四半期報告書-第24期第2四半期(令和4年4月1日-令和4年6月30日)
(1) 経営成績の分析
当社グループ(当社及び連結子会社3社)は当第2四半期連結累計期間において、新型コロナウイルス感染症に対する予防用ワクチンと治療薬の二軸で国内外において開発を進めております。また、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®筋注用4㎎(以下「コラテジェン®」といいます。)」は適応拡大及び米国での承認を目指して、国内外で臨床試験を進めております。更に、新規ゲノム編集技術を有する子会社のEmendoBio Inc.(以下「Emendo社」といいます。)では、戦略的提携先との共同開発を進めて開発パイプラインの拡充を図り、遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指した事業を推進してまいりました。 当第2四半期連結累計期間の事業収益は前年同期に比べ8百万円増加し31百万円(前年同期比38.1%増)となりました。当社グループでは、コラテジェン®の条件及び期限付製造販売の承認を取得し、2019年9月から田辺三菱製薬株式会社(以下「田辺三菱製薬」といいます。)より販売しておりますが、当面の治療に必要な数量を前年度中に概ね出荷完了しているため、当第2四半期連結累計期間においての製品売上高は3百万円(前年同期比19百万円の減収)となりました。一方、アンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(以下「ACRL」といいます。)において前2021年度第3四半期連結会計期間より実施している希少遺伝性疾患のオプショナルスクリーニング検査は安定的に推移し、手数料収入として28百万円(同28百万円の増収)を計上いたしました。
一方、当第2四半期連結累計期間における事業費用は、前年同期に比べ15億92百万円増加し、91億56百万円(同21.1%増)となりました。
売上原価は、前年同期に比べ22百万円増加し、36百万円(同165.9%増)となりました。これは主に、ACRLにおける希少遺伝性疾患のオプショナルスクリーニング検査にかかる原価を計上したことによります。
研究開発費は、前年同期に比べ16億55百万円増加し、66億17百万円(同33.4%増)となりました。新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの製造関連費用を計上したことにより、外注費が21億25百万円増加しております。一方、新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの目標症例の投与が完了したことにより、研究用材料費は6億21百万円減少しております。また、主にEmendo社の人員の増加により、給料手当が1億38百万円増加しております。
当社グループのような研究開発型バイオベンチャー企業は先行投資が続きますが、提携戦略などにより財務リスクの低減を図りながら、今後も研究開発投資を行っていく予定です。研究開発の詳細については、本報告書「(4)研究開発活動」をご参照ください。
販売費及び一般管理費は前年同期に比べ85百万円減少し、25億2百万円(同3.3%減)となりました。主にEmendo社に関連する弁護士等専門家及びコンサルタントへの報酬が減少したため、支払手数料が前年同期より1億30百万円減少しております。一方、為替の円安に伴い、Emendo社買収に伴うのれん償却額が前年同期より1億67百万円増加しております。
この結果、当第2四半期連結累計期間の営業損失は前年同期に比べ15億83百万円拡大し、91億24百万円(前年同期の営業損失は75億40百万円)となりました。
当第2四半期連結累計期間の経常損失は前年同期に比べ89百万円拡大し、74億20百万円(前年同期の経常損失は73億30百万円)となりました。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)より採択された「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」の助成金に関して、すでに入金が行われ前受金に計上しておりましたが、当第2四半期連結累計期間において2021年度分の確定検査結果通知を受領したことから、1億18百万円を前受金から補助金収入に振替えております。また、Vasomune Therapeutics, Inc.(以下「Vasomune社」といいます。)が米国及びカナダにおいて獲得した助成金について、当社開発費負担分に応じて84百万円受領し、補助金収入に計上しております。この結果、補助金収入は2億2百万円となりました。さらに、為替の円安に伴い、外貨預金及びEmendo社への貸付金の評価替を行った結果、為替差益が14億89百万円発生しております(前年同期は2億66百万円の為替差益)。
当第2四半期連結累計期間の親会社株主に帰属する四半期純損失は、24百万円改善し、74億25百万円(前年同期の親会社株主に帰属する四半期純損失は74億50百万円)となりました。前年同期においては、ストックオプションの権利行使期間終了による権利失効に伴い新株予約権戻入益を32百万円を計上しておりました。また、Barcode Diagnostics Ltd.(以下Barcode社といいます。)株式等を減損したことにより、投資有価証券評価損が1億38百万円発生しておりました。当第2四半期連結累計期間においては、特別利益及び特別損失の計上はありませんでした。
(2) 財政状態の分析
