訂正有価証券報告書-第23期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)
(1) 経営成績等の状況
当社グループは、経営者が意思決定する際に使用する社内指標(以下、Non-GAAP指標)及びIFRSに基づく指標の双方によって、連結経営成績を開示しています。
Non-GAAP営業利益は、IFRSに基づく営業利益(以下、IFRS営業利益)から、当社グループが定める非経常的な項目やその他の調整項目を控除したものです。経営者は、Non-GAAP指標を開示することで、ステークホルダーにとって同業他社比較や過年度比較が容易になり、当社グループの恒常的な経営成績や将来見通しを理解する上で有益な情報を提供できると判断しています。なお、非経常的な項目とは、将来見通し作成の観点から一定のルールに基づき除外すべきと当社グループが判断する一過性の利益や損失のことです。その他の調整項目とは、適用する会計基準等により差異が生じ易く企業間の比較可能性が低い、株式報酬費用や子会社取得時に認識した無形資産の償却費等を指します。
(注) Non-GAAP指標の開示に際しては、米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission)が定める基準を参照していますが、同基準に完全に準拠しているものではありません。
① 当期の経営成績(Non-GAAPベース)
当連結会計年度における世界経済は、全体としては緩やかに回復しているものの、先行きについては、通商問題の動向、中東地域を巡る情勢、金融資本市場の変動の影響等について留意する必要があります。日本経済は、雇用・所得環境の改善が続く中で、企業の設備投資や個人消費の増加を受け、緩やかに回復しています。
総務省が発表した情報通信白書(注) によると、インターネットをはじめとする情報通信技術(ICT)の発展・普及がもたらした新しい経済、そして社会の姿は「デジタル経済」と呼ばれるようになってきており、我が国は、その進化の先にある社会として、IoT、AI等の革新的技術によって実現する、現在の情報社会の次の段階に位置付けられる「Society 5.0」を展望しているとされています。
このような環境下、当社グループは、メンバーシップ、データ及びブランドを結集したビジネスの展開、AI等を積極的に活用したサービスの開発・展開を進めています。通信サービスにおいては、2020年4月に予定する第4世代移動通信システム(4G)本格サービス開始に向け、基地局の開設等を進めるとともに、同年6月に予定する第5世代移動通信システム(5G)サービス開始に向け、実証実験等を実施しています。
インターネットサービスの主力サービスである国内ECにおいては、流通総額及び売上収益の更なる成長を目指し、ロイヤルカスタマーの醸成や新規顧客の獲得のための販促活動、クロスユースの促進に加え、「楽天エコシステム」のオープン化戦略、自社物流網の整備・強化等に注力しました。海外インターネットサービスにおいては、各サービスの「Rakuten」ブランドへの統合を進め、積極的な販促活動を通じて、海外におけるブランド認知度の向上及び事業の拡大を進めました。投資事業においては、ライドシェアビジネスに係る株式投資の株式評価益等を計上した結果、当連結会計年度の株式評価益は75,120百万円となりました。
フィンテックにおいては、『楽天カード』会員基盤の拡大に伴うショッピング取扱高やリボ残高が伸長し、売上収益及び利益の増加に貢献したほか、銀行サービスにおいては、ローン残高の伸長に伴う貸出金利息収益の増加や事務の効率化等により、マイナス金利政策の環境下にもかかわらず、売上収益及び利益拡大が続いています。証券サービスにおいては、国内株式市場の伸び悩みを背景とした手数料収入の減少等により減収減益となりました。
モバイルにおいては、世界初となるエンドツーエンドの完全仮想化クラウドネイティブネットワークを提供する携帯キャリア事業として、2020年4月に予定するサービス開始に向け、基地局の開設等を進めるとともに、2019年10月より、音声・データ通信サービスを無償でご利用いただける「無料サポータープログラム」を、約5,000名を対象に開始しました。これに伴い、当第4四半期連結会計期間より有形固定資産の減価償却費、他社回線ローミングエリアにおける回線使用料等が発生しています。「無料サポータープログラム」については、2020年1月に最大20,000人の追加募集を行い、ネットワークサービスエリアでの利用を通じて、安定性の検証を含めた品質の向上に努めています。また、仮想移動体通信事業者(MVNO)サービス『楽天モバイル』、メッセージング及びVoIPサービス『Rakuten Viber』においても、会員基盤の拡大に伴い、売上収益が大幅に増加しています。
この結果、当社グループの当連結会計年度における売上収益は1,263,932百万円(前連結会計年度比14.7%増)、Non-GAAP営業利益は95,129百万円(前連結会計年度比41.0%減)となりました。
(注)総務省「令和元年版 情報通信白書」
(Non-GAAPベース)
(単位:百万円)
② Non-GAAP営業利益からIFRS営業利益への調整
当連結会計年度において、Non-GAAP営業利益にて控除される無形資産の償却費は8,764百万円、株式報酬費用は10,137百万円となりました。また、米国地域において固定資産の減損損失など3,483百万円を非経常的な項目として計上しました。なお、前連結会計年度は、株式会社オーネットの全株式譲渡等により28,110百万円を非経常的な項目として計上しています。
(単位:百万円)
③ 当期の経営成績(IFRSベース)
当連結会計年度における売上収益は1,263,932百万円(前連結会計年度比14.7%増)、営業利益は72,745百万円(前連結会計年度比57.3%減)、当期損失(親会社の所有者帰属)は31,888百万円(前連結会計年度は142,282百万円の当期利益)となりました。
(IFRSベース)
(単位:百万円)
④ セグメントの概況
2019年3月28日開催の取締役会において、2019年4月1日付の会社分割による当社グループ企業の組織再編に伴う内部報告管理体制の変更を決議しており、第1四半期連結会計期間から、従来の報告セグメントである「インターネットサービス」セグメント、「FinTech」セグメントに加え、新たに「モバイル」セグメントを設け、「インターネットサービス」、「フィンテック」及び「モバイル」を3つの報告セグメントとしています。「モバイル」セグメントは、通信及びメッセージングサービスの提供等を行う事業により構成されています。各セグメントにおける業績は次のとおりです。なお、IFRS上のマネジメントアプローチの観点から、セグメント損益をNon-GAAP営業損益ベースで表示しています。
