有価証券報告書-第95期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/20 14:30
【資料】
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【項目】
62項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において連結会社が判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
① 魅力ある製品で、お客様に満足を提供する。
② 変化を先取りし、世界の市場で発展する。
③ 自然を大切にし、社会と共生する。
④ 個性を尊重し、活力ある企業をつくる。
を経営の方針としています。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社は売上収益及び営業利益を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として用いています。
(3) 対処すべき課題
自動車業界では、電動化、自動運転、コネクティッドカーに関連する技術開発の加速や、カーシェアリングの台頭等に代表されるように、「100年に一度のパラダイムシフト」を迎えていると言われています。この時代を乗り越え、持続的成長を続けるためには、これまで以上にお客様や社会のニーズを先取りして対応することが必要だと考えています。
このようななか、当社は昨秋、「デンソーグループ2030年長期方針」を策定し、「地球に、社会に、すべての人に、笑顔広がる未来を届けたい」というスローガンを定めました。「環境」・「安心」はもちろん、新たに加えた「共感」の3つを軸に、新たな価値を生み出し、笑顔広がる社会づくりに貢献していきます。
また、この長期方針を実現するための道筋として、「デンソーグループ2025年長期構想」を策定し、注力する分野を定め、激動の環境下でも戦っていける組織へと変革するという想いを込め、組織力を高めるための「経営改革 5本の柱」を掲げました。
注力する事業分野
1.電動化(ハイブリッド車、電気自動車)
2.先進安全・自動運転
3.コネクティッド(つながるクルマ)
4.非車載事業(FA※/農業)
※FA:ファクトリー・オートメーション(生産ラインの機械化による自動化)
経営改革 5本の柱
1.車両視点と横串機能の強化
2.先端R&D機能の改革
3.事業部の進化と小さく強い本社
4.グローバル経営の刷新
5.働き方の大改革
電動化分野においては、地球にやさしく、より快適に移動できる電動車両システムを提供するために、長年、電動化技術の開発を行っています。その結果、ハイブリッド車に欠かせない主要製品の高性能化や小型化、省燃費を実現し、世界中で生産実績を積み上げてきました。今後は、当社の幅広い事業領域を活かし、車内のあらゆるシステムや製品をつなぎ、クルマの中のエネルギーを効率よくマネジメントすることで、さらなる燃費性能の向上や省電力化に貢献していきます。
そのための具体的な取り組みとしてシリコンカーバイド(SiC)を材料としたパワー素子の開発を行っています。走行用電力が、インバータで直流から交流に変換されるとき、熱が放出されます。このエネルギー損失を抑えるため、発熱の少ないシリコンカーバイド(SiC)を材料としたパワー素子を開発し、エネルギーの損失を1/3に大幅低減しました。また、車両という厳しい環境でこのSiCを使用するため、材料の特殊な生成技術を確立、高品質のSiC結晶の生成を可能にしました。
また、マツダ株式会社、トヨタ自動車株式会社及び当社は、2017年10月、電気自動車の基本構造に関する共同技術開発に向けた契約を締結し、新会社(EV C.A. Spirit株式会社)を設立しました。今回の共同技術開発を通じた効率的な開発により、各社のリソーセスをクルマ本来の価値追求に費やすことで、それぞれのブランド独自の付加価値のあるクルマを追及するとともに、EV関連技術開発を強化していきます。
先進安全・自動運転分野においては、交通事故のない、誰もが安心・安全に移動できるモビリティ社会を目指し、品質と信頼性の高い安全技術の開発に取り組んできました。これまで培ってきたセンシング技術に加え、今後はAI・情報技術に磨きをかけることで、自動運転技術の発展にさらに貢献していきます。創業以来変わらない“品質へのこだわり”をつらぬき、モビリティ社会の未来に確かな安心を届けます。
そのための具体的な取り組みとして夜間認知の実現と搭載性を向上させた画像センサ・ミリ波レーダを開発しました。新型画像センサは、これまで困難であった夜間歩行者や自転車等を認識できるようになりました。新型ミリ波レーダと併せて使用することにより、昼間に加え、夜間においても緊急時の自動ブレーキの実現に貢献しています。認識対象を増やしつつ、従来品に比べ画像センサは約4割、ミリ波レーダは約6割、体積を小型化して搭載性を向上させました。
また、自動運転技術の先行開発分野での技術開発を促進するため、トヨタ自動車株式会社が設立したTRI-ADにアイシン精機株式会社と共に参画しました。
さらに、東京・品川(港区)に研究開発を専門に行うオフィスを開設。AI等の最先端技術開発に取り組むとともに、ソフトウェア・AI人材の採用強化も担います。
今後さらに様々なグローバル企業と連携し、自動運転関連技術の開発を強化していきます。
コネクティッド分野においては、クルマの「所有」から「利用・サービス化」へのシフトという大改革が起こるなか、MaaS (Mobility as a Service:ヒトやモノの移動をサービスとして提供するモビリティサービス)事業に取り組んでいます。当社は、クルマに乗る人だけでなく、クルマを持たない人にも安心・安全で便利な移動手段の提供を目指し、新たなモビリティ社会の実現に貢献していきます。
そのための施策として、ITベンチャー企業との提携によるソフトウェア開発力の強化に取り組んでいます。IT人材のキャリア採用を積極的に行うとともに、クラウド技術の開発や、オープンソース及びアジャイル開発等といった先進的な開発手法を用いたソフトウェア開発に取り組んできました。また、これらのソフトウェア開発を得意とするITベンチャー企業と提携し、さらにソフトウェア開発力を強化させています。
また、MaaS市場のニーズを早期に獲得し、事業領域を探求するために、ITを活用したMaaS事業を手掛ける国内外のベンチャー企業へも出資しました。当社が得意とする自動車分野の技術と、彼らがもつMaaS領域の知見を融合し、モビリティサービス時代を牽引していきます。
非車載事業においては、130の工場でのFA導入実績を活かし、お客様の多様なニーズに対応できるFAシステムを提案・提供し、モノづくり産業の発展に幅広く貢献していきます。また、農業を通じて世界中の人々に笑顔を届けるため、自動車分野で培ってきたモノづくりの知見やノウハウを活かし、農食分野に新たな価値を届けてまいります。
FAへの取り組みとして、2017年11月末、東京ビッグサイトで開催された「2017国際ロボット展」に出展し、現場のニーズに合ったフレキシブルで無駄のないリーン・オートメーション・パッケージを紹介しました。長年の自動車部品づくりで培った工程設計や現場管理のノウハウを詰め込んだソリューションパッケージには、IoTを活用した改善支援も搭載します。社内外のパートナーとも広く連携した開発と量産化を進め、18年度から本格的に事業をスタートします。
また、農業への取り組みとしては、当社はAgTech(アグテック)推進部を新設し、農業分野に当社の技術を取り入れ、事業の発展を目指します。これまで培ってきたハウス栽培の環境制御技術や、自動車分野での技術・ノウハウを活かすとともに、先進技術を有する農業生産法人とパートナーシップを組み、彼らの強みと融合させながら新たな価値を生み出していきます。農食分野全体を見据え、フードバリューチェーン全体の効率化と安定供給に貢献していきます。