に沿い決定いたします。自己株式の取得につきましても配当を補完する株主還元策として機動的に実施してまいります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。
減損損失
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産グループについて、当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。
減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当っては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損損失額の算定に影響を与える可能性があります。
なお、会計上の見積りに対する新型コロナウイルス感染症の影響については「第5.経理の状況(追加情報)」に記載しております。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、米中貿易摩擦の深刻化、中国の景気減速、日韓関係の悪化に加え、新型コロナウイルスの感染拡大など、先行き不透明な状況のうちに推移しました。
このような環境の中、当社グループは、コストダウンを徹底するとともに、基盤強化の取り組みを加速させるなど業績の向上に懸命に取り組んでまいりましたが、中国の景気減速の影響や自動車エアバッグ用インフレータ(ガス発生装置)の他社リコール代替品供給の終息に伴う販売品種構成の変化などの影響を受けました。さらに第4四半期に新型コロナウイルス感染症拡大による中国での需要減少により、自動車エアバッグ用インフレータやエンジニアリングプラスチックなどの販売が減少したこともあり、当連結会計年度の業績は前年度と比較し減収減益となりました。
当連結会計年度の売上高は4,128億26百万円(前年度比11.2%減)、営業利益は296億44百万円(同42.1%減)、経常利益は317億81百万円(同40.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、火工品事業で147億57百万円の減損損失を特別損失として計上したこともあり、49億78百万円(同85.9%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
セルロース事業部門
酢酸セルロースは、たばこフィルター用途や、液晶表示向けフィルム用途の販売数量減少などにより、減収となりました。
たばこフィルター用トウは、世界的に需給が緩んでいる中、主要顧客でのシェア拡大や新規顧客開拓に取り組んだことにより、販売数量は増加し、増収となりました。
当部門の売上高は、757億44百万円(前年度比9.0%減)、営業利益は、酢酸セルロースの販売数量の減少などにより、114億71百万円(同28.3%減)となりました。
有機合成事業部門
主力製品の酢酸及び合成品は、市況の下落および中国の景気減速の影響などによる国内外の販売数量の減少により、減収となりました。
機能品は、需給の逼迫が続いている脂環式エポキシの販売数量が増加したものの、中国の景気減速などの影響により自動車分野、電子材料分野、化粧品分野向け製品の需要が減少し、全体としては、減収となりました。
光学異性体分離カラムなどのキラル分離事業は、充填剤の販売などが減少したものの、新規事業が順調に伸びたことにより、売上高は横這いとなりました。
当部門の売上高は、801億42百万円(前年度比10.5%減)、営業利益は、製品市況の下落などにより、101億円(同29.8%減)となりました。
合成樹脂事業部門
ポリアセタール樹脂、PBT樹脂、液晶ポリマーなどのエンジニアリングプラスチック事業は、中国の景気減速による自動車生産台数の減少やスマートフォンの需要低迷、第4四半期における新型コロナウイルス感染拡大の影響により、減収となりました。
ABS樹脂、エンプラアロイ樹脂を中心とした樹脂コンパウンド事業は、中国の景気減速や第4四半期における新型コロナウイルス感染拡大の影響などにより、販売数量が減少し、減収となりました。
シート、成形容器、フィルムなどの樹脂加工事業は、主に高機能フィルムの販売が増加したものの、シートなどの販売が減少したことにより、減収となりました。
当部門の売上高は、1,657億79百万円(前年度比5.7%減)、営業利益は、販売数量の減少などにより、201億9百万円(同2.5%減)となりました。
火工品事業部門
自動車エアバッグ用インフレータ(ガス発生装置)などの自動車安全部品事業は、新車用通常ビジネスでは国内や中国市場での拡販を進めたものの、第4四半期に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、販売数量は前年並みとなりました。事業全体としては、他社リコール代替品供給が終息に向かっているため、販売数量が減少し、減収となりました。
防衛関連製品などの特機事業は、販売数量の減少などにより、減収となりました。
当部門の売上高は、812億76百万円(前年度比24.7%減)、営業利益は、自動車エアバッグ用インフレータの他社リコール代替供給の縮小により、34億71百万円(同77.7%減)となりました。
その他部門
その他部門は、前年度に買収した海外の製剤事業会社が寄与したことなどにより、増収となりました。
当部門の売上高は、98億84百万円(前年度比18.2%増)、営業利益は、のれん償却負担の増加により、3億70百万円(同37.2%減)となりました。
財政状態は、次のとおりであります。
総資産は、有形固定資産の増加等がありましたが、現金及び預金や受取手形及び売掛金の減少等により、前連結会計年度末に比し567億99百万円減少し5,979億92百万円となりました。
負債は、支払手形及び買掛金、社債や環境対策引当金の減少等により、前連結会計年度末に比し261億39百万円減少し、2,054億8百万円となりました。
また純資産は、3,925億83百万円となりました。純資産から非支配株主持分を引いた自己資本は3,625億45百万円となり、自己資本比率は60.6%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比し393億42百万円減少し、806億74百万円(前連結会計年度末比32.8%減)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は571億93百万円(前連結会計年度は、585億23百万円の増加)となりました。資金増加の主な内容は、税金等調整前当期純利益166億56百万円および減価償却費293億96百万円であり、資金減少の主な内容は、法人税等の支払額98億20百万円であります。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は458億64百万円(前連結会計年度は、410億95百万円の減少)となりました。資金減少の主な内容は、有形固定資産の取得による支出441億27百万円であります。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は478億83百万円(前連結会計年度は、256億36百万円の減少)となりました。資金増加の主な内容は、長期借入れによる収入72億31百万円であり、資金減少の主な内容は、社債の償還による支出100億円、自己株式の取得による支出178億14百万円、配当金の支払額104億10百万円および非支配株主への配当金の支払額48億78百万円であります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | |
