有価証券報告書-第24期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)
(1) 経営成績等の状況
当社グループは、経営者が意思決定する際に使用する社内指標(以下、Non-GAAP指標)及びIFRSに基づく指標の双方によって、連結経営成績を開示しています。
Non-GAAP営業利益は、IFRSに基づく営業利益(以下、IFRS営業利益)から、当社グループが定める非経常的な項目やその他の調整項目を控除したものです。経営者は、Non-GAAP指標を開示することで、ステークホルダーにとって同業他社比較や過年度比較が容易になり、当社グループの恒常的な経営成績や将来見通しを理解する上で有益な情報を提供できると判断しています。なお、非経常的な項目とは、将来見通し作成の観点から一定のルールに基づき除外すべきと当社グループが判断する一過性の利益や損失のことです。その他の調整項目とは、適用する会計基準等により差異が生じ易く企業間の比較可能性が低い、株式報酬費用や子会社取得時に認識した無形資産の償却費等を指します。
(注) Non-GAAP指標の開示に際しては、米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission)が定める基準を参照していますが、同基準に完全に準拠しているものではありません。
① 当期の経営成績(Non-GAAPベース)
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるものの、持ち直しの動きがみられています。日本経済においても、各種政策等の効果により、世界経済と同様の動きが続くことが期待されています。一方で、国内外の感染症の動向や金融資本市場の変動等の影響には引き続き注意が必要です。こうした中、厚生労働省は通販や電子決済の活用を含む、感染症拡大防止のための「新しい生活様式」の実践を求めており、人との接触機会を減らしながら、商品を購入、サービスを享受することができるインターネットサービスや、オンライン金融サービス等を提供するIT企業に期待される社会的役割は一層増していると当社は考えています。
このような環境下、当社グループは、国内外70以上の多様なサービスにより構成される楽天エコシステムを活用した事業経営により、感染症の影響による事業リスクの分散を図るとともに、引き続き、メンバーシップ、データ及びブランドを結集したビジネスの展開、AI等を積極的に活用したサービスの開発・展開を進めました。
インターネットサービスにおいては、インターネット・ショッピングモール『楽天市場』における送料無料ラインの統一施策の奏功や新型コロナウイルス感染症の流行に伴ういわゆる「巣ごもり消費」等の影響を受け、『楽天市場』の年間流通総額が初めて3兆円を超える等、国内EC取扱高が大幅に伸長しました。フィンテックにおいては、『楽天カード』のカードショッピング取扱高が2020年度通期で11兆円を超えたほか、各サービスにおける顧客基盤の拡大が続いています。また、モバイルにおいては、自社回線エリアの拡大や各種マーケティング施策が奏功し、2020年12月には、累計契約申し込み数が200万回線を突破しました。
この結果、当社グループの当連結会計年度における売上収益は1,455,538百万円(前連結会計年度比15.2%増)となりましたが、モバイルにおける自社基地局設置等の先行投資が継続中のため、Non-GAAP営業損失は102,667百万円(前連結会計年度は95,129百万円のNon-GAAP営業利益)となりました。
(Non-GAAPベース)
(単位:百万円)
② Non-GAAP営業利益からIFRS営業利益への調整
当連結会計年度において、Non-GAAP営業利益にて控除される無形資産の償却費は9,502百万円、株式報酬費用は10,612百万円となりました。また、OverDrive Holdings, Inc.の全株式を譲渡したことに伴い発生した売却益40,926百万円、映画事業に係る投資の損失3,277百万円、一部の米国事業の閉鎖に伴う固定資産の減損等を非経常的な項目として計上しました。なお、前連結会計年度は、米国地域における固定資産の減損損失等3,483百万円を非経常的な項目として計上しています。
(単位:百万円)
③ 当期の経営成績(IFRSベース)
当連結会計年度における売上収益は1,455,538百万円(前連結会計年度比15.2%増)、IFRS営業損失は93,849百万円(前連結会計年度は72,745百万円のIFRS営業利益)、当期損失(親会社の所有者帰属)は114,199百万円(前連結会計年度は31,888百万円の損失)となりました。
(IFRSベース)
(単位:百万円)
④ セグメントの概況
各セグメントにおける業績は次のとおりです。IFRS上のマネジメントアプローチの観点から、セグメント損益をNon-GAAP営業損益ベースで表示しています。
デジタルコンテンツサービスとモバイルサービスの連携を強化しシナジー効果を高めることを目的に、当連結会計年度より、一部の事業及び子会社をセグメント間で移管しています。主な変更として、従来インターネットサービスセグメントに含まれていたRakuten Kobo Inc.等デジタルコンテンツサイト等の運営を行う事業等をモバイルセグメントに移管しています。これらの変更に伴い、前連結会計年度のセグメント情報を修正再表示しています。
(インターネットサービス)
主力サービスである国内ECにおいては、流通総額及び売上収益の更なる成長を目指し、ロイヤルカスタマーの醸成や新規顧客の獲得のための販促活動、クロスユースの促進に加え、楽天エコシステムのオープン化戦略等に注力しました。また、包括的な物流サービスを提供する「ワンデリバリー」構想のもと、自社物流施設への楽天市場出店店舗商品の受入れ拡大やラストワンマイルにおける自社配送エリアの拡大等、自社物流網の整備・強化に努め、配送業者による物量制限、配送料金値上げによる影響の中長期的な緩和を図るとともに、送料無料ラインの統一施策の導入により、顧客と楽天サービス出店者双方の利便性向上に注力しています。インターネット・ショッピングモール『楽天市場』や医療品・日用品等の通信販売等を行う『Rakuten 24』等においては、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための外出自粛をきっかけとした「巣ごもり消費」の拡大に伴うオンラインショッピング需要の高まりにより、取扱高に押し上げの効果が見られました。また、インターネット旅行予約サービスの『楽天トラベル』においては、外出自粛や緊急事態宣言の発令等を受け、予約低迷やキャンセルが相次ぎましたが、2020年7月より政府が実施した「Go To トラベル事業」等の効果もあり、特に第3四半期連結会計期間以降において、売上収益の改善が見られたほか、コスト効率化等の施策により、利益の改善が見られました。一方で、政府は、2020年12月、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大の予防を目的とした、同事業の一時停止を発表しており、これを受け、2020年12月以降の宿泊予約等に押し下げの影響が見られました。スポーツサービスにおいても、プロ野球公式戦、サッカーリーグ戦の入場者数制限を受け、売上収益が減少したものの、段階的な規制緩和が行われる中で、収益の改善が見られました。
