有価証券報告書-第126期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/30 16:47
【資料】
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【項目】
161項目
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)が判断したものであります。
(1) 経営方針・経営戦略
(経営理念・経営信条)
シャープ創業者 早川徳次のメッセージ「他社がまねするような商品をつくれ」には、次の時代のニーズをいち早くかたちにした「モノづくり」により、社会に貢献し、信頼される企業を目指すという、シャープの経営の考え方が凝縮されています。この精神は、経営理念「誠意と独自の技術をもって、広く世界の文化と福祉の向上に貢献する」や経営信条「誠意と創意」として1973年に明文化され、創業以来100年を超える月日が流れた今日まで、脈々と受け継がれています。さらには、シャープらしいオリジナリティあふれる価値を創造するブランドであり続けることを世界中のお客様に約束する「Be Original.」をコーポレート宣言としております。
(事業ビジョン)
当社グループは「8K+5GとAIoTで世界を変える」を事業ビジョンに掲げ、以下のような「8K+5G Ecosystem」と「AIoT World」の本格事業化を進めています。
「8K+5G Ecosystem」
超高精細映像技術“8K”と次世代移動通信技術“5G”を核に、映像の「撮影」から「編集」「伝送」、そして「表示」までの一連のバリューチェーンをさまざまなパートナーと共に構築し、放送分野に留まらず、工業や医療、セキュリティなど、幅広い事業分野でイノベーションを巻き起こす「8K+5G Ecosystem」の構築を目指しています。
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「AIoT World」
AIoTとは、AI(Artificial Intelligence:人工知能)とIoT(Internet of Things:モノのインターネット)を組み合わせて当社が作った造語です。単にモノがインターネットに接続してデータをやり取りするだけでなく、人工知能によって学習し、成長するシステムを目指しています。機器のAIoT化を実現するAIoTプラットフォームを軸に、お客さまの生活を取り巻く自社や他社の機器、さらには自社や他社のサービスを相互につなぐとともに、新たなソリューションを創出し、人々の生活をより豊かにする「AIoT World」の構築を目指しています。
0102010_002.png(3つのトランスフォーメーション)
当社グループは、事業ビジョンの実現に向けて、以下の3つのトランスフォーメーションを推進しています。
① ビジネスモデルの変革(“事業”のトランスフォーメーション)
「Technology Up, Quality Up, Value Up」をキーワードに、競争力の高い機器やデバイスを創出するだけでなく、ハードウエアやソフトウエア、クラウドサービスを融合したシステム、さらにはソリューションへとビジネスモデルの転換を目指しております。また、こうした取り組みを通じて、B2C事業はもとより、B2B事業の強化・拡大を図っております。
② グローバルでの事業拡大(“戦う市場”のトランスフォーメーション)
日本、中国、ASEAN、欧州、米州のグローバル5極体制で、事業を積極的に展開し、さらなる成長を目指しています。
③ 経営基盤の強化(“オペレーション”のトランスフォーメーション)
ビジネスプロセスの抜本的見直し、コスト削減、信賞必罰の人事の徹底などを通じ、安定的に収益を確保できる経営基盤の強化に取り組んでいます。
(2019年度の成果)
米中貿易摩擦が長期化するなど厳しい事業環境が続きましたが、当社グループは「量から質へ」の方針を強化し、着実なトランスフォーメーションを進展させてきた結果、2016年度第3四半期以降13四半期にわたり親会社株主に帰属する四半期純利益の黒字を計上してまいりました。新型コロナウイルス感染症が拡大した2019年度第4四半期は赤字となったものの、2019年度年間での親会社株主に帰属する当期純利益は黒字を確保できました。
2019年度は、8K対応液晶テレビ「AQUOS 8K」や、ウォーターオーブン「ヘルシオ」、当社独自の空気浄化技術プラズマクラスターを搭載した「プラズマクラスター洗濯乾燥機」・「プラズマクラスターエアコン」など、8KやAIoTクラウドサービスに対応した製品を順次発売し、5Gサービスに対応したスマートフォン「AQUOS R5G」や5Gモバイルルーターを商品化したほか、巻き取り収納ができる30V型4Kフレキシブル有機ELディスプレイを開発するなど、独自商品・特長デバイスの創出に努めました。さらに、新スマートホームサービス「COCORO HOME」を開始し、8Kソリューション開発の起点となる「8K Labクリエイティブスタジオ」を開設するなど、「8K+5G Ecosystem」と「AIoT World」の構築に向けて取り組みました。
