有価証券報告書-第67期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/26 12:56
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96項目
経営成績等の状況の概要
(1)財政状態および経営成績の状況
当事業年度のわが国経済は緩やかな回復傾向が続きましたが、中国経済の減速と米中貿易摩擦、戦後処理に伴う日韓貿易障壁の復活などの影響もあり輸出関連の一部で悪化傾向が見られたほか、長梅雨に始まった天候不順に加えて、相次ぐ台風直撃による甚大な被害が景気を押し下げる要因となりました。また、消費税率引上げ後の個人消費回復のテンポも遅く、期末には新型コロナウイルス感染拡大が影を落としました。
こうした中、国内の広告市場は期待された増税前の特需がほとんど見られず企業マインドが落ち込んだこともあって、東京五輪を控えての慎重な空気が支配的でした。当社は8年連続の年度視聴率三冠を獲得するなど、好調な視聴率を背景に主力のテレビスポットのシェアは各地区でエリアトップを維持したものの、インターネット広告へのシフトとともに、ラグビーW杯をはじめとした大型スポーツコンテンツが重なったこともあり、秋田地区への広告投下が大きく落ち込み減収となりました。ラジオはスポット、タイムとも振るわず減収傾向に歯止めがかかりませんでした。
事業面においては、恒例の「あきたプラチナ世代博」や「子育て応援団すこやか秋田」のほか、「写真展 岩合光昭の世界ネコ歩き2」、「あきたラーメンフェスタ」、「宝塚歌劇団星組公演」など多彩なイベントを開催しました。しかし、夏場以降の事業が想定した収益をあげられず、大型の案件が少なかったこともあり、事業その他収入は減収減益となりました。
令和元年5月末には秋田駅西口に新社屋が完成し、その後、設備導入や新システムへの習熟を経て、事業年度末には放送切り替えを無事終えました。一方、移転準備のため単発番組の制作になかなか手が回りませんでしたが、全国放送された日本のチカラシリーズで「一発逆転!町工場3000日の挑戦」が番組選奨を受賞。「ABS news every.」は地域に密着した報道姿勢を貫き2年連続視聴率トップを維持しました。また、ラジオは駅前移転をにらんだ生ワイド「まちなか SESSION エキマイク」をスタートさせ、地域活性化へのメッセージを発信し続けました。
この結果、当事業年度の売上高は、4,422,268千円で前事業年度比171,940千円(△3.7%)の減収となりました。事業部門別の内訳は、テレビ放送収入は、地区投下の減少でスポット収入が大きく落ち込んだことから、前事業年度比122,409千円(△3.0%)減収の3,932,583千円となり、ラジオ放送収入は、スポット、タイム収入ともに低調だったことから、前事業年度比26,445千円(△7.2%)減収の343,293千円となりました。その他事業収入は、多彩なイベントを手掛けましたが大型の受託事業が少なかったことから、前事業年度比23,085千円(△13.6%)減収の146,393千円となりました。
営業費用においては、退職給付費用などの人件費の減少、放送収入の減収に伴い代理店手数料が減少したことから、前事業年度比52,551千円(△1.2%)減少の4,196,594千円となりました。内訳は、売上原価は、前事業年度比16,174千円(+0.7%)増加の2,275,506千円となり、販売費及び一般管理費は、前事業年度比68,724千円(△3.5%)減少の1,921,088千円となりました。これにより、営業利益は前事業年度比119,389千円(△34.6%)減益し、225,674千円となりました。営業外収益に23,995千円、営業外費用に39,153千円を計上したことから、経常利益は前事業年度比144,153千円(△40.6%)減益の210,516千円となりました。また、退職金規程改定により退職給付債務が大幅に減少したことなどにより特別利益に192,795千円を計上したことから、税引前当期純利益は前事業年度比47,327千円(+13.3%)増益の402,961千円となり、法人税等に34,952千円、法人税等調整額に21,652千円を計上したことにより、当期純利益は前事業年度比115,000千円(+49.7%)増益の346,357千円となり減収増益となりました。
当社は放送事業の単一セグメントであるため、事業部門別の経営成績は次のとおりです。
①テレビ放送部門
テレビ放送部門は、地区投下の減少でスポット収入が大きく落ち込んだことから、売上高は前事業年度に比べ122,409千円(△3.0%)減収の3,932,583千円となりました。退職金規程改定により退職給付費用が減少したものの、売上原価は、人件費や技術費が増加したことなどにより、前年同期比23,214千円(+1.3%)増加の1,770,589千円となり、販売費及び一般管理費は、売上減少に伴う代理店手数料が減少したことなどにより、前年同期比57,649千円(△3.1%)減少の1,784,378千円となったため、テレビ放送の営業利益は前年同期に比べ87,974千円(△18.9%)減益の377,616千円となりました。