当第2四半期連結会計期間末の総資産は前連結会計年度末に比べ28億62百万円減少し、425億92百万円となりました。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)より助成金7億74百万円の入金がありましたが、当期事業費用への充当により、現金及び預金は46億87百万円減少し、132億11百万円となりました。コラテジェン®の原薬を製造したことに伴い、原材料及び貯蔵品が4億46百万円増加して16億41百万円となりました。新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの製造が終了したことに伴い、前渡金が11億61百万円減少して5億52百万円となりました。前年度の消費税等の還付により、未収消費税等が1億98百万円減少して2億21百万円となりました。流動資産は56億54百万円減少し、157億71百万円となっております。
当第2四半期会計期間末の固定資産は27億91百万円増加し、268億21百万円となっております。これは主に、のれんが前連結会計年度末に比べ27億75百万円増加して254億50百万円となったことによるものです。のれんの償却による13億48百万円の減少はありましたが、円安による為替変動の影響により41億23百万円増加しております。
当第2四半期連結会計期間末の負債は前連結会計年度末に比べ12億58百万円増加し、80億79百万円となりました。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)より採択された「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」に関する助成金が入金され、前受金が6億44百万円増加しております。主に新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの製造関連費用の計上により、買掛金が8億4百万円増加しております。前年度の費用の支払により、未払金が1億69百万円減少しております。
当第2四半期連結会計期間末の純資産は前連結会計年度末に比べ41億21百万円減少し、345億13百万円となりました。親会社株主に帰属する四半期純損失74億25百万円の計上により、利益剰余金が減少しております。主にのれんに係る為替変動の影響により、為替換算調整勘定が33億16百万円増加しております。
(3) キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ46億91百万円減少し、131億43百万円となりました。当第2四半期連結累計期間のキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間における営業活動による資金の減少は、54億83百万円(前年同期は52億98百万円の減少)となりました。のれん償却費を13億48百万円計上し、前渡金が11億79百万円減少、未収消費税等が1億98百万円減少、仕入債務が7億81百万円増加、前受金が6億44百万円増加しましたが、税金等調整前四半期純損失74億20百万円に加え、為替差益を15億62百万円計上し、棚卸資産が4億44百万円増加、未払金が2億41百万円減少しております。その結果、前年同期と比べ、1億85百万円の支出増加となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間における投資活動による資金の減少は、13百万円(前年同期は76百万円の減少)となりました。ACRLの改修工事等により、有形固定資産の取得による支出が10百万円発生しております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間における財務活動による資金の増加は、0百万円(前年同期は173億93百万円の増加)となりました。
(4) 研究開発活動
当第2四半期連結累計期間における研究開発費は前年同期に比べ16億55百万円増加し、66億17百万円(前年同期比33.4%増)となりました。
当社グループは、遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指し、遺伝子医薬や治療ワクチンといった次世代バイオ医薬を創製する先端技術を基盤に、治療法がない疾病分野や難病、希少疾患などを対象にした革新的な医薬品の開発を通じて、国民生活や医療水準の向上に貢献することを目標としており、そのためにも国際的に通用する革新的な医薬品を少しでも早く患者様にお届けすることを目指しています。
以下に、当社グループが取り組んでいる研究開発の状況をお知らせいたします。

■HGF遺伝子治療用製品(一般名:ベペルミノゲンペルプラスミド)(自社品)
HGF遺伝子治療用製品は、当社が設立以来手がけてきた主力のプロジェクトで、重症下肢虚血を対象とした開発を進め、再生医療等製品として2019年3月26日、厚生労働省から重症下肢虚血の潰瘍の改善の効能効果で条件及び期限付製造販売承認を取得し、国内初の遺伝子治療用製品「コラテジェン®」として2019年9月10日より発売を開始いたしました。
条件及び期限付製造販売承認を取得している重症下肢虚血の潰瘍の改善についての製造販売後調査につきましては、計画どおり進捗しており本承認に向けた申請の準備を進めてまいります。
また、米国における慢性動脈閉塞症の下肢潰瘍患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験も概ね計画に沿って進捗しており、承認申請に向けて今後も開発を継続してまいります。
さらに、当社はHGF遺伝子治療用製品の安静時疼痛に対する適応追加のための第Ⅲ相臨床試験の投与を2019年10月より開始、2021年12月に目標症例の投与を完了し、現在データの整理、分析を行っております。
田辺三菱製薬と当社は、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の販売に関し、日本及び米国における末梢性血管疾患を対象とした独占的販売権許諾契約を締結しており、同社が販売を担当いたしております。
■NF-κBデコイオリゴDNA(自社品)
