有価証券報告書-第143期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/24 15:07
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対処すべき課題


当社は、「優れた医薬品の創出を通じて人々の健康と医療の未来に貢献する」というミッションを追求しています。また、当社は、「誠実:公正・正直・不屈」を企業活動の根幹に据え、「Patient(常に患者さんを中心に) 」、「Trust(社会との深い信頼関係を築く)」、「Reputation(当社の評価をさらに高める)」、「Business(ビジネスを成長させる)」を優先順位とする価値観に従います。
世界の製薬産業においては、がん免疫療法や細胞療法、遺伝子治療等の新たな医療技術が登場しており、イノベーションのスピードはかつてよりも速くなっています。このような革新的な医療による成果が現れてきている一方、画期的なバイオ医薬品の研究開発費は高騰し、高齢化社会の進展等も相まって各国の医療制度は財政的課題に直面しております。このため、保険者は保険償還対象となる医薬品をより厳格に選定するようになっており、各国政府は後発品やバイオシミラーの使用を促進し、薬価引き下げの圧力を強めています。しかしながら、未だ満たされていない医療ニーズは多く存在しており、患者さんの医薬品アクセスを高め、持続可能なヘルスケアシステムを維持していくことを含め、研究開発型の製薬企業に期待される役割は大きくなっています。
このような経営環境の下、当社は、世界中の患者さんに画期的な医薬品と革新的な治療法をお届けし得る、バリュー(価値観)、すなわち当社の経営の基本精神に基づき患者さんを中心に考える、機動的でグローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業の実現に注力し、変革を続けています。2019年1月のShire社の買収は、この変革の大きな一歩となりました。本買収は、事業展開の地域バランスの改善と米国をはじめとする主要な市場における競争力の源泉となる規模をもたらし、当社は、世界の大手製薬企業と伍していける力を得ました。連結売上収益に占める米国の割合は約半数にまで高まっております。また、本買収により、消化器系疾患およびニューロサイエンス(神経精神疾患)の領域が強化され、希少疾患および血漿分画製剤の領域における主導的地位がもたらされました。さらに、本買収は、強固かつモダリティ(創薬手法)の多様な、高度に補完的なパイプラインを創出し、イノベーションにフォーカスしたR&Dエンジンを強化することにつながっています。財務面においては、キャッシュフロープロファイルの拡大により、飛躍的な進歩が見込まれる医療技術への投資力が向上しており、株主に対する利益の還元についてもコミットしております。
Shire社の統合は、経験豊富で多様性に富んだ当社経営陣の指揮の下、当社の価値観を尊重しながら引き続き着実に実行してまいりますが、患者さんや社会、株主の皆様に長期的な価値をお届けできるよう、当社は既にOne Takedaとして事業運営を行っております。
当社は、地域戦略を着実に実行するため、「米国」、「日本」、「ヨーロッパ及びカナダ」、並びに中国、中南米、中東及びアフリカ、アジア太平洋、ロシア及びCIS(独立国家共同体)から構成される「成長新興国」の4つの地域ビジネスユニットを編成しています。このようにローカル中心のグローバル組織を構築することで、当社医薬品へのアクセス向上や患者さんが入手可能な価格設定といった各地域のニーズに迅速に対応することが可能となります。これら4つの地域ビジネスユニットに加え、専門性の高い領域であるオンコロジー(がん)、ワクチン、血漿分画製剤については、スペシャルティビジネスユニットを編成し、エンド・ツー・エンドの事業運営を行っております。
当社は、持続可能で中長期的な成長を促進するため、引き続き、以下の3つの戦略的優先事項に取り組んでまいります。
1)ビジネスエリアのフォーカス
消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー(がん)、ニューロサイエンス(神経精神疾患)の5つの主要ビジネスエリアにフォーカスします。
2)R&Dエンジン
当社は、患者さんを中心に考えるサイエンス主導の企業として、サイエンスから人生を変え得るような高度に革新的な医薬品を創出する取り組みを進めております。疾患領域の絞り込み、先進的なパートナーシップモデルの推進、新規メカニズムや新たな専門性への投資を通じて、R&Dエンジンを構築しております。バイオ医薬品の中でも、オンコロジー(がん)、希少疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)および消化器系疾患の4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤およびワクチンにもターゲットを絞った研究開発投資を行ってまいります。