この結果、インターネットサービスセグメントにおける売上収益は820,115百万円(前連結会計年度比10.3%増)、セグメント利益は40,114百万円(前連結会計年度比62.6%減)となりました。
(単位:百万円)
(フィンテック)
クレジットカード関連サービスにおいては、2020年6月に『楽天カード』会員数が2,000万人を突破して以降も会員基盤の拡大が続き、2020年11月には同会員数が2,100万人に到達しました。同サービスにおいては、宿泊・飲食サービス等の消費に依然厳しさがみられるものの、オンラインショッピングを中心に取扱高が伸長し、2020年度通期カードショッピング取扱高は11兆円を超える等、取扱高の伸長が売上収益及び利益の増加に貢献しました。また、銀行サービスにおいても、2020年6月に口座数が900万口座を突破して以降も、新規口座獲得数が堅調に伸長し、役務取引等収益等の増加が売上収益の増加に貢献しました。同様に、証券サービスにおいても、2020年12月に証券総合口座数が500万口座を突破する等、新規口座開設数の大幅な増加が続くと同時に、国内外株式売買代金の伸長に伴う手数料収入等の増加が、売上収益及び利益の増加に貢献しました。
この結果、フィンテックセグメントにおける売上収益は576,195百万円(前連結会計年度比18.5%増)、セグメント利益は81,291百万円(前連結会計年度比17.3%増)となりました。
(単位:百万円)
(モバイル)
モバイルにおいては、2020年4月の本格的なサービスの開始後、9月には5Gのサービスを開始しました。2020年12月に累計契約申し込み数が200万回線を突破して以降も楽天エコシステム内外からの顧客獲得が進んでいます。同サービスにおいては、基地局の開設を加速化させ、自社回線によるサービス提供エリアの拡大を進めるとともに、ネットワークの品質向上等に努めています。電子書籍サービス、ビデオストリーミング等のデジタルコンテンツサービスにおいては、新型コロナウイルス感染症の影響によるオンラインコンテンツサービス需要の拡大等を受け、引き続き顧客基盤の拡大が続いています。
この結果、モバイルセグメントにおける売上収益は227,142百万円(前連結会計年度比34.4%増)となりましたが、モバイルにおける自社基地局設置等の先行投資が継続中のため、セグメント損失は226,976百万円(前連結会計年度は76,524百万円の損失)となりました。
(単位:百万円)
⑤ 生産、受注及び販売の状況
(生産実績)
当社グループは、インターネット上での各種サービスの提供を主たる事業としており、生産に該当する事項が無いため、生産実績に関する記載はしていません。
(受注実績)
当社グループは、受注生産を行っていませんので、受注実績に関する記載はしていません。
(販売実績)
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 上記金額には、消費税等は含まれていません。
(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 経営成績の分析
(売上収益)
当連結会計年度における売上収益は1,455,538百万円となり、前連結会計年度の1,263,932百万円から191,606百万円(15.2%)増加しました。これは、インターネットサービスにおける、『楽天市場』に代表される国内既存事業の成長が売上収益に貢献したこと、フィンテックにおける、『楽天カード』の会員基盤拡大に伴う手数料収入等の増加、銀行サービスの顧客基盤拡大に伴う役務取引等収益等の増加、証券サービス国内株式売買代金、FX売買高の伸長に伴う、手数料収入等の増加が売上収益に貢献したこと等によるものです。
(営業費用)
当連結会計年度における営業費用は1,579,630百万円となり、前連結会計年度の1,266,902百万円から312,728百万円(24.7%)増加しました。これは、売上収益の更なる成長を目指した販促活動及び物流拠点の設備・強化に伴う費用が増加したこと、モバイルにおける基地局建設に関わる費用が増加したこと等によるものです。
(その他の収益)
当連結会計年度におけるその他の収益は54,483百万円となり、前連結会計年度の86,901百万円から32,418百万円(37.3%)減少しました。これは、前連結会計年度に計上した有価証券評価益が減少したこと等によるものです。
(その他の費用)
当連結会計年度におけるその他の費用は24,240百万円となり、前連結会計年度の11,186百万円から13,054百万円(116.7%)増加しました。これは、映画事業に係る投資の損失を3,277百万円計上したこと等によるものです。
(営業利益又は損失)
当連結会計年度における営業損失は93,849百万円となり、前連結会計年度の営業利益72,745百万円から166,594百万円減少しました。これは、インターネットサービスやフィンテックにおいて、事業が堅調に推移し売上収益は増加したものの、さらなる事業成長を実現するために、販促活動や物流拠点の整備に伴う費用やモバイルにおける基地局建設に関わる費用を計上し、営業費用が増加したこと等によるものです。
(持分法による投資損失)
当連結会計年度における持分法による投資損失は37,710百万円となりました(前連結会計年度は、111,918百万円の損失)。これは、Lyft,Inc.に対する株式投資について、会計上の取り扱い変更に伴う損失を25,017百万円計上したこと等によるものです。
(税引前当期損失)
