有価証券報告書-第92期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2017/06/27 15:24
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対処すべき課題

(経営方針・経営戦略等)
当社グループは、平成27年度から平成29年度を実行期間とする「2017年中期経営計画」を策定しております(平成27年3月3日公表)。また、このうち、八幡製鐵所の鉄源工程の最適体制構築については、同所の総合的競争力強化を図る観点から、一部方案を見直しております(平成28年3月30日公表)。これらの概要についてはそれぞれ以下のとおりです。
<2017年中期経営計画(平成27年3月3日公表)>
新日鐵住金グループの中期経営計画について
~『総合力世界No.1の鉄鋼メーカー』の実現に向けて~
2017年中期経営計画の概要
1.製鉄事業
(1)国内マザーミル競争力の強化
1)国内マザーミルの位置付けとその強化
国内製造拠点が、将来に亘り製鉄事業のマザーミルとして、鉄源の安定生産はもとより、技術開発並びにコスト・生産性改善の拠点としての進化を続け、国内外へのミドル・ハイエンド製品の安定供給と海外事業拠点への技術支援を行っていきます。
そのために、主力製鉄所が設立後40年以上を経過している現状を踏まえ、製鉄所等の「強化・再建」を基本経営課題に据えて、「設備」と「人」の両面で製造実力の強化策を推進します。
2)鉄源工程の最適体制構築
全社での高出銑操業の追求等による鉄源設備稼働率の向上を図り、より小さい固定費で高い生産性を実現します。
①現在推進中の君津製鐵所の高炉2基体制への移行(第3高炉休止)については計画通りに2015年度末目途に実行致します。
②加えて今回、八幡製鐵所において以下の最適化施策を実施することと致しました。
・戸畑第4高炉増出銑対策の実施、輸送線の設置による戸畑地区から小倉地区へ溶銑の供給(完成時期:2018年度中)
・社内の他製鉄所からの特殊鋼棒線用鋼片の供給
これにより小倉第2高炉を休止(休止時期:2018年度末 目途)し、併せて小倉地区製鋼効率化の実施(品質対応力・生産性で優位性のある第4連鋳機系列を活用、第3連鋳機系列休止(休止時期:2018年度末 目途)により、棒線品種の最適生産および競争力強化を図ります。
小倉地区での特殊鋼棒線製品の生産は現状水準を維持致します。
なお、和歌山第5高炉から稼働待機中の新第2高炉への切替えは、需要動向等も踏まえてタイムリーに実施出来るよう、稼働に向けた事前準備を開始します。
これらの施策により、激しい競争環境においても優位性を確保出来る体質を構築します。
(2)グローバル戦略の推進
当社が有する商品技術力・コスト競争力・供給ネットワークを活かし、高級鋼を軸にグローバルマーケットで当社ポジションの維持拡大を追求していきます。
1)顧客のニーズに対する材料、設計、工法面からの総合提案や海外拠点活用等により、グローバルマーケットにおける主力分野(自動車、資源エネルギー、鉄道・建築土木等のインフラ関連)での高級鋼需要を着実に捕捉するとともに、差別性ある商品力の更なる向上や流通加工におけるグループの総合力発揮により、国内外市場で当社ポジションの維持拡大を図ってまいります。
2)海外の成長市場の需要を捕捉する中、特に自動車を始めとする主要顧客が製造拠点を有する北米、ASEANでは、高級鋼輸出及び現地生産の両面により、当社のプレゼンスを確固たるものに致します。

3)この数年内に稼働を開始、又は今後稼働を予定している海外のプロジェクトについては、立上げに万全を期し、確実に戦力化してまいります。
4)また、グローバル・ビジネス展開に相応しい、地域統括機能の強化、グローバル人材育成、業務システムの構築等、組織・業務運営の基盤を強化してまいります。
<参考>主要な海外事業投資案件
内 容国・地域分野製造能力稼働日/予定日
AM/NS Calvert
(ArcelorMittalとのJV)
米国自動車(熱延、冷延、CGL)530万t/年2014年2月
TENIGAL(TerniumとのJV)メキシコ自動車(CGL)40万t/年2013年8月
NSGTタイ自動車(CGL)36万t/年2013年10月
JCAPCPL (TATAとのJV)インド自動車(CAPL)60万t/年2014年5月
KNSS (PTKSとのJV)インドネシア自動車(GAPL)48万t/年2017年度中
BNA (宝鋼とのJV)中国自動車(No4CGL新設)42万t/年2015年度中
VSB (VallourecとのJV)ブラジルエネルギー(OCTG)60万t/年2011年9月
VAM® BRN(住商とのJV)ブルネイエネルギー(ネジ切りライン)2万t/年2016年度中
NSBS (BlueScopeとのJV)アセアン・米国インフラ(CGL等)140万t/年2013年3月
CSVC (CSCとのJV)ベトナムインフラ(CDCM等)120万t/年2013年4月

