有価証券報告書-第121期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/28 15:16
【資料】
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【項目】
153項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針、経営戦略及び対処すべき課題等
当社グループは、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」をパーパスとしております。そのためには、健全な利益と成長を実現し、企業価値を持続的に向上させることが重要と考えております。
<市場環境>当社グループをとりまく市場環境については、従来型の基幹システムなどの既存IT市場は、今後緩やかに縮小していくと予測されています。一方で、レガシーシステムのリプレイスメントや、効率化のためのモダナイゼーションへの投資は堅調に増えると予測されています。さらに、AI(人工知能)やデータ活用、IoT(モノのインターネット)など、デジタル化に向けた投資は、市場のニーズに加え昨今の新型コロナウイルスの影響により、今後拡大すると想定されています。
このような状況のもと、当社グループは、ますます需要が高まる企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を牽引し、社会課題の解決に貢献する「DX企業」への変革を目指します。そのため、取締役会及び独立役員会議などの場で議論を重ねて経営方針を策定し、2020年7月に発表いたしました。
<経営方針概要>当社は、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパスを定めたことに伴い、Fujitsu Wayを12年ぶりに刷新いたしました。この新たな「Fujitsu Way」は、役職員がパーパス実現に向けて自律的に意思決定し、行動していくためのより所であり、「パーパス」「大切にする価値観」「行動規範」の3つの要素で構成されています。今後は、当社グループの全ての事業活動を、パーパス実現のための活動として取り組んでまいります。
当社グループの事業領域を、お客様への提供価値に合わせて大きく2つに分類しました。AI、データ活用などのテクノロジーをベースとしたDXビジネスと、DXに必要なクラウド移行などのモダナイゼーションとを合わせたデジタル領域を、お客様の事業の変革や成長に貢献する事業領域「For Growth」と定め、これを成長分野と位置付けて、規模と収益性の両方を伸ばしていきます。また、システムの保守や運用、プロダクトの提供や保守といった従来型IT領域を、お客様のIT基盤の安定稼働への貢献と品質向上に取り組む領域として「For Stability」と定め、一層の効率化を推し進めて利益率を高めていきます。
「For Growth」においては、次の施策を進めてまいります。
グローバルで着実に戦略を実行する体制を整えるため、日本を含めた6リージョン体制にフォーメーションを刷新しました。この新しい体制で、グローバルで共通のポートフォリオ、アカウントプラン、サービス・オファリングを実現していくとともに、リージョンごとに最適化したサービスを提供してまいります。これらを支えるテクノロジーについては、当社グループならではの強みの確立に取り組んでおり、コンピューティング、AI、5Gネットワーク、サイバーセキュリティ、クラウド、データマネジメント、IoTの7つを重点技術領域として定め、リソースを集中し強化してまいります。
DXビジネスを成長させるための戦略的なソリューションの開発のため、データプラットフォームビジネスやトークンを活用した異業種間の価値交換プラットフォームビジネスなどについて、強みを持つ企業等とエコシステムを形成しながら、新たな市場の創出も視野に入れ取り組んでいます。
日本市場に根差したビジネスを強化するため、日本国内のビジネスを担う新会社「富士通Japan株式会社」を2020年10月1日に発足させました。新会社は、日本特有の要素が大きい自治体、文教、ヘルスケア、中堅民需市場などのビジネスを担ってまいります。
また、お客様のDXのパートナーとなるべく、当社グループ自身のDXのため、人員や体制の強化も含めた社内変革を進めております。
データに基づいたスピーディな経営判断を行うデータドリブン経営の実現のため、プロセスやシステムの刷新を進めており、これを全社横断型で進めるための「全社DXプロジェクト」を2020年7月1日に発足させました。併せて、あらゆる事業活動にデザインシンキングを取り入れたデザイン経営を行うべく、2020年7月1日付でデザインセンターを設立しました。また、テレワーク勤務を基本とする「Work Life Shift」を推進しております。DX企業にふさわしい働き方やマインドを醸成するための人事制度やオフィス環境を整えてまいります。
施策の実行にあたり、必要となる投資を積極的に行ってまいります。サービス・オファリングの開発、M&Aをはじめとした外部への投資、将来を見据えたDXビジネス拡大のための戦略的な投資に加え、高度人材の獲得や、社内人材・システムの強化のための投資を実行してまいります。
