有価証券報告書-第12期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2017/06/29 15:12
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【項目】
152項目

対処すべき課題

(1) 経営方針
当社グループでは、グループとしてどのような使命を持ち、どのような姿をめざすのかを明確にし、お客さま・社会の期待に一丸となって応えていくための共通の指針として、以下の経営ビジョンを制定しております。当社グループ役職員は、「信頼・信用」、「プロフェッショナリズムとチームワーク」、「成長と挑戦」の3つの価値観を共有し、「世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ」をめざしてまいります。
[経営ビジョン]
私たちの使命
いかなる時代にあっても決して揺らぐことなく、常に世界から信頼される存在であること。
時代の潮流をとらえ、真摯にお客さまと向き合い、その期待を超えるクオリティで応え続けること。
長期的な視点で、お客さまと末永い関係を築き、共に持続的な成長を実現すること。
そして、日本と世界の健全な発展を支える責任を胸に、社会の確かな礎となること。
それが、私たちの使命です。

中長期的にめざす姿
世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ
1. お客さまの期待を超えるクオリティを、グループ全員の力で
2. お客さま・社会を支え続ける、揺るぎない存在に
3. 世界に選ばれる、アジアを代表する金融グループへ

共有すべき価値観
1. 「信頼・信用」 2. 「プロフェッショナリズムとチームワーク」 3. 「成長と挑戦」

少子高齢化による消費者行動の変化やICT(情報通信技術)の進歩など、金融機関を取り巻く環境は大きく変化しつつあります。当社グループが、さらなる飛躍を実現するには、これらの変化をしっかりと捉え、変化を先取りした事業モデルの進化・変革を図っていくことが必要となります。このような認識のもと、当社グループでは、今後10年という時間軸で環境変化を見据えたうえで、最初の3年間に取り組む戦略として、中期経営計画(計画期間:平成27年度~29年度)を策定いたしました。
中期経営計画では、「持続的なグループの成長に向けた進化・変革」を基本方針に掲げ、変化するお客さまのニーズを起点にビジネスを組み立てる「お客さま起点」、グループ会社間の一体性をより高め、グループベースでビジネスを最適化する「グループ起点」、より一層踏み込んだ合理化・効率化を競争力の向上につなげる「生産性の向上」の3つの考え方を軸にグループ事業戦略と経営管理・基盤等戦略を策定しております。
(2) 経営環境
当連結会計年度の金融・経済環境を概観しますと、世界経済は、中国の構造調整や、英国のEU離脱選択、米国の政権交代等のイベントを受けた国際金融市場の変動など、不透明感の強い展開が続きましたが、全体としては先進国を中心に緩やかな回復基調を維持しました。米国経済は、企業部門の生産や設備投資に一部もたつきがみられましたが、雇用環境の改善に支えられ、内需を中心とした自律的な回復を続けました。欧州経済は、英国のEU離脱選択に伴う不透明感の高まりや南欧諸国の不良債権問題等を抱えつつも、雇用環境の改善や低金利などに支えられた内需の持ち直しが続きました。アジアでは、構造調整局面を迎えた中国経済の減速が各国の輸出を下押ししましたが、全体としてはASEAN(東南アジア諸国連合)を中心に底堅い推移となりました。こうした中、我が国の経済は、一部には改善の遅れもみられましたが、年度を通じて緩やかな回復基調を維持しました。個人消費は、雇用・所得環境の改善などを背景に緩やかながらも持ち直しが続き、住宅投資も堅調に推移しました。設備投資は、秋口までの円高進行に伴う企業収益の増勢鈍化から弱含む局面もありましたが、輸出や生産の持ち直しに支えられて緩やかな増加基調を維持しました。公的需要は横這い程度の推移となりました。
