有価証券報告書-第142期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/27 16:17
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97項目

対処すべき課題


当社は、「優れた医薬品の創出を通じて人々の健康と医療の未来に貢献する」というミッションを追求しています。また、当社は、「誠実:公正・正直・不屈」を企業活動の根幹に据え、「Patient(常に患者さんを中心に) 」、「Trust(社会との深い信頼関係を築く)」、「Reputation(当社の評価をさらに高める)」、「Business(ビジネスを成長させる)」を優先順位とする価値観に従います。
過去4年にわたって、当社は、世界中の患者さんに画期的な医薬品と革新的な治療法をお届けし得る、機動的でグローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業の実現に注力し、変革を続けています。当社は、その価値観を守りながら、製品とイノベーションにより、その評価をさらに確固たるものとしています。
当社は、2018年のタイジェニクスNVの買収、2017年のアリアド・ファーマシューティカルズInc.の買収、2011年のナイコメッドA/Sの買収、そして2008年のミレニアム・ファーマシューティカルズInc.の買収をはじめとする、国境を越えたM&Aおよび買収後の統合に成功してきた優れた実績を有しています。
直近では、2019年1月にShire plc(以下「Shire社」)の買収を完了させました。この買収は、バリュー(価値観)、すなわち当社の経営の基本精神に基づき患者さんを中心に考える、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業を誕生させる大きな一歩となりました。本買収は、当社に魅力的な地域別事業構成をもたらし、また、当社の3つの重点疾患領域のうちの2領域(消化器系疾患およびニューロサイエンス)における当社の地位を強化し、希少疾患および血漿分画製剤の領域における主導的地位をもたらします。さらに、強固かつモダリティ(創薬手法)の多様な、高度に補完的なパイプラインを創出し、イノベーションにフォーカスしたR&Dエンジンを強化します。財務面においては、キャッシュフロープロファイルの向上、シナジー創出および株主還元に対する経営陣のコミットメントを通じて、統合後の新会社に経済的利益を提供することになります。
当社の経営陣は、経験豊富で多様性に富み、複雑な事業の統合と、大規模な変革を実行する確かな実績を有しています。当社は、当社の価値観を尊重しながら、統合に向けた努力を実行することに真摯に取り組んでまいります。
当社は、持続可能で中長期的な成長を促進するため、以下の3つの明確な戦略的優先事項を掲げております。
1) ビジネスエリアのフォーカス
消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー(がん)、ニューロサイエンス(神経精神疾患)の5つの主要ビジネスエリアにフォーカスします。各ビジネスエリアの主要製品については、[主要製品一覧]のとおりであります。
2) R&Dエンジン
疾患領域の絞り込み、先進的なパートナーシップモデルの推進、患者さんを中心に捉えたサイエンス主導のイノベーション文化に基づき、R&Dエンジンを強化します。具体的には、オンコロジー、消化器系疾患、希少疾患、ニューロサイエンスの4つの重点疾患領域と血漿分画製剤およびワクチンに研究開発分野を絞り込み、研究開発体制の変革に引き続き取り組みます。また、アンメットメディカルニーズの高い領域において意義のある価値を提供するため、革新性の高い医薬品にフォーカスしてパイプラインを推進します。
3) 強固な財務プロファイル
当社は、利益率の中長期的な向上にフォーカスし、事業投資や負債の返済、株主へのキャッシュの還元のため、キャッシュ・フローを創出します。また、ノンコア資産の選択的な売却を引き続き推進し、資金を得て、負債返済を加速させてまいります。
