有価証券報告書-第94期(平成30年3月1日-平成31年2月28日)

【提出】
2019/05/30 16:05
【資料】
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【項目】
136項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
近年、お客さまの嗜好やニーズは、健康志向や低価格志向に加え、地球環境、地域社会に配慮したエシカル消費への関心が高まるなど、ますます多様化するとともに、Eコマース事業を主とする企業の存在感が一層強まり、競争も激しさを増しています。
このような環境のなか、当社グループは、“絶えず革新し続ける企業集団”として、お客さまの変化にいち早く対応するため、2020年に向けたイオングループ中期経営方針(2018年~2020年)において、変革の方向性として掲げた「リージョナルシフト」「デジタルシフト」「アジアシフト」と、それらを支える「投資のシフト」を推進し、それぞれの地域と領域においてナンバーワン企業を目指して革新を続けてまいります。
(1) グループの持続的な成長
① グループ構造改革に向けた主要な取り組み
リージョナルシフトについては、フレッシュ、ローカル、ナチュラル、オーガニックといったお客さまニーズの変化や、異業種・異業態による競争環境の激化に加え、人手不足など労働環境の変化に対応するため、全国の6エリアでスーパーマーケット事業の経営統合を進めています。
経営統合により、各地域の事業会社が、店舗、物流、商品開発、デジタルへの投資が可能となり、従来のスーパーマーケットのビジネスモデルを根本から変革し、地域に最も貢献するスーパーマーケット事業を目指してまいります。また、継続的な成長をすることで、各地域でNO.1の市場シェアを獲得してまいります。
デジタルシフトについては、首都圏における全く新しいネットスーパーや、全国の地場商品を取り扱うマーケットプレイスの構築など、Eコマースビジネスの強化に加え、グループ企業が保有する顧客データ、決済、ITシステムなどの共通基盤を活用したイオン独自のプラットフォームを構築し、新たな収益源の獲得を目指すとともに、お客さまへの新たな価値提供や利便性向上、業務の生産性向上に取り組んでまいります。
また、これまで行ってきたEC企業の米国Boxedや、ドイツSIGNA Sports United GmbHへの出資に加え、ITベンチャー企業への投資や先進企業との連携を継続し、最先端テクノロジー、ノウハウの獲得を進め、デジタルシフトをさらに加速してまいります。
アジアシフトについては、デジタル化や、お客さまニーズのボーダーレス化など、アジア全域で進んでいる急速なマーケット変化に対応するため、中国・アセアン各国でのさらなる成長の加速に加え、日本同様にGMSフォーマットの確立や、Eコマースなどのデジタルシフトを推進するとともに、域内において自由に商品を流通できる環境を整備してまいります。さらに、各国の優秀な人材の育成や交流を行うことによるグローバル人材の質的向上に取り組んでまいります。
また、ベトナムなど、特に高い成長が予想されるエリアに経営資源を集中投下することにより、早期に海外での事業の比率を営業収益、営業利益で50%とすることを目指してまいります。
② 組織体制の改革
上記3つのシフトの実行スピードを加速するため、2019年度は、新たに3名の代表執行役副社長をそれぞれのシフトに配置するとともに、プラットフォームの強化として、新たに物流とICTの担当を配置し、権限移譲を進め責任を明確化することにより、スピード感を持って経営課題の解決と経営目標を達成する組織体制といたします。
(2) 人材の活躍・ダイバーシティの推進
当社は、社会の変化や消費者ニーズの多様化に対応できる企業を目指し、従業員一人ひとりの価値観や考え方の違いを尊重し、多様な人材が活躍できるダイバーシティ経営を推進しています。
創業以来、人材こそが最大の経営資源であるとの信念に基づき、多様な人材が健康で能力を発揮できるようにグループ内のベストプラクティスの共有や管理職の意識改革の推進、事業所内保育施設の拡大等に継続的に取り組んでいます。こうした取り組みが評価され、2019年2月には3年連続で「健康経営優良法人2019(ホワイト500)」の認定を受けたほか、2019年3月には、女性活躍推進に優れた上場企業として「なでしこ銘柄」に2年連続で選定されました。
(3) 会社の支配に関する基本方針