当社は、椎間板性腰痛症を含む腰痛疾患を適応症とした核酸医薬NF-κBデコイオリゴDNAの開発を米国において進めております。2018年2月より椎間板性腰痛症を対象とした後期第Ⅰ相臨床試験は、投与後の観察期間6カ月間に続き、12ケ月間を経た結果でも、患者の忍容性は高いうえ、重篤な有害事象も認められず、安全性を確認しております。さらに、探索的にデータを評価したところ、患者の腰痛の著しい軽減とその効果の持続が認められ、有効性も確認いたしました。
核酸医薬デコイオリゴDNAのその他の研究開発については、これまでNF-κBデコイオリゴDNAの次世代型デコイオリゴDNAとして、炎症に関わるNF-κBと、異なる転写因子を同時に抑制する働きを持った「キメラデコイ」の研究を進めております。NF-κBのみをターゲットとした従来のデコイオリゴDNAと比較して、より強力で幅広い炎症抑制効果の実現を目指してまいります。
■高血圧DNAワクチン(自社品)
当社は、血圧上昇作用を持つ体内物質である「アンジオテンシンⅡ」に対する抗体を体内で作り出し、その働きを抑えることで高血圧を治療することを目的に高血圧治療用DNAワクチンの開発を進めております。オーストラリアでの第Ⅰ相/前期第Ⅱ相臨床試験は投与後の初期の試験結果の評価を行ったところ、重篤な有害事象はなく、安全性に問題がないことを確認し、アンジオテンシンⅡに対する抗体産生を認めました。分析結果は、論文としHypertension Researchに掲載し、第43回日本高血圧学会総会Late Breaking Abstractでも発表いたしました。今後、安全性、免疫原性及び有効性を評価する試験の実施に向けて継続的に検討を行ってまいります。
■新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチン(自社品)
当社は、プラスミドDNAの技術を用いて2020年3月より大阪大学と共同で新型コロナウイルス感染症に対する予防用ワクチンの開発を開始し、これまでに第Ⅰ/Ⅱ相及び第Ⅱ/Ⅲ相の臨床試験を実施いたしました。これらの分析の結果、安全性において問題はなく、細胞性免疫においてある程度の上昇を確認したものの、液性免疫については期待する効果を得ることができず、今後さらに有効性を高める必要があることを確認いたしました。さらに有効性を高めるための取り組みとして、高用量製剤での第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を、接種方法を筋肉注射と皮内投与の2種類とし、プラセボ(偽薬)なしの実薬のみで、目標症例数400例にて実施し、2021年11月に目標症例の接種を完了いたしました。現在、経過観察と並行して海外の委託機関にてデータ分析を進めております。
■Tie2チロシンキナーゼ受容体アゴニスト(新型コロナウイルス感染症治療薬)(共同開発品)
当社は、カナダのバイオ医薬品企業であるVasomune社と急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした医薬品を共同開発しております。Tie2チロシンキナーゼ受容体アゴニスト(AV-001)は、新型コロナウイルス感染症治療薬として、2020年12月より健康成人を対象とした第Ⅰ相臨床試験を米国において実施し、安全性と忍容性を認め、良好な結果を確認いたしました。2022年1月に前期第Ⅱ相臨床試験を米国で開始しております。
■Zokinvy(一般名:ロナファルニブ)(導入品)
当社は2022年5月10日に米国の医薬品企業であるEiger社と、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群とプロジェロイド・ラミノパチーの適応症の治療薬であるZokinvyについて、日本における独占販売契約を締結しました。当社は、一日も早い薬事承認・薬価収載を目指し、国内承認取得の準備を進めております。

■ゲノム編集技術による遺伝子治療の開発(子会社による開発)
当社は、究極の遺伝子治療法ともいわれるゲノム編集技術を用いた遺伝子疾患治療に挑むため、2020年12月にゲノム編集における先進技術及びそれを活用した開発パイプラインを持つEmendo社を子会社化いたしました。Emendo社では、ゲノム編集の安全な医療応用を目指し、新規CRISPRヌクレアーゼ(※1)を探索・最適化するプラットフォーム技術(OMNI Platform)を確立しており、ゲノム編集でよく問題視されている「オフターゲット効果」(※2)を回避できるなど、新たな特徴をもった新規ヌクレアーゼ(OMNI ヌクレアーゼ)を数多く作出し、特許を出願しております。Emendo社ではOMNI Platformの更なる性能向上、効率化を目指した開発を継続しております。
同時にEmendo社では、様々な遺伝子疾患について、その疾患と遺伝子変異の分子機構の理解に基づき、疾患に応じてゲノム編集戦略を構築し、数多くのOMNI ヌクレアーゼの中から適切なヌクレアーゼを選択し、それをさらに標的配列に対して最適化して、これまでゲノム編集では対象とできなかった疾患を含め、様々な疾患に対する安全で有効な治療の開発を進めております。
なかでも、ELANE(好中球エラスターゼ遺伝子)の異常によるELANE関連重症先天性好中球減少症(※3)を対象とするゲノム編集治療については、米国での治験に向け、FDAと協議を開始しております。ELANE関連重症先天性好中球減少症では、対になっている遺伝子配列の一方のみの変異により発症するため、その治療は、ほとんど同じ配列をもつ対の遺伝子のうち、変異のある遺伝子のみを破壊するという非常に精度の高いゲノム編集が必要となります。
※1 新規CRISPRヌクレアーゼ:ゲノム編集で使用する新たなRNA誘導型DNA切断酵素で、ガイドRNAで規定した塩基配列を識別
し、その標的とした塩基配列を切断する。
※2 オフターゲット効果:ゲノム編集で、DNA鎖上の目的とする塩基配列以外の別の領域に、意図せぬ突然変異を引き起こしてしま
