四半期報告書-第156期第3四半期(令和3年10月1日-令和3年12月31日)

【提出】
2022/02/14 9:39
【資料】
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【項目】
40項目
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当第3四半期連結累計期間の世界経済は、新型コロナウイルスによる経済活動停滞に一部で持ち直しの動きがみられるものの、新型コロナウイルスの感染再拡大や半導体不足による自動車減産、物流の混乱など、先行き不透明な状況のうちに推移しました。
このような環境の中、当社グループでは、需要の回復による販売機会を着実に捉えるとともに、販売価格の是正、徹底したコストダウンを実施してまいりました。
新型コロナウイルスの影響を大きく受けた前年同期との比較では、当第3四半期連結累計期間の売上高は3,429億79百万円(前年同期比21.9%増)、営業利益は392億81百万円(同109.8%増)、経常利益は431億81百万円(同113.5%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は235億2百万円(同109.2%増)となりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
[メディカル・ヘルスケア事業]
コスメ・健康食品事業は、化粧品原料や健康食品素材の販売数量増加などにより、増収となりました。
キラル分離事業は、キラルカラムの販売が増加したことなどにより、増収となりました。
当部門の売上高は、145億85百万円(前年同期比21.9%増)、営業利益は、販売数量の増加などにより、25億70百万円(同110.5%増)となりました。
[スマート事業]
液晶表示向けフィルム用の酢酸セルロースや高機能フィルムなどのディスプレイ事業は、液晶パネル需要の好調などにより販売数量が増加し、増収となりました。
電子材料向け溶剤やレジスト材料などのIC/半導体事業は、半導体材料市場の需要が好調に推移し販売数量が増加したことや、販売価格の是正により、増収となりました。
当部門の売上高は、240億40百万円(前年同期比36.8%増)、営業利益は、販売数量の増加や販売価格の是正などにより、48億68百万円(同134.0%増)となりました。
[セイフティ事業]
自動車エアバッグ用インフレータ(ガス発生装置)などのモビリティ事業は、半導体不足などによる自動車減産の影響を受けたものの、前年同期比では新規プログラム獲得などにより販売数量が増加し、増収となりました。
当部門の売上高は、503億48百万円(前年同期比7.8%増)、営業利益は、販売数量の増加や稼働率の回復などにより、43億52百万円(同671.7%増)となりました。
[マテリアル事業]
酢酸は、会計基準の変更により販売数量は減少しましたが、市況の上昇により、増収となりました。
酢酸誘導体は、酢酸市況の上昇などにより、増収となりました。
アセテート・トウは、会計基準の変更により販売数量は微減となりましたが、為替の影響により、売上高は横這いとなりました。
カプロラクトン誘導体やエポキシ化合物などは、自動車塗料、電子材料用途などの需要回復により販売数量が増加し、増収となりました。
当部門の売上高は、892億23百万円(前年同期比19.1%増)、営業利益は、販売価格の上昇などにより、183億40百万円(同68.8%増)となりました。
[エンジニアリングプラスチック事業]
ポリアセタール樹脂、PBT樹脂、液晶ポリマーなどポリプラスチックス株式会社の事業は、自動車、スマートフォンなどの需要回復により販売数量が増加したことや、販売価格の是正などにより、増収となりました。
ABS樹脂、エンプラアロイ樹脂、フィルム、水溶性高分子などダイセルミライズ株式会社の事業は、需要の好調による販売数量の増加などにより、増収となりました。
当部門の売上高は、1,567億55百万円(前年同期比29.4%増)、営業利益は、販売数量の増加や販売価格の是正などにより、195億30百万円(同39.1%増)となりました。
[その他]
その他部門は、防衛関連事業での販売数量の減少などにより、減収となりました。
当部門の売上高は、80億25百万円(前年同期比11.4%減)、営業利益は、11億19百万円(同13.0%減)となりました。
財政状態は、次のとおりであります。
総資産は、現金及び預金等の減少がありましたが、棚卸資産及び有形固定資産等の増加により、前連結会計年度末に比し392億61百万円増加し、6,796億46百万円となりました。
負債は、支払手形及び買掛金等の増加により、前連結会計年度末に比し153億2百万円増加し、4,106億86百万円となりました。
また純資産は、2,689億60百万円となりました。純資産から非支配株主持分を引いた自己資本は、2,621億8百万円となり自己資本比率は38.6%となりました。
