有価証券報告書-第21期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/30 9:36
【資料】
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【項目】
136項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社1社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
① 経営成績及び財政状態の概要
当社グループでは、提携企業からの契約一時金、マイルストーンを研究開発事業収益に計上しております。また、ムコ多糖症Ⅵ型治療薬「ナグラザイム®」の販売収入につきましては商品売上高に、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の販売収入につきましては製品売上高に計上しております。
この結果、当連結会計年度における事業収益は3億26百万円(前期比2億83百万円(46.4%)の減収)、経常損失は32億93百万円(前連結会計年度の経常損失は30億96百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は37億50百万円(前連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は29億96百万円)となっております。
財政状態につきましては、当連結会計年度末の総資産は125億24百万円(前連結会計年度末比44億73百万円の増加)となりました。現預金は新株予約権の行使等により100億40百万円(前連結会計年度末比42億55百万円の増加)となりました。負債は4億69百万円(前連結会計年度末比1億53百万円の増加)となりました。純資産は120億55百万円(前連結会計年度末比43億20百万円の増加)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ42億55百万円増加し、100億40百万円となりました。当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の減少は、21億79百万円(前年同期は25億22百万円の減少)となりました。たな卸資産が3億69百万円、売上債権が2億54百万円、前渡金が1億92百万円減少しましたが、税金等調整当期純損失37億51百万円に加え、未収消費税が33百万円増加しております。その結果、前年同期と比べ、3億42百万円の支出減少となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、12億49百万円(前年同期は1億22百万円の減少)となりました。提携先への投資により、投資有価証券の取得による支出12億40百万円が発生しております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の増加は、76億76百万円(前年同期は72億83百万円の増加)となりました。新株予約権の行使による株式の発行による収入が76億76百万円発生しております。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(千円)前年同期比(%)
医薬品76,313
合計76,313

(注) 1 金額は製造価格によっております。
2 金額には、消費税等は含まれておりません。
3 当連結会計年度において、生産実績に著しい変動がありました。これは、「コラテジェン®」の販売を開始したことによるものであります。
b. 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(千円)前年同期比(%)受注残高(千円)前年同期比(%)
医薬品174,245△54.5
合計174,245△54.5

(注) 1 金額には、消費税等は含まれておりません。
2 当連結会計年度において、受注実績に著しい変動がありました。これは、「ナグラザイム®」の販売が終了したことによるものであります。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(千円)前年同期比(%)
医薬品326,759△46.4
合計326,759△46.4

(注) 1 金額には、消費税等は含まれておりません。
2 当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは、前連結会計年度において非臨床試験データを販売したこと及び当連結会計年度において「ナグラザイム®」の販売が終了したことによるものであります。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。
相手先前連結会計年度当連結会計年度
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
田辺三菱製薬株式会社154,17047.2
ティーエスアルフレッサ株式会社196,40432.291,08627.9
アルフレッサ株式会社186,44230.678,98824.2
A社227,20337.2

(注)当社とA社との契約においては、 秘密保持条項が存在するため、社名の公表は控えさせて頂きます。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、本報告書「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。連結財務諸表及び注記事項等の作成上、必要な会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、創薬系バイオベンチャーとして、次世代のバイオ医薬品である遺伝子医薬(DNAプラスミド