うこと。
※3 ELANE関連重症先天性好中球減少症:顆粒球系細胞の成熟障害により発症する好中球減少症で、発症すると細菌感染などが起き
やすくなり、中耳炎や気道感染症、蜂窩織炎、皮膚感染症を繰り返し、敗血症などにより死亡することもある。

その他の研究開発の状況
■マイクロバイオームを用いた疾患予防・健康維持
当社は、腸内細菌叢を利用した疾患治療薬や健康維持のサプリメントを開発しているイスラエルMyBiotics Pharma Ltd.と2018年7月に資本提携し、1人1人の健康状態・体質に合った腸内細菌を見つけ出し、それらを含む医薬品やサプリメントを開発することを目指しています。
■Brickell Biotech,Inc.(旧:バイカル社)との戦略的な開発協力
当社と2016年12月に戦略的事業提携を締結したバイカル社は、2019年8月に米国のBrickell Biotech,Inc.との合併契約を締結し、合併後の新社名はBrickell Biotech, Inc.となりました。同社とは2020年9月に新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの米国での臨床開発に関する共同開発契約を締結しました。
(5) 事業のリスクに記載した重要事象等についての分析及び改善するための対応方法
医薬品事業は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、創薬ベンチャーである当社グループにおいては、継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあります。そのため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
当社グループは当該状況を解消すべく、下記を重要な課題として取り組んでおります。
①自社既存プロジェクトの推進
当社グループでは、2019年3月に国内初の遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の条件及び期限付承認を厚生労働省から取得し、同年9月から販売を開始いたしました。現在、製造販売後承認条件評価を行うとともに国内での同製品の適応拡大のための臨床試験及び米国での閉塞性動脈硬化症を対象とした臨床試験を進めております。また、現在海外で臨床試験を進めております椎間板性腰痛症向けの核酸医薬NF-κBデコイオリゴDNA、高血圧DNAワクチンに加え、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延を機に2020年3月に開発を開始した、新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチン、Vasomune社と共同開発している新型コロナウイルス感染症治療薬を含めた5プロジェクトを推進しております。これらのプロジェクトを確実に推進していくことが最優先課題であると考えております。
②開発パイプラインの拡充と事業基盤の拡大
当社グループでは新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延を機に予防用ワクチン及び治療薬の開発を進めています。また、ゲノム編集における先進技術を持つ子会社のEmendo社において、究極の遺伝子治療ともいわれるゲノム編集で具体的なプロジェクト化に向けて準備を進めています。これらの開発パイプラインの拡充や事業基盤の拡大により、当社グループは遺伝子治療の世界でグローバルリーダーを目指します。
今後も、ライセンス導入や共同開発、創薬プラットフォーム技術の獲得を目指した事業提携に加え、他社に対する資本参加や他社の買収等により開発品パイプラインの拡充による事業基盤の拡大を図り、将来の成長を実現してまいります。
③開発プロジェクトにおける提携先の確保
当社グループでは、開発プロジェクトのリスクを低減するために、製薬会社と提携し、契約金・マイルストーンや開発協力金を受け取ることにより財務リスクを低減しながら開発を進めるという提携モデルを基本方針としております。
「コラテジェン®」について日本と米国を対象とした独占的販売契約を田辺三菱製薬と締結しており、マイルストーン収入やロイヤリティ収入が見込めます。また、2019年2月にイスラエルにおけるHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の独占的販売権の許諾について同国Kamada社と基本合意書を締結しております。さらに2020年10月にスペシャルティ薬(特定疾患専門薬)を扱うトルコのEr-Kim社と「コラテジェン®」のトルコでの導出(独占的販売権許諾)に関する基本合意書を締結しました。椎間板性腰痛症向けの核酸医薬NF-κBデコイオリゴDNA、高血圧DNAワクチンにつきましては臨床試験が予定どおり進捗しており、製薬企業等へ早期に導出することで、契約一時金、ロイヤリティー等を確保し、開発費の負担削減と定期的な収入確保を目指してまいります。今後も、製薬会社との提携を進めることにより、事業基盤の強化に努めてまいります。
④資金調達の実施
当社グループにとって、研究開発活動及び事業基盤の拡大を推進することは継続的な発展のために重要であり、そのためには状況に応じ機動的に資金調達を行うことが必要となります。直近では、2021年3月24日に発行したCantor Fitzgerald & Co.を割当先とする第41回新株予約権(第三者割当て)について2021年5月までに全数が行使され、前連結会計年度において174億74百万円を調達いたしました。今後も、研究開発活動推進及び企業維持のために必要となる資金調達の可能性を適宜検討してまいります。
これら諸施策の実施により、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。
