有価証券報告書-第18期(平成26年1月1日-平成26年12月31日)

【提出】
2015/03/27 15:00
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【項目】
68項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

(1) 事業の概要
当社グループは、インターネットサービスと、インターネット金融という2つの事業を基軸とした総合インターネットサービス企業です。インターネットサービスの主力の国内EC事業においては、取扱高においてシェア1位(※1)を保持しているリーディングカンパニーです。
(※1:通販・e-コマースビジネスの実態と今後 富士経済)
(2) 経営成績の分析
(売上収益)
当連結会計年度における売上収益は598,565百万円となり、前連結会計年度の518,568百万円から79,997百万円(15.4%)増加しました。これは、インターネットサービスセグメントにおける「楽天市場」を中心とした国内EC流通総額(取扱高)が順調に推移していることや、新しく連結対象となった連結子会社による貢献等によるものです。加えて、インターネット金融における『楽天カード』会員の増加に伴う手数料収入の増加、カードローン残高の順調な積み上げ等も売上の増加に寄与しています。
(営業費用)
当連結会計年度における営業費用は491,279百万円となり、前連結会計年度の420,374百万円から70,905百万円(16.9%)増加しました。これは、事業の拡大に伴い、従業員給付費用、広告宣伝費及び販売促進費及びその他の費用が増加したことによるものです。
(その他の収益)
当連結会計年度におけるその他の収益は6,724百万円となり、前連結会計年度の1,831百万円から4,893百万円(267.2%)増加しました。これは、海外子会社への貸付金より発生した為替差益を計上したこと等によるものです。
(その他の費用)
当連結会計年度におけるその他の費用は7,613百万円となり、前連結会計年度の9,781百万円から2,168百万円(22.2%)減少しました。これは、インターネットサービスセグメントにおいて、前連結会計年度に計上した減損損失の剥落等によるものです。
(営業利益)
当連結会計年度における営業利益は106,397百万円となり、前連結会計年度の90,244百万円から16,153百万円(17.9%)増加しました。これは、インターネットサービスセグメントにおいて、将来成長分野への先行投資を継続しつつも、既存事業からの利益が順調に増加していることに加え、将来成長が期待される先行投資事業の収益性が改善し、また、インターネット金融セグメントにおいて、『楽天カード』会員の増加に伴い、利益が順調に推移していること等によるものです。
(税引前当期利益)
当連結会計年度における税引前当期利益は104,245百万円となり、前連結会計年度の88,610百万円から15,635百万円(17.6%)増加しました。これは、営業利益で説明したものに加え、借入金の増加に伴う金融費用の増加等によるものです。
(法人所得税費用)
当連結会計年度における法人所得税費用は33,142百万円となり、前連結会計年度の45,129百万円から11,987百万円(26.6%)減少しました。当連結会計年度における実効税率は31.8%と、日本国内における法定税率を下回りました。これは、事業再編によって繰延税金負債の計上を取りやめたことや、海外子会社の繰延税金資産を認識したこと等によるものです。
(当期利益)
以上の結果、当期利益は71,103百万円となり、前連結会計年度の43,481百万円から27,622百万円(63.5%)増加しました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は70,614百万円となり、前連結会計年度の42,900百万円から27,714百万円(64.6%)増加しました。
(3) 財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は3,680,695百万円となり、前連結会計年度末の資産合計3,209,808百万円と比べ、470,887百万円増加いたしました。これは主に、証券事業の金融資産が108,099百万円減少する一方で、Viber社及びEbates社の買収等に伴い無形資産が254,798百万円増加、カード事業の貸付金が148,572百万円増加、銀行事業の貸付金が82,059百万円増加、現金及び現金同等物が44,627百万円増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は3,252,609百万円となり、前連結会計年度末の負債合計2,903,354百万円と比べ、349,255百万円増加しました。これは主に、証券事業の金融負債が82,830百万円減少する一方で、社債及び借入金が200,244百万円増加、銀行事業の預金が177,235百万円増加したことによるものです。
(資本)
当連結会計年度末の資本合計は428,086百万円となり、前連結会計年度末の資本合計306,454百万円と比べ、121,632百万円増加しました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期利益70,614百万円の計上等により利益剰余金が63,570百万円増加、外国為替相場の変動等によりその他の資本の構成要素が53,884百万円増加したことによるものです。