非財務面での取り組みも強化してまいります。当社グループの掲げるパーパスの実現には、当社グループ自身のサステナブルな成長が必須であり、そのためには当社グループを取り巻く全てのステークホルダーとの信頼関係を築くことが必要と考えております。その観点から、社会やお客様、従業員などを考慮した、非財務面での活動を評価する指標を新たに設定します。
当社は、責任あるグローバル企業として取り組むべき重要課題であるGlobal Responsible Businessを、「人権・多様性」「ウェルビーイング」「環境」「コンプライアンス」「サプライチェーン」「安全衛生」「コミュニティ」といった7つに定めています。各課題はお互いに関連性があり、これら7つの重要課題に取り組むことは、お客様、そして従業員からの信頼につながっていくと考えております。そのため、お客様からの信頼を示す「ネット・プロモーター・スコア」と、「従業員エンゲージメント」を非財務指標と定めます。加えて、組織やカルチャーの変革の進捗を、経済産業省が推進する「DX推進指標」を用いて客観的に測定し、継続的な改善に取り組んでまいります。
また、品質管理とリスクマネジメントを強化するため、2020年11月1日に、社長直下の組織において、品質管理機能を強化した組織編成を行うとともに、全社リスクマネジメント室を新設しました。併せて、重大なシステム障害の抑止に向けて全社的な点検を実施するためのプロジェクトを立ち上げ、活動を開始しています。お客様事業の一層の安定化に向けて、お客様IT基盤の安定稼働と品質向上に取り組んでまいります。
財務面の経営目標として、2022年度には、テクノロジーソリューションにおいて、売上収益3兆5千億円、連結営業利益率10%の達成を目指してまいります。
当社グループは、財務・非財務の両面で取り組むことにより、社会やお客様に長期的で安定した貢献を行い、その結果が、再び当社グループ自身の成長へとつながるような、ポジティブなループを描いていくことを目指してまいります。
新型コロナウイルスの感染拡大により、世界規模で経済活動に影響が出ており、その回復の見込みはいまだ不透明な状況にあり、各産業において様々な影響が出ています。一方で、新たな生活様式として、テレワークやオンライン教育などへのIT関連需要は拡大すると予測されています。より人を中心にデータが複雑につながっていく中、当社グループはデジタルテクノロジーと多様な業種への実績・知見を活かし、安心で利便性の高い社会づくりに貢献していきます。
(2)気候変動・エネルギー問題への対応
気候変動は国・地域を超えて世界に影響を与える問題であり、EU及び日本を含む120ヶ国以上が、日本国内では280を超える自治体が、2050年のCO2排出を実質ゼロとすることを宣言しています。グローバルでビジネスを展開する当社にとって当社自身のCO2排出実質ゼロの実現に加え、お客様や社会の脱炭素化への貢献を通じた気候変動への対応は重要な課題であると認識しています。
気候変動に伴う影響は、事業活動に様々なリスク(注1)をもたらします。例えば、近年、発生頻度・影響度が増大した自然災害は、調達・物流・エネルギー供給網を寸断し、部品やエネルギー等調達を困難とします(物理リスク:急性)。また、気温の長期的な変化は空調エネルギー使用量の増加を招くなど(物理リスク:慢性)、当社グループの事業へ影響を与える可能性があります。さらに、温室効果ガス(以下、GHG)の排出規制等の様々な規制の強化が考えられ、これらに適合ができない場合には、企業レピュテーションが低下したり(移行リスク:評判)、省エネ製品・サービスの開発が不十分な場合に規制への適合を条件とする入札に参加できなくなったりする可能性があります(移行リスク:市場/技術)。また、これらの規制等に適合するために必要なコストが増加する可能性があります(移行リスク:政策・法規制)。従って、さらなる省エネの強化や、低/ゼロGHG排出エネルギーの利用の推進と、サプライチェーン管理の強化が必要です。
一方、気候変動への対応は、当社グループのお客様においても課題であることから、気候変動の緩和と適応に貢献する製品やサービスの開発と提供は、お客様とともに課題克服のイノベーションを創出する機会につながります。ICTにより多様なモノやサービスをデジタルにつなげることで、物流や交通、ものづくりなど様々な分野でエコシステムを形成し、社会システム全体としてのエネルギーの最適利用を実現するとともに、先進テクノロジーをレジリエントな社会インフラの構築などに活用することが可能です。
こうした背景を踏まえ、当社グループは、グローバルICT企業として、気候変動対策において果たすべき役割や実現すべき未来の姿を明確にした2050年までの中長期環境ビジョン「FUJITSU Climate and Energy Vision」を策定しました。本ビジョンは、ICTを活用し自らの「脱炭素化」にいち早く取り組むこと、及び、そこで得たノウハウと当社のデジタルテクノロジーをソリューションとしてお客様・社会に提供し、ビジネスを通して気候変動の緩和と適応に貢献することを狙いとしています。
