有価証券報告書-第112期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

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2016/06/29 14:52
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133項目

対処すべき課題

(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「まちづくりを通じて社会に貢献する」という基本使命のもと、「人を、想う力。街を、想う力。」というブランドスローガンを掲げ、企業グループとしての成長と、様々なステークホルダーとの共生とを高度にバランスさせながら、「真の企業価値の向上」を目指しています。
(2) 中長期的な経営戦略、目標とする経営指標及び会社の対処すべき課題
当社グループでは、より長期的な視点で外部環境に対応するため、平成23年度を初年度とする、10年間の長期基本戦略と3年間の中期戦略からなる“BREAKTHROUGH 2020”を平成23年6月に策定し、当社の将来像を以下の通り設定の上、その実現のための価値観、行動指針として、「5つの“Value”」「5つの“Action”」を掲げております。
平成23~32年度中長期経営計画 三菱地所グループの長期ビジョン
「Mitsubishi Estate Group Vision:BREAKTHROUGH 2020」
都市の未来へ、世界を舞台に快適な空間と時間を演出する企業グループ
5つの“Value”5つの“Action”
“Innovative”「都市再生の革新的な担い手としてチャレンジを続けます」
“Eco-conscious”「環境への先進的取組みにより持続可能な成長を目指します」
“Customer-oriented”「お客様を中心にお客様にとっての価値とは何かを考えます」
“Global”「グローバリティの時代へ人も組織も事業も進化します」
“As One Team”「グループ社員が一つになってビジョンに向かい進みます」

将来像に基づく長期基本戦略として、当社グループの事業を、資金投下によりデベロップメント事業を行い収益の柱とする「投資開発事業領域」(「オフィス」「商業・物流」「住宅」「海外」の4事業)と、プロフェッショナルなサービスにより価値を提供する「マネジメント・サービス事業領域」に分類し、両事業領域間の連携を更に高め“バリューチェーン”を強化することで、従来から強みのある「投資開発事業領域」におけるNo.1を確立し、グループとしての成長を目指すこととしております。
平成26年度からの3年間の中期戦略では、長期基本戦略を踏まえ、本期間を「企業価値向上を実現する3年間」と位置付け、以下の事業領域ごとのテーマ、全社テーマを設けています。
○事業領域ごとのテーマ
(ⅰ)投資開発事業領域:開発機能の強化
① オフィス事業
アジアNo.1都市丸の内の確立に向けて、世界をリードする街づくりを推進していきます。
また丸の内以外におけるマーケットに即した都市開発事業も積極展開していくと共に、既存ポートフォリオ価値向上に向けた取組みを強化していきます。
② 商業・物流施設事業
商業施設開発の更なる推進と、より魅力的な施設運営による収益拡大を図ります。また底堅い物流施設賃借ニーズを背景にした事業展開を進めて参ります。
③ 住宅事業
住宅分譲事業において利益率確保に向けた取組みを強化すると共に、ストックビジネス、賃貸住宅事業の強化も図ります。
④ 海外事業
欧米事業を中心としつつ、住宅・商業施設等多様化したアジア事業を展開していきます。またバリューチェーンを活かしたビジネスモデルも推進していきます。
(ⅱ)マネジメント・サービス事業領域:グループ力を生かしたソリューション&サービスの提供
「オフィス(リーシング機能、PM機能)」、「商業・物流施設」、「投資マネジメント」、「設計監理」、「ホテル」、「不動産サービス」の各領域にて、プロ集団として顧客への価値提供力を向上させると共に、グループ内の連携とバリューチェーンの強化に努めます。
○全社的テーマ
(ⅰ)資産ポートフォリオマネジメントの強化、経営基盤の強化
適切な資産の入れ替えを行い、財務体質の強化を図ります。またリサーチ機能の強化・拡充により経営基盤を強化します。
(ⅱ)事業ポートフォリオマネジメント
適切な経営資源の配分により各事業分野において成長実現を図ります。また、事業環境の変化に対応し、新たなビジネスチャンスを捉えるため、新規事業の検討を進めます。
(ⅲ)グループ経営
グループ全体の効率化を図り、グループ経営を進化させます。
(ⅳ)人財育成、人財配置
当社グループの企業価値向上を支える人財の育成を行い、多様な人財が活躍する企業グループを目指します。
(ⅴ)リスクマネジメント、コンプライアンス
PDCAサイクルの徹底によりリスクマネジメントの強化、コンプライアンスの徹底を図ります。
(ⅵ)環境への取り組み
大丸有スマートコミュニティの普及・浸透や新たな省エネルギーシステムの開発に取り組みます。
(ⅶ)活力ある組織・風土づくり
個人のライフスタイルに合わせた働き方支援によるワークライフバランスの実現やチャレンジ志向で働きがいのある職場作りに取り組みます。
(3) 株式会社の支配に関する基本方針
当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容の概要、基本方針の実現に資する特別な取組みの内容の概要、基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの内容の概要、並びに各取組みに対する当社取締役会の判断及びその理由は、以下の通りであります。