当連結会計年度は151,016百万円の税引前当期損失となりました(前連結会計年度は、44,558百万円の税引前当期損失)。これは、営業利益又は損失で説明した要因等により利益が減少したことによるものです。
(法人所得税費用)
当連結会計年度における法人所得税費用は35,178百万円のマイナスとなりました(前連結会計年度は11,490百万円のマイナス)。これは主に、当連結会計年度において税引前当期損失を計上したことによるものです。
(当期損失)
以上の結果、当期損失は115,838百万円となりました(前連結会計年度は、33,068百万円の損失)。
(親会社の所有者に帰属する当期損失)
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期損失は114,199百万円となりました(前連結会計年度は、31,888百万円の損失)。
② 財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は12,524,438百万円となり、前連結会計年度末の資産合計9,165,697百万円と比べ、3,358,741百万円増加しました。これは主に、現金及び現金同等物が1,542,749百万円増加、証券事業の金融資産が697,220百万円増加、銀行事業の貸付金が386,520百万円増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は11,895,424百万円となり、前連結会計年度末の負債合計8,428,497百万円と比べ、3,466,927百万円増加しました。これは主に、銀行事業の預金が1,555,414百万円増加、社債及び借入金が760,361百万円増加、証券事業の金融負債が726,582百万円増加したことによるものです。
(資本)
当連結会計年度末の資本合計は629,014百万円となり、前連結会計年度末の資本合計737,200百万円と比べ、108,186百万円減少しました。これは主に、当連結会計年度における親会社の所有者に帰属する当期損失を114,199百万円計上したこと等により利益剰余金が123,154百万円減少したことによるものです。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べ1,542,749百万円増加し、3,021,306百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況及び主な変動要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、1,041,391百万円の資金流入(前連結会計年度は318,320百万円の資金流入)となりました。これは主に、証券事業の金融資産の増加による資金流出が697,382百万円、銀行事業の貸付金の増加による資金流出が386,520百万円となった一方で、銀行事業の預金の増加による資金流入が1,555,229百万円、証券事業の金融負債の増加による資金流入が726,799百万円となったことによるものです
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、303,347百万円の資金流出(前連結会計年度は286,290百万円の資金流出)となりました。これは主に、銀行事業の有価証券の取得及び売却等によるネットの資金流入が6,039百万円(有価証券の取得による資金流出が467,460百万円、売却及び償還による資金流入が473,499百万円)となった一方で、有形固定資産の取得による資金流出が279,278百万円、無形資産の取得による資金流出が105,796百万円となったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、808,108百万円の資金流入(前連結会計年度は458,340百万円の資金流入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による資金流出が324,141百万円となった一方で、長期借入れによる資金流入が424,590百万円、短期借入金の増加による資金流入が411,279百万円、社債の発行による資金流入が148,900百万円となったことによるものです。
④ 収益の認識及び表示方法
収益の認識及び表示方法については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 28. 売上収益 (1)収益の分解」に記載のとおりです。
⑤ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、それらが利用される将来の課税所得を稼得する可能性が高い範囲内で、全ての将来減算一時差異及び全ての未使用の繰越欠損金及び税額控除について認識しています。当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価にあたり行っている見積りは合理的であり、繰延税金資産が回収可能な額として計上されていると判断しています。ただし、これらの見積りは当社グループとしても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化等により回収可能性の評価に関する見積りが変化した場合には、将来当社グループが繰延税金資産を減額する可能性もあります。
⑥ 公正価値で測定する金融資産
公正価値で測定する金融資産については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 40. 金融商品の公正価値」に記載のとおりです。
(3) 資産の財源及び資金の流動性
① 財務運営の基本方針
当社は、グループの持続的成長の実現を可能とするための資金ニーズに対し、安定的かつ多様な資金調達手段の確保を行うこと、また、金融事業に従事する子会社の財務健全性を堅持するため、十分な流動性の確保を図ることを財務運営の基本方針としています。
経営の独立性が求められるフィンテックセグメントに属する子会社及び外部金融機関からのリース調達をしている楽天モバイル株式会社を除く子会社においては、原則として銀行等の外部金融機関からの資金調達を行わず、グループ内のキャッシュ・マネジメント・サービスの活用により、当社が資金調達、グループ資金効率の向上、流動性の確保等を行っています。