本ビジョンの実現に向け、2018年に、事業で使用する電力を100%再生可能エネルギー(以下、再エネ)とすることを目指す国際的なイニシアチブ「RE100」に加盟しました。国内外の富士通グループ拠点で消費する電力を2050年までに100%再エネ由来とすることを目指すと共に、エネルギーのマネジメントや貯蔵などの研究開発や技術実証に取り組み、社会全体の再エネの普及拡大にも貢献していきます。
自らの「脱炭素化」については、2050年までに自らのCO2ゼロエミッションを掲げていますが、そのCO2削減シナリオは、「2℃目標」(注2)達成のために科学的に根拠のある水準であると認められ、自社及びサプライチェーンにおける排出削減目標(2030年目標、2050年目標[自社のみ])として、2017年に国際的なイニシアチブ「Science Based Targets initiative(SBTi)」(注3)に承認されました。さらには、自らの排出削減目標について、2021年4月に2030年の削減率を33%から71.4%削減に引き上げ、同イニシアチブから「1.5℃目標」水準であることが承認されています。
これらの戦略に基づき、当社では2021年2月に「FJcloud」(注4)の運用に必要な全電力を2022年度までに100%再生可能エネルギーとする目標を公表しました。これにより、当社の再生可能エネルギー使用量の拡大を加速させるとともに、お客様がクラウドサービスを利用することで生じるCO2排出量をゼロにすることができ、お客様・社会の気候変動の緩和に貢献することができます。加えて、当社の移行リスクの軽減や、お客様のクラウドサービスに対する新たなニーズに合せることで、ビジネス機会の向上にも寄与することとなります。
また、GHG排出削減や再生可能エネルギー使用量等を含む短期目標「第9期富士通グループ環境行動計画(2020年目標)」において、設備の省エネ対策、製造プロセスの見直しによる効率化、オフィス空調温度の適正化等により、2019年度の温室効果ガス排出量削減目標を達成しました。2019年度の温室効果ガス排出量は、直接排出(Scope1)が87千トン、間接排出(Scope2)が663[マーケット基準]千トンでした。
こうした気候変動に係るリスクと機会に関する具体的な方針や目標の管理は、代表取締役社長を主宰とし、グループ全体に関わる環境を含むサステナビリティ関連事項の提案・決定・指示を行う委員会である「サステナビリティ経営委員会」において実施され、経営会議での最終決定の後に取締役会に報告されます。また、気候変動対策を含むサステナビリティへの対応をより強力に推進すべくCSO(Chief Sustainability Officer) が設置され、CSOは、取締役、経営幹部への変革提案や同領域の業務執行を行うこととなります。
さらに、取締役会の監督の下、全社レベルのリスクマネジメント体制において各部門でのリスク分析結果を踏まえ統合的に気候変動関連のリスク分析と対応が行われます。リスク管理のプロセスにおいては、最初に識別・評価を行い、発生頻度やインパクトから優先順位付けした上で、関連する委員会等で回避・軽減・移転・保有などの対策を決定し、進捗管理を行います。重要リスクについては定期的に取締役会に報告しています。
当社は、2019年4月にTCFD(注5)による気候変動情報開示への提言に賛同を表明し、比較可能性や一貫性に配慮した開示に努めています。
最新の情報と詳細は、当社ウェブサイトをご参照ください。
(注)1.気候関連財務情報開示タスクフォース(注4参照)では、気候変動関連リスクを、(1)低炭素経済への移行に関連した「移行リスク」と、(2)気候変動の物理的影響に関連した「物理リスク」に分類。移行リスクには、「政策及び法規制のリスク」、「技術のリスク」、「市場のリスク」、「評判上のリスク」が含まれ、物理リスクには、異常気象の激化などによる「急性リスク」と長期的な気温上昇などによる「慢性リスク」が含まれます。
2.「産業革命前からの平均気温上昇を2℃未満に抑える」という目標。国連気候変動枠組条約第21回締約国会議において、2020年以降の温暖化対策の国際的枠組みとして採択され、2016年11月にパリ協定において発効されました。
3.2015年に国連グローバルコンパクト、WRI(世界資源研究所)などの団体が共同で設立したイニシアチブ。産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えるために、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標の設定を企業に働きかけています。
4.国内における当社のデータセンターから提供するクラウドサービス(FUJITSU Hybrid IT Service FJcloud)。
5.気候関連財務情報開示タスクフォース。気候変動に係る金融市場の不安定化リスクを低減するため、G20の要請で金融安定理事会が設立。2017年6月に、気候変動がもたらすリスク、及び機会についての情報企業・団体等が自主的に把握、開示することを推奨する提言を発表しました。

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