製剤、核酸医薬)や治療ワクチンなどの医薬品開発と製造販売の事業を推進しております。
当連結会計年度において、国内の慢性動脈閉塞症における潰瘍に対する条件及び期限付製造販売承認を取得し、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の販売を開始し、さらに同製品の適応拡大を目的として安静時疼痛に対する第Ⅲ相臨床試験を開始いたしました。また米国において下肢潰瘍を有する慢性動脈閉塞症を対象とした第Ⅱb相臨床試験を開始いたします。NF-κBデコイオリゴDNAにつきましては椎間板性腰痛症に対する第Ⅰb相臨床試験を、また高血圧DNAワクチンについては第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験を海外で進めております。これらの既存プロジェクトに加え、戦略的提携先との共同開発や他社への資本参加等による開発品パイプライン拡充により、遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指してまいります。
当連結会計年度においては、HGF遺伝子治療用製品を中心とする遺伝子医薬品の研究開発を進めるとともに、戦略的提携先との共同開発を進めるなど、将来の成長を見据えた事業の深化を図ってまいりました。
当連結会計年度の事業収益は3億26百万円(前年同期比2億83百万円(△46.4%)の減収)となりました。当社グループでは、提携企業からの契約一時金及びマイルストーンを研究開発事業収益に計上しております。また、ムコ多糖症Ⅵ型治療薬「ナグラザイム®」の販売収入につきまして、商品売上高に計上しております。当連結会計年度よりHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の販売を開始し、製品売上高に計上しております。
当連結会計年度においては、商品売上高が1億70百万円(前年同期比2億12百万円(△55.6%)の減収)、製品売上高が4百万円(前年同期比4百万円(-%)の増収)、研究開発事業収益が1億52百万円(前年同期比74百万円(△32.9%)の減収)となっております。HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の販売開始により、製品売上高及びマイルストーン収入が計上されております。なお、2019年6月をもって、ムコ多糖症Ⅵ型治療薬「ナグラザイム®」の販売は終了いたしました。
当連結会計年度における事業費用は、35億96百万円(前年同期比78百万円(△2.1%)の減少)となりました。当連結会計年度における売上原価は、87百万円(前年同期比1億円(△53.7%)の減少)となりました。これは、ムコ多糖症Ⅵ型治療薬「ナグラザイム®」の販売が終了したことによるものです。
研究開発費は22億15百万円(前年同期比3億24百万円(△12.8%)の減少)となりました。原材料の評価替及び廃棄が減少したことに伴い、研究用材料費が1億95百万円減少しております。主に海外提携先との共同開発費用の減少等により、外注費が1億8百万円減少しております。当社グループのような研究開発型バイオベンチャー企業にとって研究開発は生命線でありますので、提携戦略により財務リスクの低減を図りながら、今後も研究開発投資を行っていく予定です。研究開発の詳細については、本報告書「第2 事業の状況 5 研究開発活動」をご参照ください。
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は12億94百万円(前年同期比3億47百万円(+36.6%)の増加)となりました。主にHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の販売に向けた費用の発生及び新規事業へのコンサルタント契約に伴い、支払手数料が1億41百万円増加しております。ストック・オプションの付与により、株式報酬が70百万円増加しております。法人事業税の資本割額が増加したことより、租税公課が45百万円増加しております。
この結果、当連結会計年度の営業損失は32億70百万円(前年同期の営業損失は30億65百万円)となり、前年同期より2億4百万円損失が拡大しております。
当連結会計年度の経常損失は、32億93百万円(前年同期の経常損失は30億96百万円)となりました。主に外貨普通預金の評価替により、為替差益が9百万円発生しております。新株予約権の行使に伴う株式交付費が41百万円発生しております。
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は、37億50百万円(前年同期の親会社株主に帰属する当期純損失は29億96百万円)となりました。保有する有価証券の評価額の下落に伴い、投資有価証券評価損が4億68百万円発生しております。前年同期においては、有価証券の売却に伴う投資有価証券売却益31百万円が発生しておりましたが、当期においては発生しておりません。また、退職によるストック・オプションの権利失効に伴う新株予約権戻入益10百万円が発生し、前年同期と比べて51百万円減少しております。
当連結会計年度末の総資産は125億24百万円(前連結会計年度末比44億73百万円の増加)となりました。