また、成長が続くインターネットサービスセグメントにおける増加運転資金等については、営業活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金や、コマーシャル・ペーパー等の短期借入金を充当することを基本方針としています。また、投資フェーズにあるモバイルセグメントでの設備投資資金への資金充当については、下記「③ 今後の資金調達のニーズ及び資金調達の見通し」をご参照ください。
なお、投資等の新規に資金投下を要する案件等については、社外取締役及び外部有識者を含むメンバーで構成される投融資委員会において、案件の取り進めの可否を事前審議しており、その審議結果については、取締役会に報告することに加え、一定額以上の案件につき当社の取締役会の承認決議を要件とすることとしています。更に、投資後のモニタリングを継続的に実施し、必要に応じて機動的にポートフォリオの見直しを実施しています。これらを通じて、グループ全体でのリスク管理及び最適な経営資源の配分を実現することを目標としています。
以上を踏まえた上で、具体的な資金調達手法及び資金調達のタイミングに関しては、グループ全体の事業計画に基づくキャッシュ・フロー、手元流動性の状況等を踏まえて判断しています。
資金調達に関するリスクは、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
② 現状
当社は、総額2,487,457百万円の社債及び借入金を有しており、前連結会計年度比760,361百万円増となりました。このうち、短期の社債及び借入金は前連結会計年度比547,007百万円増の950,262百万円で、内訳は、短期借入金(主として銀行借入金)630,262百万円、コマーシャル・ペーパー320,000百万円となっています。
また、当社は新型コロナウイルス感染症の流行の拡大を踏まえ、資金繰りに万全を期する目的から2020年4月にコマーシャル・ペーパーの発行限度額を従来の100,000百万円から150,000百万円に、同年6月に複数の金融機関との間で締結している借入コミットメントライン契約の総額を従来の80,000百万円から120,000百万円にそれぞれ拡大しました。
なお、当連結会計年度末時点の当社の長期及び短期の信用格付けは、日本格付研究所(JCR)でA/J-1、格付投資情報センター(R&I)でA-/a-1、S&Pグローバル・レーティングでBBB-(長期)となっています。
③ 今後の資金調達のニーズ及び資金調達の見通し
当社連結子会社の楽天モバイル株式会社は、総務大臣より、2018年4月に第4世代移動通信システムの普及のための特定基地局開設計画、2019年4月に第5世代移動通信システムの導入のための特定基地局開設計画の認定をそれぞれ受け、当該計画に則り、2020年4月に4Gサービスを本格的に開始し、同年9月には5Gサービスを開始しました。当該認定された計画における設備投資額は、2026年までに最大800,000百万円程度の見通しとしていましたが、このうちの4Gに係る最大600,000百万円程度の設備投資額については、特定基地局の高密度化による通信品質の向上、今後見込まれる利用者の増加等に対応するため、最大840,000百万円程度まで増加する見通しです。なお、2021年度の設備投資額は約350,000百万円を予定しています。これら必要資金額については、当社から楽天モバイル株式会社への出資、楽天モバイル株式会社における、リース、流動化ファイナンス等を活用して調達する予定です。当該出資については、当社が2018年12月に発行した利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)により調達した182,000百万円及び2020年11月に発行した利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)により調達した120,000百万円等を充当しています。また、2021年3月に取締役会で決議した第三者割当による新株式の発行及び自己株式の処分により調達する242,347百万円について、2021年12月末までにその全額を充当する予定です。なお、今後、4Gサービス等における設備投資の前倒し等により、当社から楽天モバイル株式会社への更なる出資等が求められる可能性もあります。その場合においては、上記の「① 財務運営の基本方針」も踏まえ、最適な資金調達手段を検討していきます。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりです。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3. 重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。
当社グループは、経営者が意思決定する際に使用する社内指標(以下、Non-GAAP指標)及びIFRSに基づく指標の双方によって、連結経営成績を開示しています。
Non-GAAP営業利益は、IFRSに基づく営業利益(以下、IFRS営業利益)から、当社グループが定める非経常的な項目やその他の調整項目を控除したものです。経営者は、Non-GAAP指標を開示することで、ステークホルダーにとって同業他社比較や過年度比較が容易になり、当社グループの恒常的な経営成績や将来見通しを理解する上で有益な情報を提供できると判断しています。なお、非経常的な項目とは、将来見通し作成の観点から一定のルールに基づき除外すべきと当社グループが判断する一過性の利益や損失のことです。その他の調整項目とは、適用する会計基準等により差異が生じ易く企業間の比較可能性が低い、株式報酬費用や子会社取得時に認識した無形資産の償却費等を指します。
(注) Non-GAAP指標の開示に際しては、米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission)が定める基準を参照していますが、同基準に完全に準拠しているものではありません。
① 当期の経営成績(Non-GAAPベース)
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるものの、持ち直しの動きがみられています。日本経済においても、各種政策等の効果により、世界経済と同様の動きが続くことが期待されています。一方で、国内外の感染症の動向や金融資本市場の変動等の影響には引き続き注意が必要です。こうした中、厚生労働省は通販や電子決済の活用を含む、感染症拡大防止のための「新しい生活様式」の実践を求めており、人との接触機会を減らしながら、商品を購入、サービスを享受することができるインターネットサービスや、オンライン金融サービス等を提供するIT企業に期待される社会的役割は一層増していると当社は考えています。