第2四半期連結会計期間より、研究開発を行う機能子会社等におけるセグメント構成の変更及び本社管理部門における共通費の配賦方法を変更し、遡及適用しています。この変更に伴い、遡及適用前と比較して前連結会計年度のインターネットサービスセグメントにおける売上収益が7,045百万円減少、セグメント損益が2,121百万円減少、フィンテックセグメントにおける売上収益が1,114百万円減少、セグメント損益が10,515百万円減少、モバイルセグメントにおけるセグメント損益が1,004百万円減少しています。なお、連結上の売上収益、Non-GAAP営業利益、営業利益に与える影響はありません。
(インターネットサービス)
主力サービスである国内ECにおいては、流通総額及び売上収益の更なる成長を目指し、ロイヤルカスタマーの醸成や新規顧客の獲得のための販促活動、クロスユースの促進に加え、楽天エコシステムのオープン化戦略等に注力しました。また、包括的な物流サービスを提供する「ワンデリバリー」構想のもと、自社物流施設への楽天市場出店店舗商品の受入れ拡大やラストワンマイルにおける自社配送エリアの拡大等、自社物流網の整備・強化に努め、配送業者による物量制限、配送料金値上げによる影響の中長期的な緩和を図るとともに、顧客と楽天サービス出店者双方の利便性向上に注力しています。
海外インターネットサービスにおいては、各サービスの「Rakuten」ブランドへの統合を進め、積極的な販促活動を通じて、海外におけるブランド認知度の向上及び事業の拡大を進めました。
投資事業においては、ライドシェアビジネスに係る株式投資の株式評価益等を計上した結果、当連結会計年度の株式評価益は75,120百万円となりました。
この結果、インターネットサービスセグメントにおける売上収益は792,512百万円(前連結会計年度比17.1%増)、セグメント利益は90,738百万円(前連結会計年度比15.8%減)となりました。
(単位:百万円)
(フィンテック)
クレジットカード関連サービスにおいては、『楽天カード』会員基盤の拡大に伴うショッピング取扱高やリボ残高が伸長し、売上収益及び利益の増加に貢献したほか、銀行サービスにおいては、ローン残高の伸長に伴う貸出金利息収益等の増加や事務の効率化等により、マイナス金利政策の環境下にもかかわらず、売上収益及び利益拡大が続いています。
保険サービスにおいては、金融商品の運用による有価証券売却益を計上したことや、前連結会計年度において、西日本豪雨をはじめとする災害への保険金支払いが大きく発生したこと等の反動により、当連結会計年度においては増収増益となりました。
証券サービスにおいては、国内株式市場の伸び悩みを背景とした手数料収入の減少等により減収減益となりました。
この結果、フィンテックセグメントにおける売上収益は486,372百万円(前連結会計年度比14.6%増)、セグメント利益は69,306百万円(前連結会計年度比2.1%増)となりました。
(単位:百万円)
(モバイル)
モバイルにおいては、世界初となるエンドツーエンドの完全仮想化クラウドネイティブネットワークを提供する携帯キャリア事業として、2020年4月に予定するサービス開始に向け、基地局の開設等を進めるとともに、2019年10月より、音声・データ通信サービスを無償でご利用いただける「無料サポータープログラム」を、約5,000名を対象に開始しました。これに伴い、当第4四半期連結会計期間より有形固定資産の減価償却費、他社回線ローミングエリアにおける回線使用料等が発生しています。「無料サポータープログラム」については、2020年1月に最大20,000人の追加募集を行い、ネットワークサービスエリアでの利用を通じて、安定性の検証を含めた品質の向上に努めています。
また、仮想移動体通信事業者(MVNO)サービス『楽天モバイル』、メッセージング及びVoIPサービス『Rakuten Viber』においても、会員基盤の拡大に伴い、売上収益が大幅に増加しています。
この結果、モバイルセグメントにおける売上収益は119,808百万円(前連結会計年度比33.3%増)、セグメント損失は60,051百万円(前連結会計年度は13,672百万円の損失)となりました。
(単位:百万円)
⑤ 生産、受注及び販売の状況
(生産実績)
当社グループは、インターネット上での各種サービスの提供を主たる事業としており、生産に該当する事項が無いため、生産実績に関する記載はしていません。
(受注実績)
当社グループは、受注生産を行っていませんので、受注実績に関する記載はしていません。
(販売実績)
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 上記金額には、消費税等は含まれていません。
(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 経営成績の分析
(売上収益)
当連結会計年度における売上収益は1,263,932百万円となり、前連結会計年度の1,101,480百万円から162,452百万円(14.7%)増加しました。これは、インターネットサービスにおける、『楽天市場』に代表される国内既存事業の成長が売上収益に貢献したこと、フィンテックにおける、『楽天カード』の会員基盤拡大に伴う手数料収入の増加、銀行サービスのローン残高伸長に伴う貸出金利息収益の増化、キャッシュレス決済事業の取扱高の増加が売上収益に貢献したこと、モバイルにおける、仮想移動体通信事業者(MVNO)サービス『楽天モバイル』、メッセージング及びVoIPサービス『Rakuten Viber』の会員基盤の拡大が売上収益に貢献したこと等によるものです。
(営業費用)
当連結会計年度における営業費用は1,266,902百万円となり、前連結会計年度の1,027,753百万円から239,149百万円(23.3%)増加しました。これは、売上収益の更なる成長を目指した販促活動及び物流拠点の設備・強化に伴う費用が増加したこと、モバイル事業における基地局建設に関わる費用が増加したこと等によるものです。
(その他の収益)
当連結会計年度におけるその他の収益は86,901百万円となり、前連結会計年度の120,634百万円から33,733百万円(28.0%)減少しました。これは、前連結会計年度に計上した連結子会社の売却に伴う利益や、負ののれんの償却益が減少したこと等によるものです。
(その他の費用)
当連結会計年度におけるその他の費用は11,186百万円となり、前連結会計年度の23,936百万円から12,750百万円(53.3%)減少しました。これは、前連結会計年度に計上した子会社の清算に伴う損失や為替差損が減少したこと等によるものです。
