有価証券報告書-第113期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 11:12
【資料】
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【項目】
102項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日(2020年6月26日)現在において判断したものです。
(1) 会社経営の基本方針
当社は創業以来、社会の公器として、「事業活動を通じて、世界中の人々のくらしの向上と社会の発展に貢献する」という経営理念のもと、「より良いくらし、より良い世界」の実現に向けて事業活動を行っています。社会環境の変化と向き合いながら、当社の技術力やモノづくり力、社外のビジネスパートナーが持つ強みを掛け合わせ、新たな価値を創造し続けることで、持続的な成長と企業価値向上を追求していきます。
(2) 会社の経営戦略と対処すべき課題
①2020年度の主な取り組みについて
当社は、2019年度からスタートした中期戦略において、当社の事業を「基幹事業」「共創事業」「再挑戦事業」の3つに区分し、基幹事業と位置付ける「空間ソリューション」「現場プロセス」「インダストリアルソリューション」を中心にリソースを集中して利益成長を目指し、共創事業による競争力の向上などにより収益性改善を目指しています。
2020年度の経営環境は、各国の政治・金融情勢、保護主義の広がり、新型コロナウイルス感染症の状況(注)1 などにおいて不確実性が高く、世界経済の先行きも見通しにくくなっています。日本でも、こうした国際経済の影響を少なからず受けるとみられます。
このような状況を踏まえ、当社は、事業等へのリスクや影響の見極めと対応策の検討を進めながら、中期戦略をベースに、ポートフォリオマネジメントと経営体質強化を継続していきます。基幹事業では、社会課題を背景としたお客様のお困りごと、経営課題等の解決を実現するソリューション型事業の拡大で、利益成長を図っていきます。共創事業では、これまで培ってきたブランド力の強みを生かし、地域や他社との連携により競争力の強化、収益性の向上を目指します。加えて、効率的かつ競争力のある経営体質を実現するため、低収益事業への抜本的な対策等を継続して実行し、固定費の削減も進めていきます。これらの取り組みで、収益体質を徹底して強化するとともに、個々の事業の競争力向上に取り組んでいきます。そして、2030年までの長期的視点では、「くらしアップデート」を通じ、人の「くらし」にフォーカスしたお役立ちを創出し続ける会社を目指します。
中期戦略の最終年度にあたる2021年度以降においては、基幹事業ではEBITDA(注)2 成長率5~10%かつEBITDAマージン(注)3 10%以上、全社ではROE(注)4 10%以上を安定的に達成できるグループ経営を目指します。EBITDAは、投資回収を示すキャッシュ・フロー指標であり、リソースを集中し利益成長を目指す基幹事業において企業価値向上を測る尺度として設定しています。基幹事業を中心として利益額を拡大することで全社の企業価値向上につなげてまいります。
(注)1. 新型コロナウイルス感染症の状況:「2 事業等のリスク」の(1)経済環境に関するリスクに記載
2. EBITDA(償却前営業利益):Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization
3. EBITDAマージン:EBITDA ÷ 売上高
4. ROE(Return on Equity):親会社の所有者に帰属する当期純利益 ÷ 親会社の所有者に帰属する持分(期首・期末平均)
②各セグメントにおける代表的な取り組み
アプライアンス
環境・省エネや空質への関心の高まりもあり、空調、白物家電などの領域が成長市場である一方、テレビなどAVの領域は技術進化の停滞やコモディティ化の進展などにより、成長性の悪化が見込まれています。
成長市場である空調を主とするくらしインフラ領域においては、業務用空調事業でグローバルに収益性を高める取り組みを進めます。一方、家電を中心としたくらしアプライアンス領域においては、テレビなどの事業環境の厳しい領域の構造改革を実行しつつ、一人ひとりのお客様とつながり、価値に結び付く商品・サービスで「お客様との距離を縮める」ことにより、収益構造の変革を図ります。また、中国・北東アジア社と連携し、中国をはじめ広域アジアで競争力強化につながる最適オペレーションの実現に取り組んでいきます。
ライフソリューションズ
日本では、新築住宅着工は縮小するものの、オフィス・店舗などの非住宅分野ではリニューアル需要を含め底堅く継続する見込みです。海外では、中長期視点ではISAMEA(注)や東南アジアを中心に住宅やインフラなど都市開発の需要拡大が期待されています。
日本では、主に非住宅分野において、複数の商材を繋げたシステムでの販売・施工に加え、中期的にはお客様のお困りごとを解決するためのコンサルティング、納入後の保守・サービス領域へお役立ちの幅を広げていきます。また、インドや東南アジアなどでは、販売・生産体制の増強により、電設資材の収益を伴う販売拡大を進めます。これらの取り組みを通じて、お客様視点でくらしをより良く、快適にする事業をグローバルで実現していきます。
(注) ISAMEA:インド、南アジア、中東、アフリカ
コネクティッドソリューションズ
労働力人口の減少や消費者嗜好の多様化などが進む中、製造・物流・流通における事業領域は継続的な市場拡大が見込まれています。
お客様の「つくる」「運ぶ」「売る」現場の業務プロセス革新を通じて経営課題解決に貢献し、現場プロセス事業を柱とした持続可能な高収益事業体への変革を目指していきます。物流、流通を中心としたサプライチェーン領域では、コンサルティングなど上流工程からの価値訴求や、現場のデジタル化・データ連携による業務プロセス高度化を通じて、お客様の販売拡大、コスト削減に貢献していきます。ファインプロセス(製造)領域では、開発から製造・販売・サービス一体でお客様に向き合い、全プロセスで継続的な価値提供に取り組んでいきます。
