有価証券報告書-第92期(平成28年3月1日-平成29年2月28日)

【提出】
2017/05/25 15:02
【資料】
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【項目】
145項目

対処すべき課題

近年、お客さまのライフスタイルや価値観は、情報やテクノロジー・技術革新がもたらす快適さや便利さによって大きく変化し、加速度的に多様化が進んでいます。そして、この大きく変化する社会的な潮流への対応を、技術革新やデジタル化によっていち早く推進する企業がより高い成長を実現しています。
(1) 成長市場への取り組み
① グループ事業構造の改革
これまで当社が培ってきた事業ポートフォリオについて、それぞれがより高い収益性を発揮するべく、環境変化に適合する体制へ革新するとともに、新たな成長分野での事業拡大を図ります。
GMS事業、SM事業を中核とする小売事業は、コスト構造の改革を進めることで生産性および成長性を高めます。食品分野については、地域を軸とした強化を進める体制を構築する一方、衣料や住居余暇、H&BC(ヘルス&ビューティーケア)といった商品分野については、より一層の専門性の向上を目指し、品揃えや製造における体制強化を進めます。また、グループ共通で取り組む「アジア」「都市」「シニア」「デジタル」の4つの成長領域へのシフトを通じ、シニア向け「G.Gストア」「G.Gモール」の開発や都市在住のお客さまの利便性を高める小型店開発等お客さまニーズにお応えする業態への革新と収益成長の両立を実現してまいります。さらに、家計におけるサービス支出の拡大を捉え、サービスと物販との組み合わせに取り組み、同分野における収益拡大を推進します。同時に、グループ企業間の事業領域および機能の重複並びに分散の解消・整理を進め、グループの生産性および効率性を高めます。
② 事業基盤の刷新
現在、PB(プライベートブランド)や、物流、ITといった事業基盤は、競合他社との差別化およびコスト競争力の源泉となっています。当社は、将来の企業競争力の根幹となるこれらの事業基盤の刷新を図っていきます。
PBでは、お客さまのニーズを先取りし、新しい価値を持つ商品の開発を進め、需要を創造することで、グループの営業力とコスト競争力をより一層高めます。また、物流、商品企画・開発、営業活動等の経営・事業活動における生産性並びに効率性を高めるためIT基盤の刷新を進めます。
③ 組織体制の改革
各分野・各地域におけるナンバーワン企業から成る真のナンバーワングループを実現するため、組織体制の改革を行います。具体的には、事業並びに現場力を強化するため、経営資源を事業・地域へ再配分し、当社は純粋持株会社として、グループ横断的な経営機能への特化を図ります。また、改革を推進する事業担当には、執行役を配置し、明確な責任体制のもと、改革・成長戦略を加速してまいります。
(2) 人材の活躍・ダイバーシティの推進
当社は「コーポレートガバナンス基本方針」において、お客さまに対する価値創造を担う従業員を最大の経営資源と位置付け、従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮し、多様な価値観を活かした革新ある経営を実践するため、グループをあげてダイバーシティ経営を推進しています。グループ内ダイバーシティ表彰制度“ダイ満足”アワードによるベストプラクティスの共有や、管理職の意識改革の推進、グループの事業所内保育施設「イオンゆめみらい保育園」の設置拡大等に取り組みました。このような取り組みが評価され、女性活躍推進に関する取り組みが優良な事業主に対して厚生労働大臣から与えられる「えるぼし」最高位の3段階目と、従業員の仕事と家庭の両立支援の取り組みが優良な企業に与えられる「プラチナくるみん」の認定を取得しました。また、LGBT(性的マイノリティ)に関するダイバーシティ・マネジメントの促進と定着を支援する任意団体work with Prideが策定するLGBTに関する取り組みを評価するPRIDE指標で「シルバー」を受賞しました。さらに、従業員の健康づくりが企業活動の要であるという考えのもと推進する健康経営が評価され、当期は、経済産業省と日本健康会議が共同で優良な健康経営を実践する企業を顕彰する「健康経営優良法人(ホワイト500)」制度の初年度認定を受けました。
(3) 会社の支配に関する基本方針
① 基本方針の内容及びその実現に資する取り組みの概要