(営業利益)
当連結会計年度における営業利益は72,745百万円となり、前連結会計年度の170,425百万円から97,680百万円(57.3%)減少しました。これは、インターネットサービスやフィンテックにおいて、事業が堅調に推移し売上収益は増加したものの、さらなる事業成長を実現するために、販促活動や物流拠点の整備に伴う費用やモバイルにおける基地局建設に関わる費用を計上し、営業費用が増加したことによるものです。
(持分法による投資損益)
持分法による投資損失は、前期比110,094百万円増加し、111,918百万円となりました。主に、Lyft,Inc.の減損損失102,873百万円を、持分法による投資損失に計上したことによるものです。
(税引前当期利益)
当連結会計年度は44,558百万円の税引前当期損失となりました(前連結会計年度は、165,423百万円の税引前当期利益)。これは、営業利益で説明した要因等により利益が減少したことに加え、営業利益を上回る持分法による投資損失を計上したことによるものです。
(法人所得税費用)
当連結会計年度における法人所得税費用は11,490百万円のマイナスとなりました(前連結会計年度は23,534百万円の費用)。これは主に、当連結会計年度において税引前当期損失を計上したことによるものです。
(当期損失)
以上の結果、当期損失は33,068百万円となり、前連結会計年度における141,889百万円の当期利益から174,957百万円減少しました。
(親会社の所有者に帰属する当期損失)
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期損失は31,888百万円となり、前連結会計年度における142,282百万円の当期利益から174,170百万円減少しました。
② 財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は9,165,697百万円となり、前連結会計年度末の資産合計7,345,002百万円と比べ、1,820,695百万円増加しました。これは主に、現金及び現金同等物が488,315百万円増加、カード事業の貸付金が364,186百万円増加、IFRS第16号「リース」の適用及び新規リース契約締結に伴う使用権資産の増加等により有形固定資産が285,089百万円増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は8,428,497百万円となり、前連結会計年度末の負債合計6,568,795百万円と比べ、1,859,702百万円増加しました。これは主に、楽天銀行株式会社における普通預金口座の増加等により銀行事業の預金が805,634百万円増加、社債及び借入金が492,953百万円増加、IFRS第16号「リース」の適用及び新規リース契約締結に伴うリース債務の増加等により、その他の金融負債が375,909百万円増加したことによるものです。
(資本)
当連結会計年度末の資本合計は737,200百万円となり、前連結会計年度末の資本合計776,207百万円と比べ、39,007百万円減少しました。これは主に、当連結会計年度における親会社の所有者に帰属する当期損失を31,888百万円計上したこと等により利益剰余金が10,965百万円減少したことによるものです。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ488,315百万円増加し、1,478,557百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況及び主な変動要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、318,320百万円の資金流入(前連結会計年度は145,615百万円の資金流入)となりました。これは主に、カード事業の貸付金の増加による資金流出が364,138百万円、証券事業の金融資産の増加による資金流出が186,289百万円となった一方で、銀行事業の預金の増加による資金流入が805,850百万円となったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、286,290百万円の資金流出(前連結会計年度は67,569百万円の資金流出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による資金流出が108,065百万円、無形資産の取得による資金流出が99,173百万円、銀行事業の有価証券の取得及び売却等によるネットの資金流出が67,187百万円(有価証券の取得による資金流出が383,885百万円、売却及び償還による資金流入が316,698百万円)となったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、458,340百万円の資金流入(前連結会計年度は208,418百万円の資金流入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による資金流出が324,166百万円となった一方で、長期借入れによる資金流入が490,805百万円、社債の発行による資金流入が215,516百万円、短期借入金の増加による資金流入が107,701百万円となったことによるものです。
④ 収益の認識及び表示方法
収益の認識及び表示方法については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 28.売上収益 (1)収益の分解」に記載のとおりです。
⑤ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、それらが利用される将来の課税所得を稼得する可能性が高い範囲内で、全ての将来減算一時差異及び全ての未使用の繰越欠損金及び税額控除について認識しています。当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価にあたり行っている見積りは合理的であり、繰延税金資産が回収可能な額として計上されていると判断しています。ただし、これらの見積りは当社グループとしても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化などにより回収可能性の評価に関する見積りが変化した場合には、将来当社グループが繰延税金資産を減額する可能性もあります。
⑥ 公正価値で測定する金融資産
