有価証券報告書-第172期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/26 14:02
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【項目】
126項目

対処すべき課題

当社グループを取り巻く事業環境は、少子高齢化、国際情勢等の影響により、先行き不透明な状況が続くものと予想される。当社グループは、平成27年度に最終年度を迎える中期経営計画「E2プラン」を着実に推進し、事業の中核である運輸業の競争力・収益力をさらに強化するとともに、沿線に密着した堅実な総合生活産業を展開し、地域経済を代表する企業グループの地位を拡充していく。
運輸業では、安全管理体制のさらなる強化を図るとともに、鉄道事業においては、成田スカイアクセスの利便性・認知度の向上を図っていく。バス・タクシー事業においては、お客様のニーズにあった様々な形態の輸送サービスの提供に取り組んでいく。
流通業では、計画的な出店やテナント構成の最適化等による収益力の強化を図っていく。
不動産業では、不動産販売業における商品企画力並びに販売力の強化を図っていく。また、不動産賃貸業においては、押上本社跡地等資産の有効活用を推進し、安定利益の確保に努めていく。
レジャー・サービス業では、積極的な営業等により、収益力の強化を図っていく。
建設業では、競争力の強化と新規顧客層の拡充により、受注の拡大を目指していく。
当社グループは、グループ経営理念に基づき、「安全・安心」と、お客様に喜ばれる商品・サービスを提供し、沿線を中心とする地域の発展に寄与していく。また、コンプライアンス・リスク管理体制を充実させ、内部統制システムの強化に努めるとともに、常に自然環境との調和に配慮するなど企業の社会的責任の遂行に取り組んでいく。さらに、お客様第一主義を徹底し、「BMK(ベストマナー向上)推進運動」を浸透させ、選ばれる京成グループを構築していく。
なお、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針については以下のとおりである。
(会社の支配に関する基本方針)
(1)当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
① 当社グループの基本的な事業運営の考え方
当社グループは、鉄道事業を中心とした運輸業という極めて公共性の高い社会的インフラを提供する事業を基幹(以下「コア事業」という。)としており、それに伴う社会的責任を負っている。
このような社会的責任は、当社グループの事業においては、利用者の安全と利便性を確保しつつ安定的な輸送サービスを提供することによって全うすることができる。そして、そのためには、安全対策、線路整備、施設拡充、沿線開発等において、様々な事業環境の変化を見据えた中長期的視点に立った経営を行うことが必要不可欠であると考えている。
また、当社グループの事業においては、顧客、株主、取引先、従業員にとどまらず、前記の社会的責任をもたらすものとして、地域社会との調和、環境への配慮等、事業を進めるにあたり広範囲のステークホルダーの利益に最大限配慮することも重要である。
このように、当社グループの事業は、中長期的な視点に立ち、広範囲のステークホルダーの存在に配慮した事業展開を行ってきた一つの帰結として、鉄道事業を中核としつつ、バス事業、タクシー事業を運営する運輸業や流通業、不動産業、レジャー・サービス業、建設業等幅広く事業展開しており、当社グループの企業価値は、コア事業である運輸業とこれらの関連事業との有機的な結合によって確保・向上されるべきものと考えている。
② 大規模買付行為への対応方針
当社は、上場会社の株主は株式の市場での自由な取引を通じて決まるものであり、株式会社の支配権の移転を伴うような株式等の大規模な買付行為であっても、これを受け容れて大規模買付行為に応じるか否かの判断は、最終的には個々の株主の判断に委ねられるべきものと考えている。
しかしながら、大規模な買付行為は、それが成就すれば、当社グループの経営に直ちに大きな影響を与えうるだけの支配権を取得するものであり、当社グループの企業価値及び株主共同の利益に重大な影響を及ぼす可能性を内包している。
にもかかわらず、実際には、大規模買付者及び大規模買付行為に関する十分な情報の提供なくしては、株主が、当該大規模買付行為により当社グループの企業価値及び株主共同の利益に及ぼす影響を適切に判断することは困難である。とりわけ、前記の当社グループの企業価値に関わる特殊事情をも考慮すると、当社は、大規模買付者をして株主の判断に必要かつ十分な情報を提供せしめること、さらに、大規模買付者の提案する経営方針等が当社グループの企業価値に与える影響を当社取締役会が検討・評価して株主の判断の参考に供すること、場合によっては、当社取締役会が大規模買付行為又は当社グループの経営方針等に関して大規模買付者と交渉又は協議を行い、あるいは当社取締役会としての経営方針等の代替的提案を株主に提示することも、当社の取締役としての責務であると考えている。
