有価証券報告書-第118期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/29 14:27
【資料】
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【項目】
173項目

対処すべき課題

(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「まちづくりを通じて社会に貢献する」という基本使命のもと、「人を、想う力。街を、想う力。」というブランドスローガンを掲げ、企業グループとしての成長と、様々なステークホルダーとの共生とを高度にバランスさせながら、「真の企業価値の向上」を目指しています。
(2) 中長期的な経営戦略、目標とする経営指標及び会社の対処すべき課題
当不動産業界においては、各種経済対策の効果や海外経済の改善に伴って、徐々に市況が持ち直すことが期待されますが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために経済活動が抑制されるリスクも想定され、そのために持ち直しの動きが停滞する懸念もあります。オフィス賃貸市場においては、借室需要が弱含みのなか、市況の軟化傾向が続いておりますが、2年以上に及ぶコロナ禍を経て、リアルなオフィスの価値を再評価する動きもあり、引き続き企業のオフィス戦略やワークスタイルの変化を注視していく必要があります。分譲マンション市場では、立地条件等による需要の二極化や顧客ニーズの多様化が進むことが想定されるなか、資材価格上昇等に伴う工事費の変動や金利動向が販売に与える影響等も注視していく必要があります。不動産投資市場においては、感染症の動向や欧米における金融引締めによる影響に加え、地政学上のリスクも強く意識され、不透明感が一段と増しているものの、投資家の不動産への投資意欲は引き続き旺盛で、過熱した環境が継続すると見られますが、景気の想定以上の下振れや金融環境の急変といった事態にも留意しながら、今後の動向について慎重に見極めていく必要があります。商業施設やホテル市場においては、新規感染者数の減少を背景に徐々に持ち直してきておりますが、今後の感染状況や経済情勢次第ではこうした持ち直しの動きに水を差される懸念があります。また、ウクライナ情勢によって世界経済の不確実性が増すなか、海外の政策動向や経済情勢を踏まえた金融資本市場の動向にこれまで以上に留意する必要があります。
当社グループと致しましては、2020年代の環境激変をチャンスに変えて持続的な価値を提供する企業グループに変革を続けていくために、2020年1月に、2030年までを見据えた「長期経営計画2030」を策定しました。
長期経営計画を通じて、「幅広いお客様により深く価値を届けるための事業機会の最大化」と「上場企業に求められる高効率で市況変化に強いポートフォリオへの変革」を目指し、丸の内を中心とする国内の大型開発パイプラインの着実な推進を図ると共に、海外事業においては開発事業へのシフトとアジア新興国への注力を進めていきます。あわせて、ノンアセットビジネスの拡大とサービス・コンテンツ領域への進出を通じ、新たな全社における利益成長の柱にすると共に、全社資産効率の改善に向けたドライバーとすることを目指していきます。
なお、本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
○各機能グループ及び事業グループとコーポレートの戦略
・コマーシャル不動産事業
開発中プロジェクトの順次稼働による賃貸利益の伸長を実現すると共に、丸の内NEXTステージ戦略に基づいて個人のクオリティオブライフ向上と社会的課題の発見・解決を生み出すまちづくりの推進を図ります。
・住宅事業
国内分譲事業を着実に推進する一方で、ストックビジネス領域において多様化するニーズにも対応し、管理・リフォームなどのフィービジネスにも注力します。
・海外事業
米国、欧州、アジアエリアにおける開発・バリューアド投資機会の拡充と、新興国における開発主導案件の積極拡大を展開します。
・投資マネジメント事業
日・米・欧・アジアにプラットフォームを広げ、クロスボーダーな投資ニーズの拡大を背景とした持続的な拡大を図ります。
・設計監理事業
大規模設計監理業務の継続受注と、コンサル・CM等の成長分野や海外事業の強化及び三菱地所グループ技術支援を推進します。
・不動産サービス事業
幅広いサービスメニューと全国に広がる支店網、三菱地所グループの総合力を活用し、法人仲介・不動産コンサルティングのトップ企業を目指します。
・営業機能
グループ全体の営業窓口として、顧客企業とのリレーション強化並びに顧客ニーズに対応した企業提案や中長期的な開発案件、事業連携等の事業機会創出を図ります。
・新事業創出機能
全社横断的な新事業創出機能並びにIT施策を担い、ベンチャービジネス等への出資やグループ内における新事業創出の取組み、デジタルを活用した顧客体験の提供やデータ利活用の高度化を通じて、ビジネスモデル革新とDX推進を図ります。
・コーポレート
わが国におけるESGの先進企業としての地位を確立し、ステークホルダーとの共生と長期的な企業価値向上を目指します。
計数目標は次のとおりです。当社グループとしては、丸の内エリアの優位性や各事業領域における当社グループの強み・ノウハウを発揮することで着実な利益の拡大を図ります。
<経営指標/長期経営計画2030ベース(2020年1月公表)>
2021年度
実績
長計目標
(2020年1月公表)
2022年度
業績予想
ROA(事業利益/総資産)4.4%5.0%4.4%
計数目標(参考)事業利益 *12,793億円3,500~4,000億円2,914億円
ROE8.1%10.0%8.0%
EPS116.45円200円124.75円

(注)*1. 事業利益=営業利益+持分法投資損益