公正価値で測定する金融資産については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 40.金融商品の公正価値」に記載のとおりです。
(3) 資産の財源及び資金の流動性
① 財務運営の基本方針
当社は、グループ全体における持続的成長の実現を可能とするための資金ニーズに対し、安定的かつ多様な資金調達手段の確保を行うこと、また、金融事業に従事する子会社の財務健全性を堅持するため、十分な流動性の確保を図ることを、財務運営の基本方針としています。具体的な資金調達手法および資金調達のタイミングに関しては、グループ全体の事業計画に基づくキャッシュ・フロー、手元流動性の状況などを踏まえて判断しています。
資金調達に関するリスクは、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
② 現状
当社は、総額1,727,096百万円の社債及び借入金を有しており、前連結会計年度比492,953百万円増となりました。このうち、短期の社債及び借入金は対前連結会計年度比127,838百万円増の403,255百万円で、内訳は、短期借入金(主として銀行借入金)218,755百万円、コマーシャル・ペーパー184,500百万円となっています。
なお、当連結会計年度末時点の当社の長期及び短期の信用格付けは、日本格付研究所(JCR)でA/J-1、格付投資情報センター(R&I)でA-/a-1、S&Pグローバル・レーティングでBBB-(長期)となっています。
③ 今後の資金調達のニーズ及び資金調達の見通し
当社連結子会社の楽天モバイル株式会社は、総務大臣より、2018年4月に第4世代移動通信システム(4G)の普及のための特定基地局開設計画の認定を、2019年4月に第5世代移動通信システム(5G)の導入のための特定基地局開設計画の認定を受けました。本開設計画の認定に伴い、当該計画に則った準備を推進し、移動体通信事業者(MNO)として、2019年10月には、音声・データ通信サービスを無償でご利用いただける「無料サポータープログラム」を約5,000名を対象に開始しました。今後、2020年4月に第4世代移動通信システム(4G)サービスの本格的な開始を、同年6月に第5世代移動通信システム(5G)サービスの開始をする予定です。認定された移動体通信事業における設備投資額は2026年までに最大800,000百万円程度の見通しとしており、当社から楽天モバイル株式会社への出資、楽天モバイル株式会社における、リース、流動化ファイナンス等を活用して調達する予定です。左記の出資については、当社が2018年12月に発行した利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)により調達した182,000百万円を充当しています。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりです。
(5) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と、日本基準により作成した連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりです。
当連結会計年度(自 2019年1月1日 至 2019年12月31日)
① 売上収益
当社グループが顧客による継続的なアクセスやショッピングを促す目的等で展開するポイントプログラムにおけるポイントに関する将来の負担について、日本基準では、ポイント引当金繰入額として販売費及び一般管理費に計上していますが、IFRSでは、そのうち、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」に従って会計処理される、顧客に支払われる対価に該当するポイントは、付与時に売上収益から控除しています。この影響により、IFRSの売上収益は日本基準に比べ約91,652百万円減少しています。
当社グループにおける書籍等の販売等について、日本基準では売上高を計上し、関連する売上原価を総額表示していますが、IFRSでは、対象となる取引が、IFRS第15号に従って会計処理される、当社グループが他の第三者の代理人の立場で行われる取引に該当するものと判断されるため、売上収益を純額表示しています。この影響により、IFRSの売上収益は日本基準に比べ約66,322百万円減少しています。
② 営業利益
のれんは、日本基準では一定の期間に亘って規則的に償却されますが、IFRSでは償却されず、減損テストの実施が求められています。この影響により、IFRSの営業利益は日本基準に比べ約20,314百万円増加しています。
貸倒引当金は、日本基準では貸倒実績率等合理的な基準により算定された貸倒見積高に基づき計上されますが、IFRSでは計上額算定にあたり予想信用損失モデルが適用されます。この影響により、IFRSの営業利益は日本基準に比べ約1,276百万円減少しています。
当社グループは、経営者が意思決定する際に使用する社内指標(以下、Non-GAAP指標)及びIFRSに基づく指標の双方によって、連結経営成績を開示しています。
Non-GAAP営業利益は、IFRSに基づく営業利益(以下、IFRS営業利益)から、当社グループが定める非経常的な項目やその他の調整項目を控除したものです。経営者は、Non-GAAP指標を開示することで、ステークホルダーにとって同業他社比較や過年度比較が容易になり、当社グループの恒常的な経営成績や将来見通しを理解する上で有益な情報を提供できると判断しています。なお、非経常的な項目とは、将来見通し作成の観点から一定のルールに基づき除外すべきと当社グループが判断する一過性の利益や損失のことです。その他の調整項目とは、適用する会計基準等により差異が生じ易く企業間の比較可能性が低い、株式報酬費用や子会社取得時に認識した無形資産の償却費等を指します。
(注) Non-GAAP指標の開示に際しては、米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission)が定める基準を参照していますが、同基準に完全に準拠しているものではありません。
① 当期の経営成績(Non-GAAPベース)
当連結会計年度における世界経済は、全体としては緩やかに回復しているものの、先行きについては、通商問題の動向、中東地域を巡る情勢、金融資本市場の変動の影響等について留意する必要があります。日本経済は、雇用・所得環境の改善が続く中で、企業の設備投資や個人消費の増加を受け、緩やかに回復しています。
