有価証券報告書-第97期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/27 16:07
【資料】
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【項目】
111項目

対処すべき課題

当社グループ(当社及び連結子会社)は、事業の選択と集中ならびに高効率オペレーションの推進をはじめとする諸施策の実行により、企業体質の強化を進めるとともに、開発・販売のさらなる強化による事業規模拡大に向け、積極的な先行投資を実施しております。今後、これらの活動を「環境経営」と連動させて収益性向上を図るとともに、快適で安心できる社会づくりに貢献する「新たな価値の創造」に取り組んでまいります。
当社グループの主力事業である空調機は、先進国のみならず世界各国・地域において環境規制の強化や節電意識の高まりが進展・浸透しつつあるなか、家庭用・業務用ともさらなる省エネ性・快適性の向上が求められております。また、IoT*¹を活用した新たな製品・サービスの拡大も見込まれ、中長期的な需要増加が期待されております。
情報通信・電子デバイスでは、情報通信システムにおいて、消防無線システムのデジタル化商談の終息に伴い、消防関連システムの更新需要は、案件が集中して発生した近年に比べて減少し、通常の安定した水準で推移すると予想されます。一方、災害対応力強化への社会的要請を背景に防災システムの整備事業や情報伝達機能の高度化・拡充が進展する見込みです。また、電子デバイスでは、車載カメラ、電子部品・ユニット製造ともに当社のコア技術を活かして開拓・深耕できる分野の拡大が期待できます。
*¹IoT :Internet of Thingsの略。パソコン等の情報通信機器にとどまらず、様々なモノがインターネットに接
続され、情報交換する仕組み。
これらの事業機会の拡大と同時に、各市場での競争はますます激化しており、事業環境の変化を迅速かつ的確に捉え、他社に先んじて対応することがますます重要となっております。
このような状況において当社グループは、今後の成長を牽引する海外向け空調機を中心とした強固なビジネス基盤の構築に向け、引き続き積極的な先行投資を実施するとともに、全社的なオペレーションの効率化に「環境に配慮した事業活動での徹底したムダ取り」を組み入れて一層の企業体質強化を図り、継続的な売上拡大と利益率向上を目指して以下の施策を推進してまいります。
①空調機開発体制の革新
今後、世界各地で商品開発競争・価格競争を勝ち抜いていくためには、地域ごとのニーズや環境規制といった市場からの要求に応える商品・サービスを、市場に見合った価格で、かつタイムリーに提供していくことが不可欠です。
これらの課題に対応していくため、商品開発・要素技術開発・生産技術部門の連携を含めた開発体制の革新に取り組むとともに、川崎本社、中国、タイの各開発拠点の技術設備・人員増強による開発基盤の整備を進め、開発キャパシティの拡大・開発期間の短縮に取り組んでまいります。同時に、工場の製造・調達部門、現地ベンダー等と一体となったコストダウンを進めることにより、商品ラインアップの拡充とコスト競争力の強化を推進してまいります。
さらに、研究所機能の充実ならびにオープンイノベーションの活用を進め、将来を見据えた新たな価値の創造にも積極的に取り組んでまいります。
②空調機営業活動の強化
海外では、大型・システム商品の販売構成比拡大と家庭用エアコンのさらなる拡販に向けて、販売子会社の人員増強および販売代理店・設置業者との連携緊密化による体制強化を進め、販売網の開拓・拡大およびサービス体制の拡充を図ってまいります。また、国内では、量販店ルートにおける販促活動強化を通じたシェア拡大と大型・高級機種の売上構成比拡大、住宅設備ルート向けの新規顧客開拓による拡販を図るとともに、サービス体制強化を進めてまいります。
③情報通信・電子デバイスビジネスの再構築
情報通信システムでは、消防・防災システム、民需システムともに、提案営業力をさらに強化してまいります。消防無線システムのデジタル化商談の終息に伴い、消防関連システムの更新需要が減少し、通常の安定した水準で推移すると見込まれるなか、今後デジタル化対応が進むと予想される防災システムの開発や、無線技術を活かした新ビジネスの開拓を積極的に進め、住民の安心・安全を支える防災・減災基盤づくりに貢献してまいります。
電子デバイスでは、コスト競争力のさらなる強化を推進するとともに、車載カメラにおいてメーカーオプションの販売拡大や運転の予防安全機能の開発を進めるほか、電子部品・ユニット製造においては、小型・高集積化技術、高出力・高効率化技術といったコア技術を活かして、新規顧客開拓と既存顧客の深耕に取り組んでまいります。
④オペレーションの効率化と徹底したムダ取りによるトータルコストダウン
商品の企画から生産・販売までの一連の流れにおいて、取引先企業まで含めたあらゆる分野で省エネ・省資源化を進め、トータルコストダウンをさらに追求・徹底してまいります。
また、市場の需要動向予測に基づき生産・販売・在庫計画を一元管理するGDM(グローバル・ディマンドチェーン・マネジメント)においても、基幹システムの再構築を含め、各部門の連携緊密化による予測精度の向上とプロセス管理の最適化を加速させ、期中を通した棚卸資産の圧縮、物流コストの低減、リードタイム短縮によるムダの削減と資金効率改善を一層進めてまいります。
併せて、大規模災害などの発生に備え、調達先の分散や生産拠点の相互補完等を視野に入れたBCM(事業継続マネジメント)の強化を図ってまいります。
⑤環境負荷低減に直結した事業活動
より省エネ性能の高い商品を、より環境負荷の低い部材や生産方法を通じて提供するとともに、第8期環境行動計画に基づき、国内・海外のグループ全拠点で3R*²を推進し、ムダ取りによるコストダウン・業務効率化と環境負荷低減の両立に努めてまいります。また、子会社を通じた使用済み家電のリサイクル等、環境に配慮した事業活動を引き続き推進してまいります。
*²3R:環境負荷低減を図る「Reduce(リデュース:廃棄物の発生抑制)」「Reuse(リユース:再利用)」
「Recycle(リサイクル:再資源化)」の総称。
⑥人材活性化
以上のことを実行するには、従業員一人ひとりの力を結集することが不可欠です。従業員が気力を保ち、人的生産性とモチベーションの向上を図るため、従業員の能力発揮と成長を促す組織的な仕組みづくりを積極的に進めてまいります。
上記の取り組みを通じて、継続的な成長と収益力の強化を実現してまいります。
なお、2014年11月、当社は、消防救急無線のデジタル化に係る商品又は役務に関し、独占禁止法違反の疑いがあるとして、公正取引委員会の立ち入り検査を受けました。当社といたしましては、このような事態を厳粛に受け止め、公正取引委員会による調査に全面的に協力するとともに、コンプライアンス体制の一層の強化・充実に努めてまいります。
こうした努力を続けることにより、経営基盤をさらに強化し、お客様や社会からの信頼をより一層強固なものとし、当社グループの継続的な成長をめざして常に自己革新を追求してまいります。