Shire社の買収により、地理的な事業領域が拡大し、特に、イノベーションを推進する重要な市場である米国におけるプレゼンスが向上しました。当社は、地域戦略を実行するため、これらの国々を「米国」、「日本」、「ヨーロッパおよびカナダ」、ならびに中国、中南米、中東、アジア太平洋、ロシアおよびCIS(独立国家共同体)から構成される「成長新興国」の4つの地域グループに分け、それぞれに対応する地域体制を構築しました。
Shire社との統合は進捗しており、優れた戦略的・地理的合致のある統合であるため、事業やパイプラインに与えるネガティブな影響は最低限にとどまる見込みです。統合にあたっては、(i)患者さん中心(より革新的な医薬品を開発することとともに、サービスとサポートを提供する)、(ⅱ)機動性とシンプルさ(複雑なプロセスを最小限にし、現地の判断を現地のリーダーに委譲する)、(ⅲ)効率性と集中(5つの主要ビジネスエリアに注力する)、の3つの原則を掲げ、これに従って統合を引き続き推進してまいります。
[主要製品一覧]
ビジネスエリア主要製品概要
消化器系疾患エンティビオ/エンタイビオ
(ベドリズマブ)
「エンティビオ」は、中等症から重症の潰瘍性大腸炎・クローン病に対する治療剤です。「エンティビオ」は、2014年の発売以来、売上が伸長しており、2018年度には当社グループの売上トップ製品に成長しました。現在、「エンティビオ」は世界50カ国以上で承認されており、当社はその他の国においても本剤の承認を求めています。 2018年度の「エンティビオ」の売上収益は2,692億円となりました。
タケキャブ
(ボノプラザンフマル酸塩)
酸関連疾患の治療剤「タケキャブ」は、2015年に日本で発売され、2016年3月の投薬期間制限解除後に飛躍的な成長を遂げました。2018年度の「タケキャブ」の売上収益は582億円となりました。
GATTEX/REVESTIVE
(テデュグルチド[DNA組換え型])
「GATTEX/REVESTIVE」注射用は、非経口(静脈栄養)サポートを必要とする成人の短腸症候群(SBS)患者の長期治療に対する初めての治療薬です。当社は、2019年1月のShire社の買収に伴い、「GATTEX/REVESTIVE」を消化器系疾患(GI)ポートフォリオに追加しました。2019年5月、米国FDAより、「GATTEX」の1才以上の小児SBS患者への適応拡大が承認されました。2019年5月、米国FDAより、「GATTEX」の1才以上の小児SBS患者への適応拡大が承認されました。2018年度の「GATTEX/REVESTIVE」の売上収益は128億円となりました。
ALOFISEL
(darvadstrocel)
「ALOFISEL」(開発コード:Cx601)は、非活動期/軽度活動期の成人の管腔型クローン病患者における、少なくとも一回以上の既存治療または生物学的製剤による治療が効果不十分であった肛囲複雑瘻孔に対する治療薬です。「ALOFISEL」は、2018年に欧州の中央審査による販売承認(MA)を取得した、欧州初の同種異系幹細胞療法です。2018年度の「ALOFISEL」の売上収益は0.5億円となりました。
希少疾患NATPARA
(副甲状腺ホルモン)
「NATPARA/NATPAR」注射用は、副甲状腺機能低下症(HPT)患者における低カルシウム血症をコントロールするため、カルシウムおよびビタミンDの補助として用いられます。 HPTは、副甲状腺からの副甲状腺ホルモン(PTH)分泌量不足、または分泌されたPTHの不活性によって起こる希少疾患です。当社は、2019年1月のShire社買収に伴い、「NATPARA/NATPAR」を希少疾患ポートフォリオに追加しました。2018年度の「NATPARA/NATPAR」の売上収益は71億円となりました。
アディノベイト/ADYNOVI
(抗血友病因子(遺伝子組換え型) [PEG化])
「アディノベイト」は、「アドベイト」をもとにした血友病A治療薬であり、半減期延長遺伝子組換え血液凝固第VIII因子製剤です。「アディノベイト/ ADYNOVI」は、「アドベイト」と同じ製造工程で作られ、当社がネクター社より独占的にライセンス取得しているPEG化(体内での循環時間を延長し、投与頻度を減らす化学修飾処理)技術を追加したものです。当社グループは、2019年1月のShire社買収に伴い、「アディノベイト/ADYNOVI」を希少疾患ポートフォリオに追加しました。2018年度の「アディノベイト/ADYNOVI」の売上収益は107億円となりました。
TAKHZYRO
(ラナデルマブ)