総務省が発表した情報通信白書(注) によると、インターネットをはじめとする情報通信技術(ICT)の発展・普及がもたらした新しい経済、そして社会の姿は「デジタル経済」と呼ばれるようになってきており、我が国は、その進化の先にある社会として、IoT、AI等の革新的技術によって実現する、現在の情報社会の次の段階に位置付けられる「Society 5.0」を展望しているとされています。
このような環境下、当社グループは、メンバーシップ、データ及びブランドを結集したビジネスの展開、AI等を積極的に活用したサービスの開発・展開を進めています。通信サービスにおいては、2020年4月に予定する第4世代移動通信システム(4G)本格サービス開始に向け、基地局の開設等を進めるとともに、同年6月に予定する第5世代移動通信システム(5G)サービス開始に向け、実証実験等を実施しています。
インターネットサービスの主力サービスである国内ECにおいては、流通総額及び売上収益の更なる成長を目指し、ロイヤルカスタマーの醸成や新規顧客の獲得のための販促活動、クロスユースの促進に加え、「楽天エコシステム」のオープン化戦略、自社物流網の整備・強化等に注力しました。海外インターネットサービスにおいては、各サービスの「Rakuten」ブランドへの統合を進め、積極的な販促活動を通じて、海外におけるブランド認知度の向上及び事業の拡大を進めました。投資事業においては、ライドシェアビジネスに係る株式投資の株式評価益等を計上した結果、当連結会計年度の株式評価益は75,120百万円となりました。
フィンテックにおいては、『楽天カード』会員基盤の拡大に伴うショッピング取扱高やリボ残高が伸長し、売上収益及び利益の増加に貢献したほか、銀行サービスにおいては、ローン残高の伸長に伴う貸出金利息収益の増加や事務の効率化等により、マイナス金利政策の環境下にもかかわらず、売上収益及び利益拡大が続いています。証券サービスにおいては、国内株式市場の伸び悩みを背景とした手数料収入の減少等により減収減益となりました。
モバイルにおいては、世界初となるエンドツーエンドの完全仮想化クラウドネイティブネットワークを提供する携帯キャリア事業として、2020年4月に予定するサービス開始に向け、基地局の開設等を進めるとともに、2019年10月より、音声・データ通信サービスを無償でご利用いただける「無料サポータープログラム」を、約5,000名を対象に開始しました。これに伴い、当第4四半期連結会計期間より有形固定資産の減価償却費、他社回線ローミングエリアにおける回線使用料等が発生しています。「無料サポータープログラム」については、2020年1月に最大20,000人の追加募集を行い、ネットワークサービスエリアでの利用を通じて、安定性の検証を含めた品質の向上に努めています。また、仮想移動体通信事業者(MVNO)サービス『楽天モバイル』、メッセージング及びVoIPサービス『Rakuten Viber』においても、会員基盤の拡大に伴い、売上収益が大幅に増加しています。
この結果、当社グループの当連結会計年度における売上収益は1,263,932百万円(前連結会計年度比14.7%増)、Non-GAAP営業利益は95,129百万円(前連結会計年度比41.0%減)となりました。
(注)総務省「令和元年版 情報通信白書」
(Non-GAAPベース)
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 | ||
(自2018年1月1日 至2018年12月31日) | (自2019年1月1日 至2019年12月31日) | ||||
売上収益 | 1,101,480 | 1,263,932 | 162,452 | 14.7 | % |
Non-GAAP営業利益 | 161,130 | 95,129 | △66,001 | △41.0 | % |
② Non-GAAP営業利益からIFRS営業利益への調整
当連結会計年度において、Non-GAAP営業利益にて控除される無形資産の償却費は8,764百万円、株式報酬費用は10,137百万円となりました。また、米国地域において固定資産の減損損失など3,483百万円を非経常的な項目として計上しました。なお、前連結会計年度は、株式会社オーネットの全株式譲渡等により28,110百万円を非経常的な項目として計上しています。
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | |
(自2018年1月1日 至2018年12月31日) | (自2019年1月1日 至2019年12月31日) | ||
Non-GAAP営業利益 | 161,130 | 95,129 | △66,001 |
無形資産償却費 | △10,982 | △8,764 | 2,218 |
株式報酬費用 | △7,833 | △10,137 | △2,304 |
非経常的な項目(△は損失) | 28,110 | △3,483 | △31,593 |
IFRS営業利益 | 170,425 | 72,745 | △97,680 |
③ 当期の経営成績(IFRSベース)
当連結会計年度における売上収益は1,263,932百万円(前連結会計年度比14.7%増)、営業利益は72,745百万円(前連結会計年度比57.3%減)、当期損失(親会社の所有者帰属)は31,888百万円(前連結会計年度は142,282百万円の当期利益)となりました。
(IFRSベース)
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 | ||
(自2018年1月1日 至2018年12月31日) | (自2019年1月1日 至2019年12月31日) | ||||
売上収益 | 1,101,480 | 1,263,932 | 162,452 | 14.7 | % |
IFRS営業利益 | 170,425 | 72,745 | △97,680 | △57.3 | % |
当期利益又は損失(△) (親会社の所有者帰属) | 142,282 | △31,888 | △174,170 | - | % |
④ セグメントの概況
2019年3月28日開催の取締役会において、2019年4月1日付の会社分割による当社グループ企業の組織再編に伴う内部報告管理体制の変更を決議しており、第1四半期連結会計期間から、従来の報告セグメントである「インターネットサービス」セグメント、「FinTech」セグメントに加え、新たに「モバイル」セグメントを設け、「インターネットサービス」、「フィンテック」及び「モバイル」を3つの報告セグメントとしています。「モバイル」セグメントは、通信及びメッセージングサービスの提供等を行う事業により構成されています。各セグメントにおける業績は次のとおりです。なお、IFRS上のマネジメントアプローチの観点から、セグメント損益をNon-GAAP営業損益ベースで表示しています。