上記(1)(2)により、「世界最強の鉄源工程と高級鋼の製造・開発基地としての国内マザーミル」と「成長市場に立地し、マザーミルの素材と技術力を活用する海外下工程拠点」の両輪によるグローバル事業展開を図る、当社のビジネスモデルを徹底して強化します。
(3)技術先進性の発揮
1)当社が有する世界最大規模(研究員 約800名)・世界最高水準の技術開発力の一層のレベルアップを図り、自動車・資源エネルギー・インフラ分野を軸とした成長市場におけるハイテン鋼板や耐食性高合金シームレス鋼管などの高機能商品開発、お客様への設計・鋼材選択・加工などの総合ソリューション提案、プロセス革新による生産性の向上等で世界をリードします。
2)そのために現状より研究開発費を10%程度拡充することで開発スピードを加速化するとともに、水素社会を始めとした新しい社会ニーズに対応した次世代鋼材研究や、高度な解析・数理技術等を駆使した要素・基盤技術の研究にも積極的に取り組み、お客様や社会のニーズへ的確に対応してまいります。
こうした技術先進性の発揮は、高級鋼を軸にグローバル市場でポジション拡大を図る当社の事業戦略を支えるとともに、国内外拠点の製造技術力の向上にも大きく寄与します。
(4)世界最高水準のコスト競争力の実現
生産体制の集約を含む統合効果のフル発揮、コークス炉リフレッシュ効果、歩留向上等の徹底した操業技術改善などにより、3年間を目途に年率1,500億円以上(単独)のコスト改善の実現を目指します。これに上記マザーミル強化策の効果を併せ、グローバル競争を勝ち抜く世界最高水準のコスト競争力を実現いたします。
1)統合効果のフル発揮 600億円
最適生産体制(高炉稼働体制、下工程集約等)、旧両社技術のベストプラクティス展開、グループ会社統合効果、本社のスリム化 等
2)体質強化投資の成果発揮等 900億円
コークス炉リフレッシュ対策、歩留向上対策 等

(5)製鉄事業グループ会社の体質強化
既に統合再編したグループ会社については、シナジー効果の更なる追求を図るとともに、当社とグループ会社一貫、またはグループ会社間などのシナジー追求も拡大します。
加えて、各社のドメイン事業の再検証を行い、更なるグループ内再編や「選択と集中」を進めてまいります。
2.製鉄以外の各事業セグメントの方針
各事業は競争力基盤を強化し、中核事業である製鉄事業へのシナジー追求と各業界でのトップクラスの収益体質の確保を目指します。
加えて、製鉄事業を含む5事業セグメントが保有する、世界市場をリードする製品や技術力を融合し、研究開発連携や、需要家への総合ソリューション提案の強化等を通じ、当社グループ・シナジーの最大化を図ってまいります。
(1)エンジニアリング事業
製鉄事業の差別化製品を支える製鉄プラントを主たる事業として、鋼構造分野における国内の防災・国土強靭化施策、東京オリンピックに向けたインフラ整備等のビジネスチャンスの確実な捕捉に加え、環境・エネルギー分野におけるアジアを中心とした成長市場への積極的展開等により、各事業分野毎に更なる利益成長を図ってまいります。
(2)化学事業
製鉄事業のコークス炉の副産物であるタールを主たる原料として、炭素材料(ニードルコークス、カーボンブラック等)、化学品(スチレンモノマー等)、回路基板材料(エスパネックス®)、エポキシ樹脂を軸とした安定的収益構造を確立するとともに、炭素・樹脂というコア技術をベースとして、自動車・インフラ分野に軸足を置いた次世代を担う事業創出に取り組みます。
(3)新素材事業
全社研究開発部門からシーズや基礎技術の提供を受けた、電子産業分野(表面被覆EXワイヤ®等)、インフラ分野(炭素繊維複合材)、環境分野(排ガス浄化用メタル担体)を中心に、差別化商品・技術の深掘り、海外生産拠点の増強、将来に向けた技術開発・事業開発により、成長戦略を推進します。
(4)システムソリューション事業
製鉄事業の効率的生産を支えるグループ内システムソリューション機能に加えて、顧客企業の活発化するITニーズに対する的確なソリューションや、運用・保守を中心とするITアウトソーシング、クラウドコンピューティングサービス等のITサービス提供を通じて、持続的な事業成長と業界トップクラスの収益力の実現を目指します。
3.成長を支える経営資源投入
マザーミルの競争力強化を目的とした国内設備投資は、コークス炉等の大型設備更新、設備健全性の維持・強化策、コスト競争力強化に資する収益改善策等、4,500億円/年程度を計画化し、実行します。また、事業投資は1,000億円/年程度の投入枠を設定し、タイムリーに成長投資を決断してまいります。採用については1,300人/年程度を織り込み、人的戦力を強化・拡充します。
なお、上記資源投入の実行と併せて、グループ全体の選択と集中を更に進めて、資産圧縮 (約2,000億円/3ヵ年)を行い、上記の成長投資の財源の一部に充当し、財務体質の改善も同時に実現します。
2017年中期
国内設備投資約13,500億円/3ヵ年
事業投資約3,000億円/3ヵ年
研究開発費約2,100億円/3ヵ年
採用(単独)約1,300人/年