②ラジオ放送部門
ラジオ放送部門は、スポット、タイム収入ともに低調だったことから、売上高は前事業年度に比べ26,445千円(△7.2%)減収の343,293千円となりました。退職金規程改定により退職給付費用が減少したため、売上原価は、前年同期比6,993千円(△2.4%)減少の290,633千円となり、販売費及び一般管理費は、前年同期比11,075千円(△7.5%)減少の136,710千円となりましたが、ラジオ放送の営業損失は前年同期比で8,377千円損失が増え84,049千円となりました。
③その他部門
その他部門は、多彩なイベントを開催しましたが、大型の受託事業が少なかったことから、売上高は、前年同期比23,085千円(△13.6%)減収の146,393千円となりました。また、事業費用および人件費に214,285千円を計上したため、67,893千円の営業損失(前年同期は44,854千円の営業損失)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、新社屋建設資金調達および同工事代金支払いに伴い、短期借入金の純増減額が2,426,000千円(前年同期比386,000千円増)、有形固定資産の取得による支出が2,179,301千円(前年同期比18,425千円増)となりましたが、税引前当期純利益が402,961千円(前年同期比47,327千円増)となり、減価償却費329,418千円(前年同期比1,958千円減)を計上したこと、退職給付引当金の減少額が327,389千円(前年同期比315,459千円増)となったこと、未払消費税等の減少額が233,146千円(前年同期は6,907千円の増加)となったこと、法人税等の支払額が119,718千円(前年同期比29,060千円減)であったことなどにより、当事業年度末は、1,387,649千円(前年同期比198,234千円増)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動によって得られた資金は74,218千円(前年同期比509,312千円減)となりました。これは、税引前当期純利益402,961千円(前年同期比47,327千円増)を計上し、減価償却費329,418千円(前年同期比1,958千円減)を計上したこと、退職給付引当金の減少額が327,389千円(前年同期比315,459千円増)となったこと、未払消費税等の減少額が233,146千円(前年同期は6,907千円の増加)となったこと、法人税等の支払額が119,718千円(前年同期比29,060千円減)となったことが主な要因です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動によって支出した資金は、2,173,709千円(前年同期比8,611千円増)となりました。これは新社屋建設に伴う有形固定資産の取得による支出が2,179,301千円(前年同期比18,425千円増)だったことが主な要因です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動によって得られた資金は、2,297,725千円(前年同期比438,459千円増)となりました。これは、新社屋建設資金調達に伴う短期借入金の純増減額が2,426,000千円(前年同期比386,000千円増)となったこと、長期借入金の返済による支出が76,805千円(前年同期比23,575千円減)だったこと、リース債務の返済による支出が56,870千円(前年同期比18,884千円減)だったこと、長期借入れによる収入が10,000千円(前年同期比10,000千円増)だったことが主な要因です。
(3)生産、受注及び販売の実績
(1)販売実績
当事業年度の販売実績を事業部門別に示すと次のとおりです。
事業部門別金額(千円)前期比(%)
テレビ放送3,932,58397.0
ラジオ放送343,29392.8
その他146,39386.4
合計4,422,26896.3

(注)1.主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は次のとおりです。
相手先前事業年度当事業年度
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
日本テレビ放送網㈱1,195,83926.01,199,79627.1
㈱電通477,12010.4512,92711.6

2.上記の金額には消費税等は含まれていません。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものです。