金融情勢に目を転じますと、世界経済の先行き不透明感などを背景に秋口にかけて円高が進み、我が国の株価も軟調に推移しましたが、米国の大統領選挙後には新政権への期待感などから急速な円安、株高に転じました。その後は年度末にかけて再び円高方向の調整が進むなど、為替と株価は総じて振れの大きい展開となりました。金利は、米国において12月及び3月に利上げが行われた一方、英国では国民投票後の8月に利下げが行われ、ユーロ圏でも金融緩和策が維持されました。我が国でも9月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」が導入されるなど、積極的な金融緩和姿勢が維持され、長期金利は低位での推移が続きました。
(3) 対処すべき課題
平成28年度は、予想を超えた世界政治の激しい動きと、それに伴う市場の変動、国内のマイナス金利の影響等により、当社グループを取り巻く環境は確実に厳しさを増しました。こうした中、当社グループでは、環境の変化に機動的に対応しつつ、中期経営計画で掲げたグループ事業戦略、経営管理・基盤等戦略を深化させ、前述のとおりの成果を挙げることができました。
持続的なグループの成長に向けた進化・変革の第一ステージと位置付け、10年後を見据えた「変革」を掲げた中期経営計画は、29年度が最終年度となります。一段と厳しさを増す経営環境に対応すべく、「さらなる変革のスピードアップ」、「より抜本的な構造改革」を意識して、以下の重点課題に取り組み、各種施策を加速させることで企業価値の向上を図り、株主の皆さまの期待に応えてまいります。
また、中長期的な当社グループの持続的成長に向けた改革の本格化への取り組みとして、当社グループとして「MUFG再創造イニシアティブ」を策定しました。これは①グループベースでの顧客・事業軸運営の強化、②デジタルを活用した事業変革、③生産性向上イニシアティブ、④グループ経営体制の再構築、を柱とした、今後の当社グループの戦略、経営体制構築における骨格となるものであり、今後、具体化を進めてまいります。なお、経営体制の再構築には、平成30年4月を目処とした信託銀行と商業銀行の法人貸出等業務の一体化や、信託銀行による三菱UFJ国際投信の完全子会社化、商業銀行の商号変更などを含んでおります。
(グループ事業戦略の推進)
グループ事業戦略では、引き続き国内にしっかりと軸足を置きつつ、グローバルな成長を取り込むとともに、事業モデルの進化・変革に挑戦してまいります。
個人のお客さまに対しては、グループ一体となって、資産の運用・管理・承継をサポートし貯蓄から資産形成への流れを確りと後押しするとともに、決済・コンシューマーファイナンス事業の強化を通じ、個人消費の活性化にも貢献してまいります。
中堅・中小企業のお客さまに対しては、資金ニーズへの円滑な対応に加え、事業承継の増加に対応したM&A業務の態勢拡充や運用ソリューション提供力の強化といった新たな事業領域に取り組むとともに、ビジネスマッチングなどの企業の成長に資する活動も加速してまいります。
大企業のお客さまに対しては、グループのセクター知見の集約やモルガン・スタンレーとの戦略的提携の一層の強化を図り、高度化・多様化・グローバル化するお客さまの経営課題に対して、グループ・国内外一体で応える、MUFGならではのグローバルCIB*1モデルを確立してまいります。
セールス&トレーディング業務*2では、グループ一体的な業務運営を本格稼動し、法人や機関投資家といった幅広いお客さまの多様なニーズに対する商品・サービス提供力の向上にグローバルベースで取り組み、競争力の強化を図ってまいります。
資産運用・管理業務では、ヘッジファンド向け・オルタナティブファンド向け管理業務、米国・アジアなどでの資産運用業務において、戦略的出資・提携も活用しつつ、グローバルプレイヤーとしての地位の確立をめざしてまいります。
トランザクション・バンキング*3業務では、国内における圧倒的な地位の確立に加え、クロスボーダーの商流の取り込みを一層強化し、商流に付随するファイナンスを拡大するとともに、COMSUITEブランドを通じた商品力・販売力の向上と地域間連携の高度化による預金の増強を図ってまいります。
