有価証券報告書-第67期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/29 15:10
【資料】
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【項目】
147項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当グループ(当社及び当社の関係会社…以下同じ)が判断したものであります。
当連結会計年度における内外経済は、新型コロナウイルス感染症による経済活動への影響はグローバルで緩和されつつあるものの、中国においてはゼロコロナ政策及び規制解除後の混乱により、経済活動の停滞も見られました。また、原材料・エネルギー価格の高止まり、欧米におけるインフレ加速や急激な為替変動等、先行き不透明感が一層強まる状況となりました。
当グループを取り巻く事業環境は、パンデミックによる市場の縮小、ロシア・ウクライナ紛争に起因する原材料費の高騰、さらに中国のゼロコロナ政策など、予測し得ない変化が続いてまいりました。当グループは、この劇的な環境変化に適応すべく、カシオ独自の強みを最大限に活かし、時代の変化に合わせて常に新しい文化を創造することで、人と社会の役に立ち続ける存在となることを目指してまいります。
①収益基盤強化とイノベーション創造
当グループは2030年の企業価値最大化に向けて、“市場に新たな価値軸を創り出し、唯一無二のブランドに育て上げる”べく、2024年3月期から2026年3月期を「収益基盤強化期」及び「変革・イノベーション創造期」と位置付け、以下の事業戦略をはじめとする3ヶ年中期経営計画をスタートいたします。あわせて、『DX』によるバリューチェーン改革や新たな価値軸を創造し続ける『技術』の醸成、『人財』の活性化など、全社基盤の再構築を行いながら、ユーザーを起点とした戦略により市場に新たな価値軸を生み出してまいります。
1)時計事業………………………コロナ禍の影響を受けた収益力を回復すべく、「G-SHOCK」のメタル高価格帯を中心にブランディング投資を進めるとともに、「G-SHOCK」40周年を軸にグローバルでのブランド認知拡大を行います。また、「G-SHOCK」を中心に直営店・直営EC比率の拡大を図ってまいります。
2)EdTech(教育)事業……関数電卓では新機種「New ClassWiz」の拡販をはじめとして引き続き新興国を中心に規模拡大を図るとともに、電子辞書「EX-wоrd」とアプリケーション「ClassPad.net」の学習データ同期によりアプリケーション事業の拡販を図り、ハードとソフトの融合によるグローバルエリア展開を加速させます。
3)サウンド(楽器)事業…………「Privia」最上級機種(PX-S7000)を中心に、ライフスタイルを基軸とした独自市場ポジションの確立を図るとともに、「Slim&Smart」のラインアップによりEnjoyment市場の拡大を図ります。
4)システム事業…………………事業運営体制をコンパクトに集約し、成長分野にリソースを集中し収益改善を図ります。
5)新規事業・新規領域…………次世代の柱となるネクストコア領域の見極めと育成を目的とし、予算枠の設定とステージゲートによるマネジメント強化を図ります。
6)構造改革………………………事業体質改善に向けた構造改革を加速させるとともに、早期退職優遇制度の実施や資産の有効活用などにより抜本的な収益改善施策と基盤強化策を推進してまいります。
②資本収益性を意識した経営
当グループは、財務安全性を確保しながら手元資金を有効活用し、コア事業への成長投資及びアライアンス等の戦略投資を促進することで、中長期的な成長とROEの持続的な向上を図ってまいります。また、資本コストを意識した事業活動の推進及びバランスシートの効率化によりフリー・キャッシュ・フローの創造に努めると共に、資本収益性の改善を図ることで、引き続き企業価値の向上を目指してまいります。
③事業を通じたサステナブルな社会への貢献
当グループにとってのサステナビリティとは、「創造 貢献」という経営理念のもと、企業活動を通じて当グループと社会の持続的成長を目指すことと考えております。当グループは、社会から期待される課題の解決に事業を通じて取り組むにあたり、重点的に取り組むべき6つのマテリアリティ(①脱炭素社会の実現、②資源循環型社会の実現、③自然との共生、④人権の尊重、⑤CSR調達の推進、⑥働きやすい職場環境の提供とダイバーシティの推進)を策定するとともに、事業を通じた貢献をさらに加速させるべく、中長期の経営戦略と連動したサステナビリティ経営の強化を目指してまいります。また、気候変動の事業に与える影響が重要視される中、環境に関する取り組みとして「カシオグループ環境ビジョン」を掲げ、具体的なテーマを設定し推進しております。
当グループではこれらの課題に対し、国内主要事業所の再生可能エネルギーへの切り替えや中国製造拠点における太陽光発電設備の導入など、脱炭素2050年実質ゼロに向けたエネルギー戦略を推進するとともに、商品パッケージの脱プラを含め環境配慮素材を活用した商品開発に取り組むなど、引き続きサプライチェーン全体でサステナブルな社会の実現に貢献してまいります。
④コーポレート・ガバナンス機能の強化・充実
当社はコーポレート・ガバナンスの強化・充実も重要な経営課題と位置付けております。2019年には監査等委員会設置会社へ移行し経営の監督機能強化を図るとともに、2021年にはそれまでの「カシオ倫理行動規範」を「カシオビジネスコンダクトガイドライン」に刷新するなど役職員の基本的な価値観の共有、倫理観の醸成、法令等遵守体制の構築に努めてまいりました。
さらに、本年4月からは、経営のさらなる健全性の確保に向けて、監督機能と執行機能の分離をもう一段進めるべく会長が経営の監督を、社長が経営の執行を担当する新経営体制に移行しました。2030年の企業価値最大化に向けた事業計画を確実なものとする為にはRPDCAサイクルの実行と各ステップでの的確な管理・監督が必要です。取締役会などにおける経営監督機能を充実させ当グループが発揮できるポテンシャルの最大化及び事業計画の達成に繋げてまいります。
また、当社はこれまで9名で構成されている取締役会のうち3分の1を占める3名の社外取締役を選任しておりましたが、取締役会の実効性をさらに高めコーポレート・ガバナンス体制の充実を図るため、社外取締役を1名増員することといたしました。
当社の経営理念である「創造 貢献」という考え方は、当社独自の強みを最大限に活かし、時代の変化に合わせて常に新しい文化を創造することで、世の中の役に立ち続ける、ということを意味しています。当グループは、この貢献のための創造を通じて、人々の暮らしの中に溶け込み、必要としてくれる人にとって最も大切な存在となるような、新しい価値を生み出し続ける企業を目指しています。