当社は、今後数年にわたり、当社のパイプラインより、患者さんの標準治療の向上につながるベスト・イン・クラスもしくはファースト・イン・クラスの治療薬となり得る12の新規候補物質(14の効能)の世界での承認取得を見込んでいます。
3)強固な財務プロファイル
当社は、利益率の中長期的な向上にフォーカスし、事業投資や負債の早期返済、株主へのキャッシュの還元のため、キャッシュフローを創出します。
当社では、純有利子負債/調整後EBITDA倍率を2021年度から2023年度の間に2倍にすることを目標としております。この取り組みを加速させるため、約100億米ドルを目標にノン・コア資産の売却を進めています。
当社では、事業の計画策定および業績評価において、「実質的な成長」(Underlying Growth)の概念を採用しております。当年度と前年度の業績について、為替レートを一定として、事業等の売却影響や本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響等を控除し算定される「実質的な成長」は、事業活動のパフォーマンスを共通の基準で比較するものであり、投資家に追加的な情報を提供できるものと考えています。
なお、上記の戦略的優先事項に加え、当社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する中での最優先事項として、従業員ならびに従業員とともに業務に従事して頂いている方々、従業員の家族、また地域社会の健康を守るため、あらゆる方策を講じるとともに、患者さんが必要とされる医薬品を確実にお届けできるように取り組んでおります。当社は、2020年4月に血漿分画製剤事業を営む複数社と結成したグローバルな提携体制であるCoVIg-19 Plasma Allianceに参画し、患者さん中心の価値観の下、一企業としての利益を顧みることなく、あらゆるパートナーと協働することを通じてCOVID-19の治療法開発を促進することに注力しております。
また、当社は、ESG(Environmental, Social and Governance)への取り組みを一層強化してまいります。当社は、患者さんに貢献するには、より広範なグローバルコミュニティへの貢献に努めなければならないと認識しております。当社は、地球温暖化に伴う気候変動の影響を、人々の健康に大きな影響を及ぼす重要な環境課題として認識しており、2040年にバリューチェーン全体でカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げ、取り組みを加速しております。さらに、医薬品アクセス戦略やグローバルCSRプログラムを含む社会貢献プログラムに取り組み、強固なコーポレート・ガバナンスを推進してまいります。
(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による影響と当社の取り組み)
① 当社の経営成績および財政状態に対するCOVID-19影響
当社の事業活動は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大により、様々に影響を受けており、また、今後影響を受ける可能性があります。
当社は、当社製品の需要動向について注視しておりますが、当社の医薬品は病院での待機手術を要しない重篤な慢性疾患や生命を脅かす恐れのある疾患に対するものが多く、これまでのところ影響は限定的です。なお、ドナーからの血漿採取量に幾らかの減少が見られていますが、今後数カ月のうちに、一部あるいは完全に補えるほどに採取量が回復し得る複数の要素があるため、総採取量についての長期的な影響を現時点で予測することは時期尚早です。グローバルなサプライチェーンにおいては、COVID-19の大流行による製品供給の重大な混乱は発生しておらず、また、発生の可能性を現時点で予測しておりません。
事業運営においては、渡航制限や業界関連団体の集会への参加自粛、当社主催の集会の休止等、特定の事業活動を自主的に制限しております。
新たな臨床試験については、COVID-19の治療薬候補である血漿分画製剤(CoVIg-19)を除き、臨床試験の開始を一時的に休止しております。また、すでに進行中の臨床試験については、一部の例外を除き、新たな試験実施施設の組み入れならびに新規患者さんの登録を一時的に休止しておりますが、これら臨床試験のスケジュールや申請計画に対する影響を現時点で予測することは時期尚早です。
金融市場の動向は注視を続けており、流動性や資金調達に係る問題は現在見込んでおりません。
② COVID-19影響軽減のための当社の取り組み
当社は、COVID-19の大流行に対して、3つの優先事項を中心に取り組んでおります。
1.従業員とその家族の安全確保とヘルスケアシステムに対する影響の低減
2.事業の継続性の維持、特に当社医薬品の患者さんへの提供
3.COVID-19を治療もしくは予防し得る医薬品の開発