海外では、アユタヤ銀行とMUFGユニオンバンクを軸として、バランスの取れた事業ポートフォリオの構築に注力し、これまでの大企業取引を中心とした当社グループの海外事業を多様化するとともに、現地の個人や中小企業のお客さまを含めた、MUFGならではの総合的な商業銀行基盤の強化・確立に取り組んでまいります。
*1 預金・貸出などの通常の法人向け銀行業務とM&Aアドバイスなどの投資銀行業務を一体的に捉え、お客さまの企業価値向上をサポートするために、オリジネーションからディストリビューションまで一貫した金融サービスを提供するビジネスモデル
*2 為替・デリバティブなどの金融商品・ソリューションをお客さまに提供するセールス業務と、銀行間取引や取引所などで市場性商品の売買を行うトレーディング業務の総称
*3 預金業務・内国為替業務・外国為替業務、及びそれに付随する業務(キャッシュマネジメント、トレードファイナンス)の総称
(経営管理・経営基盤等の強化)
経営管理・経営基盤等戦略では、事業モデルの進化・変革を支える財務基盤や経営管理態勢のさらなる強化に向け、以下の取り組みを進めてまいります。
社外の視点を重視したガバナンスの強化を推進し、取締役会による実効性のある経営監督態勢の構築などを通じてコーポレート・ガバナンス態勢のさらなる強化を図るほか、グループ・グローバルでのガバナンスの高度化を進めてまいります。また、新たな規制やビジネスの進化に対応し、統括型・予防型を軸とした統合的リスク管理態勢のさらなる進化・高度化にも取り組んでまいります。
システム・事務・施設の分野では、グループベースの共同化を進め、さらなる効率化・高度化を推進するとともに、ICTの分野では、ブロックチェーン技術、AIの活用等を推進し、業務・事務プロセスのデジタル化・ユーザビリティの拡充を図ってまいります。
グループ財務・資本運営では、充実した資本基盤の維持を前提としつつ、リスク・リターン向上のための枠組みの定着や国際的な金融規制の動向を踏まえた資金調達手法の多様化などの取り組みを進めてまいります。
また、企業カルチャーとグループ一体感の醸成に向けたグループ内コミュニケーションと、CS(顧客満足)・CSR(企業の社会的責任)やブランド価値の向上をめざす対外コミュニケーションをグループ・グローバルベースで一体的かつ戦略的に推進し、コミュニケーション効果の最大化を図ってまいります。
当社グループでは、お客さま本位の取り組みの一層の徹底、さらなる高度化を図るために、「MUFGフィデューシャリー・デューティー基本方針」を改定し、平成29年5月に公表しました。お客さまの利益に適う商品・サービスの提供に向けた取り組み状況を定期的に確認・見直しを行い、広く社会の皆さまから共感・ご支持をいただけるMUFGブランドの維持・向上に努めてまいります。
(4) 目標とする経営指標
平成30年3月期の「親会社株主に帰属する当期純利益」は9,500億円を目標としております。
(ご参考)
[三菱UFJフィナンシャル・グループ連結]
(単位:億円)平成29年度平成28年度
(実績)
中間期中間期
(実績)
与信関係費用総額(△は費用)△1,600△700△1,553△576
経常利益13,9006,70013,6077,948
親会社株主に帰属する当期純利益9,5004,4009,2644,905

(主要子銀行単体)
三菱東京UFJ銀行
業務純益
一般貸倒引当金繰入前
5,8003,0006,6694,170
与信関係費用総額(△は費用)△300△200△254△47
経常利益5,7002,8006,3224,102
当期純利益4,2002,0004,8143,230

三菱UFJ信託銀行
業務純益
一般貸倒引当金繰入前・信託勘定償却前
1,7509501,814927
与信関係費用総額(△は費用)△100△50△22517
経常利益1,7501,0001,6441,055
当期純利益1,3007501,202757