さらに、近時の日本の資本市場と法制度の下においては、当社グループの企業価値又は株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすような大規模買付行為がなされる可能性も、決して否定できない状況にある。かかる状況の下においては、当社は、大規模買付者による情報提供、当社取締役会による検討・評価といったプロセスを確保するとともに、当社グループの企業価値又は株主共同の利益に対する明白な侵害を防止するため、大規模買付行為に対する対抗措置を準備しておくことも、また当社の取締役としての責務であると考えている。
(2)基本方針の実現に資する特別な取り組み
① グループ経営理念
当社グループは、前記の考え方をもとに、日々の事業活動を通じて、企業としての社会的責任を果たし、健全な事業成長を遂げることにより、社会の発展に貢献することを目指している。そのため、当社グループは、「良質な商品・サービスを、安全・快適に提供し、健全な事業成長のもと、社会の発展に貢献します。」という「グループ経営理念」を策定するとともに、この理念を実現するため、安全・接客・成長・企業倫理・環境の5項目からなる「グループ行動指針」を定め、企業価値の確保・向上に努めている。
② グループ経営計画
前記のグループ経営理念のもと、グループ全体の経営の方針と目標を明確にするため、3年毎にグループ中期経営計画を作成している。この中で、グループシナジーを最大限発揮しうる体制の強化を図り、当社グループ全体の企業価値の最大化を目指すことを基本方針としている。
平成25年度から平成27年度にわたる「京成グループ中期経営計画」(以下「E2プラン」という。)においては、「成田スカイアクセスの利便性・認知度の向上による、鉄道事業の競争力・収益力の強化」、「コア事業(運輸業)を中心とした引き続き堅実な事業運営を推進することによる各事業分野での一定の事業成長の実現」、「将来に亘る安定的な事業成長の実現のため、賃貸資産の拡充及び投資案件の選別による投資規模の適正化の推進」、「減価償却費の範囲内での設備投資を原則とする、フリーキャッシュフローの確保による財務体質の強化」、「グループ全体経営を重視することによるグループシナジーの最大化並びにM&A及び事業提携を視野に入れた事業基盤の拡大」、「安全管理体制並びに異常時・災害時におけるグループリスク管理体制の強化」、「京成グループ全体のブランド価値向上による競争力の強化」の基本方針のもと、グループ全体の企業価値の最大化を追求する。
③ 利益還元の考え方
当社グループは鉄道事業を中心とする公共性の高い業種であるため、当社としては、今後の事業展開と経営基盤の強化安定に必要となる内部留保資金の確保や業績等を勘案しながら、安定的かつ継続的に利益還元していくことを基本方針としている。
(3)基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組み
当社は、前記の基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組みとして、当社グループの企業価値及び株主共同の利益の確保・向上を目的として、当社株式等の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)(以下「本施策」という。)を定めている。
本施策の概要は、次のとおりである。
① 大規模買付ルールの設定
本施策においては、まず、大規模買付行為を行う場合に大規模買付者に従っていただくべきルール(本施策において「大規模買付ルール」という。)として、(ⅰ)株主及び当社取締役会による判断を可能にするため、事前に当該大規模買付者及び当該大規模買付行為に関する必要な情報を提供すること、及び(ⅱ)当社取締役会が当該大規模買付行為についての検討・評価を行い、大規模買付者と交渉し、株主に意見・代替的提案等を提示するため、一定期間は大規模買付行為を行わないことを、それぞれ定めている。
② 独立委員会の設置
本施策においては、さらに、当社が大規模買付行為に対して発動する対抗措置(本施策において「大規模買付対抗措置」という。)の発動等に関する当社取締役会の判断の客観性及び合理性を担保するため、当社の業務執行を行う経営陣から独立した者から構成される独立委員会(本施策において「独立委員会」という。)を設置することを定めている。
③ 大規模買付対抗措置の内容・発動要件・発動手続
本施策においては、次に、大規模買付対抗措置について、(ⅰ)その内容として、原則として、新株予約権の無償割当てによること、(ⅱ)その発動の要件として、大規模買付者が大規模買付ルールを遵守しない場合又は大規模買付行為によって当社グループの企業価値若しくは株主共同の利益が著しく毀損される場合であって、当該大規模買付行為に対する対抗手段として相当性を有する場合に限って発動しうること、及び(ⅲ)その発動手続として、原則として、前記②の独立委員会の勧告を最大限尊重しつつ、当社取締役会の決議をもって発動することを、それぞれ定めている。
当社は、平成25年5月21日開催の取締役会において本施策の具体的な内容について決定し、平成25年6月27日開催の第170期定時株主総会においてその承認を受けており、その詳細は、平成25年5月21日付で「当社株式等の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)の継続のお知らせ」として公表し、インターネット上の当社ウェブサイト(http://www.keisei.co.jp/)に掲載している。