当社は、COVID-19の流行拡大に伴う様々な問題に対処するため、2020年1月に、グローバル危機管理委員会を始動させ、社内外の専門家の支援のもと、様々な対策を講じております。本委員会は、チーフ グローバル コーポレート アフェアーズ オフィサーとグローバル ワクチン ビジネス ユニット プレジデントのリードのもと、機能横断のチームによって組織されています。
当社は、従業員の安全を確保する措置として、在宅勤務ポリシーの適用を開始し、これを支援するIT技術を拡充しました。テレワークのガイダンスは、医療従事者と関わる外勤の従業員も可能な限り対象として、世界中の従業員に広範囲で適用しております。また、すべての不要不急の移動を休止し、大人数での従業員の集まりを制限しています。製造施設や研究所、血漿収集センターにおいて引き続き勤務する必要のある従業員については、ウイルス感染の安全・軽減措置を強化しました。
事業の継続性の維持の側面では、当社医薬品の製造代替業者の選定を含め、適正な在庫水準を管理し、当社医薬品を患者さんに継続的に提供できる施策を整備しています。当施策は、主要な出発物質、添加剤、医薬品原料、医薬品原薬(API)ならびに製品のグローバルなサプライチェーン全体に対して適用しております。当社は、当社の医薬品を必要とされる方々に確実にお届けできるよう、引き続き状況を注視し、あらゆる必要な措置を講じて製品供給の継続性を確保してまいります。
研究開発においては、進行中の臨床試験に対する影響を最小限に抑えるため、CRO(医薬品開発業務受託機関)と連携しながら、患者さんへの治験薬の直接配送や遠隔モニタリングの方法を検証する等、様々に取り組んでおります。一方、COVID-19による重篤な合併症患者さんの治療薬候補である抗SARS-CoV-2ポリクローナル高度免疫グロブリン製剤(CoVIg-19)を除き、新たな臨床試験の開始は一時的に休止しております。
CoVIg-19のプログラムは、COVID-19に対抗する治療法を開発するという当社の取り組みの一つです。当社は、2020年4月に血漿分画製剤事業を営む複数社と結成したグローバルな提携体制であるCoVIg-19 Plasma Allianceに参画し、患者さん中心の価値観の下、一企業としての利益を顧みることなく、あらゆるパートナーと協働することを通じてCOVID-19の治療法開発を促進することに注力しております。また、当社は、社内の既存のアセットがCOVID-19の治療薬となり得るかを評価しているとともに、新たなアプローチでの治療研究を進めております。
さらに、当社は赤十字社や国連主導の組織を含む非営利団体に対する約25百万米ドルの寄付金や現物寄付を通じて、COVID-19対策を支援しております。
③ COVID-19の世界的な拡大に伴う事業等のリスク
「2 事業等のリスク」をご参照ください。
④ 2019年度実績におけるCOVID-19影響
COVID-19の世界的な流行拡大に伴う、当年度業績への影響は軽微でありました。影響を受けた各国の医薬品市場の停滞により、売上収益は幾らかのマイナス影響を受けましたが、同時に、渡航制限や集会の自粛等、特定の事業活動を自主的に制限したことにより経費使用が減少したため、利益に対する影響は限定的でした。
[主要製品一覧]
ビジネスエリア主要製品概要
消化器系疾患エンティビオ/エンタイビオ
(ベドリズマブ)
「エンティビオ」は、中等症から重症の潰瘍性大腸炎・クローン病に対する治療剤です。「エンティビオ」は、2014年に米国およびヨーロッパで発売以降、売上が力強く伸長しており、2019年度における当社グループの売上トップ製品です。現在、「エンティビオ」は約世界70カ国で承認されており、当社は本剤の可能性を最大化するため、その他の国においても本剤の承認取得進めるとともに、皮下注射製剤ならびにさらなる適応症の開発を行います。
2019年度の「エンティビオ」の売上収益は3,472億円となりました。
タケキャブ
(ボノプラザンフマル酸塩)
酸関連疾患の治療剤「タケキャブ」は、2015年に日本で発売され、逆流性食道炎や低用量アスピリン投与時における胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制などの効能により飛躍的な成長を遂げました。
2019年度の「タケキャブ」の売上収益は727億円となりました。
GATTEX/REVESTIVE
(テデュグルチド[DNA組換え型])
「GATTEX/REVESTIVE」は、非経口(静脈栄養)サポートを必要とする短腸症候群(SBS)の治療薬です。2019年5月、米国FDAより、「GATTEX」の1才以上の小児SBS患者さんへの適応拡大が承認されました。
2019年度の「GATTEX/REVESTIVE」の売上収益は618億円となりました。
ALOFISEL
(darvadstrocel)
「ALOFISEL」は、非活動期/軽度活動期の成人の管腔型クローン病患者さんにおける、少なくとも一回以上の既存治療または生物学的製剤による治療が効果不十分であった肛囲複雑瘻孔に対する治療剤です。「ALOFISEL」は、2018年に欧州の中央審査により販売承認された、欧州初の同種異系幹細胞療法です。