このような環境下、当社グループは、国内外70以上の多様なサービスにより構成される楽天エコシステムを活用した事業経営により、感染症の影響による事業リスクの分散を図るとともに、引き続き、メンバーシップ、データ及びブランドを結集したビジネスの展開、AI等を積極的に活用したサービスの開発・展開を進めました。
インターネットサービスにおいては、インターネット・ショッピングモール『楽天市場』における送料無料ラインの統一施策の奏功や新型コロナウイルス感染症の流行に伴ういわゆる「巣ごもり消費」等の影響を受け、『楽天市場』の年間流通総額が初めて3兆円を超える等、国内EC取扱高が大幅に伸長しました。フィンテックにおいては、『楽天カード』のカードショッピング取扱高が2020年度通期で11兆円を超えたほか、各サービスにおける顧客基盤の拡大が続いています。また、モバイルにおいては、自社回線エリアの拡大や各種マーケティング施策が奏功し、2020年12月には、累計契約申し込み数が200万回線を突破しました。
この結果、当社グループの当連結会計年度における売上収益は1,455,538百万円(前連結会計年度比15.2%増)となりましたが、モバイルにおける自社基地局設置等の先行投資が継続中のため、Non-GAAP営業損失は102,667百万円(前連結会計年度は95,129百万円のNon-GAAP営業利益)となりました。
(Non-GAAPベース)
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 | ||
(自2019年1月1日 至2019年12月31日) | (自2020年1月1日 至2020年12月31日) | ||||
売上収益 | 1,263,932 | 1,455,538 | 191,606 | 15.2 | % |
Non-GAAP営業利益又は損失(△) | 95,129 | △102,667 | △197,796 | - | % |
② Non-GAAP営業利益からIFRS営業利益への調整
当連結会計年度において、Non-GAAP営業利益にて控除される無形資産の償却費は9,502百万円、株式報酬費用は10,612百万円となりました。また、OverDrive Holdings, Inc.の全株式を譲渡したことに伴い発生した売却益40,926百万円、映画事業に係る投資の損失3,277百万円、一部の米国事業の閉鎖に伴う固定資産の減損等を非経常的な項目として計上しました。なお、前連結会計年度は、米国地域における固定資産の減損損失等3,483百万円を非経常的な項目として計上しています。
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | |
(自2019年1月1日 至2019年12月31日) | (自2020年1月1日 至2020年12月31日) | ||
Non-GAAP営業利益又は損失(△) | 95,129 | △102,667 | △197,796 |
無形資産償却費 | △8,764 | △9,502 | △738 |
株式報酬費用 | △10,137 | △10,612 | △475 |
非経常的な項目(△は損失) | △3,483 | 28,932 | 32,415 |
IFRS営業利益又は損失(△) | 72,745 | △93,849 | △166,594 |
③ 当期の経営成績(IFRSベース)
当連結会計年度における売上収益は1,455,538百万円(前連結会計年度比15.2%増)、IFRS営業損失は93,849百万円(前連結会計年度は72,745百万円のIFRS営業利益)、当期損失(親会社の所有者帰属)は114,199百万円(前連結会計年度は31,888百万円の損失)となりました。
(IFRSベース)
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 | ||
(自2019年1月1日 至2019年12月31日) | (自2020年1月1日 至2020年12月31日) | ||||
売上収益 | 1,263,932 | 1,455,538 | 191,606 | 15.2 | % |
IFRS営業利益又は損失(△) | 72,745 | △93,849 | △166,594 | - | % |
当期損失(△) (親会社の所有者帰属) | △31,888 | △114,199 | △82,311 | - | % |
④ セグメントの概況
各セグメントにおける業績は次のとおりです。IFRS上のマネジメントアプローチの観点から、セグメント損益をNon-GAAP営業損益ベースで表示しています。
デジタルコンテンツサービスとモバイルサービスの連携を強化しシナジー効果を高めることを目的に、当連結会計年度より、一部の事業及び子会社をセグメント間で移管しています。主な変更として、従来インターネットサービスセグメントに含まれていたRakuten Kobo Inc.等デジタルコンテンツサイト等の運営を行う事業等をモバイルセグメントに移管しています。これらの変更に伴い、前連結会計年度のセグメント情報を修正再表示しています。
(インターネットサービス)
主力サービスである国内ECにおいては、流通総額及び売上収益の更なる成長を目指し、ロイヤルカスタマーの醸成や新規顧客の獲得のための販促活動、クロスユースの促進に加え、楽天エコシステムのオープン化戦略等に注力しました。また、包括的な物流サービスを提供する「ワンデリバリー」構想のもと、自社物流施設への楽天市場出店店舗商品の受入れ拡大やラストワンマイルにおける自社配送エリアの拡大等、自社物流網の整備・強化に努め、配送業者による物量制限、配送料金値上げによる影響の中長期的な緩和を図るとともに、送料無料ラインの統一施策の導入により、顧客と楽天サービス出店者双方の利便性向上に注力しています。インターネット・ショッピングモール『楽天市場』や医療品・日用品等の通信販売等を行う『Rakuten 24』等においては、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための外出自粛をきっかけとした「巣ごもり消費」の拡大に伴うオンラインショッピング需要の高まりにより、取扱高に押し上げの効果が見られました。また、インターネット旅行予約サービスの『楽天トラベル』においては、外出自粛や緊急事態宣言の発令等を受け、予約低迷やキャンセルが相次ぎましたが、2020年7月より政府が実施した「Go To トラベル事業」等の効果もあり、特に第3四半期連結会計期間以降において、売上収益の改善が見られたほか、コスト効率化等の施策により、利益の改善が見られました。一方で、政府は、2020年12月、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大の予防を目的とした、同事業の一時停止を発表しており、これを受け、2020年12月以降の宿泊予約等に押し下げの影響が見られました。スポーツサービスにおいても、プロ野球公式戦、サッカーリーグ戦の入場者数制限を受け、売上収益が減少したものの、段階的な規制緩和が行われる中で、収益の改善が見られました。