新株予約権の行使に伴う77億18百万円の入金はありましたが、当期事業費用への充当により、現金及び預金の増加は42億55百万円となっております。ムコ多糖症Ⅵ型治療薬「ナグラザイム®」の販売が終了し、商品売上高にかかる売掛金が入金されたこと等により、売掛金が2億54百万円減少しております。主に原材料の評価替及び臨床試験への使用に伴い、原材料及び貯蔵品が3億58百万円減少しております。外注試験が終了し費用に振り替えたことにより、前渡金が1億92百万円減少しております。これにより、流動資産は34億50百万円の増加となりました。 当連結会計年度末の固定資産は15億32百万円(前連結会計年度末比10億23百万円の増加)となりました。今後の成長に向けた開発品パイプラインのさらなる拡充を目指してEmendo Biotherapeutics社及びMyBiotics Pharma社へ投資したこと等により、投資有価証券が10億17百万円増加しております。 当連結会計年度末の負債は4億69百万円(前連結会計年度末比1億53百万円の増加)となりました。主に海外提携先との研究開発費用等の計上により、買掛金が70百万円増加しております。海外提携先からの研究費用の預かりにより、預り金が54百万円増加しております。 純資産は120億55百万円(前連結会計年度末比43億20百万円の増加)となりました。新株予約権の行使により、資本金及び資本剰余金がそれぞれ38億96百万円増加しております。保有する有価証券の評価差額を特別損失に計上したことに伴い、その他有価証券評価差額金が2億43百万円増加しております。親会社株主に帰属する当期純損失37億50百万円の計上により、利益剰余金が減少しております。ストック・オプションの付与により、新株予約権が38百万円増加しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの事業活動における資金需要は、プロジェクト推進のための研究開発費需要と会社運営のための運転資金需要があります。これらの資金需要に対して、主に新株予約権によるエクイティファイナンスによって資金調達を行っております。
(3) 事業等のリスクに記載した重要事象等についての分析・検討及び当該重要事象等を解消し、又は改善するための対応策
医薬品事業は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、創薬ベンチャーである当社グループにおいては、継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあります。そのため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
当社グループは当該状況を解消すべく、下記を重要な課題として取り組んでおります。
① 自社既存プロジェクトの推進と事業基盤の拡大
当社グループは慢性動脈閉塞症を対象としたHGF遺伝子治療用製品、椎間板性腰痛症向けの核酸医薬(NF-κBデコイオリゴDNA)、高血圧DNAワクチンの3プロジェクトを推進しております。HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」は国内初の遺伝子治療用製品として2019年3月に条件及び期限付承認を厚生労働省から取得し、同年9月より販売を開始いたしました。今後は国内での同製品の適用拡大のための臨床試験及び米国での慢性動脈閉塞症を対象とした臨床試験を進めてまいります。また、現在海外で臨床試験を進めております椎間板性腰痛症向けの核酸医薬(NF-κBデコイオリゴDNA)、高血圧DNAワクチンを含めた3プロジェクトを推進しており、良好な結果が得られましたら早期に製薬企業等へ導出を図ることで契約一時金等の収入や開発費の負担軽減を目指してまいります。
これらの既存プロジェクトに加え、ライセンス導入や共同開発、創薬プラットフォーム技術の獲得を目指した事業提携に加え、他社に対する一部資本参加や他社の買収等により開発品パイプラインの拡充による事業基盤の拡大を図り、将来の成長を実現してまいります。
② 開発プロジェクトにおける提携先の確保
当社グループでは、開発プロジェクトのリスクを低減するために、製薬会社と提携し、契約金・マイルストーンや開発協力金を受け取ることにより財務リスクを低減しながら開発を進めるという提携モデルを基本方針としております。
「コラテジェン®」については、米国と日本を対象とした独占的販売契約を田辺三菱製薬株式会社と締結しており、マイルストーン収入やロイヤリティ収入が見込めます。また椎間板性腰痛症向けの核酸医薬(NF-κBデコイオリゴDNA)、高血圧DNAワクチンにつきましては臨床試験を実施しており、良好な結果が得られましたら早期に製薬企業等に導出することで契約一時金等を得ることにより開発費の負担削減を目指してまいります。
今後も、製薬会社との提携を進めることにより、事業基盤の強化に努めてまいります。
③ 資金調達の実施開発
2018年10月11日に発行した三田証券株式会社を割当先とする第33回新株予約権(第三者割当て)について2019年5月までに全数が行使され、当連結会計年度において77億18百万円(発行日からの累計で105億66百万円)を調達いたしました。また、2020年2月17日開催の取締役会において、第37回新株予約権(第三者割当て)(行使価額修正条項付)の発行を決議いたしました。今後も財務基盤の安定化を図ってまいります。
これら諸施策の実施により、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。