当社グループ(当社及び連結子会社3社)は当第2四半期連結累計期間において、新型コロナウイルス感染症に対する予防用ワクチンと治療薬の二軸で国内外において開発を進めております。また、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®筋注用4㎎(以下「コラテジェン®」といいます。)」は適応拡大及び米国での承認を目指して、国内外で臨床試験を進めております。更に、新規ゲノム編集技術を有する子会社のEmendoBio Inc.(以下「Emendo社」といいます。)では、戦略的提携先との共同開発を進めて開発パイプラインの拡充を図り、遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指した事業を推進してまいりました。 当第2四半期連結累計期間の事業収益は前年同期に比べ8百万円増加し31百万円(前年同期比38.1%増)となりました。当社グループでは、コラテジェン®の条件及び期限付製造販売の承認を取得し、2019年9月から田辺三菱製薬株式会社(以下「田辺三菱製薬」といいます。)より販売しておりますが、当面の治療に必要な数量を前年度中に概ね出荷完了しているため、当第2四半期連結累計期間においての製品売上高は3百万円(前年同期比19百万円の減収)となりました。一方、アンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(以下「ACRL」といいます。)において前2021年度第3四半期連結会計期間より実施している希少遺伝性疾患のオプショナルスクリーニング検査は安定的に推移し、手数料収入として28百万円(同28百万円の増収)を計上いたしました。
一方、当第2四半期連結累計期間における事業費用は、前年同期に比べ15億92百万円増加し、91億56百万円(同21.1%増)となりました。
売上原価は、前年同期に比べ22百万円増加し、36百万円(同165.9%増)となりました。これは主に、ACRLにおける希少遺伝性疾患のオプショナルスクリーニング検査にかかる原価を計上したことによります。
研究開発費は、前年同期に比べ16億55百万円増加し、66億17百万円(同33.4%増)となりました。新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの製造関連費用を計上したことにより、外注費が21億25百万円増加しております。一方、新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの目標症例の投与が完了したことにより、研究用材料費は6億21百万円減少しております。また、主にEmendo社の人員の増加により、給料手当が1億38百万円増加しております。
当社グループのような研究開発型バイオベンチャー企業は先行投資が続きますが、提携戦略などにより財務リスクの低減を図りながら、今後も研究開発投資を行っていく予定です。研究開発の詳細については、本報告書「(4)研究開発活動」をご参照ください。
販売費及び一般管理費は前年同期に比べ85百万円減少し、25億2百万円(同3.3%減)となりました。主にEmendo社に関連する弁護士等専門家及びコンサルタントへの報酬が減少したため、支払手数料が前年同期より1億30百万円減少しております。一方、為替の円安に伴い、Emendo社買収に伴うのれん償却額が前年同期より1億67百万円増加しております。
この結果、当第2四半期連結累計期間の営業損失は前年同期に比べ15億83百万円拡大し、91億24百万円(前年同期の営業損失は75億40百万円)となりました。
当第2四半期連結累計期間の経常損失は前年同期に比べ89百万円拡大し、74億20百万円(前年同期の経常損失は73億30百万円)となりました。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)より採択された「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」の助成金に関して、すでに入金が行われ前受金に計上しておりましたが、当第2四半期連結累計期間において2021年度分の確定検査結果通知を受領したことから、1億18百万円を前受金から補助金収入に振替えております。また、Vasomune Therapeutics, Inc.(以下「Vasomune社」といいます。)が米国及びカナダにおいて獲得した助成金について、当社開発費負担分に応じて84百万円受領し、補助金収入に計上しております。この結果、補助金収入は2億2百万円となりました。さらに、為替の円安に伴い、外貨預金及びEmendo社への貸付金の評価替を行った結果、為替差益が14億89百万円発生しております(前年同期は2億66百万円の為替差益)。
当第2四半期連結累計期間の親会社株主に帰属する四半期純損失は、24百万円改善し、74億25百万円(前年同期の親会社株主に帰属する四半期純損失は74億50百万円)となりました。前年同期においては、ストックオプションの権利行使期間終了による権利失効に伴い新株予約権戻入益を32百万円を計上しておりました。また、Barcode Diagnostics Ltd.(以下Barcode社といいます。)株式等を減損したことにより、投資有価証券評価損が1億38百万円発生しておりました。当第2四半期連結累計期間においては、特別利益及び特別損失の計上はありませんでした。
(2) 財政状態の分析