第2四半期連結会計期間より、研究開発を行う機能子会社等におけるセグメント構成の変更及び本社管理部門における共通費の配賦方法を変更し、遡及適用しています。この変更に伴い、遡及適用前と比較して前連結会計年度のインターネットサービスセグメントにおける売上収益が7,045百万円減少、セグメント損益が2,121百万円減少、フィンテックセグメントにおける売上収益が1,114百万円減少、セグメント損益が10,515百万円減少、モバイルセグメントにおけるセグメント損益が1,004百万円減少しています。なお、連結上の売上収益、Non-GAAP営業利益、営業利益に与える影響はありません。
(インターネットサービス)
主力サービスである国内ECにおいては、流通総額及び売上収益の更なる成長を目指し、ロイヤルカスタマーの醸成や新規顧客の獲得のための販促活動、クロスユースの促進に加え、楽天エコシステムのオープン化戦略等に注力しました。また、包括的な物流サービスを提供する「ワンデリバリー」構想のもと、自社物流施設への楽天市場出店店舗商品の受入れ拡大やラストワンマイルにおける自社配送エリアの拡大等、自社物流網の整備・強化に努め、配送業者による物量制限、配送料金値上げによる影響の中長期的な緩和を図るとともに、顧客と楽天サービス出店者双方の利便性向上に注力しています。
海外インターネットサービスにおいては、各サービスの「Rakuten」ブランドへの統合を進め、積極的な販促活動を通じて、海外におけるブランド認知度の向上及び事業の拡大を進めました。
投資事業においては、ライドシェアビジネスに係る株式投資の株式評価益等を計上した結果、当連結会計年度の株式評価益は75,120百万円となりました。
この結果、インターネットサービスセグメントにおける売上収益は792,512百万円(前連結会計年度比17.1%増)、セグメント利益は90,738百万円(前連結会計年度比15.8%減)となりました。
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 | ||
(自2018年1月1日 至2018年12月31日) | (自2019年1月1日 至2019年12月31日) | ||||
セグメントに係る 売上収益 | 676,677 | 792,512 | 115,835 | 17.1 | % |
セグメント損益 | 107,707 | 90,738 | △16,969 | △15.8 | % |
(フィンテック)
クレジットカード関連サービスにおいては、『楽天カード』会員基盤の拡大に伴うショッピング取扱高やリボ残高が伸長し、売上収益及び利益の増加に貢献したほか、銀行サービスにおいては、ローン残高の伸長に伴う貸出金利息収益等の増加や事務の効率化等により、マイナス金利政策の環境下にもかかわらず、売上収益及び利益拡大が続いています。
保険サービスにおいては、金融商品の運用による有価証券売却益を計上したことや、前連結会計年度において、西日本豪雨をはじめとする災害への保険金支払いが大きく発生したこと等の反動により、当連結会計年度においては増収増益となりました。
証券サービスにおいては、国内株式市場の伸び悩みを背景とした手数料収入の減少等により減収減益となりました。
この結果、フィンテックセグメントにおける売上収益は486,372百万円(前連結会計年度比14.6%増)、セグメント利益は69,306百万円(前連結会計年度比2.1%増)となりました。
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 | ||
(自2018年1月1日 至2018年12月31日) | (自2019年1月1日 至2019年12月31日) | ||||
セグメントに係る 売上収益 | 424,488 | 486,372 | 61,884 | 14.6 | % |
セグメント損益 | 67,903 | 69,306 | 1,403 | 2.1 | % |
(モバイル)
モバイルにおいては、世界初となるエンドツーエンドの完全仮想化クラウドネイティブネットワークを提供する携帯キャリア事業として、2020年4月に予定するサービス開始に向け、基地局の開設等を進めるとともに、2019年10月より、音声・データ通信サービスを無償でご利用いただける「無料サポータープログラム」を、約5,000名を対象に開始しました。これに伴い、当第4四半期連結会計期間より有形固定資産の減価償却費、他社回線ローミングエリアにおける回線使用料等が発生しています。「無料サポータープログラム」については、2020年1月に最大20,000人の追加募集を行い、ネットワークサービスエリアでの利用を通じて、安定性の検証を含めた品質の向上に努めています。
また、仮想移動体通信事業者(MVNO)サービス『楽天モバイル』、メッセージング及びVoIPサービス『Rakuten Viber』においても、会員基盤の拡大に伴い、売上収益が大幅に増加しています。
この結果、モバイルセグメントにおける売上収益は119,808百万円(前連結会計年度比33.3%増)、セグメント損失は60,051百万円(前連結会計年度は13,672百万円の損失)となりました。
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 | ||
(自2018年1月1日 至2018年12月31日) | (自2019年1月1日 至2019年12月31日) | ||||
セグメントに係る 売上収益 | 89,863 | 119,808 | 29,945 | 33.3 | % |
セグメント損益 | △13,672 | △60,051 | △46,379 | - | % |
⑤ 生産、受注及び販売の状況
(生産実績)
当社グループは、インターネット上での各種サービスの提供を主たる事業としており、生産に該当する事項が無いため、生産実績に関する記載はしていません。
(受注実績)
当社グループは、受注生産を行っていませんので、受注実績に関する記載はしていません。
(販売実績)
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前年同期比(%) |
インターネットサービス | 792,512 | 17.1 |
フィンテック | 486,372 | 14.6 |
モバイル | 119,808 | 33.3 |
内部取引等 | △134,760 | - |
合 計 | 1,263,932 | 14.7 |
(注) 上記金額には、消費税等は含まれていません。
