有価証券報告書-第112期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/28 10:29
【資料】
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【項目】
105項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日(2019年6月28日)現在において判断したものです。
(1) 会社経営の基本方針
当社は、1918年の創業以来、100年以上にわたり「より良いくらし、より良い世界」の実現への貢献を目指し、事業活動を行っています。当社は、時代の変化に合わせて、これまで蓄積した技術力やモノづくり力、さらには社外のビジネスパートナーが持つ強みを掛け合わせ、新たな価値を創造し続けます。これにより持続的な成長と企業価値向上を追求していきます。
(2) 会社の経営戦略と対処すべき課題
①2019年度の主な取り組みについて
2019年度の経営環境は、各国の政治・金融情勢、保護主義の広がりなどのリスク要因や、主要国の減速傾向が見込まれるものの、世界経済全体としては一定の成長を維持する見通しです。日本では、海外経済の減速傾向が下押し要因となる一方で、消費税増税の影響は負担軽減策で限定的となる見通しです。また、中長期的には中国、米国を中心とした世界経済の成長が予想されています。
このような状況も踏まえ、当社は、2019年度より新たな中期戦略を開始しました。新中期戦略では、ポートフォリオマネジメントを実行し、利益成長と収益性改善を目指します。具体的には、当社の事業を「基幹事業」、「再挑戦事業」、「共創事業」の3つに区分し、基幹事業と位置付ける「空間ソリューション」、「現場プロセス」、「インダストリアルソリューション」にリソースを集中し、ソリューション型事業の拡大を通じて利益成長を目指します。再挑戦事業の「オートモーティブ」、「車載電池」では、強みのある領域に集中し、利益改善に注力します。共創事業の「家電」「住宅」では、培ってきたブランド力等の強みを活かし、地域や他社との連携により競争力の向上を目指します。加えて、効率的かつ競争力のある経営体質を実現するため、赤字事業への抜本的な対策等を実行し、固定費の削減も進めていきます。これらの取り組みを通じて当社グループを変革し、中長期的な方向性である「くらしアップデート」の実現を目指します。
②各セグメントにおける代表的な取り組み
2019年度より、セグメント区分を一部変更しました。
・エコソリューションズは、ライフソリューションズに名称変更。
・オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、自動車メーカーに向き合うオートモーティブと、デバイスを核とする事業を行うインダストリアルソリューションズの2つに分割。
以下では新しいセグメント区分毎に説明します。
アプライアンス
家電事業は、事業領域の選択と集中により、これまで以上に憧れや感動を与える商品を提供していきます。また、お客様と生涯つながり続け、くらしに寄り添ったサービスで収益を得るビジネスモデルを構築し、収益力改善と長期的な成長への土台づくりを実現していきます。拡大する中国市場においても、現地に向き合う新カンパニーを設立し、日本で培った長期信頼性、要素技術力、幅広い商品群を活かし、中国のお客様にも、くらしに寄り添ったサービスを提供していきます。
ライフソリューションズ
「A Better Life」を家、街、社会へ拡げていくことを目指し、お客様視点でくらしをより良く、快適にする事業を実現していきます。特に成長が期待できる中国、東南アジア、インド等の海外では、単品商材の販売拡大による成長に加え、現地のパートナー企業との共創を通じ、新たなお役立ちを創出していきます。日本においては、複数の商材をつなげたシステムでの販売・施工に加え、納入後の保守・サービス・運用まで広げた事業を展開していきます。
コネクティッドソリューションズ
現場プロセス革新のグローバルリーディングカンパニーを目指し、業務プロセス改善を通じて、法人のお客様が直面する消費者ニーズの多様化や高度化、労働力不足などの経営課題の解決に取り組みます。お客様の「モノをつくる・運ぶ・売る」のプロセスに入り込み、現場で取得・蓄積したデータと製造業で培ったノウハウや技術を組み合わせることで複雑な業務プロセスを革新し、お客様の事業成長に貢献していきます。
オートモーティブ
経営環境の変化に素早く対応する変化対応力を強化し、収益成長を軸にした経営へ転換します。車載機器事業では、幅広いカーメーカーに採用されているデバイスやインフォテインメントシステムと家電・住宅の知見・ノウハウを強みに、自動運転車の実現を見据えた「快適な車室内空間」、「安全・安心なクルマづくり」、「クルマの電動化」に貢献します。車載電池事業では、クルマの電動化の主要デバイスである車載電池で業界をリードした開発を進めます。角形リチウムイオン電池は、高出力・高容量に加え、安全品質とコスト競争力を両立した業界ナンバーワンの電池を実現していきます。円筒形リチウムイオン電池は、米国工場の立上げを完遂し、顧客との密接な連携により需要を見極め、今後の展開を検討していきます。
インダストリアルソリューションズ