2019年度の「ALOFISEL」の売上収益は4億円となりました。
希少疾患TAKHZYRO
(Lanadelumab)
「TAKHZYRO」は、遺伝性血管性浮腫(HAE)の発作予防に用いられます。「TAKHZYRO」は、HAEの患者さんにおいて慢性的に制御不能な酵素である血漿カリクレインに選択的に結合し、減少させる完全ヒト型モノクローナル抗体です。「TAKHZYRO」は2018年に米国と欧州にて承認され、さらなる地理的拡大を目指しています。
2019年度の「TAKHZYRO」の売上収益は683億円となりました。
アディノベイト/ADYNOVI
(抗血友病因子(遺伝子組換え型) [PEG化])
「アディノベイト/ADYNOVI」は、血友病A治療剤であり、遺伝子組換え型半減期延長第Ⅷ因子製剤です。「アディノベイト/ADYNOVI」は遺伝子組換え型半減期延長第Ⅷ因子製剤「アドベイト」と同じ製造工程で作られ、当社がネクター社より独占的にライセンス取得しているPEG化(体内での循環時間を延長し、投与頻度を減らすための化学修飾処理)技術を追加したものです。
2019年度の「アディノベイト/ADYNOVI」の売上収益は587億円となりました。
NATPARA/NATPAR
(副甲状腺ホルモン)
「NATPARA/NATPAR」は、通常療法(カルシウムおよびビタミンDによる治療)で効果不十分な成人の慢性副甲状腺機能低下症(HPT)に対する治薬剤です。HPTは、副甲状腺からの副甲状腺ホルモン(PTH)分泌量不足、または分泌されたPTHの不活性によって起こる希少疾患です。2019年9月、当社は、「NATPARA/NATPAR」のカートリッジのゴム製隔壁部分由来のゴム小片がカートリッジ内に混入する可能性があることが判明したため、米国FDAとの協議に基づき、米国において「NATPARA」全ての用量を回収しました。当社は、2021年3月期に当該製品の米国での売上を想定しておりませんが、早期の事案解決と供給再開に向けて米国FDAと緊密に連携してまいります。米国以外の地域では「NATPARA/NATPAR」は引き続き使用可能です。
2019年度の「NATPARA/NATPAR」の売上収益は136億円となりました。
ELAPRASE
(イデュルスルファーゼ)
「ELAPRASE」は、ハンター症候群(ムコ多糖症II型またはMPS II)に対する酵素補充治療剤です。
2019年度の「ELAPRASE」の売上収益は679億円となりました。
REPLAGAL
(アガルシダーゼ アルファ)
「REPLAGAL」は、ファブリー病に対して米国以外の市場で販売されている酵素補充療法治療剤です。ファブリー病は、脂肪の分解に関与するリソソーム酵素α-ガラクトシダーゼAの活性の欠如に起因する遺伝子性の希少疾患です。
2019年度の「REPLAGAL」の売上収益は513億円となりました。
VPRIV
(ベラグルセラーゼ アルファ点滴静注用)
「VPRIV」はI型ゴーシェ病に対する酵素補充療法治療剤です。
2019年度の「VPRIV」の売上収益は380億円となりました。


ビジネスエリア主要製品概要
血漿分画製剤GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG
(静注用人免疫グロブリン10%製剤)
(注)
「GAMMAGARD LIQUID/ /KIOVIG」は、抗体補充療法用免疫グロブリンの液体製剤です。「GAMMAGARD LIQUID KIOVIG」は、原発性免疫不全症(PID)の成人および2歳以上の小児患者に対して使用され、静脈投与または皮下投与のいずれかの方法で投与します。
また、「GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG」は、成人の多巣性運動ニューロパチー症(MMN)患者さんに対しても静脈投与にて使用されます。「GAMMAGARD LIQUID」は、米国以外の多くの国で製品名「KIOVIG」として販売されています。「KIOVIG」は、欧州においてPIDおよび特定の二次免疫不全症患者、ならびに成人のMMN患者さんへの使用が承認されています。
GAMMAGARD S/D
(静注用人免疫グロブリン製剤)
(注)
「GAMMAGARD S/D」は、5%溶液中のIgA含有量は1 μg/mL未満であり、2歳以上の原発性免疫不全症(PID)患者さんの治療に使われます。「GAMMAGARD S/D」は、低ガンマグロブリン血症およびB細胞慢性リンパ球性白血病(CLL)による再発性細菌感染症における細菌感染症の予防、成人の慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)患者さんにおける血小板増加および出血予防・抑制、小児患者さんにおける川崎病による冠動脈瘤の出血予防・抑制にも使用されます。