当第2四半期連結会計期間末の総資産は前連結会計年度末に比べ28億62百万円減少し、425億92百万円となりました。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)より助成金7億74百万円の入金がありましたが、当期事業費用への充当により、現金及び預金は46億87百万円減少し、132億11百万円となりました。コラテジェン®の原薬を製造したことに伴い、原材料及び貯蔵品が4億46百万円増加して16億41百万円となりました。新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの製造が終了したことに伴い、前渡金が11億61百万円減少して5億52百万円となりました。前年度の消費税等の還付により、未収消費税等が1億98百万円減少して2億21百万円となりました。流動資産は56億54百万円減少し、157億71百万円となっております。
当第2四半期会計期間末の固定資産は27億91百万円増加し、268億21百万円となっております。これは主に、のれんが前連結会計年度末に比べ27億75百万円増加して254億50百万円となったことによるものです。のれんの償却による13億48百万円の減少はありましたが、円安による為替変動の影響により41億23百万円増加しております。
当第2四半期連結会計期間末の負債は前連結会計年度末に比べ12億58百万円増加し、80億79百万円となりました。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)より採択された「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」に関する助成金が入金され、前受金が6億44百万円増加しております。主に新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの製造関連費用の計上により、買掛金が8億4百万円増加しております。前年度の費用の支払により、未払金が1億69百万円減少しております。
当第2四半期連結会計期間末の純資産は前連結会計年度末に比べ41億21百万円減少し、345億13百万円となりました。親会社株主に帰属する四半期純損失74億25百万円の計上により、利益剰余金が減少しております。主にのれんに係る為替変動の影響により、為替換算調整勘定が33億16百万円増加しております。
(3) キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ46億91百万円減少し、131億43百万円となりました。当第2四半期連結累計期間のキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間における営業活動による資金の減少は、54億83百万円(前年同期は52億98百万円の減少)となりました。のれん償却費を13億48百万円計上し、前渡金が11億79百万円減少、未収消費税等が1億98百万円減少、仕入債務が7億81百万円増加、前受金が6億44百万円増加しましたが、税金等調整前四半期純損失74億20百万円に加え、為替差益を15億62百万円計上し、棚卸資産が4億44百万円増加、未払金が2億41百万円減少しております。その結果、前年同期と比べ、1億85百万円の支出増加となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間における投資活動による資金の減少は、13百万円(前年同期は76百万円の減少)となりました。ACRLの改修工事等により、有形固定資産の取得による支出が10百万円発生しております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間における財務活動による資金の増加は、0百万円(前年同期は173億93百万円の増加)となりました。
(4) 研究開発活動
当第2四半期連結累計期間における研究開発費は前年同期に比べ16億55百万円増加し、66億17百万円(前年同期比33.4%増)となりました。
当社グループは、遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指し、遺伝子医薬や治療ワクチンといった次世代バイオ医薬を創製する先端技術を基盤に、治療法がない疾病分野や難病、希少疾患などを対象にした革新的な医薬品の開発を通じて、国民生活や医療水準の向上に貢献することを目標としており、そのためにも国際的に通用する革新的な医薬品を少しでも早く患者様にお届けすることを目指しています。
以下に、当社グループが取り組んでいる研究開発の状況をお知らせいたします。

■HGF遺伝子治療用製品(一般名:ベペルミノゲンペルプラスミド)(自社品)
HGF遺伝子治療用製品は、当社が設立以来手がけてきた主力のプロジェクトで、重症下肢虚血を対象とした開発を進め、再生医療等製品として2019年3月26日、厚生労働省から重症下肢虚血の潰瘍の改善の効能効果で条件及び期限付製造販売承認を取得し、国内初の遺伝子治療用製品「コラテジェン®」として2019年9月10日より発売を開始いたしました。
条件及び期限付製造販売承認を取得している重症下肢虚血の潰瘍の改善についての製造販売後調査につきましては、計画どおり進捗しており本承認に向けた申請の準備を進めてまいります。
また、米国における慢性動脈閉塞症の下肢潰瘍患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験も概ね計画に沿って進捗しており、承認申請に向けて今後も開発を継続してまいります。
さらに、当社はHGF遺伝子治療用製品の安静時疼痛に対する適応追加のための第Ⅲ相臨床試験の投与を2019年10月より開始、2021年12月に目標症例の投与を完了し、現在データの整理、分析を行っております。
田辺三菱製薬と当社は、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の販売に関し、日本及び米国における末梢性血管疾患を対象とした独占的販売権許諾契約を締結しており、同社が販売を担当いたしております。
■NF-κBデコイオリゴDNA(自社品)