(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 経営成績の分析
(売上収益)
当連結会計年度における売上収益は1,263,932百万円となり、前連結会計年度の1,101,480百万円から162,452百万円(14.7%)増加しました。これは、インターネットサービスにおける、『楽天市場』に代表される国内既存事業の成長が売上収益に貢献したこと、フィンテックにおける、『楽天カード』の会員基盤拡大に伴う手数料収入の増加、銀行サービスのローン残高伸長に伴う貸出金利息収益の増化、キャッシュレス決済事業の取扱高の増加が売上収益に貢献したこと、モバイルにおける、仮想移動体通信事業者(MVNO)サービス『楽天モバイル』、メッセージング及びVoIPサービス『Rakuten Viber』の会員基盤の拡大が売上収益に貢献したこと等によるものです。
(営業費用)
当連結会計年度における営業費用は1,266,902百万円となり、前連結会計年度の1,027,753百万円から239,149百万円(23.3%)増加しました。これは、売上収益の更なる成長を目指した販促活動及び物流拠点の設備・強化に伴う費用が増加したこと、モバイル事業における基地局建設に関わる費用が増加したこと等によるものです。
(その他の収益)
当連結会計年度におけるその他の収益は86,901百万円となり、前連結会計年度の120,634百万円から33,733百万円(28.0%)減少しました。これは、前連結会計年度に計上した連結子会社の売却に伴う利益や、負ののれんの償却益が減少したこと等によるものです。
(その他の費用)
当連結会計年度におけるその他の費用は11,186百万円となり、前連結会計年度の23,936百万円から12,750百万円(53.3%)減少しました。これは、前連結会計年度に計上した子会社の清算に伴う損失や為替差損が減少したこと等によるものです。
(営業利益)
当連結会計年度における営業利益は72,745百万円となり、前連結会計年度の170,425百万円から97,680百万円(57.3%)減少しました。これは、インターネットサービスやフィンテックにおいて、事業が堅調に推移し売上収益は増加したものの、さらなる事業成長を実現するために、販促活動や物流拠点の整備に伴う費用やモバイルにおける基地局建設に関わる費用を計上し、営業費用が増加したことによるものです。
(持分法による投資損益)
持分法による投資損失は、前期比110,094百万円増加し、111,918百万円となりました。主に、Lyft,Inc.の減損損失102,873百万円を、持分法による投資損失に計上したことによるものです。
(税引前当期利益)
当連結会計年度は44,558百万円の税引前当期損失となりました(前連結会計年度は、165,423百万円の税引前当期利益)。これは、営業利益で説明した要因等により利益が減少したことに加え、営業利益を上回る持分法による投資損失を計上したことによるものです。
(法人所得税費用)
当連結会計年度における法人所得税費用は11,490百万円のマイナスとなりました(前連結会計年度は23,534百万円の費用)。これは主に、当連結会計年度において税引前当期損失を計上したことによるものです。
(当期損失)
以上の結果、当期損失は33,068百万円となり、前連結会計年度における141,889百万円の当期利益から174,957百万円減少しました。
(親会社の所有者に帰属する当期損失)
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期損失は31,888百万円となり、前連結会計年度における142,282百万円の当期利益から174,170百万円減少しました。
② 財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は9,165,697百万円となり、前連結会計年度末の資産合計7,345,002百万円と比べ、1,820,695百万円増加しました。これは主に、現金及び現金同等物が488,315百万円増加、カード事業の貸付金が364,186百万円増加、IFRS第16号「リース」の適用及び新規リース契約締結に伴う使用権資産の増加等により有形固定資産が285,089百万円増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は8,428,497百万円となり、前連結会計年度末の負債合計6,568,795百万円と比べ、1,859,702百万円増加しました。これは主に、楽天銀行株式会社における普通預金口座の増加等により銀行事業の預金が805,634百万円増加、社債及び借入金が492,953百万円増加、IFRS第16号「リース」の適用及び新規リース契約締結に伴うリース債務の増加等により、その他の金融負債が375,909百万円増加したことによるものです。
(資本)
当連結会計年度末の資本合計は737,200百万円となり、前連結会計年度末の資本合計776,207百万円と比べ、39,007百万円減少しました。これは主に、当連結会計年度における親会社の所有者に帰属する当期損失を31,888百万円計上したこと等により利益剰余金が10,965百万円減少したことによるものです。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ488,315百万円増加し、1,478,557百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況及び主な変動要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、318,320百万円の資金流入(前連結会計年度は145,615百万円の資金流入)となりました。これは主に、カード事業の貸付金の増加による資金流出が364,138百万円、証券事業の金融資産の増加による資金流出が186,289百万円となった一方で、銀行事業の預金の増加による資金流入が805,850百万円となったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、286,290百万円の資金流出(前連結会計年度は67,569百万円の資金流出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による資金流出が108,065百万円、無形資産の取得による資金流出が99,173百万円、銀行事業の有価証券の取得及び売却等によるネットの資金流出が67,187百万円(有価証券の取得による資金流出が383,885百万円、売却及び償還による資金流入が316,698百万円)となったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、458,340百万円の資金流入(前連結会計年度は208,418百万円の資金流入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による資金流出が324,166百万円となった一方で、長期借入れによる資金流入が490,805百万円、社債の発行による資金流入が215,516百万円、短期借入金の増加による資金流入が107,701百万円となったことによるものです。