なお、当社は、平成28年6月29日開催の当社第117回定時株主総会における承認決議に基づき、当社株式の大量取得行為に関する対応策(以下「本プラン」といいます。)を更新しております。
また、平成23年6月1日に平成23年度を初年度とする中長期経営計画「BREAKTHROUGH 2020」(平成23~32年度)を策定・公表しております。
一 基本方針の内容の概要
当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社の企業価値の源泉を理解し、当社が企業価値ひいては株主共同の利益を継続的かつ持続的に確保、向上していくことを可能とする者である必要があると考えています。
当社は、当社の支配権の移転を伴う買収提案についての判断は、最終的には当社の株主全体の意思に基づき行われるべきものと考えております。また、当社は、当社株式について大量買付がなされる場合、これが当社の企業価値・株主共同の利益に資するものであれば、これを否定するものではありません。
しかし、株式の大量買付の中には、その目的等から見て企業価値・株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの等、大量買付の対象となる会社の企業価値・株主共同の利益に資さないものも少なくありません。
また、当社株式の大量買付を行う者が当社の企業価値の源泉を理解し、これらを中長期的に確保し、向上させられるのでなければ、当社の企業価値・株主共同の利益は毀損されることになります。
当社としては、このような当社の企業価値・株主共同の利益に資さない大量買付を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であり、このような者による大量買付に対しては必要かつ相当な対抗をすることにより、当社の企業価値・株主共同の利益を確保する必要があると考えます。
二 基本方針の実現に資する特別な取組みの内容の概要
(イ)基本方針の実現に資する特別な取組み
当社グループの企業価値は、不動産に関連する様々な事業・資産のポートフォリオをベースとし、これらの組み合わせや相互補完によりもたらされるシナジーにより高められると共に、不動産事業に関する専門的な知識、深い経験、ノウハウによって支えられています。具体的には、従来から強みがあり、収益の柱となっている、資金投下によりデベロップメント事業を行う「投資開発事業領域」と、「オフィス(PM・リーシング)」、「商業・物流」、「投資マネジメント」、「設計監理」、「ホテル」、「不動産サービス」等、グループ力を生かしてソリューションサービスを提供する「マネジメント・サービス事業領域」との間のバリューチェーンを強化し、ハード・ソフト一体で顧客起点の価値創造を行うという視点から、オフィスビル、住宅、商業施設、物流施設、ホテル等の開発やこれらを組み合わせた複合開発、更にはより広範にわたる面的な開発等、様々なプロジェクトを推進しております。こうした様々な事業の推進にあたっては各ステークホルダーとの信頼関係の構築が不可欠であり、長期的視野に立った総合的なまちづくりが事業価値の最大化につながる重要な要素と考えております。
平成23年度を初年度とする中長期経営計画「BREAKTHROUGH 2020」(平成23~32年度)においては、国内市場の成熟化やグローバル化等、当社グループを取り巻く経営環境の変化を踏まえ、より長期的な視点で経営方針を定めるべく、10年間の長期基本戦略と3年間の中期戦略を定め、着実に事業に取り組んで参りました。平成26年度からの中期経営計画では、本計画期間を、「企業価値向上を実現する3年間」と位置付けており、成長性、効率性、健全性に関する全社計数目標を設定し、各事業領域における開発機能の更なる強化や、グループ内の連携、バリューチェーンの強化を推進すると共に、中期経営計画を実現するための組織体制の整備を行っております。あわせて、財務体質の強化を目的とした資産ポートフォリオマネジメント及びリサーチ機能の拡充等による経営基盤の強化、適切な経営資源配分による事業ポートフォリオマネジメントの推進等を全社テーマとして設定し、災害に強いまちづくりへの意識を重視しながら、人々のワークスタイル・ライフスタイルへの安心・安全・快適を軸にした新たな価値の提案・提供を行い、グループとして持続的に成長し社会に貢献する会社を目指し、企業価値・株主共同の利益の向上に鋭意取り組んでおります。
また、当社においては、コーポレートガバナンス機能の充実は、経営上の最重要課題の一つであるとの認識の下、多様なバックグラウンドを有する社外取締役を複数選任すると共に、取締役の任期を1年とする等、コーポレートガバナンス機能の強化を図って参りました。そのような中、取締役会による経営監督機能の更なる強化、並びに業務執行における権限・責任の明確化及び意思決定の迅速化を推進すると共に、経営の透明性・客観性の向上を図るべく、平成28年6月29日開催の当社第117回定時株主総会での承認を経て、指名委員会等設置会社へ移行いたしました。移行後は、全15名中7名を独立した社外取締役が占める取締役会の下で、独立した社外取締役が過半数を占める指名・監査・報酬の3委員会が設置される体制となることから、当該体制において、当社の中長期的な企業価値向上に資する、効率的かつ実効性のあるコーポレートガバナンス機能の更なる高度化を図って参ります。