「TAKHZYRO」は、血漿カリクレインに特化して結合し減少させる完全ヒト型モノクローナル抗体です。「TAKHZYRO」は、遺伝性血管浮腫(HAE)患者において慢性的に制御不能な酵素である血漿カリクレインを選択的に阻害して発作を予防する、唯一のモノクローナル抗体(mAb)です。当社グループは、2019年1月のShire社買収に伴い、「TAKHZYRO」を希少疾病ポートフォリオに追加しました。2018年度の「TAKHZYRO」の売上収益は97億円となりました。
ELAPRASE
(イデュルスルファーゼ)
「ELAPRASE」は、ハンター症候群(ムコ多糖症II型またはMPS II)に対する酵素補充治療薬です。当社グループは、2019年1月のShire社買収に伴い、「エラプレース」を希少疾病ポートフォリオに追加しました。2018年度の「エラプレース」の売上収益は151億円となりました。
REPLAGAL
(注射用アガルシダーゼ アルファ)
(注射用)
「REPLAGAL」は、ファブリー病に対して米国以外の市場で販売されている酵素補充療法治療薬です。ファブリー病は、脂肪の分解に関与するリソソーム酵素α-ガラクトシダーゼAの活性の欠如に起因する遺伝子性の希少疾患です。当社は、2019年1月のShire社買収に伴い、「REPLAGAL」を希少疾病ポートフォリオに追加しました。2018年度の「REPLAGAL」の売上収益は114億円となりました。
VPRIV
(ベラグルセラーゼ アルファ点滴静注用)
「VPRIV」はI型ゴーシェ病に対する酵素補充療法治療薬です。当社は、2019年1月のShire社の買収に伴い、希少疾患ポートフォリオに「VPRIV」を追加しました。2018年度の「VPRIV」の売上収益は87億円でした。

ビジネスエリア主要製品概要
血漿分画製剤(注)GAMMAGARD LIQUID
(静注用人免疫グロブリン10%製剤)
「GAMMAGARD LIQUID」は、抗体補充療法用免疫グロブリンの液体製剤です。「GAMMAGARD LIQUID」は、原発性免疫不全症(PID)の成人および2歳以上の小児患者に対して使用され、静注または皮下注のいずれかの方法で投与します。
また、「GAMMAGARD LIQUID」は、成人の多巣性運動ニューロパチー症(MMN)患者に対しても静注投与にて使用されます。「GAMMAGARD LIQUID」は、米国以外の多くの国で製品名「KIOVIG」として販売されています。「KIOVIG」は、欧州においてPIDおよび特定の二次免疫不全症患者、ならびに成人のMMN患者への使用が承認されています。
当社は、2019年1月のShire社買収に伴い、「GAMMAGARD LIQUID」を血漿分画製剤ポートフォリオに追加しました。
GAMMAGARD S/D
(静注用人免疫グロブリン製剤)
「GAMMAGARD S/D」は、5%溶液中のIgA含有量は1 μg/mL未満であり、2歳以上のPID患者の治療に使われます。「GAMMAGARD S/D」は、低ガンマグロブリン血症およびB細胞慢性リンパ球性白血病(CLL)による再発性細菌感染症における細菌感染症の予防、成人の慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)患者における血小板増加および出血予防・抑制、小児患者における川崎病による冠動脈瘤の出血予防・抑制にも使用されます。
「GAMMAGARD S/D」は、IgA含有量の低い静注治療(5%溶液中のIgA含量1μg/mL未満)が必要な患者に使用されます。当社は、2019年1月のShire社買収に伴い、「GAMMAGARD S/D」を血漿分画製剤ポートフォリオに追加しました。
HYQVIA
(免疫グロブリン注射製剤10%(ヒト))
「HYQVIA」は、人免疫グロブリン(IG)および遺伝子組換え型ヒトヒアルロニダーゼ(Halozyme社よりライセンス取得)からなる製剤です。「HYQVIA」は、PID患者に対して最長で1ヶ月に1回の投与で、1回あたりの注射部位一か所でIGの全治療用量を投与出来る、唯一のIG皮下注用治療薬です。
当社は、2019年1月のShire社の買収に伴い、「HYQVIA」を血漿分画製剤ポートフォリオに追加しました。「HYQVIA」は、欧州においてPID症候群および骨髄腫患者または重度の続発性低ガンマグロブリン血症および回帰感染を伴うCLL患者への使用が承認されており、米国では成人PID患者への使用が承認されています。