この結果、インターネットサービスセグメントにおける売上収益は820,115百万円(前連結会計年度比10.3%増)、セグメント利益は40,114百万円(前連結会計年度比62.6%減)となりました。
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 | ||
(自2019年1月1日 至2019年12月31日) | (自2020年1月1日 至2020年12月31日) | ||||
セグメントに係る 売上収益 | 743,266 | 820,115 | 76,849 | 10.3 | % |
セグメント損益 | 107,211 | 40,114 | △67,097 | △62.6 | % |
(フィンテック)
クレジットカード関連サービスにおいては、2020年6月に『楽天カード』会員数が2,000万人を突破して以降も会員基盤の拡大が続き、2020年11月には同会員数が2,100万人に到達しました。同サービスにおいては、宿泊・飲食サービス等の消費に依然厳しさがみられるものの、オンラインショッピングを中心に取扱高が伸長し、2020年度通期カードショッピング取扱高は11兆円を超える等、取扱高の伸長が売上収益及び利益の増加に貢献しました。また、銀行サービスにおいても、2020年6月に口座数が900万口座を突破して以降も、新規口座獲得数が堅調に伸長し、役務取引等収益等の増加が売上収益の増加に貢献しました。同様に、証券サービスにおいても、2020年12月に証券総合口座数が500万口座を突破する等、新規口座開設数の大幅な増加が続くと同時に、国内外株式売買代金の伸長に伴う手数料収入等の増加が、売上収益及び利益の増加に貢献しました。
この結果、フィンテックセグメントにおける売上収益は576,195百万円(前連結会計年度比18.5%増)、セグメント利益は81,291百万円(前連結会計年度比17.3%増)となりました。
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 | ||
(自2019年1月1日 至2019年12月31日) | (自2020年1月1日 至2020年12月31日) | ||||
セグメントに係る 売上収益 | 486,372 | 576,195 | 89,823 | 18.5 | % |
セグメント損益 | 69,306 | 81,291 | 11,985 | 17.3 | % |
(モバイル)
モバイルにおいては、2020年4月の本格的なサービスの開始後、9月には5Gのサービスを開始しました。2020年12月に累計契約申し込み数が200万回線を突破して以降も楽天エコシステム内外からの顧客獲得が進んでいます。同サービスにおいては、基地局の開設を加速化させ、自社回線によるサービス提供エリアの拡大を進めるとともに、ネットワークの品質向上等に努めています。電子書籍サービス、ビデオストリーミング等のデジタルコンテンツサービスにおいては、新型コロナウイルス感染症の影響によるオンラインコンテンツサービス需要の拡大等を受け、引き続き顧客基盤の拡大が続いています。
この結果、モバイルセグメントにおける売上収益は227,142百万円(前連結会計年度比34.4%増)となりましたが、モバイルにおける自社基地局設置等の先行投資が継続中のため、セグメント損失は226,976百万円(前連結会計年度は76,524百万円の損失)となりました。
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 | ||
(自2019年1月1日 至2019年12月31日) | (自2020年1月1日 至2020年12月31日) | ||||
セグメントに係る 売上収益 | 169,054 | 227,142 | 58,088 | 34.4 | % |
セグメント損益 | △76,524 | △226,976 | △150,452 | - | % |
⑤ 生産、受注及び販売の状況
(生産実績)
当社グループは、インターネット上での各種サービスの提供を主たる事業としており、生産に該当する事項が無いため、生産実績に関する記載はしていません。
(受注実績)
当社グループは、受注生産を行っていませんので、受注実績に関する記載はしていません。
(販売実績)
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前年同期比(%) |
インターネットサービス | 820,115 | 10.3 |
フィンテック | 576,195 | 18.5 |
モバイル | 227,142 | 34.4 |
内部取引等 | △167,914 | - |
合 計 | 1,455,538 | 15.2 |
(注) 上記金額には、消費税等は含まれていません。
(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 経営成績の分析
(売上収益)
当連結会計年度における売上収益は1,455,538百万円となり、前連結会計年度の1,263,932百万円から191,606百万円(15.2%)増加しました。これは、インターネットサービスにおける、『楽天市場』に代表される国内既存事業の成長が売上収益に貢献したこと、フィンテックにおける、『楽天カード』の会員基盤拡大に伴う手数料収入等の増加、銀行サービスの顧客基盤拡大に伴う役務取引等収益等の増加、証券サービス国内株式売買代金、FX売買高の伸長に伴う、手数料収入等の増加が売上収益に貢献したこと等によるものです。
(営業費用)
