有価証券報告書-第95期(平成31年3月1日-令和2年2月29日)

【提出】
2020/05/25 16:42
【資料】
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【項目】
173項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
近年、人口動態の変化、ITをはじめとする技術革新や、災害多発・気候変動といった環境変化に伴い、お客さまのライフスタイルや価値観は、加速度的に多様化が進んでいます。また、Eコマース事業を主とする企業の急成長等、従来の業種・業態を超えたボーダレスな競争が激化しています。
当社グループでは、これらの事業環境変化に対応するため、“絶えず革新し続ける企業集団”として、2017年12月の中期経営方針(2018年~2020年)において、変革の方向性として掲げたリージョナルシフト、デジタルシフト、アジアシフトと、それらを支える投資のシフトを推進し、それぞれの地域と領域においてナンバーワン企業を目指して革新を続けてまいります。
(1) グループの持続的な成長
① グループ構造改革に向けた主要な取り組み
リージョナルシフトについては、食を取り巻く大きな環境変化に対応し、更なる飛躍を果たすために、国内6地域においてスーパーマーケット事業の経営統合を進めています。2019年度には中四国、東海・中部地域で新体制に移行、2020年度には全ての地域で新たな体制への移行完了を計画しています。
今後は、各地域の事業会社が地域商品の開発、物流、デジタル化等への投資を強化し、従来のスーパーマーケットのビジネスモデルからの変革に取り組んでまいります。これにより、お客さまに食を通じて豊かな暮らしを提供し、地域に最も貢献するスーパーマーケット事業として、シェアNo.1の実現を目指してまいります。
デジタルシフトについては、Eコマースビジネス強化のため、米国Boxed、ドイツSIGNA Sports United GmbHへの出資、英国Ocadoとの連携を通じて最先端のノウハウやテクノロジーの獲得を進めています。それらに加え、当社グループが保有する店舗、商品、顧客データ、決済、インフラ等の強みと融合させることで、国内外のお客さまへより快適なオンラインでのお買物体験を提供してまいります。
また、最先端ITの開発・導入が進む中国にグループのデジタルシフトの拠点となる新会社(Aeon Digital Management Center)を設立しました。中国で開発したデジタルシステムのアセアンや日本への導入を視野に入れ、デジタルを活用した新たな顧客体験の提供や、業務の生産性向上、IT人材の育成を進めてまいります
アジアシフトについては、国内と同様にモールビジネスの確立やEコマース等のデジタルシフトを推進するとともに、特に成長著しいベトナムへの経営資源の集中投下を進めています。今後もエリア最大規模となるショッピングモールの出店、既存店舗の増床・リニューアル、ネットスーパーの推進等を通じ、事業成長を加速してまいります。
さらに、人口増加が予測される都市部での成長機会を獲得すべく、都市生活者のニーズに合わせた小型店フォーマット開発、オンラインと融合した新たなサービス提供等、新たな成長業態の開発を推進してまいります。これらにより、早期に海外での事業の比率を営業収益・営業利益で50%とすることを目指してまいります。
② 組織体制の改革
2020年3月、上記の主要取り組みの実行を更に推し進め、グループの更なる成長をはかるため組織体制の改革を断行しました。
・会長、社長の経営体制に移行し、戦略の策定と実行力を向上
中長期のグループ戦略の決定とイオンらしさの醸成を職責とする会長と、戦略の実行を推進する社長の両輪による経営に移行し戦略の策定と実行力の向上を図ります。
・少人数体制と組織のフラット化による意思決定スピードの向上
組織のフラット化をはかるため、GMS、ディベロッパー、総合金融、国際、ネット、コスメティックの各事業担当を廃止しました。また、執行役を14名から9名の少人数体制とし意思決定の迅速化をはかる体制に刷新しました。
・社長の直接管掌によりグループ一体となったビジネスモデルの進化
主要な子会社であるイオンリテール、イオンモール、イオンフィナンシャルサービス等を社長の直接管掌会社としました。また、「デジタル・中国」「アセアン」「サービス・専門店」「ヘルス&ウエルネス」の各事業を社長直下の組織に置き、事業間の連携を強化しながらグループ一体となったビジネスモデルを進化させ、更なる企業価値向上をはかる体制としました。
(2) 人材の活躍・ダイバーシティの推進
当社は、創業以来、人材こそが最大の経営資源であるとの信念に基づき、多様な人材が健康で能力を発揮し続けられる企業を目指し、ダイバーシティ経営を推進しています。