オートモーティブ
自動車業界では、CASE(注)1の進展に伴い、100年に一度と言われる大変革の時代を迎えています。車両に搭載する技術が高度化し、移動空間の快適性や交通事故低減への要請は、更に増加しています。
車載機器事業では、強みを発揮できるIVI(注)2、HUD(注)3、ADAS(注)4を注力分野として強化し、クルマの進化に貢献する活動を進めていきます。IVIではデジタルAVや家電で培った知見を活かした高い操作性や機能を実現するソフトウェア開発力、HUDでは業界をリードする小型かつ大画面表示を実現する技術、また、ADASでは緊急ブレーキ、駐車支援などの車両周辺システムにおける高い検知精度を有しています。これらの注力分野を中心とした商品の開発・提供により、安全で快適な運転環境づくりに貢献していきます。車載電池事業では、円筒形リチウムイオン電池のさらなる技術進化と、合弁会社における角形リチウムイオン電池の開発加速で、高エネルギー密度や安全性で業界をリードし、顧客の需要に応えてまいります。
(注)1. CASE:Connected(車が通信ネットワークに常時接続)、Autonomous(自動運転)、
Shared & Services(車を共有して使うサービス)、Electric(電動化)
2. IVI :In-Vehicle Infotainment(オーディオ/ビジュアルで安全(運転に必要な情報)・快適(エンターテインメント)なドライブをサポートする車載機器)
3. HUD :Head-Up Display(運転に必要な情報をドライバーの視線前方に表示し、視線移動を少なくすることで、より安全運転に役立つディスプレイ機器)
4. ADAS:先進運転支援システム(自動ブレーキ、自動駐車など、車両が危険を察知し、車両を自動制御することで交通事故を防止する安全運転支援システム)
インダストリアルソリューションズ
IoT社会の進展やモビリティの進化、労働力人口の減少などの社会課題を背景に、重点領域と位置付ける「情報通信インフラ」「車載CASE」「工場省人化」の領域は、継続的な進化を伴いながら中長期的に拡大することが見込まれています。
それらを下支えするデバイスの需要は、今後大きく成長していくことが期待されており、当社は「強いデバイス」と「強いデバイスを核としたシステム」の提供を通じて、社会課題の解決に貢献していきます。「情報通信インフラ」では5G基地局やデータセンター、「車載CASE」では電装化やxEV(注)、「工場省人化」では生産設備等をターゲットに、重点領域向け商品で販売成長を目指します。併せて、材料・プロセス技術のさらなる強化によるトップシェア商品の拡大や、お客様密着で提供価値を最大化していくモジュール・パッケージ商品分野での事業創出に加え、経営体質強化にも取り組み、利益成長を図っていきます。
(注) xEV:電動車(電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグイン・ハイブリッド[電気]自動車、[水素] 燃料電池自動車の総称)
③持続的成長を支える基盤
コーポレート・ガバナンス
当社は、コーポレート・ガバナンスを中長期的な企業価値向上のための重要な基盤と位置付け、取締役会と監査役・監査役会体制のもと、実効性のあるコーポレート・ガバナンス体制の強化に継続して取り組んでいます。取締役会では、M&Aや外部パートナーとの連携に関する議論の活性化などを通じて、監督機能、コーポレート意思決定機能としての実効性を高めています。また、指名・報酬諮問委員会や取締役会実効性評価の仕組みの活用などにより、経営の機動性や透明性を高める活動を進めています。
環境
当社グループは、より良いくらしと持続可能な地球環境の両立を目指した「パナソニック環境ビジョン2050」を策定し、創・蓄・省、エネルギーマネジメントに関する商品、技術、ソリューション開発を通じて、使うエネルギーを削減するとともに、それを超えるクリーンなエネルギーの創出・活用に向けた取り組みを進めています。取り組みを加速するため、国際的なイニシアチブ「RE100(注)1 」に加盟し、2050年までにグローバルで使用する電力を100%再生可能なエネルギーに切り替え、CO2排出ゼロのモノづくりを目指しています。また、「TCFD(注)2 」の提言を踏まえて、気候変動の影響を受けやすいと判断した事業を含めたリスクと機会を特定し、シナリオ分析を行っています。
(注)1. RE100:事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー(Renewable Energy)にすることを目指す国際的なイニシアチブ
2. TCFD :金融安定理事会により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース
(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)
人材戦略
新たな事業ポートフォリオ区分を設定し、利益成長と収益性改善を目指す当社グループでは、一人ひとりがチャレンジでき、能力を十分に発揮できる組織風土づくりを進めています。事業執行体制の見直しを行い、全社最適視点で事業構造改革を担う「執行役員」と、個別事業の強化・変革を担う「事業執行層」に分け、経営の役割と責任を明確化しました。事業執行層には、今後の事業環境に応じて必要とされる人材を、適所適材の観点で柔軟かつタイムリーに登用し、より成果に応じた透明性のある評価・処遇を行うことで、チャレンジし続ける風土を醸成していきます。
また、年齢・社歴・国籍にかかわらずグローバルに活躍できる人材づくりの仕組みとして、「グローバル人事プラットフォーム」を構築しています。人材マネジメント情報を可視化、可用化する「グローバルタレントデータベース」の活用などで、国・地域・会社を超えた配置・登用やキャリア・能力開発を実現し、人材マネジメントの高位平準化、組織能力向上を目指しています。