4.信頼される企業に向けた取り組み
(1)当社の基本理念※を実践し、社会への一層の貢献に努めてまいります。
(2)各種法令・ルールを遵守するとともに、安全・環境・防災等のリスク管理を適切に行ってまいります。特に、名古屋製鐵所の事故を教訓に、全社を挙げて未然防止対策に取り組んでまいります。
新日鐵住金グループは、社会から信頼される企業に向け、上記の取り組みを継続します。
※常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて、社会の発展に貢献します。
5.『総合力世界No.1の鉄鋼メーカー』の実現に向けて
(1)こうした一連の施策により、国内競争力基盤の充実(国内粗鋼能力5,000万t)、海外事業の収益拡大・戦力化(海外拠点販売量を2014年度比+20%)による中長期的な利益成長とキャッシュフロー拡大を図り、ROS10%以上、ROE10%以上を目指します。
(2)また、前述した成長資金の投入を織り込んだ上で、2017年度末のD/Eレシオについては国際格付A格の平均水準である 0.5倍程度を目指すこととし、盤石な財務体質を実現します。
(3)株主の皆様への配当還元につきましては、連結配当性向の方針を現行の「20%程度を基準」から「20~30%を目安」へと拡充することと致します。(2015年度から適用)
(4)これらを通じて、『総合力世界No.1の鉄鋼メーカー』の実現に向けて邁進します。
<2017年中期経営計画のターゲット>
2017年度
売上高利益率10%以上
株主資本利益率10%以上
D/Eレシオ0.5程度

以 上

八幡製鐵所の鉄源工程の最適体制構築の方案変更については、平成28年3月30日に以下のとおり公表しております。
<八幡製鐵所 鉄源工程の最適体制構築の方案変更(平成28年3月30日公表)>
八幡製鐵所における最新鋭連続鋳造設備の新設について
(同所の鉄源工程の最適体制構築の方案変更について)
2017年中期経営計画(2015年3月3日公表)の主要施策の一つである八幡製鐵所の鉄源工程の最適体制構築について、公表以降、具体策の詳細検討を進めて参りましたが、既公表の方案検討に加え、小倉地区の棒線品種の競争力をより一層強化するとともに、他品種も含めた八幡製鐵所の総合的競争力強化を図る観点から各種検討を行った結果、この度方案を変更することと致しました。
具体的には、最新鋭の連続鋳造設備(以下、CC)を戸畑地区に新設、棒線向け・軌条向け鋼片製造を集約し、更なる生産性向上を実現致します。新設する設備は、小倉地区第4CCの基本設計を踏襲し、同CCの特性を活かした上で、品質対応力と生産能力を一層向上させたCCと致します。
これにより、
① 棒線品種については、現状の小倉地区の棒線品種の生産量を維持した上で、現行小倉地区第4CCの機能に小倉地区第3CCと同等の高清浄化機能を追加した最新鋭のCCで鋼片を製造することによる商品競争力向上、加えて戸畑地区の大ロット精錬設備との組み合わせによる更なる生産性向上
② 軌条品種については、同CCで鋼片を製造することによる生産性向上及び商品対応力強化を図ってまいります。
今般新たにCCを設置することに伴い、既公表の小倉地区の製銑設備及び製鋼第3CC系列設備の休止に加えて、小倉地区製鋼の精錬設備、第4CC系列設備、及び戸畑地区CC1基を休止致します。また、当初予定していた戸畑地区から小倉地区への溶銑輸送鉄道専用線は建設しないこととするとともに、小倉第2高炉の休止予定時期も昨年公表時から2年延期し、2020年度末と致します。
1. 2015年3月3日公表
①戸畑第4高炉増出銑対策、輸送線(私鉄道+トンネル)の設置
による戸畑地区から小倉地区への溶銑の供給 (完成時期:2018年度中)
②小倉第2高炉等休止 (休止時期:2018年度末目途)
③小倉地区製鋼効率化対策(3CC系列設備休止) (休止時期:2018年度末目途)
2. 2016年3月30日公表(下線が主な変更点)
①戸畑地区に最新鋭の新ブルームCCを設置 (完成時期:2018年度末目途)
②小倉第2高炉休止 (休止時期:2020年度末目途)
③小倉地区製鋼工場(精錬・CC)休止 (休止時期:2020年度末目途)
④戸畑地区CC1基休止 (休止時期:2020年度末目途)
当社は、本施策を含めた競争力強化策を推進し、当社の強みである「技術力」「コスト競争力」「グローバル対応力」をより一層進化させ、揺るぎない『総合力世界№1の鉄鋼メーカー』を実現し、持続的な利益成長を目指します。
以 上

