有価証券報告書-第198期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/19 15:40
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【項目】
55項目

研究開発活動

当社グループは、精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野を研究重点領域として、自社研究に加え、技術導入、ベンチャー企業やアカデミアとの共同研究など、あらゆる方法で最先端の技術を取り入れて、研究開発活動に取り組んでおり、優れた医薬品の継続的な創製を目指しています。
(1) 精神神経領域
当社は、魅力的な開発パイプラインのより効率的な創出を実現するため、2017年10月に研究体制を改め、これに伴い研究本部をリサーチディビジョンに改称しました。この一環として、研究プロジェクト(創薬テーマ)を強力に推進するために新しい「プロジェクト制」を採用し、リサーチディビジョンにプロジェクトリーダーおよびプロジェクトディレクターを配置しました。
研究初期段階では、ハイパフォーマンスコンピューターを活用したインシリコ創薬技術、iPS細胞の活用などの最先端サイエンスを取り入れて創薬に取り組んでいます。
当連結会計年度における主な開発の進捗状況は、次のとおりです。
① dasotraline(開発コード:SEP-225289)
米国において、成人および小児の注意欠如・多動症(ADHD)を対象とした承認申請を2017年8月に行いました。
② 「トレリーフ」(一般名:ゾニサミド)
日本において、レビー小体型認知症(DLB)に伴うパーキンソニズムの効能・効果を追加する一部変更承認申請を2017年8月に行いました。
③ アポモルヒネ塩酸塩水和物(開発コード:APL-130277)
米国において、パーキンソン病に伴うオフ症状を対象とした承認申請を2018年3月に行いました。
④ 「ロナセン」(一般名:ブロナンセリン)
日東電工株式会社と共同開発中のテープ製剤の日本でのフェーズ3試験において、主要評価項目を達成するとともに、良好な忍容性を示す解析結果速報を2018年2月に得ました。
(2) がん領域
当社は、ボストン・バイオメディカル社およびトレロ社と連携し、がん幹細胞性阻害、がんペプチドワクチンおよびキナーゼ阻害にフォーカスした研究開発を行い、従来にはないユニークな製品を世に送り出すことを基本戦略としています。
当連結会計年度においては、ナパブカシンについて、結腸直腸がんおよび膵がんを対象とした併用での国際共同フェーズ3試験を引き続き推進しました。一方、胃または食道胃接合部腺がんを対象としたナパブカシンの国際共同フェーズ3試験につきましては、中間解析が実施され、主要評価項目を達成できる見込みが低いとの判断による独立データモニタリング委員会の勧告を受け入れ、2017年6月に本試験の盲検の解除を決定しました。
(3) 再生・細胞医薬分野
当社は、再生・細胞医薬品の早期の事業化を目指して複数の研究開発プロジェクトを推進しています。
また、再生・細胞医薬品の事業化における最重要課題の一つである再生医療等製品の生産体制の整備に向けて、2018年3月に再生・細胞医薬製造プラント「SMaRT」を竣工しました。SMaRTは、他家iPS細胞由来の再生・細胞医薬品専用の世界初の商業用製造施設です。
引き続き、産学の連携先と、加齢黄斑変性、パーキンソン病、網膜色素変性、脊髄損傷などを対象に、他家iPS細胞を用いた再生・細胞医薬事業を推進します。
(4) その他領域
「ロンハラ マグネア」(一般名:グリコピロニウム臭化物)
米国において、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の長期維持療法を適応とした承認を2017年12月に取得しました。
(5) 買収および提携
当社グループは、開発パイプラインの拡充を目指して買収および提携にも積極的に取り組んでいます。
当連結会計年度においては、2017年10月にフランスのポクセル・エスエーから、imeglimin(開発コード:PXL008)の日本、中国、韓国、台湾および東南アジア9カ国における開発・販売権を獲得しました。2017年12月には、同剤について、同社と共同で2型糖尿病を対象とした日本におけるフェーズ3試験を開始しました。
さらに、2017年10月に学校法人北里研究所との間で、薬剤耐性(AMR)菌感染症治療薬の創製を目的とした共同研究契約を締結しました。同研究所との共同研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)」の第1回公募の研究開発課題に採択されています。
このような研究開発活動の結果、当連結会計年度の研究開発費の総額は869億円(前連結会計年度比6.8%増)となりました。なお、当社グループは、研究開発費をグローバルに管理しているため、セグメントに配分していません。
当社グループにおける開発状況は以下のとおりであります。
1.精神神経領域(2018年5月11日現在)
製品/コード名
(一般名)
予定適応症地域開発段階
SM-13496
(ルラシドン塩酸塩)
統合失調症中国申請(2015/12)
統合失調症日本フェーズ3
双極Ⅰ型障害うつ日本フェーズ3
双極性障害メンテナンス日本フェーズ3
SEP-225289
(dasotraline)
注意欠如・多動症(ADHD)米国申請(2017/8)
日本フェーズ1
過食性障害(BED)米国フェーズ3
APL-130277
(アポモルヒネ塩酸塩水和物)
パーキンソン病に伴うオフ症状米国申請(2018/3)
トレリーフ
(ゾニサミド)
(新効能)レビー小体型認知症(DLB)
に伴うパーキンソニズム
日本申請(2017/8)
ロナセン
(ブロナンセリン)
(新用法:小児)統合失調症日本フェーズ3
(新剤形:テープ)統合失調症日本フェーズ3
EPI-743
(バチキノン)
リー脳症日本フェーズ2/3
EPI-589パーキンソン病米国フェーズ2
筋萎縮性側索硬化症(ALS)米国フェーズ2
日本フェーズ1
SEP-363856統合失調症米国フェーズ2
日本フェーズ1
パーキンソン病に伴う精神病症状米国フェーズ2
SEP-4199双極Ⅰ型障害うつ米国フェーズ2
日本フェーズ1
DSP-2230神経障害性疼痛米国・日本フェーズ1
DSP-6745パーキンソン病に伴う精神病症状米国フェーズ1
SEP-378608双極性障害米国フェーズ1
DSP-3905神経障害性疼痛米国フェーズ1