CUVITRU「CUVITRU」は、ヒト免疫グロブリン(IGSC)皮下注用20%製剤であり、原発性体液性免疫不全症の成人および2歳以上の小児患者に対する補充療法に用いられます。「CUVITRU」は、欧州では特定の二次免疫不全の治療薬としても承認されています。
「CUVITRU」は、プロリン不含で、投与部位1か所あたりの耐用量内で最大60 mL(12g)および1時間あたり60 mLまで投与可能な唯一の20%皮下IG治療法であり、従来の皮下IG治療法と比較してより少ない投与部位および短い投与時間での使用が可能です。
当社は、2019年1月のShire社の買収に伴い、血漿分画製剤ポートフォリオに「CUVITRU」を追加しました。
FLEXBUMIN
(ヒトアルブミン)
「FLEXBUMIN」(バッグ入りヒトアルブミン)およびヒトアルブミン(ガラス瓶入り)は、濃度5%および25%の液体製剤として販売されています。両製品とも、血液量減少症、一般的な原因および火傷による低アルブミン血症、ならびに心肺バイパス手術時のポンプのプライミングに使用されます。また、「FLEXBUMIN」25%製剤は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)およびネフローゼに関連する低アルブミン血症、ならびに新生児溶血性疾患(HDN)にも適応されます。
当社は、2019年1月のShire社買収に伴い、「FLEXBUMIN」を血漿分画製剤ポートフォリオに追加しました。

(注)2019年3月期の血漿分画製剤の売上収益は1,117億円となりました。
ビジネスエリア主要製品概要
オンコロジーニンラーロ
(イキサゾミブ)
「ニンラーロ」は、多発性骨髄腫(MM)治療に対する初めての経口プロテアソーム阻害剤です。「ニンラーロ」は、2015年に米国で発売されて以来、売上を大幅に伸ばしています。
「ニンラーロ」は、2016年に欧州で、2017年に日本で承認されており、当社はその他の多くの国においても製造販売承認を求めています。 2018年度の「ニンラーロ」の売上収益は622億円となりました。
アドセトリス
(ブレンツキシマブ ベドチン)
「アドセトリス」は、ホジキンリンパ腫(HL)および全身性未分化大細胞リンパ腫(sALCL)の治療に使用される抗癌剤です。「アドセトリス」は、2011年、2012年、2014年に、米国、欧州、日本でそれぞれ発売されました。
「アドセトリス」は、世界60カ国以上で規制当局から販売承認を受けています。当社は、Seattle Genetics社と「アドセトリス」を共同開発し、米国およびカナダ以外の国での販売権を保有しています。2018年度の「アドセトリス」の売上収益は429億円となりました。
ALUNBRIG
(brigatinib)
「ALUNBRIG」は、非小細胞肺がん(NSCLC)治療に使用される経口投与の低分子未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤です。「ALUNBRIG」はARIAD社によって開発されました。2017年4月に米国で迅速承認され、2018年11月に欧州委員会より製造販売承認を取得しました。2018年度の「ALUNBRIG」の売上収益は52億円となりました。
ニューロサイエンスバイバンス/ビバンセ
(リスデキサンフェタミンメシル酸塩))
「バイバンス」は、アミノ酸のL-リシンとd-アンフェタミンの結合した中枢神経刺激剤であり、6歳以上の注意欠陥・多動性障害(AD/HD)患者および成人の中程度から重度の過食性障害患者の治療に用いられる中枢神経刺激剤です。当社グループは、2019年1月のShire社買収に伴い、「ビバンセ」をニューロサイエンス(神経精神疾患)ポートフォリオに追加しました。2018年度における「バイバンス」の売上収益は494億円となりました。
トリンテリックス
(ボルチオキセチン臭化水素酸塩)
「トリンテリックス」は、成人大うつ病性障害の治療に適応される抗うつ薬です。「トリンテリックス」はH. Lundbeck A/S社と共同開発され、2014年に米国で発売されました。当社グループは、米国および日本において販売権を有しています。2018年度の「トリンテリックス」の米国での売上収益は576億円となりました。