「GAMMAGARD S/D」は、IgA含有量の低い静脈投与での治療(5%溶液中のIgA含量1μg/mL未満)が必要な患者さんに使用されます。
HYQVIA
(免疫グロブリン注射製剤10%(ヒト))
(注)
「HYQVIA」は、人免疫グロブリン(IG)10%および遺伝子組換え型ヒトヒアルロニダーゼ(Halozyme社よりライセンス取得)からなる製剤です。「HYQVIA」は、原発性免疫不全症(PID)患者さんに対して最長で1ヶ月に1回の投与で、1回あたりの注射部位一ヵ所でIGの全治療用量を投与出来る、唯一の皮下注免疫グロブリン製剤(SCIG)です。
「HYQVIA」は、米国では成人PID患者への使用、また欧州において原発性免疫不全症(PID)および骨髄腫患者さんまたは重度の続発性低ガンマグロブリン血症および回帰感染を伴う慢性リンパ性白血病患者さんへの使用が承認されております。
CUVITRU
(注)
「CUVITRU」は、ヒト免疫グロブリン皮下注用(IGSC)20%製剤であり、原発性体液性免疫不全症の成人および2歳以上の小児患者さんに対する補充療法に用いられます。「CUVITRU」は、欧州では特定の二次免疫不全の治療薬としても承認されています。
「CUVITRU」は、プロリン不含で、投与部位一ヵ所あたりの耐用量内で最大60 mL(12g)および1時間あたり60 mLまで投与可能な唯一の20%皮下注免疫グロブリン製剤(SCIG)であり、従来の皮下注製剤と比較してより少ない投与部位および短い投与時間での使用が可能です。
FLEXBUMIN
(ヒトアルブミン)
「FLEXBUMIN」(ヒトアルブミンバッグ製剤)およびヒトアルブミン(ガラス瓶製剤)は、濃度5%および25%の液体製剤として販売されています。両製品とも、血液量減少症、一般的な原因および火傷による低アルブミン血症、ならびに心肺バイパス手術時のポンプのプライミングに使用されます。また、「FLEXBUMIN」25%製剤は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)およびネフローゼに関連する低アルブミン血症、ならびに新生児溶血性疾患(HDN)にも適応されます。
2019年度の「FLEXBUMIN」「Albumin Glass」を含むアルブミン製剤の売上収益は672億円となりました。

(注)2019年度の「GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG」「GAMMAGARD S/D」「HYQVIA」「CUVITRU」を含む免疫グロブリン製剤の売上収益は2,987億円となりました。
ビジネスエリア主要製品概要
オンコロジーニンラーロ
(イキサゾミブ)
「ニンラーロ」は、多発性骨髄腫(MM)治療に対する初めての経口プロテアソーム阻害剤です。「ニンラーロ」は、再発又は難治性の多発性骨髄腫の効能で、2015年に米国で発売されて以来売上を大幅に伸ばし、2016年に欧州、2017年に日本、2018年に中国で承認されております。当社グループは現在、多発性骨髄腫の維持療法の開発を実施し、適応患者層の拡大を目指しています。
2019年度の「ニンラーロ」の売上収益は776億円となりました。
アドセトリス
(ブレンツキシマブ ベドチン)
「アドセトリス」は、ホジキンリンパ腫(HL)および全身性未分化大細胞リンパ腫(sALCL)の治療に使用される抗がん剤です。「アドセトリス」は、世界60カ国以上で規制当局から販売承認を受けています。当社は、Seattle Genetics社と「アドセトリス」を共同開発し、米国およびカナダ以外の国での販売権を保有しています。
2019年度の「アドセトリス」の売上収益は527億円となりました。
ALUNBRIG
(brigatinib)
「ALUNBRIG」は、非小細胞肺がん(NSCLC)治療に使用される経口投与の低分子未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤です。2017年に米国で迅速承認され、2018年に欧州委員会より製造販売承認を取得しました。2020年に新たにALK陽性転移性NSCLCと診断された患者さんに対する効能が追加されました。
2019年度の「ALUNBRIG」の売上収益は72億円となりました。
ニューロサイエンスバイバンス/ビバンセ
(リスデキサンフェタミンメシル酸塩))
「バイバンス/ビバンセ」は、6歳以上の注意欠陥・多動性障害(ADHD)患者さんおよび成人の中程度から重度の過食性障害患者さんの治療に用いられる中枢神経刺激剤です。
2019年度における「バイバンス/ビバンセ」の売上収益は2,741億円となりました。
トリンテリックス
(ボルチオキセチン臭化水素酸塩)
「トリンテリックス」は、成人大うつ病性障害の治療に適応される抗うつ薬です。「トリンテリックス」はH. Lundbeck A/S社と共同開発し、当社は米国および日本での販売権を保有しており、米国では2014年、また日本では2019年より販売しています。
2019年度の「トリンテリックス」の 売上収益は707億円となりました。