当連結会計年度における営業費用は1,579,630百万円となり、前連結会計年度の1,266,902百万円から312,728百万円(24.7%)増加しました。これは、売上収益の更なる成長を目指した販促活動及び物流拠点の設備・強化に伴う費用が増加したこと、モバイルにおける基地局建設に関わる費用が増加したこと等によるものです。
(その他の収益)
当連結会計年度におけるその他の収益は54,483百万円となり、前連結会計年度の86,901百万円から32,418百万円(37.3%)減少しました。これは、前連結会計年度に計上した有価証券評価益が減少したこと等によるものです。
(その他の費用)
当連結会計年度におけるその他の費用は24,240百万円となり、前連結会計年度の11,186百万円から13,054百万円(116.7%)増加しました。これは、映画事業に係る投資の損失を3,277百万円計上したこと等によるものです。
(営業利益又は損失)
当連結会計年度における営業損失は93,849百万円となり、前連結会計年度の営業利益72,745百万円から166,594百万円減少しました。これは、インターネットサービスやフィンテックにおいて、事業が堅調に推移し売上収益は増加したものの、さらなる事業成長を実現するために、販促活動や物流拠点の整備に伴う費用やモバイルにおける基地局建設に関わる費用を計上し、営業費用が増加したこと等によるものです。
(持分法による投資損失)
当連結会計年度における持分法による投資損失は37,710百万円となりました(前連結会計年度は、111,918百万円の損失)。これは、Lyft,Inc.に対する株式投資について、会計上の取り扱い変更に伴う損失を25,017百万円計上したこと等によるものです。
(税引前当期損失)
当連結会計年度は151,016百万円の税引前当期損失となりました(前連結会計年度は、44,558百万円の税引前当期損失)。これは、営業利益又は損失で説明した要因等により利益が減少したことによるものです。
(法人所得税費用)
当連結会計年度における法人所得税費用は35,178百万円のマイナスとなりました(前連結会計年度は11,490百万円のマイナス)。これは主に、当連結会計年度において税引前当期損失を計上したことによるものです。
(当期損失)
以上の結果、当期損失は115,838百万円となりました(前連結会計年度は、33,068百万円の損失)。
(親会社の所有者に帰属する当期損失)
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期損失は114,199百万円となりました(前連結会計年度は、31,888百万円の損失)。
② 財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は12,524,438百万円となり、前連結会計年度末の資産合計9,165,697百万円と比べ、3,358,741百万円増加しました。これは主に、現金及び現金同等物が1,542,749百万円増加、証券事業の金融資産が697,220百万円増加、銀行事業の貸付金が386,520百万円増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は11,895,424百万円となり、前連結会計年度末の負債合計8,428,497百万円と比べ、3,466,927百万円増加しました。これは主に、銀行事業の預金が1,555,414百万円増加、社債及び借入金が760,361百万円増加、証券事業の金融負債が726,582百万円増加したことによるものです。
(資本)
当連結会計年度末の資本合計は629,014百万円となり、前連結会計年度末の資本合計737,200百万円と比べ、108,186百万円減少しました。これは主に、当連結会計年度における親会社の所有者に帰属する当期損失を114,199百万円計上したこと等により利益剰余金が123,154百万円減少したことによるものです。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べ1,542,749百万円増加し、3,021,306百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況及び主な変動要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、1,041,391百万円の資金流入(前連結会計年度は318,320百万円の資金流入)となりました。これは主に、証券事業の金融資産の増加による資金流出が697,382百万円、銀行事業の貸付金の増加による資金流出が386,520百万円となった一方で、銀行事業の預金の増加による資金流入が1,555,229百万円、証券事業の金融負債の増加による資金流入が726,799百万円となったことによるものです
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、303,347百万円の資金流出(前連結会計年度は286,290百万円の資金流出)となりました。これは主に、銀行事業の有価証券の取得及び売却等によるネットの資金流入が6,039百万円(有価証券の取得による資金流出が467,460百万円、売却及び償還による資金流入が473,499百万円)となった一方で、有形固定資産の取得による資金流出が279,278百万円、無形資産の取得による資金流出が105,796百万円となったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、808,108百万円の資金流入(前連結会計年度は458,340百万円の資金流入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による資金流出が324,141百万円となった一方で、長期借入れによる資金流入が424,590百万円、短期借入金の増加による資金流入が411,279百万円、社債の発行による資金流入が148,900百万円となったことによるものです。
④ 収益の認識及び表示方法
収益の認識及び表示方法については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 28. 売上収益 (1)収益の分解」に記載のとおりです。