(4) キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ44,627百万円増加し、428,635百万円となりました。このうち、銀行事業に関する日銀預け金は、前連結会計年度末に比べ16,112百万円増加し、246,411百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況及び主な変動要因は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、111,860百万円の資金流入(前連結会計年度は1,485百万円の資金流入)となりました。これは主に、カード事業の貸付金の増加による資金流出が148,572百万円となった一方で、銀行事業の預金の増加による資金流入が177,383百万円、税引前当期利益を104,245百万円計上したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、261,085百万円の資金流出(前連結会計年度は30,584百万円の資金流入)となりました。これは主に、子会社の取得による資金流出が174,469百万円、銀行事業の有価証券の取得及び売却等によるネットの資金流出が23,697百万円(有価証券の取得による資金流出が365,787百万円、売却及び償還による資金流入が342,090百万円)となったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、189,512百万円の資金流入(前連結会計年度は75,252百万円の資金流入)となりました。これは主に、長期借入金によるネットの資金流入が169,043百万円(長期借入金による資金流入が251,860百万円、長期借入金の返済による資金流出が82,817百万円)、社債発行に伴う資金流入が29,828百万円となったことによるものです。
(5) 収益の認識および表示方法
当社グループは、インターネットサービスと、インターネット金融という2つの事業を基軸とした総合インターネットサービス企業であり、EC事業を中心に複数のビジネスを行っております。
『楽天市場』等のようなマーケットプレイス型ECサービスや、『楽天トラベル』のような予約サービス等においては、取引の場を提供することをその基本的な性格としており、当社グループは、それらのサービスの運営にあたり、出店者に代表される販売者・役務提供者に、ECサイト開設とシステム利用に関するサービス、販売者・役務提供者と消費者の決済に関するカード決済サービス、当社グループを通じた消費者への販売拡大のための広告関連サービスや流通量増加ためのアフィリエイトサービス等を提供しております。これらのサービスは内容に基づき下記の通りに識別し、各サービスの提供パターンに応じて収益を計上しております。
ECサイト開設サービスについて、当社グループは、規約に基づき販売者に対し契約期間に渡り当社グループのマーケットプレイス型ECへの出店のサービスを提供しております。当該サービスは契約期間に渡り提供されるものであるため、時の経過に基づきサービス提供の進捗度を測定し、出店形態別に規約で定められた金額により収益を総額にて計上しております。
システム利用に関するサービスについて、当社グループは、規約に基づき販売者・役務提供者に対し、サービスの運営に関連する各種システムの提供を行い、販売者・役務提供者と消費者の間での個々の取引の成立についてのサービスを提供しております。当該サービスは、販売者・役務提供者と消費者の個々の取引の成立時点で提供が完了するものであるため、同時点で成立した取引にかかる流通総額(販売者・役務提供者の月間売上高)にサービス別・プラン別・流通総額の規模別に定められている料率を乗じた金額により、収益を純額にて計上しております。
広告関連サービスについて、当社グループは、広告規約に基づき、販売者・役務提供者等の広告主に対し、期間保証型の広告関連サービス及び成果報酬型の広告関連サービス(売上高等の特定の広告実績により達成される広告関連サービス)を提供しております。両サービスは売上高増加のための広告という点で類似しておりますが、サービスの顧客への移転の方法が異なるため、区別して取り扱う事が妥当であると判断しております。期間保証型の広告関連サービスについては、契約期間に渡り広告を掲示することによりサービスが提供されるため、時の経過に基づきサービス提供の進捗度を測定し、広告種類ごとに規約に定められた金額により収益を総額にて計上しております。一方、成果報酬型の広告関連サービスについては、成果として設定されている項目が達成された時点で販売者・役務提供者等の広告主に対して個々のサービスの提供が完了するものであるため、同時点で規約に定められた金額により収益を総額にて計上しております。
カード決済サービスについて、楽天㈱は、カード決済規約に基づき、当社グループの提供するサービスを利用する消費者と販売者・役務提供者との間でのカード決済サービスを提供しております。当該サービスは、決済やキャンセル等のデータ処理等の個々のサービスが提供されるものであります。また、販売者・役務提供者にとってのカード決済の経済的価値は、売掛債権を早期に現金化できることにあり、この経済的実態を鑑みれば販売者・役務提供者に対して消費者のカード利用によるショッピング代金が振り込まれた時点がサービスの提供完了時点と考えられるため、同時点で規約に定められた金額により収益を純額にて計上しております。なお、カード決済サービスのうち、月額固定料金部分については、契約期間に渡り提供するカード決済サービスの対価であるため、時の経過に基づきサービス提供の進捗度を測定し、規約に定められた金額により収益を純額にて計上しております。