「強いデバイス」と「強いデバイスを核としたシステム」の提供を通じて、より豊かで利便性の高い社会の実現に貢献していきます。特に、注力する車載・産業分野では社会的な要請が大きいCASE(注)1、工場省人化、情報通信インフラの領域に集中していきます。システム事業(注)2では、顧客に密着し提案力の強化を図ることにより、個々の顧客に最適なソリューションを提供、唯一のパートナーとなることを目指します。デバイス事業(注)3では、材料・プロセス技術など商品力強化に取り組み、市場占有率が高い商品の売上構成比を高めていきます。
(注)1. Connected(つながる)、Autonomous(自律走行)、Shared(共有)、Electric(電動)
2. 制御機器、産業用モーター・センサー、小型二次電池・蓄電モジュール事業など
3. 電子部品、乾電池・マイクロ電池、電子材料事業など
③持続的成長を支える基盤
コーポレート・ガバナンス
当社は、コーポレート・ガバナンスを、中長期的な企業価値向上のための重要な基盤と位置づけています。取締役会と、監査役・監査役会体制のもと、指名・報酬諮問委員会および取締役会実効性評価の仕組みを活用して、実効性のあるコーポレート・ガバナンス体制の強化を推進していきます。
環境
当社グループは、より良いくらしと持続可能な地球環境の両立を目指して策定した「環境ビジョン2050」の実現に向け、創・蓄・省エネ、エネルギーマネジメントに関する商品、技術、ソリューションの開発を通じて、使うエネルギーの削減と、それを超えるエネルギーの創出・活用を進めていきます。また、地球温暖化防止に向けた国際的な枠組みであるパリ協定を踏まえ、2050年までに自らの事業活動によるCO2排出量をゼロにする目標を掲げており、その目標はSBT(注)1として認定されています。
(注)1. SBT:Science Based Targetsの略で、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べ2℃未満に抑えるための科学的知見と整合した削減目標
人材戦略
当社グループは、今後一層、伸びる市場・顧客の近くで事業創造・成長を牽引していくため、国籍・社歴に関わらず多様な人材が活躍できる環境・仕組みへの転換、最適人材の育成・登用を進めています。具体的には、多様な経験・役割適性を持つ経営人材づくりに取り組むとともに、各地域では現地責任者主体の「タレントマネジメントコミッティ」の推進を通じて、会社や国を越えた人材配置・キャリア形成を加速しています。また、個々の人材のスキル・経験等を見える化する「グローバル人材データベース」や、グローバル共通の考え方で、成果を測り人材育成を加速する「パフォーマンスマネジメント」などの仕組みも順次導入しています。
(3) 株式会社の支配に関する基本方針
①当社の企業価値向上に向けた取り組み
当社は創業以来、「事業活動を通じて、世界中の人々のくらしの向上と、社会の発展に貢献する」という経営理念をすべての活動の指針として、事業を進めてまいりました。今後も、製造業として培ってきた強みを磨きながら、様々なパートナーとともに、お客様一人ひとりにとっての「より良いくらし、より良い世界」を実現していくなかで、株主の皆様や投資家、お客様、取引先、従業員をはじめとするすべての関係者の皆様にご満足いただけるよう、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。
具体的には、当社は、新中期戦略の最終年度にあたる2021年度以降において、基幹事業ではEBITDA成長率5~10%(注)1、かつEBITDAマージン10%以上(注)2、全社ではROE10%以上(注)3を安定的に達成できるグループ経営を目指します。EBITDAは、投資回収を示すキャッシュフロー指標であり、リソースを集中し利益成長を目指す基幹事業において企業価値向上を測る尺度として設定しました。基幹事業を中心として利益額を拡大することで全社の企業価値向上につなげてまいります。
(注)1. EBITDA(償却前営業利益):Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization
2. EBITDAマージン:EBITDA ÷ 売上高
3. ROE(Return on Equity):親会社の所有者に帰属する当期純利益 ÷ 期首・期末平均親会社の所有者に帰属する持分
②大規模買付行為に対する取り組み
当社は、当社株式の大規模な買付行為がなされた場合にこれを受け入れるかどうかは、最終的には、株主の皆様の判断に委ねられるべきものと考えております。ただし、大規模買付行為のなかには、株主の皆様が適切な判断を行うために必要な情報が十分に提供されない場合や、その目的などからみて、企業価値・株主共同の利益を著しく侵害するおそれがある場合もあり得ます。
当社は、当社株式の大規模買付を行おうとする者に対しては、株主の皆様が適切な判断を行うために必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて取締役会の意見等を表明・開示し、株主の皆様の検討のための時間の確保に努める等、金融商品取引法、会社法、およびその他関係法令の許容する範囲内において、適切な措置を講じてまいります。また、取締役会の意見等の表明・開示にあたっては、その内容の客観性を確保するため、社外取締役、社外監査役で構成される独立委員会を設置し、取締役会として意見を諮問するとともに、本委員会の答申を最大限尊重してまいります。