⑤ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、それらが利用される将来の課税所得を稼得する可能性が高い範囲内で、全ての将来減算一時差異及び全ての未使用の繰越欠損金及び税額控除について認識しています。当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価にあたり行っている見積りは合理的であり、繰延税金資産が回収可能な額として計上されていると判断しています。ただし、これらの見積りは当社グループとしても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化等により回収可能性の評価に関する見積りが変化した場合には、将来当社グループが繰延税金資産を減額する可能性もあります。
⑥ 公正価値で測定する金融資産
公正価値で測定する金融資産については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 40. 金融商品の公正価値」に記載のとおりです。
(3) 資産の財源及び資金の流動性
① 財務運営の基本方針
当社は、グループの持続的成長の実現を可能とするための資金ニーズに対し、安定的かつ多様な資金調達手段の確保を行うこと、また、金融事業に従事する子会社の財務健全性を堅持するため、十分な流動性の確保を図ることを財務運営の基本方針としています。
経営の独立性が求められるフィンテックセグメントに属する子会社及び外部金融機関からのリース調達をしている楽天モバイル株式会社を除く子会社においては、原則として銀行等の外部金融機関からの資金調達を行わず、グループ内のキャッシュ・マネジメント・サービスの活用により、当社が資金調達、グループ資金効率の向上、流動性の確保等を行っています。
また、成長が続くインターネットサービスセグメントにおける増加運転資金等については、営業活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金や、コマーシャル・ペーパー等の短期借入金を充当することを基本方針としています。また、投資フェーズにあるモバイルセグメントでの設備投資資金への資金充当については、下記「③ 今後の資金調達のニーズ及び資金調達の見通し」をご参照ください。
なお、投資等の新規に資金投下を要する案件等については、社外取締役及び外部有識者を含むメンバーで構成される投融資委員会において、案件の取り進めの可否を事前審議しており、その審議結果については、取締役会に報告することに加え、一定額以上の案件につき当社の取締役会の承認決議を要件とすることとしています。更に、投資後のモニタリングを継続的に実施し、必要に応じて機動的にポートフォリオの見直しを実施しています。これらを通じて、グループ全体でのリスク管理及び最適な経営資源の配分を実現することを目標としています。
以上を踏まえた上で、具体的な資金調達手法及び資金調達のタイミングに関しては、グループ全体の事業計画に基づくキャッシュ・フロー、手元流動性の状況等を踏まえて判断しています。
資金調達に関するリスクは、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
② 現状
当社は、総額2,487,457百万円の社債及び借入金を有しており、前連結会計年度比760,361百万円増となりました。このうち、短期の社債及び借入金は前連結会計年度比547,007百万円増の950,262百万円で、内訳は、短期借入金(主として銀行借入金)630,262百万円、コマーシャル・ペーパー320,000百万円となっています。
また、当社は新型コロナウイルス感染症の流行の拡大を踏まえ、資金繰りに万全を期する目的から2020年4月にコマーシャル・ペーパーの発行限度額を従来の100,000百万円から150,000百万円に、同年6月に複数の金融機関との間で締結している借入コミットメントライン契約の総額を従来の80,000百万円から120,000百万円にそれぞれ拡大しました。
なお、当連結会計年度末時点の当社の長期及び短期の信用格付けは、日本格付研究所(JCR)でA/J-1、格付投資情報センター(R&I)でA-/a-1、S&Pグローバル・レーティングでBBB-(長期)となっています。
③ 今後の資金調達のニーズ及び資金調達の見通し
当社連結子会社の楽天モバイル株式会社は、総務大臣より、2018年4月に第4世代移動通信システムの普及のための特定基地局開設計画、2019年4月に第5世代移動通信システムの導入のための特定基地局開設計画の認定をそれぞれ受け、当該計画に則り、2020年4月に4Gサービスを本格的に開始し、同年9月には5Gサービスを開始しました。当該認定された計画における設備投資額は、2026年までに最大800,000百万円程度の見通しとしていましたが、このうちの4Gに係る最大600,000百万円程度の設備投資額については、特定基地局の高密度化による通信品質の向上、今後見込まれる利用者の増加等に対応するため、最大840,000百万円程度まで増加する見通しです。なお、2021年度の設備投資額は約350,000百万円を予定しています。これら必要資金額については、当社から楽天モバイル株式会社への出資、楽天モバイル株式会社における、リース、流動化ファイナンス等を活用して調達する予定です。当該出資については、当社が2018年12月に発行した利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)により調達した182,000百万円及び2020年11月に発行した利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)により調達した120,000百万円等を充当しています。また、2021年3月に取締役会で決議した第三者割当による新株式の発行及び自己株式の処分により調達する242,347百万円について、2021年12月末までにその全額を充当する予定です。なお、今後、4Gサービス等における設備投資の前倒し等により、当社から楽天モバイル株式会社への更なる出資等が求められる可能性もあります。その場合においては、上記の「① 財務運営の基本方針」も踏まえ、最適な資金調達手段を検討していきます。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりです。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3. 重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。