2.がん領域(2018年5月11日現在)
製品/コード名
(一般名)
予定適応症地域開発段階
BBI608
(ナパブカシン)
結腸直腸がん(併用)米国・日本フェーズ3
(国際共同試験)
膵がん(併用)米国・日本フェーズ3
(国際共同試験)
悪性胸膜中皮腫(併用)日本フェーズ1/2
肝細胞がん(併用)米国フェーズ1/2
消化器がん(併用)米国フェーズ1/2
固形がん(併用)米国フェーズ1/2
血液がん(単剤・併用)米国フェーズ1
BBI503
(amcasertib)
肝細胞がん(併用)米国フェーズ1/2
固形がん(単剤・併用)米国フェーズ1/2
固形がん(単剤)、肝細胞がん(併用)日本フェーズ1
DSP-2033
(alvocidib)
急性骨髄性白血病(AML)(併用)
(再発・難治性患者対象)
米国フェーズ2
(国際共同試験)
急性骨髄性白血病(AML)(併用)
(初発患者対象)
米国フェーズ1
急性骨髄性白血病(AML)(併用)
(初発および再発・難治性患者対象)
日本フェーズ1
DSP-7888
(アデグラモチド酢酸塩/ネラチモチドトリフルオロ酢酸塩)
膠芽腫(併用)米国・日本フェーズ2
(国際共同試験)
骨髄異形成症候群(単剤)日本フェーズ1/2
小児悪性神経膠腫(単剤)日本フェーズ1/2
固形がん、血液がん(単剤)米国フェーズ1
固形がん(併用)米国フェーズ1
BBI608+BBI503
(ナパブカシン+amcasertib)
固形がん(併用)米国フェーズ1
DSP-1958
(チオテパ)
造血幹細胞移植の前治療(単剤)
※未承認薬・適応外薬の開発品
日本フェーズ1
TP-0903固形がん(単剤)米国フェーズ1
DSP-0509固形がん(単剤)米国フェーズ1
TP-0184固形がん(単剤)米国フェーズ1
DSP-0337固形がん(単剤)米国フェーズ1

3.再生・細胞医薬分野(2018年5月11日現在)
製品/コード名
(一般名)
予定適応症地域開発段階
SB623慢性期脳梗塞米国フェーズ2
HLCR011
(他家iPS細胞由来網膜色素上皮)
加齢黄斑変性日本治験開始に向けて準備中
他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞パーキンソン病日本治験開始に向けて準備中(医師主導治験)

4.その他の領域(2018年5月11日現在)
製品/コード名
(一般名)
予定適応症地域開発段階
PXL008
(imeglimin)
2型糖尿病日本フェーズ3
DSP-6952
(minesapride)
便秘型IBS、慢性便秘日本フェーズ2