グループ各社の優れた取組事例の共有や、管理職の意識改革、事業所内保育施設の拡大等に継続的に取り組んでいます。こうした取り組みが評価され、2020年3月には4年連続で、「健康経営優良法人2020」の認定を受けたほか、女性活躍推進に優れた上場企業として「なでしこ銘柄」に3年連続で選定されました。
(3) 会社の支配に関する基本方針
① 基本方針の内容及びその実現に資する取り組みの概要
イオンは、お客さまへの貢献を永遠の使命とし最もお客さま志向に徹する企業集団であり、小売業と関連産業を通してお客さまのより豊かな生活に貢献すべく、事業を展開してまいりました。お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献するという不変の理念を堅持し、お客さま満足の実践と継続的な企業価値の向上に努めてきており、この理念がイオンの企業価値の根幹をなしています。また、イオンの企業価値は、継続的かつ長期的な企業成長や同士・朋友との協力・提携に加え、雇用の確保、生活文化の向上や環境保全・社会貢献等様々な価値を包含し形成されているものです。
これらの正しい商売の実践と社会的責任を全うするためには、長期的視野でイオンの理念を具現化していくことが必要であり、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、上記のイオンの企業価値を維持、発展させていく者でなければならないと考えています。
② 不適切な支配の防止のための取り組みの概要
当社株式は、金融商品取引所(証券取引所)に上場され自由な売買が可能ですが、万一短期的な利益を追求するグループ等による買収が開始されて不公正な買収提案がなされると、株主の皆さまに結果として不利益を与えるおそれもあります。買収提案を受け入れるか否かは株主の皆さまの判断によるべきものですが、買収提案のあった際に、株主の皆さまが、十分かつ正確な情報と十分な時間のもとにご判断いただけるように十分な資料提供をするように所定の手順をふむことを求めるとともに、明らかに株主一般の利益を害すると判断される買収行為には対策を講じることができるように、「当社株式の大量取得行為に関わる対応方針(買収防衛策)継続の件」を2018年5月23日開催の第93期定時株主総会に付議し、株主の皆さまのご承認をいただきました。
これは「事前警告型」買収防衛策であり、当社議決権の20%以上の株式取得を行おうとする者に対しては、大量株式取得者の概要、取得対価の算定根拠、買取方法、買収資金源、買収後の経営方針等につき当社への十分な情報提供を行うこと等の買収ルールの遵守を要請します。
当社取締役会は、大量株式取得者が登場し次第、その事実を開示するとともに、外部の専門家1名以上と社外取締役から成る独立委員会を設置し、提供された情報(追加提供を求める場合にも意向表明書受領日から60日以内の日を最終回答期限とします)をもとに、同委員会に意見を求め、その意見を最大限尊重した上で、所定の評価期間(60日間または90日間)内に、当該買収提案に対する評価結果等を発表します。この取締役会及び独立委員会においては、判断の客観性をさらに高めるため、適宜他の専門家にも意見を求めることができます。また、上記ルールが守られない場合や、株式の高値買戻要求や高値売抜けが目的であると推測される等、株主の皆さまの利益が害されることが明らかである場合には、所定の評価期間の経過を待たずに、当社取締役会が新株発行、新株予約権発行等の対抗策をとり得ることとします。なお、大量株式取得者の権利行使が制限される行使条件差別型新株予約権を発行するときは、株主の皆さまにわずらわしい手続をしていただかなくてもいいように、会社による取得条項付とさせていただきます。また、対抗措置の内容・採否は、取締役としての善管注意義務に従い、原則として取締役会が決定・実施していきますが、例外的には、その内容・効果等に鑑みて株主の皆さまのご判断を仰ぐべきであるとして、当社株主総会にその採否をご決議いただくことがあります。
株主の皆さまには、手続の各段階において、適時に十分に情報開示し、ご判断に供していただけるようにしていきます。
なお、この買収防衛策の有効期間は2021年5月に開催予定の定時株主総会の終結時までです。
③ 上記②の取り組みについての基本方針等との整合性に係る取締役会の判断
大量株式取得者に要請する各種資料は、大量株式取得者らの概要だけでなく、資金面の背景及び資金スキーム、株式取得方法の適法性に関する事項、買収後の経営計画等であり、これらの資料開示を通じて、イオンの理念(上記基本方針)に対する大量株式取得者の具体的な態度が明示されることになるとともに、何よりも、株主の皆さまの判断材料が充実したものになります。
従って、当社取締役会は、上記対応方針は、上記基本方針及び当社の株主の共同の利益に沿うものであり、また、当社役員の地位の維持を目的とするものではないと判断しています。