当社は、椎間板性腰痛症を含む腰痛疾患を適応症とした核酸医薬NF-κBデコイオリゴDNAの開発を米国において進めております。2018年2月より椎間板性腰痛症を対象とした後期第Ⅰ相臨床試験は、投与後の観察期間6カ月間に続き、12ケ月間を経た結果でも、患者の忍容性は高いうえ、重篤な有害事象も認められず、安全性を確認しております。さらに、探索的にデータを評価したところ、患者の腰痛の著しい軽減とその効果の持続が認められ、有効性も確認いたしました。
核酸医薬デコイオリゴDNAのその他の研究開発については、これまでNF-κBデコイオリゴDNAの次世代型デコイオリゴDNAとして、炎症に関わるNF-κBと、異なる転写因子を同時に抑制する働きを持った「キメラデコイ」の研究を進めております。NF-κBのみをターゲットとした従来のデコイオリゴDNAと比較して、より強力で幅広い炎症抑制効果の実現を目指してまいります。
■高血圧DNAワクチン(自社品)
当社は、血圧上昇作用を持つ体内物質である「アンジオテンシンⅡ」に対する抗体を体内で作り出し、その働きを抑えることで高血圧を治療することを目的に高血圧治療用DNAワクチンの開発を進めております。オーストラリアでの第Ⅰ相/前期第Ⅱ相臨床試験は投与後の初期の試験結果の評価を行ったところ、重篤な有害事象はなく、安全性に問題がないことを確認し、アンジオテンシンⅡに対する抗体産生を認めました。分析結果は、論文としHypertension Researchに掲載し、第43回日本高血圧学会総会Late Breaking Abstractでも発表いたしました。今後、安全性、免疫原性及び有効性を評価する試験の実施に向けて継続的に検討を行ってまいります。
■新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチン(自社品)
当社は、プラスミドDNAの技術を用いて2020年3月より大阪大学と共同で新型コロナウイルス感染症に対する予防用ワクチンの開発を開始し、これまでに第Ⅰ/Ⅱ相及び第Ⅱ/Ⅲ相の臨床試験を実施いたしました。これらの分析の結果、安全性において問題はなく、細胞性免疫においてある程度の上昇を確認したものの、液性免疫については期待する効果を得ることができず、今後さらに有効性を高める必要があることを確認いたしました。さらに有効性を高めるための取り組みとして、高用量製剤での第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を、接種方法を筋肉注射と皮内投与の2種類とし、プラセボ(偽薬)なしの実薬のみで、目標症例数400例にて実施し、2021年11月に目標症例の接種を完了いたしました。現在、経過観察と並行して海外の委託機関にてデータ分析を進めております。
■Tie2チロシンキナーゼ受容体アゴニスト(新型コロナウイルス感染症治療薬)(共同開発品)
当社は、カナダのバイオ医薬品企業であるVasomune社と急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした医薬品を共同開発しております。Tie2チロシンキナーゼ受容体アゴニスト(AV-001)は、新型コロナウイルス感染症治療薬として、2020年12月より健康成人を対象とした第Ⅰ相臨床試験を米国において実施し、安全性と忍容性を認め、良好な結果を確認いたしました。2022年1月に前期第Ⅱ相臨床試験を米国で開始しております。
■Zokinvy(一般名:ロナファルニブ)(導入品)
当社は2022年5月10日に米国の医薬品企業であるEiger社と、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群とプロジェロイド・ラミノパチーの適応症の治療薬であるZokinvyについて、日本における独占販売契約を締結しました。当社は、一日も早い薬事承認・薬価収載を目指し、国内承認取得の準備を進めております。

■ゲノム編集技術による遺伝子治療の開発(子会社による開発)
当社は、究極の遺伝子治療法ともいわれるゲノム編集技術を用いた遺伝子疾患治療に挑むため、2020年12月にゲノム編集における先進技術及びそれを活用した開発パイプラインを持つEmendo社を子会社化いたしました。Emendo社では、ゲノム編集の安全な医療応用を目指し、新規CRISPRヌクレアーゼ(※1)を探索・最適化するプラットフォーム技術(OMNI Platform)を確立しており、ゲノム編集でよく問題視されている「オフターゲット効果」(※2)を回避できるなど、新たな特徴をもった新規ヌクレアーゼ(OMNI ヌクレアーゼ)を数多く作出し、特許を出願しております。Emendo社ではOMNI Platformの更なる性能向上、効率化を目指した開発を継続しております。
同時にEmendo社では、様々な遺伝子疾患について、その疾患と遺伝子変異の分子機構の理解に基づき、疾患に応じてゲノム編集戦略を構築し、数多くのOMNI ヌクレアーゼの中から適切なヌクレアーゼを選択し、それをさらに標的配列に対して最適化して、これまでゲノム編集では対象とできなかった疾患を含め、様々な疾患に対する安全で有効な治療の開発を進めております。
なかでも、ELANE(好中球エラスターゼ遺伝子)の異常によるELANE関連重症先天性好中球減少症(※3)を対象とするゲノム編集治療については、米国での治験に向け、FDAと協議を開始しております。ELANE関連重症先天性好中球減少症では、対になっている遺伝子配列の一方のみの変異により発症するため、その治療は、ほとんど同じ配列をもつ対の遺伝子のうち、変異のある遺伝子のみを破壊するという非常に精度の高いゲノム編集が必要となります。
※1 新規CRISPRヌクレアーゼ:ゲノム編集で使用する新たなRNA誘導型DNA切断酵素で、ガイドRNAで規定した塩基配列を識別
し、その標的とした塩基配列を切断する。
※2 オフターゲット効果:ゲノム編集で、DNA鎖上の目的とする塩基配列以外の別の領域に、意図せぬ突然変異を引き起こしてしま