R-Mailのサービスについて、楽天㈱は、契約期間に渡り販売者・役務提供者に、当社グループの提供するサービスを利用する消費者へのメール配信サービスの仕組みを提供しております。これらのサービスは、契約期間に渡り提供されるものであるため、時の経過に基づきサービス提供の進捗度を測定し、規約に定められた金額により収益を総額にて計上しております。また、メール件数に応じた従量サービスについては、個別のメールを配信した時点でサービスの提供が完了するため、同時点で規約に定められた金額により収益を総額にて計上しております。
アフィリエイトサービスについて、楽天㈱は、アフィリエイト規約に基づき、アフィリエイターと楽天市場店舗間のバナーリンク等を用いた流通量増加のための仕組みを、楽天市場店舗に提供しております。楽天㈱の提供する当該アフィリエイトサービスにおいては、アフィリエイトによる成果の達成時点を、アフィリエイトサービスの提供が完了するため、同時点で規約に定められた金額により収益を総額にて計上しております。また、楽天㈱は、アフィリエイトのプログラムを店舗ごとにカスタマイズして提供する、アフィリエイトアドバンスサービスを提供しております。当該サービスは、月ごと等の契約期間に渡り、当該サービスを提供するものであるため、時の経過に基づきサービス提供の進捗度を測定し、規約に定められた金額により収益を総額にて計上しております。なお、アフィリエイトのうち、アフィリエイターに支払う成果報酬金額自体については、報酬額の発生とアフィリエイターへの支払が同額となっており、純額にて計上しております。
インターネットサービスのうち、当社グループが一般消費者に対して商品・役務を提供する『楽天ブックス』、『楽天kobo』等のサービスにおいては、当社グループが売買契約の当事者となります。これらの直販型のサービスおいては消費者に対して商品・役務を提供したとみなせる到達基準で収益を認識し総額にて計上しております。
インターネット金融においては、クレジットカード、ネットバンキング、オンライン証券等の金融サービス事業を行い、主な収益を下記の通り認識しております。
楽天銀行㈱は、銀行業務(預金、為替、貸出)に加え、楽天証券への金融商品仲介業務、登録金融機関業務としての店頭為替証拠金取引(FX取引)のほか、totoや宝くじ(ナンバーズ)の販売、デビットカード事業等、幅広くサービスを提供しております。これらの取引から発生する手数料及び預金の運用から生じる有価証券利息等の収益を、資金運用収益、役務取引等収益、その他業務収益、その他経常収益に計上しております。なお、貸出については、『楽天スーパーローン』と呼ばれる個人向けローン及び『楽天銀行住宅ローン(金利選択型)』と呼ばれる住宅ローン等を取り扱っており、貸出残高に対して、一定の利率を乗じた利息収入を得ております。
楽天証券㈱は、金融商品取引業務とその他の付随業務を行い、これら取引に付随して発生する手数料やトレーディング損益、利息等を収益の源泉としており、主に受入手数料、トレーディング損益、金融収益、その他の営業収益を計上しております。金融商品取引には、国内株式取引に加え、外国株式取引、投資信託の販売等、様々な取引が存在しますが、それぞれの手数料体系は異なります。また、外国為替証拠金取引においてはトレーディング損益、国内株式信用取引においては受入手数料のほかに建玉に対する金利収益を計上しております。
楽天カード㈱は、クレジットカード事業のほか、信用保証事業及び貸金業を行っており、主に包括信用購入あっせん収益、融資収益、信用保証収益、リース売上利益、その他の収益、金融収益を計上しております。包括信用購入あっせん収益には、加盟店より得られる加盟店手数料、並びに、クレジットカード利用者から得られるリボルビング払い手数料及び分割払い手数料が含まれており、クレジットカードの決済金額、リボルビング残高、分割支払回数に対してそれぞれ一定の料率を乗じた手数料を収益として計上しております。融資収益においては、キャッシング手数料が含まれており、キャッシング残高に対して一定の料率を乗じた利息収入を、クレジットカード利用者から得ております。
(6) 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、それらが利用される将来の課税所得を稼得する可能性が高い範囲内で、全ての将来減算一時差異及び全ての未使用の繰越欠損金及び税額控除について認識しております。当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価にあたり行っている見積りは合理的であり、繰延税金資産が回収可能な額として計上されていると判断しています。ただし、これらの見積りは当社グループとしても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化などにより回収可能性の評価に関する見積りが変化した場合には、将来当社グループが繰延税金資産を減額する可能性もあります。
(7) 公正価値で測定する金融資産
当社グループの証券事業の金融資産は主に短期間で決済されるため、公正価値は帳簿価額に近似しております。
また、当社グループのカード事業の貸付金及び銀行事業の貸付金の公正価値は、一定の期間毎に区分して、将来のキャッシュ・フローを満期までの期間及び信用リスクを加味した利率により割り引いた現在価値によって算定しております。
また、当社グループの有価証券、銀行事業の有価証券及び保険事業の有価証券については、これらのうち、上場株式の公正価値については連結会計年度末日の市場の終値、非上場株式の公正価値については類似業種比較法等、適切な評価技法を用いて算定しております。債券等の公正価値については、売買参考統計値、ブローカーによる提示相場等、利用可能な情報に基づく合理的な評価方法により算定しております。
なお、その他の金融資産は主に短期間で決済されるものであり、公正価値は帳簿価額に近似しております。