(経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
「2017年中期経営計画」の各目標とそれに対する平成28年度までの進捗は以下の状況となっております。
平成27年度平成28年度平成29年度
(目標)
売上高利益率4.1%3.8%10%以上
株主資本利益率5.1%4.6%10%以上
D/Eレシオ0.720.710.5程度
コスト改善
(単独・累計)
年率400億円年率1,000億円年率1,500億円以上

(経営環境及び対処すべき課題)
「2017年中期経営計画」の実行期間の最終年度となる平成29年度の経営環境については、以下のように認識しております。
世界経済は、米国、欧州及び中国は景気が底堅く推移し、ブラジルなど新興国経済の底打ちも見込まれることから、各国の政治情勢等に起因する不透明感は増しているものの、引き続き緩やかな回復が期待されます。
日本経済は、雇用環境が引き締まるなか、政府の経済対策の効果に加え、企業の生産活動の改善など、緩やかな回復の継続が見込まれます。
国内鉄鋼需要については、建設向けや自動車向けを中心に、引き続き堅調に推移するものと見込まれています。
海外鉄鋼需要は、米国やアセアン諸国などでは堅調に、また、中国内需も底堅く推移するものと想定しています。国際鉄鋼市況については、足下は在庫調整に起因した軟化の動きは見られるものの、需要は総じて堅調であることから一過性の事象であると想定しております。ただし、中国の過剰生産能力問題はいまだ解消途上であることに加え、足下においては豪州の天候不良による原料炭価格の急騰が見られることと、副原料・スクラップ価格や物流コストも上昇していることから、今後の動きを注視していく必要があります。
こうしたなか、当社は、引き続き鋼材需給動向や原料価格動向等に注意を払うとともに、最大限のコスト改善を実行してまいります。そのうえで、原料炭を中心とする原材料価格の高騰を受けたコストアップ分については、需要家の皆様に御理解いただき、鋼材価格の改定を実施してまいりました。当社と致しましては、コストアップ分も含めた再生産可能なマージンを確保するために、鋼材価格の改定につきまして、需要家の皆様に御理解いただけるよう丁寧な対応を継続していく所存です。
平成29年度の業績見通しにつきましては、主原料価格及び鋼材価格の動向が不透明であること等から、現時点では当社として合理的な算定・予想を行うことができません。従いまして、平成29年度の業績予想については未定とし、合理的な算定が可能となった時点で速やかに開示致します。
当社グループは、このような環境においても、技術力、コスト競争力、グローバル対応力を競争優位性の柱とし、国内事業と海外事業を両輪として成長を目指します。引き続き、安全操業・安定生産に一層努め、設備と人に経営資源を重点的に配分して国内マザーミルの製造実力・技術開発力を高めるとともに、そこで培った競争力を武器に、伸びゆく世界のマーケットにおいて海外事業を強化するなど、「2017年中期経営計画」で掲げた諸施策を着実に推進してまいります。
(注) 上記(経営環境及び対処すべき課題)の記載には、平成29年4月28日決算発表時点の将来に関する前提・見通し・計画に基づく予測や目標が含まれている。実際の業績は、今後様々な要因によって大きく異なる結果となる可能性がある。
(財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針に関する事項)
当社は、財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針を次のとおり定めております。
<当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容>当社グループは、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて社会の発展に貢献することを企業理念に掲げ、この理念に基づき経営戦略を立案・遂行し、競争力・収益力を向上させることにより、企業価値ひいては株主共同の利益の向上を目指しております。
この企業理念・経営戦略が当社株式の大量買付け行為等によってゆがめられ、当社の存立・発展が阻害されるおそれが生じるなど、企業価値が毀損され、ひいては株主共同の利益が損なわれることのないよう、当社は、必要な措置を講じることと致しております。