① 基本方針の内容及びその実現に資する取り組みの概要
イオンは、お客さまへの貢献を永遠の使命とし最もお客さま志向に徹する企業集団であり、小売業と関連産業を通してお客さまのより豊かな生活に貢献すべく、事業を展開してまいりました。お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献するという不変の理念を堅持し、お客さま満足の実践と継続的な企業価値の向上に努めてきており、この理念がイオンの企業価値の根幹をなしています。また、イオンの企業価値は、継続的かつ長期的な企業成長や同士・朋友との協力・提携に加え、雇用の確保、生活文化の向上や環境保全・社会貢献など様々な価値を包含し形成されているものです。
これらの正しい商売の実践と社会的責任を全うするためには、長期的視野でイオンの理念を具現化していくことが必要であり、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、上記のイオンの企業価値を維持、発展させていく者でなければならないと考えています。
② 不適切な支配の防止のための取り組みの概要
当社株式は、金融商品取引所(証券取引所)に上場され自由な売買が可能ですが、万一短期的な利益を追求するグループ等による買収が開始されて不公正な買収提案がなされると、株主の皆さまに結果として不利益を与えるおそれもあります。買収提案を受け入れるか否かは株主の皆さまの判断によるべきものですが、買収提案のあった際に、株主の皆さまが、十分かつ正確な情報と十分な時間のもとにご判断いただけるように十分な資料提供をするように所定の手順をふむことを求めるとともに、明らかに株主一般の利益を害すると判断される買収行為には対策を講じることができるように、「当社株式の大量取得行為に関わる対応方針(買収防衛策)継続の件」を2018年5月23日開催の第93期定時株主総会に付議し、株主の皆さまのご承認をいただきました。
これは「事前警告型」買収防衛策であり、当社議決権の20%以上の株式取得を行おうとする者に対しては、大量株式取得者の概要、取得対価の算定根拠、買取方法、買収資金源、買収後の経営方針等につき当社への十分な情報提供を行うこと等の買収ルールの遵守を要請します。
当社取締役会は、大量株式取得者が登場し次第、その事実を開示するとともに、外部の専門家1名以上と社外取締役から成る独立委員会を設置し、提供された情報(追加提供を求める場合にも意向表明書受領日から60日以内の日を最終回答期限とします)をもとに、同委員会に意見を求め、その意見を最大限尊重した上で、所定の評価期間(60日間または90日間)内に、当該買収提案に対する評価結果等を発表します。この取締役会及び独立委員会においては、判断の客観性をさらに高めるため、適宜他の専門家にも意見を求めることができます。また、上記ルールが守られない場合や、株式の高値買戻要求や高値売抜けが目的であると推測されるなど、株主の皆さまの利益が害されることが明らかである場合には、所定の評価期間の経過を待たずに、当社取締役会が新株発行、新株予約権発行などの対抗策をとり得ることとします。なお、大量株式取得者の権利行使が制限される行使条件差別型新株予約権を発行するときは、株主の皆さまにわずらわしい手続をしていただかなくてもいいように、会社による取得条項付とさせていただきます。また、対抗措置の内容・採否は、取締役としての善管注意義務に従い、原則として取締役会が決定・実施していきますが、例外的には、その内容・効果等に鑑みて株主の皆さまのご判断を仰ぐべきであるとして、当社株主総会にその採否をご決議いただくことがあります。
株主の皆さまには、手続の各段階において、適時に十分に情報開示し、ご判断に供していただけるようにしていきます。
なお、この買収防衛策の有効期間は2021年5月に開催予定の定時株主総会の終結時までです。
③ 上記②の取り組みについての基本方針等との整合性に係る取締役会の判断
大量株式取得者に要請する各種資料は、大量株式取得者らの概要だけでなく、資金面の背景及び資金スキーム、株式取得方法の適法性に関する事項、買収後の経営計画等であり、これらの資料開示を通じて、イオンの理念(上記基本方針)に対する大量株式取得者の具体的な態度が明示されることになるとともに、何よりも、株主の皆さまの判断材料が充実したものになります。
従って、当社取締役会は、上記対応方針は、上記基本方針及び当社の株主の共同の利益に沿うものであり、また、当社役員の地位の維持を目的とするものではないと判断しています。