④ 収益の認識及び表示方法
収益の認識及び表示方法については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 28.売上収益 (1)収益の分解」に記載のとおりです。
⑤ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、それらが利用される将来の課税所得を稼得する可能性が高い範囲内で、全ての将来減算一時差異及び全ての未使用の繰越欠損金及び税額控除について認識しています。当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価にあたり行っている見積りは合理的であり、繰延税金資産が回収可能な額として計上されていると判断しています。ただし、これらの見積りは当社グループとしても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化などにより回収可能性の評価に関する見積りが変化した場合には、将来当社グループが繰延税金資産を減額する可能性もあります。
⑥ 公正価値で測定する金融資産
公正価値で測定する金融資産については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 40.金融商品の公正価値」に記載のとおりです。
(3) 資産の財源及び資金の流動性
① 財務運営の基本方針
当社は、グループ全体における持続的成長の実現を可能とするための資金ニーズに対し、安定的かつ多様な資金調達手段の確保を行うこと、また、金融事業に従事する子会社の財務健全性を堅持するため、十分な流動性の確保を図ることを、財務運営の基本方針としています。具体的な資金調達手法および資金調達のタイミングに関しては、グループ全体の事業計画に基づくキャッシュ・フロー、手元流動性の状況などを踏まえて判断しています。
資金調達に関するリスクは、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
② 現状
当社は、総額1,727,096百万円の社債及び借入金を有しており、前連結会計年度比492,953百万円増となりました。このうち、短期の社債及び借入金は対前連結会計年度比127,838百万円増の403,255百万円で、内訳は、短期借入金(主として銀行借入金)218,755百万円、コマーシャル・ペーパー184,500百万円となっています。
なお、当連結会計年度末時点の当社の長期及び短期の信用格付けは、日本格付研究所(JCR)でA/J-1、格付投資情報センター(R&I)でA-/a-1、S&Pグローバル・レーティングでBBB-(長期)となっています。
③ 今後の資金調達のニーズ及び資金調達の見通し
当社連結子会社の楽天モバイル株式会社は、総務大臣より、2018年4月に第4世代移動通信システム(4G)の普及のための特定基地局開設計画の認定を、2019年4月に第5世代移動通信システム(5G)の導入のための特定基地局開設計画の認定を受けました。本開設計画の認定に伴い、当該計画に則った準備を推進し、移動体通信事業者(MNO)として、2019年10月には、音声・データ通信サービスを無償でご利用いただける「無料サポータープログラム」を約5,000名を対象に開始しました。今後、2020年4月に第4世代移動通信システム(4G)サービスの本格的な開始を、同年6月に第5世代移動通信システム(5G)サービスの開始をする予定です。認定された移動体通信事業における設備投資額は2026年までに最大800,000百万円程度の見通しとしており、当社から楽天モバイル株式会社への出資、楽天モバイル株式会社における、リース、流動化ファイナンス等を活用して調達する予定です。左記の出資については、当社が2018年12月に発行した利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)により調達した182,000百万円を充当しています。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりです。
(5) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と、日本基準により作成した連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりです。
当連結会計年度(自 2019年1月1日 至 2019年12月31日)
① 売上収益
当社グループが顧客による継続的なアクセスやショッピングを促す目的等で展開するポイントプログラムにおけるポイントに関する将来の負担について、日本基準では、ポイント引当金繰入額として販売費及び一般管理費に計上していますが、IFRSでは、そのうち、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」に従って会計処理される、顧客に支払われる対価に該当するポイントは、付与時に売上収益から控除しています。この影響により、IFRSの売上収益は日本基準に比べ約91,652百万円減少しています。
当社グループにおける書籍等の販売等について、日本基準では売上高を計上し、関連する売上原価を総額表示していますが、IFRSでは、対象となる取引が、IFRS第15号に従って会計処理される、当社グループが他の第三者の代理人の立場で行われる取引に該当するものと判断されるため、売上収益を純額表示しています。この影響により、IFRSの売上収益は日本基準に比べ約66,322百万円減少しています。
② 営業利益
のれんは、日本基準では一定の期間に亘って規則的に償却されますが、IFRSでは償却されず、減損テストの実施が求められています。この影響により、IFRSの営業利益は日本基準に比べ約20,314百万円増加しています。
貸倒引当金は、日本基準では貸倒実績率等合理的な基準により算定された貸倒見積高に基づき計上されますが、IFRSでは計上額算定にあたり予想信用損失モデルが適用されます。この影響により、IFRSの営業利益は日本基準に比べ約1,276百万円減少しています。