生産高(百万円) | 前年同期比(%) | |
セルロース事業 | 60,977 | △21.28 |
有機合成事業 | 78,849 | △3.12 |
合成樹脂事業 | 157,802 | △12.55 |
火工品事業 | 77,453 | △28.42 |
報告セグメント計 | 375,082 | △16.18 |
その他 | 5,949 | 42.56 |
合計 | 381,032 | △15.64 |
(注)1 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
受注生産を行っているのは専ら火工品事業のうちの特機関連部門であり、主として発射薬等で受注状況は次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | |||
受注高(百万円) | 前年同期比(%) | 受注残高(百万円) | 前年同期比(%) | |
火工品事業 | 7,804 | 28.6 | 9,702 | 15.5 |
(注) 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | |
販売高(百万円) | 前年同期比(%) | |
セルロース事業 | 75,744 | △9.01 |
有機合成事業 | 80,142 | △10.47 |
合成樹脂事業 | 165,779 | △5.73 |
火工品事業 | 81,276 | △24.66 |
報告セグメント計 | 402,942 | △11.73 |
その他 | 9,884 | 18.17 |
合計 | 412,826 | △11.19 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績等
中期計画『3D-Ⅲ』では、最終年度となる2019年度の売上高5,000億円、営業利益700億円を目標とし、ROE(自己資本利益率)と売上高営業利益率を重視する経営指標としておりました。
本中期計画の最終年度である当連結会計年度は、『3D-Ⅲ』目標値の達成に向け取り組んでまいりましたが、中国の景気減速や自動車エアバッグ用インフレータの品種構成の変化、新型コロナウイルス感染症拡大により自動車エアバッグ用インフレータやエンジニアリングプラスチック等の販売が減少したことなどを受け、減収減益となりました。
当社グループは、中長期的に資本コストを上回るROEの向上に取り組むため、当連結会計年度までROE10%以上を継続させることを目指しておりましたが、上記の減益要因に加え、減損損失計上により親会社株主に帰属する当期純利益が減少したことで、当連結会計年度におけるROEは1.3%(前連結会計年度比7.8ポイント低下)となりました。また、当連結会計年度の売上高営業利益率は7.2%(前連結会計年度比3.8ポイント低下)となりました。
2020年度を開始年度とする新長期ビジョン『DAICEL VISION 4.0』および新中期戦略『Accelerate 2025』を策定し、2025年度ターゲットとして、ROIC10.0%、EBITDA1,000億円超、営業利益の最高益更新を掲げております。これらの実現へ向け、業績回復と次の成長に向けた取り組みを強力に推進してまいります。
経営成績
売上高および営業利益
売上高、営業利益の概況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
営業外損益
営業外損益は21億円の収益(純額)となり、前連結会計年度に比し1億円悪化いたしました。
主に為替損益の悪化によるものであります。
特別損益
特別利益は27億円を計上いたしました。投資有価証券売却益26億円などによるものであります。
特別損失は179億円を計上いたしました。固定資産除却損31億円のほか、減損損失148億円などによるものであります。
法人税等
税効果会計適用後法人税の負担率(実効税率)は31.3%と、前連結会計年度に比し9.3ポイント増加いたしました。
非支配株主に帰属する当期純利益
非支配株主に帰属する当期純利益は65億円と、前連結会計年度に比し2億円(2.5%)減少いたしました。
親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は50億円と、前連結会計年度に比し303億円(85.9%)の減益となりました。
また、ROEは1.3%となり、前連結会計年度に比し7.8ポイント低下いたしました。
財政状態
資産、負債および純資産の状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
なお、有利子負債比率は15.5%となりました。
また、2019年2月21日および2019年11月1日取締役会決議に基づく自己株式の取得を178億円実施しております。
② 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性
キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資金需要
当社グループにおける主な運転資金需要は、製品製造のための原材料の購入、労務費など製造費用と、製品の仕入、販売費及び一般管理費等の支払いであります。
当社グループでは、製造設備の増強および更新などのほか、安全向上対策ならびに現業各設備の合理化・省力化を継続的に行っております。当連結会計年度の設備投資額は前連結会計年度に比し29億円増加し、476億円(前連結会計年度比6.4%増)、減価償却費は前連結会計年度に比し10億円減少し、290億円(前連結会計年度比3.5%減)となりました。
当社グループでは、既存事業の強化拡大および新事業創出のための研究開発に取り組んでおります。当連結会計年度の研究開発費は前連結会計年度に比し5億円増加し、213億円(前連結会計年度比2.6%増)となりました。
財務政策
当社グループは、設備投資計画に照らして、必要な資金を銀行借入や社債発行により調達しております。短期的な運転資金は、キャッシュマネジメントサービスを通じてグループ内で余剰資金を活用しておりますが、地域、通貨、金利動向等を考慮した結果、銀行借入による調達を行う場合があります。当連結会計年度末における借入金およびリース債務を含む有利子負債の残高は928億円であります。
利益配分に関しては、2020年度から6年間の中期戦略『Accelerate 2025』におきましては、
・資産効率の最大化と最適資本構成の実現(ROE≧ROIC≧ROA>WACC)
・資金調達力維持のための健全性確保
・安定的かつ連結業績を反映した配当
これら方針に沿い決定いたします。自己株式の取得につきましても配当を補完する株主還元策として機動的に実施してまいります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。
減損損失
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産グループについて、当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。
減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当っては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損損失額の算定に影響を与える可能性があります。
なお、会計上の見積りに対する新型コロナウイルス感染症の影響については「第5.経理の状況(追加情報)」に記載しております。