1.当事業年度の経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容
当事業年度のわが国経済は緩やかな回復傾向が続きましたが、相次ぐ台風直撃による甚大な被害が景気を押し下げる要因となり、消費税率引上げ後の個人消費回復のテンポも遅く、期末には新型コロナウイルス感染拡大が影を落としました。こうした中、国内の広告市場は期待された増税前の特需がほとんど見られず企業マインドが落ち込んだこともあって、東京五輪を控えての慎重な空気が支配的でした。当社は8年連続の年度視聴率三冠を獲得するなど、好調な視聴率を背景に主力のテレビスポットのシェアは各地区でエリアトップを維持したものの、インターネット広告へのシフトとともに、ラグビーW杯をはじめとした大型スポーツコンテンツが重なったこともあり、秋田地区への広告投下が大きく落ち込み減収となりました。ラジオはスポット、タイムとも振るわず減収傾向に歯止めがかかりませんでした。
売上高は、4,422,268千円で、前事業年度に比べ171,940千円(△3.7%)の減収となりました。テレビ放送部門については、タイム放送収入は前事業年度に比べ21,436千円(1.2%)増収の1,846,861千円となり、スポット放送収入は前事業年度に比べ117,361千円(△5.7%)減収の1,944,314千円となりました。ラジオ放送部門については、タイム放送収入は前事業年度に比べ4,918千円(△2.6%)減収の185,414千円に、スポット放送収入は前事業年度に比べ17,841千円(△14.3%)減収の107,147千円となりました。その他の収入は前事業年度に比べ23,085千円(△13.6%)減収の146,393千円となりました。
2.財政状態に関する認識および分析・検討内容
(1)資産・負債・資本の状況
前事業年度
(平成31年3月31日)
当事業年度
(令和2年3月31日)
増減
流動資産(千円)2,641,5883,216,316574,728
固定資産(千円)3,963,2856,419,9642,456,679
資産合計(千円)6,604,8739,636,2803,031,407
流動負債(千円)2,962,5386,049,6043,087,066
固定負債(千円)1,489,2571,145,910△343,347
負債合計(千円)4,451,7957,195,5142,743,719
純資産(千円)2,153,0772,440,766287,688
負債純資産合計(千円)6,604,8739,636,2803,031,407

①資産
当事業年度末の総資産残高は、前事業年度に比べ3,031,407千円(+45.9%)増加し、9,636,280千円となりました。内訳は流動資産の増加が前事業年度に比べ574,728千円(+21.8%)、有形固定資産の増加が前事業年度に比べ2,542,577千円(+72.7%)です。流動資産の増加については、新社屋建設費用の支払により未収消費税等が発生したこと、有形固定資産の増加については、新社屋を取得したことがそれぞれ主たる要因です。
②負債
当事業年度末の負債残高は、前事業年度に比べ2,743,719千円(+61.6%)増加し、7,195,514千円となりました。流動負債の増加については、新社屋建設に伴う短期借入金が増加したことによるもので、固定負債の減少については、退職金規程の改定により退職給付債務が減少したことが主たる要因です。
③純資産
当事業年度末の純資産残額は、前事業年度に比べ287,688千円(+13.4%)増加し、2,440,766千円となりました。当事業年度において当期純利益346,357千円を計上したことが主たる要因です。
(2)キャッシュ・フローの状況・検討内容ならびに資本の財源および資金の流動性に係る情報
詳細については経営成績等の状況の概要(2)キャッシュ・フローの状況の項の記載内容を参照してください。
当社の運転資金需要の主なものは、放送費、技術費、販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものです。
当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
短期運転資金は自己資金および金融機関からの短期借入により、設備投資や長期運転資金の調達については、主に金融機関からの長期借入ないしリース契約によることとしています。
なお、当事業年度末における借入金およびリース債務を含む有利子負債の残高は4,838,817千円、現金及び現金同等物の残高は1,387,649千円となっています。
(3)重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。詳細については、第5 経理の状況の項の記載内容を参照してください。