うこと。
※3 ELANE関連重症先天性好中球減少症:顆粒球系細胞の成熟障害により発症する好中球減少症で、発症すると細菌感染などが起き
やすくなり、中耳炎や気道感染症、蜂窩織炎、皮膚感染症を繰り返し、敗血症などにより死亡することもある。

その他の研究開発の状況
■マイクロバイオームを用いた疾患予防・健康維持
当社は、腸内細菌叢を利用した疾患治療薬や健康維持のサプリメントを開発しているイスラエルMyBiotics Pharma Ltd.と2018年7月に資本提携し、1人1人の健康状態・体質に合った腸内細菌を見つけ出し、それらを含む医薬品やサプリメントを開発することを目指しています。
■Brickell Biotech,Inc.(旧:バイカル社)との戦略的な開発協力
当社と2016年12月に戦略的事業提携を締結したバイカル社は、2019年8月に米国のBrickell Biotech,Inc.との合併契約を締結し、合併後の新社名はBrickell Biotech, Inc.となりました。同社とは2020年9月に新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの米国での臨床開発に関する共同開発契約を締結しました。
(5) 事業のリスクに記載した重要事象等についての分析及び改善するための対応方法
医薬品事業は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、創薬ベンチャーである当社グループにおいては、継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあります。そのため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
当社グループは当該状況を解消すべく、下記を重要な課題として取り組んでおります。
①自社既存プロジェクトの推進
当社グループでは、2019年3月に国内初の遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の条件及び期限付承認を厚生労働省から取得し、同年9月から販売を開始いたしました。現在、製造販売後承認条件評価を行うとともに国内での同製品の適応拡大のための臨床試験及び米国での閉塞性動脈硬化症を対象とした臨床試験を進めております。また、現在海外で臨床試験を進めております椎間板性腰痛症向けの核酸医薬NF-κBデコイオリゴDNA、高血圧DNAワクチンに加え、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延を機に2020年3月に開発を開始した、新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチン、Vasomune社と共同開発している新型コロナウイルス感染症治療薬を含めた5プロジェクトを推進しております。これらのプロジェクトを確実に推進していくことが最優先課題であると考えております。
②開発パイプラインの拡充と事業基盤の拡大
当社グループでは新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延を機に予防用ワクチン及び治療薬の開発を進めています。また、ゲノム編集における先進技術を持つ子会社のEmendo社において、究極の遺伝子治療ともいわれるゲノム編集で具体的なプロジェクト化に向けて準備を進めています。これらの開発パイプラインの拡充や事業基盤の拡大により、当社グループは遺伝子治療の世界でグローバルリーダーを目指します。
今後も、ライセンス導入や共同開発、創薬プラットフォーム技術の獲得を目指した事業提携に加え、他社に対する資本参加や他社の買収等により開発品パイプラインの拡充による事業基盤の拡大を図り、将来の成長を実現してまいります。
③開発プロジェクトにおける提携先の確保
当社グループでは、開発プロジェクトのリスクを低減するために、製薬会社と提携し、契約金・マイルストーンや開発協力金を受け取ることにより財務リスクを低減しながら開発を進めるという提携モデルを基本方針としております。
「コラテジェン®」について日本と米国を対象とした独占的販売契約を田辺三菱製薬と締結しており、マイルストーン収入やロイヤリティ収入が見込めます。また、2019年2月にイスラエルにおけるHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の独占的販売権の許諾について同国Kamada社と基本合意書を締結しております。さらに2020年10月にスペシャルティ薬(特定疾患専門薬)を扱うトルコのEr-Kim社と「コラテジェン®」のトルコでの導出(独占的販売権許諾)に関する基本合意書を締結しました。椎間板性腰痛症向けの核酸医薬NF-κBデコイオリゴDNA、高血圧DNAワクチンにつきましては臨床試験が予定どおり進捗しており、製薬企業等へ早期に導出することで、契約一時金、ロイヤリティー等を確保し、開発費の負担削減と定期的な収入確保を目指してまいります。今後も、製薬会社との提携を進めることにより、事業基盤の強化に努めてまいります。
④資金調達の実施
当社グループにとって、研究開発活動及び事業基盤の拡大を推進することは継続的な発展のために重要であり、そのためには状況に応じ機動的に資金調達を行うことが必要となります。直近では、2021年3月24日に発行したCantor Fitzgerald & Co.を割当先とする第41回新株予約権(第三者割当て)について2021年5月までに全数が行使され、前連結会計年度において174億74百万円を調達いたしました。今後も、研究開発活動推進及び企業維持のために必要となる資金調達の可能性を適宜検討してまいります。
これら諸施策の実施により、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。