(2) 経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前連結会計年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5) 財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第3四半期連結累計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について重要な変更はありません。
(6) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、15,604百万円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況で特筆すべき内容は、次のとおりであります。
・長期ビジョン『DAICEL VISION 4.0』及び中期戦略『Accelerate 2025-II』の実現に向けて、ダイセルグループ横断の連携強化により、真のニーズを掘り起こすマーケットイン型の事業創出に取り組んでおります。2021年4月1日付の組織変更により、コーポレート部門の事業企画と研究開発部門を一体化した事業創出センターと事業創出に必要な評価技術を構築する評価解析センターを設置し、メンバー全員がマーケットに出て、お客様に密着するカスタマーインの取り組みを通じて、事業創出を加速致します。
また、生産本部生産技術センターでは、ダイセルグループ横断的な体制で新事業の工業化、既存製品の品質改善、プロセス改善、増産検討、プロセス革新による新規プロセス・技術構築の推進を加速し、地球環境と共生する循環型プロセス構築を図ってまいります。
・当社グループの事業構造転換と社会課題解決への貢献の両立を目指す、循環型社会構築に向けた「新バイオマスプロダクトツリー」構想も具体的な取り組みが進んでいます。産学連携講座を開設して共同研究を進めている国立大学法人金沢大学には、産産学学、様々な企業や大学がオープンに研究に取り組むことができる研究施設の建設を進めており、国立大学法人京都大学との間でも木材の温和な条件での可溶化など木を丸ごと使いきるための本格的な共同研究を2020年度からスタートさせております。
・2021年8月に高生分解性酢酸セルロース「CAFBLO™(キャフブロ)」が、海洋生分解性を証明する国際認証「OK biodegradable MARINE」を取得いたしました。長年培ったセルロース化学技術を応用し、より生分解しやすい分子構造を見いだし、従来製品の品質を保ったまま、特に海洋での生分解速度をさらに高めた新製品「CAFBLO™」を開発しました。人間が出す大量のプラスチックゴミによる海洋汚染により、漁業や海洋生態系への影響、人の健康への懸念などが、近年、大きな社会的課題となっています。当社は酢酸セルロースおよび高生分解性酢酸セルロース「CAFBLO™」の普及を通じてこの社会的課題の解決を目指します。
・国立大学法人京都大学と当社は、木材や農水産廃棄物などのバイオマスを高機能な材料や化学品に変換し、その価値を森林の再生や、農水産廃棄物の高付加価値利用に還元することにより、森、川、海、農山漁村、都市を再生し、自然と共生する低炭素社会の実現、新産業創出などに寄与することを目的とした、包括連携協定を締結しました。
さらに本包括連携協定のもと、バイオマスの新しい変換プロセス「新バイオマスプロダクトツリー」実現に向けた研究開発と持続的循環利用を共通テーマとした基礎的研究と研究成果の社会への還元を目指し、京都大学の大学院農学研究科、大学院人間・環境学研究科、化学研究所、エネルギー理工学研究所および生存圏研究所と包括的研究連携協定を締結しました。
(7) 経営成績に重要な影響を与える要因
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について重要な変更はありません。
(8) 資本の財源及び資金の流動性
資金需要
当社グループにおける主な運転資金需要は、製品製造のための原材料の購入、労務費などの製造費用と、製品の仕入、販売費及び一般管理費等の支払いであります。
当社グループでは、製造設備の増強および更新などのほか、安全向上対策ならびに現業各設備の合理化・省力化を継続的に行っております。当第3四半期連結累計期間の設備投資額は前第3四半期連結累計期間に比し53億円増加し、357億円(前第3四半期連結累計期間比17.3%増)、減価償却費は前第3四半期連結累計期間に比し4億円増加し、196億円(前第3四半期連結累計期間比2.2%増)となりました。
財務政策
当社グループは、設備投資計画に照らして、必要な資金を銀行借入や社債発行により調達しております。短期的な運転資金は、キャッシュマネジメントサービスを通じてグループ内で余剰資金を活用しておりますが、地域、通貨、金利動向等を考慮した結果、銀行借入による調達を行う場合があります。当第3四半期連結会計期間末における借入金およびリース債務を含む有利子負債の残高は2,775億円であります。
利益配分に関しては、中期戦略『Accelerate 2025-II』におきましては、収益力強化に加え適正在庫化などキャッシュコンバージョンサイクル削減効果で資金創出力向上を図ります。また、政策投資株式売却などにより資金創出力をさらに高め、余裕資金を成長投資や株主還元に活用します。株主還元は総還元性向40%以上とし、自己株式取得も視野に柔軟に対応してまいります。