2019年10月には、IoT機器とつながる各種サービスの提供などを行う㈱SHARP COCORO LIFEや、AIoTプラットフォーム事業を担う㈱AIoTクラウドが営業を開始し、ビジネスモデルの変革に取り組んでいます。
また、NECディスプレイソリューションズ㈱の株式の66%を取得して、日本電気㈱との合弁会社として共同運営することを2020年3月に決定しております。
さらに、社会貢献活動の一環として、マスクの生産を開始しました。日本政府の要請を受け、2020年2月28日に生産を決定した後、3月24日より三重工場(三重県多気町)にて生産を始めたものです。
グローバル事業拡大としては、ベトナムにおいて、新たな生産拠点としてSHARP Manufacturing Vietnam CO.,LTD.を立ち上げました。経済成長が継続するASEAN地域において、今後も持続的な事業拡大を推進する核として設立されたこの新拠点で、2020年度より空気清浄機、液晶ディスプレイ、電子デバイス等の生産を開始します。
(2) 経営環境と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
米中貿易摩擦による影響や新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界経済は減速を余儀なくされる見通しです。
今般の新型コロナウイルス感染症の拡大が調達、生産、販売等のプロセスに及ぼした影響を木目細かく分析し、より一層ビジネスリスクに強いサプライチェーンの再構築に取り組むとともに、さらなるコストダウンや経費削減などの構造改革を進め、体質強化を図っていくことが必要と考えております。
また、モノづくり主体の家電メーカーからサービス・ソリューションを提供する企業へとビジネスモデルの転換を加速し、新型コロナウイルス感染拡大防止と経済活動の両立のための「新しい生活様式」に適合した製品・サービスの強化や創出にも取り組んでいきます。
これからの日常生活をサポートする製品・サービスとしては、料理キット宅配サービス「ヘルシオデリ」、水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」、ウォーターオーブン「ヘルシオ」に加え、オンラインストア「COCORO STORE」や「COCORO BOOKS」などに注力していきます。
また、働き方の新しいスタイルをサポートする製品・サービスとしては、テレワークやオンライン会議に必要となるパソコンやタブレット、ビジネス向け大型ディスプレイ、モバイルルーター、クラウド型Web会議サービス「TeleOffice」、ビジネスコミュニーションサービス「LINC Biz」などを展開していきます。
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財務の視点では、新型コロナウイルス感染症の生産・販売活動への影響は、2020年度も一定期間継続すると考えられることから、手元流動性やたな卸資産の水準にも十分注意を払いながら、安定的かつ効率的な事業運営を図ってまいります。
2019年度にはA種種類株式の取得・消却を完了し、資本の質的向上を図りましたが、今後は、業績改善による純有利子負債の削減、格付会社による信用格付の向上を通じ、直接金融市場への復帰も念頭に、財務体質の改善に努めてまいります。
(3) 目標とする経営指標
次期中期経営計画を対外公表する予定で策定作業を進めてきましたが、新型コロナウイルス感染症の当社グループ事業への影響を合理的に判断できる状況にないことから、有価証券報告書提出日現在では、対外公表は延期し、影響の見極めと計画の再精査ができた段階で改めて公表することとしております。
非財務の経営指標としては、省エネ製品・創エネ製品による温室効果ガス削減貢献量(ポジティブ・インパクト)がサプライチェーン全体の事業活動に伴う温室効果ガス排出量(ネガティブ・インパクト)を常に上回ることを目標に環境面での取り組みを進めており、2018年度にはポジティブ・インパクトが30,312千t-CO2、ネガティブ・インパクトが28,171千t-CO2となり、ポジティブ・インパクトがネガティブ・インパクトを上回ることができる環境経営体制を構築しております。
当社グループは、2050年に向けた長期環境ビジョン「Sharp Eco Vision 2050」を策定し、「消費するエネルギーを上回るクリーンエネルギーの創出」「企業活動で生じる地球への環境負荷の最小化」に取り組み、2050年までに自社活動のCO2排出量をネットゼロ、製品への新規採掘資源の使用をゼロにするなどの目標を設定しています。