(4)前記の取り組みが基本方針に沿い、当社グループの企業価値及び株主共同の利益に合致し、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではないことについて
① 基本方針の実現に資する特別な取り組みについて
前記(2)に記載した企業価値の向上のための取り組みは、当社グループの企業価値及び株主共同の利益を持続的に確保・向上させるための具体的方策として策定されたものである。したがって、これらの取り組みは、基本方針に沿い、当社の株主共同の利益を損なうものではなく、かつ、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではない。
② 基本方針に照らして不適切な者による支配を防止するための取り組みについて
前記(3)に記載した本施策は、以下のとおり、経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に公表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」で定める3原則(企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、事前開示・株主意思の原則、及び必要性・相当性の原則)に適合している。また、本施策は、企業価値研究会が平成20年6月30日に公表した「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」を踏まえた内容となっている。したがって、本施策は、基本方針に沿い、当社の株主共同の利益を損なうものでなく、かつ当社の会社役員の地位の維持を目的とするものでもない。
ア 企業価値・株主共同の利益の確保・向上の目的
本施策は、株主をして大規模買付行為に応じるか否かについての適切な判断を可能ならしめ、かつ当社グループの企業価値及び株主共同の利益に対する明白な侵害を防止するため、大規模買付者が従うべき大規模買付ルール、並びに当社が発動しうる大規模買付対抗措置の内容及び発動要件を予め設定するものであり、当社グループの企業価値及び株主共同の利益の確保及び向上を目的とするものである。
また、大規模買付ルールの内容並びに大規模買付対抗措置の内容及び発動要件は、当社グループの企業価値及び株主共同の利益の確保及び向上という目的に照らして合理的であり、当社グループの企業価値及び株主共同の利益の確保及び向上に資するような大規模買付行為までも不当に制限するものではないと考える。
イ 事前開示
本施策における大規模買付ルールの内容並びに大規模買付対抗措置の内容及び発動要件は、いずれも本施策に具体的かつ明確に示したところであり、株主、投資家及び大規模買付者にとって十分な予見可能性を与えるものであると考える。
ウ 株主意思の反映
本施策は、株主総会の決議によって承認されることを条件として効力を生じている。また、本施策は、本施策の有効期間中いつでも、当社株主総会の決議によっても廃止することができ、本施策の変更は、原則として、当社株主総会の決議によって承認されることをもって効力を生じる。したがって、本施策の導入、継続、廃止及び変更の是非の判断には、いずれも株主の意思が反映されるものと考える。
なお、当社の取締役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日までとなっている。したがって、大規模買付対抗措置の発動等の是非の判断にも、取締役の選任を通じて株主の意思が適切に反映されるものと考える。
エ 取締役会の判断の客観性・合理性の確保
本施策においては、当社の業務執行を行う経営陣から独立した者から構成される独立委員会を設置している。そして、この独立委員会は、当社取締役会に対して大規模買付対抗措置を発動することの是非を勧告するほか、当社取締役会が諮問した事項について勧告又は意見の提出を行うこととし、当社取締役会は、独立委員会の勧告及び意見を最大限尊重するものとしている。
また、本施策においては、大規模買付対抗措置の発動の要件として、客観的かつ明確な要件を定めており、発動の要件に該当するか否かの判断に当社取締役会の恣意的判断の介入する余地を可及的に排除している。
したがって、本施策においては、当社取締役会が大規模買付対抗措置の発動を決議するにあたり、その判断の客観性・合理性を担保するための十分な仕組みが確保されているものと考える。
オ デッドハンド型・スローハンド型の買収防衛策ではないこと
本施策は、当社株主総会の決議によって廃止することができるほか、当社株主総会で選任された取締役により構成される当社取締役会の決議によっても廃止することができ、大規模買付者が、当社株主総会で取締役を指名し、当該取締役により構成される当社取締役会の決議をもって本施策を廃止することが可能である。したがって、本施策は、いわゆるデッドハンド型の買収防衛策(取締役会を構成する取締役の過半数を交替させてもなおその発動を阻止することができない買収防衛策)ではない。
また、当社の取締役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日までとなっている。したがって、本施策は、いわゆるスローハンド型の買収防衛策(取締役会を構成する取締役を一度に交替させることができないため、その発動を阻止するために時間を要する買収防衛策)でもない。