イオンは、お客さまへの貢献を永遠の使命とし最もお客さま志向に徹する企業集団であり、小売業と関連産業を通してお客さまのより豊かな生活に貢献すべく、事業を展開してまいりました。お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献するという不変の理念を堅持し、お客さま満足の実践と継続的な企業価値の向上に努めてきており、この理念がイオンの企業価値の根幹をなしています。また、イオンの企業価値は、継続的かつ長期的な企業成長や同士・朋友との協力・提携に加え、雇用の確保、生活文化の向上や環境保全・社会貢献など様々な価値を包含し形成されているものです。
これらの正しい商売の実践と社会的責任を全うするためには、長期的視野でイオンの理念を具現化していくことが必要であり、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、上記のイオンの企業価値を維持、発展させていく者でなければならないと考えています。
② 不適切な支配の防止のための取り組みの概要
当社株式は、金融商品取引所(証券取引所)に上場され自由な売買が可能ですが、万一短期的な利益を追求するグループ等による買収が開始されて不公正な買収提案がなされると、株主の皆さまに結果として不利益を与えるおそれもあります。買収提案を受け入れるか否かは株主の皆さまの判断によるべきものですが、買収提案のあった際に、株主の皆さまが、十分かつ正確な情報と十分な時間のもとにご判断いただけるように十分な資料提供をするように所定の手順をふむことを求めるとともに、明らかに株主一般の利益を害すると判断される買収行為には対策を講じることができるように、「当社株式の大量取得行為に関わる対応方針(買収防衛策)継続の件」を平成27年5月27日開催の第90期定時株主総会に付議し、株主の皆さまのご承認をいただきました。
これは「事前警告型」買収防衛策であり、当社議決権の20%以上の株式取得を行おうとする者に対しては、大量株式取得者らの概要、取得対価の算定根拠、買取方法、買収資金源、買収後の経営方針等につき当社への十分な情報提供を行うことなどの買収ルールの遵守を要請します。
当社取締役会は、大量株式取得者が登場し次第、その事実を開示するとともに、外部の専門家1名以上と社外取締役から成る独立委員会を設置し、提供された情報(追加提供を求める場合にも意向表明書受領日から60日以内の日を最終回答期限とします)をもとに、同委員会に意見を求め、その意見を最大限尊重した上で、所定の評価期間(60日間または90日間)内に、当該買収提案に対する評価結果等を発表します。この取締役会及び独立委員会においては、判断の客観性をさらに高めるため、適宜他の専門家にも意見を求めることができます。また、上記ルールが守られない場合や、株式の高値買戻要求や高値売抜けが目的であると推測されるなど、株主の皆さまの利益が害されることが明らかである場合には、所定の評価期間の経過を待たずに、当社取締役会が新株発行、新株予約権発行などの対抗策をとり得ることとします。なお、大量株式取得者の権利行使が制限される行使条件差別型新株予約権を発行するときは、株主の皆さまにわずらわしい手続をしていただかなくてもいいように、会社による取得条項付とさせていただきます。また、対抗措置の内容・採否は、取締役としての善管注意義務に従い、原則として取締役会が決定・実施していきますが、例外的には、その内容・効果等に鑑みて株主の皆さまのご判断を仰ぐべきであるとして、当社株主総会にその採否をご決議いただくことがあります。
株主の皆さまには、手続の各段階において、適時に十分に情報開示し、ご判断に供していただけるようにしていきます。
なお、この買収防衛策の有効期間は平成30年5月に開催予定の定時株主総会の終結時までです。
③ 上記②の取り組みについての基本方針等との整合性に係る取締役会の判断
大量株式取得者に要請する各種資料は、大量株式取得者らの概要だけでなく、資金面の背景及び資金スキーム、株式取得方法の適法性に関する事項、買収後の経営計画等であり、これらの資料開示を通じて、イオンの理念(上記基本方針)に対する大量株式取得者の具体的な態度が明示されることになるとともに、何よりも、株主の皆さまの判断材料が充実したものになります。
従って、当社取締役会は、上記対応方針は、上記基本方針及び当社の株主の共同の利益に沿うものであり、また、当社役員の地位の維持を目的とするものではないと判断しています。