当社の利益配分については、株主の皆様に対する安定的な利益還元に努めていくことを基本としながら、丸の内再構築をはじめとする今後の事業展開に伴う資金需要にも配慮しつつ、当社グループの業績の水準等を総合的に勘案し、連結配当性向25~30%程度を目処として決定していきたいと考えております。
(ロ)基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するため
の取組み(本プラン)の内容の概要
1. 本プランの目的
本プランは、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止し、当社の企業価値・株主共同の利益に反する大量買付を抑止すると共に、大量買付が行われる際に、当社取締役会が株主の皆様に代替案を提案したり、あるいは株主の皆様がかかる大量買付に応じるべきか否かを判断するために必要な情報や時間を確保すること、株主の皆様のために交渉を行うこと等を可能とすることを目的としております。
2. 本プランの概要
本プランは、当社株券等の20%以上を取得しようとする者が現れた際に、買収者に事前の情報提供を求めるなど、上記の目的を実現するために必要な手続を定めております。買収者は、本プランに係る手続に従い、当社取締役会において本プランに定める新株予約権の無償割当ての不実施に関する決議がなされた場合に、当該決定時以降に限り当社株式の大量買付を行うことができるものとされています。
当社は、本プランにおける対抗措置の発動の判断について、取締役の恣意的判断を排するため、当社経営陣から独立した当社社外取締役等のみから構成される独立委員会において、その客観的な判断を経るものとしております。
買収者は、買付の開始に先立ち、買付の内容の検討に必要な所定の情報を提供するものとされ、また、独立委員会は、当社取締役会に対しても、買収者の買付の内容に対する意見や代替案等の情報を提供するよう要求することができます。
独立委員会は、買付の内容や当社取締役会の代替案の検討、買収者との協議・交渉等を行い、かかる検討等の結果、買収者が本プランに定められた手続に従わない場合や当社株式の大量買付が濫用的な買付等である場合等、本プラン所定の発動要件を満たす場合には、当社取締役会に対して、買収者による権利行使は原則として認められないとの行使条件及び当社が買収者以外の者から当社株式と引換えに新株予約権を取得できる旨の取得条項が付された新株予約権を、その時点の当社を除く全ての株主に対して新株予約権無償割当ての方法により割り当てる対抗措置の発動を勧告します。当社取締役会は、独立委員会の勧告を最大限尊重して、新株予約権の無償割当ての実施又は不実施等に関する決議を行います。また、当社取締役会は、これに加えて、本プラン所定の場合には、株主意思確認総会を招集し、株主の意思を確認することがあります。
本プランに従って新株予約権の無償割当てがなされ、その行使又は当社による取得に伴って買収者以外の株主の皆様に当社株式が交付された場合には、1個の新株予約権につき、最大1株までの範囲内で当社取締役会が定める数の当社株式が発行されることから、買収者の有する当社の議決権割合は、最大約50%まで希釈化される可能性があります。
本プランの有効期間は、原則として、平成28年6月29日開催の第117回定時株主総会終結後3年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時までとなっております。
三 具体的取組みに対する当社取締役会の判断及びその理由
当社の中長期経営計画、コーポレートガバナンスの強化及び株主に対する安定的な利益還元等の各施策は、当社の企業価値・株主共同の利益を継続的かつ持続的に向上させるための具体的方策として策定されたものであり、まさに当社の基本方針に沿うものです。
また、本プランは、当社株式に対する買付等が行われた際に、当社の企業価値・株主共同の利益を確保するための枠組みであり、基本方針に沿うものです。特に、本プランについては「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則の要件を完全に充足していること、第117回定時株主総会において株主の皆様の承認を得ていること、一定の場合に株主意思確認総会において株主意思を確認することとしていること、及び取締役の任期は1年であり、また当社取締役会によりいつでも本プランを廃止できるとされていること等株主意思を重視するものであること、独立性の高い社外取締役によって構成される独立委員会が設置され、本プランの発動に際しては必ず独立委員会の判断を経ることが必要とされていること、独立委員会は当社の費用で第三者専門家を利用し助言を受けることができるとされていること等により、その公正性・客観性が担保されており、企業価値・株主共同の利益に資するものであって、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。
(注)なお、当社は平成25年6月27日開催の第114回定時株主総会の決議に基づき更新した当社株式の大量取得行為に関する対応策の有効期間が同総会終結後3年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会である平成28年6月29日開催の第117回定時株主総会終結の時までとされていたことから、同定時株主総会の決議に基づき、基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みとして、旧プランの内容を一部改定した上で更新しております。上記は第117回定時株主総会決議に基づく更新後の本プランの内容の概要並びに具体的取組みに対する当社取締役会の判断及びその理由を記載しております。