当社は、第三者から当社株式の大量買付け行為等の提案(以下、「買収提案」といいます。)がなされた場合、これを受け入れるか否かの最終的な判断は、その時点における株主の皆様に委ねられるべきものと考えております。他方で、買収提案の中には、当社の企業価値や株主共同の利益に対し明白な侵害をもたらすおそれのあるもの、株主の皆様に当社株式の売却を事実上強要することとなるおそれのあるもの等が含まれる可能性があると考えております。
従って、当社は、第三者から買収提案がなされた場合に株主の皆様にこのような不利益が生じることがないよう、明確かつ透明性の高いルールを備え置き、実際に買収提案がなされた場合には、株主の皆様が必要な情報と相当な検討期間をもって適切な判断(インフォームド・ジャッジメント)を行えるよう環境を整えることが当社取締役会の責務であると考え、『株式の大量買付けに関する適正ルール』(以下、「適正ルール」といいます。)を導入しております。
<基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの概要>当社は、株主共同の利益の確保・向上を目的に、適正ルールを平成18年3月に取締役会決議をもって導入しておりますが、適正ルール導入から10年が経過した平成28年3月に、改めて適正ルールの必要性を確認するとともに、その信頼性・法的安定性を一層高めることができるよう、その導入・更新等について事前に株主の皆様の賛同を必要とする仕組みに変更することとし、同年6月24日開催の第92回定時株主総会において、この変更等を反映した適正ルールについて、株主の皆様の御承認をいただきました。御承認をいただいた適正ルールの概要は、以下(1)から(3)のとおりです。
(1)買収提案者による必要情報の提出と取締役会における検討等
当社取締役会は、当社の株券等を議決権割合で15%以上取得しようとする者(以下、「買収提案者」といいます。)から適正ルールに定める情報(以下、「必要情報」といいます。)がすべて提出された場合、当該買収提案者からの買収提案が当社の企業価値及び株主共同の利益の最大化に資するか否かを検討致します(検討期間は原則12週間)。
(2)株主意思の確認手続き
当社取締役会は、原則として、上記検討期間の満了後、買収提案を受け入れるか否かを株主の皆様に御判断いただくため、新株予約権の無償割当て(買収提案者に対する措置の発動)の必要性・賛否に関する株主意思の確認手続きを、書面投票又は株主意思確認総会により行います。
ただし、当社取締役会が必要情報を検討した結果、買収提案が当社の企業価値及び株主共同の利益の最大化に資すると判断した場合は、株主意思の確認手続きには進まず、また、新株予約権の無償割当ても行われません。
(3)新株予約権の無償割当てがなされる場合
適正ルールに基づく新株予約権の無償割当ては、ア)株主意思の確認手続きにおいて、株主の皆様が新株予約権の無償割当てに賛同された場合、イ)買収提案者が裁判例において悪質・濫用的であると例示されたグリーンメイラー等の4類型のいずれかに該当し、その買収提案が株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすおそれのあるものと取締役会が判断した場合、又はウ)買収提案者が適正ルールに定める手続きを無視したと取締役会が判断した場合に限られます。
なお、当社取締役会は、上記イ)又はウ)の判断にあたっては、適正ルールの運用に係る当社取締役会の判断の公正性を確保するため、当社の社外取締役又は社外監査役のうち3名の委員で構成する独立委員会から事前に意見を取得し、その意見を最大限尊重致します。
当社の適正ルールは、当社ウェブサイトに掲載しております。
<上記取組みについての取締役会の判断及びその判断に係る理由>適正ルールは、買収提案がなされた場合に、新株予約権の無償割当ての必要性を、株主の皆様に必要な情報と相当な検討期間をもって御判断いただくためのルール及び手続きを定めたものです。適正ルールは、買収提案を受け入れるか否かの最終的な判断を当社株主の皆様に委ねることにより、当社の企業価値、ひいては株主共同の利益の確保・向上を図る目的のものであり、当社の株主の共同の利益を損なうものではなく、また、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものでもありません。
以上から、当社取締役会は、適正ルールが上記「当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針」に沿うものであると判断しております。