有価証券報告書-第22期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/31 9:38
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【項目】
140項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社3社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
① 経営成績及び財政状態の概要
当社グループでは、提携企業からの契約一時金、マイルストーンを研究開発事業収益に計上しております。また、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の販売収入につきまして製品売上高に計上しております。
この結果、当連結会計年度における事業収益は39百万円(前期比2億86百万円(△87.8%)の減収)、経常損失は66億18百万円(前年同期の経常損失は32億93百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は42億9百万円(前連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は37億50百万円)となっております。
財政状態につきましては、当連結会計年度末の総資産は383億54百万円(前連結会計年度末比258億30百万円の増加)となりました。現預金は新株予約権の行使等により115億37百万円(前連結会計年度末比14億96百万円の増加)となりました。負債は56億74百万円(前連結会計年度末比52億5百万円の増加)となりました。純資産は326億79百万円(前連結会計年度末比206億24百万円の増加)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ14億96百万円増加し、115億37百万円となりました。当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の減少は、29億61百万円(前年同期は21億79百万円の減少)となりました。前受金が35億94百万円、仕入債務が3億6百万円、未払金が2億80百万円増加しましたが、税金等調整前当期純損失42億4百万円に加え、前渡金が8億87百万円、たな卸資産が5億53百万円、未収消費税等が1億73百万円増加しております。その結果、前年同期と比べ、7億81百万円の支出増加となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、69億63百万円(前年同期は12億49百万円の減少)となりました。Emendo社株式の取得により、投資有価証券の取得による支出54億43百万円が発生しております。Emendo社への短期貸付による支出が21億70百万円発生しております。Emendo社を新規連結したことに伴い、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入が8億15百万円発生しております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の増加は、114億3百万円(前年同期は76億76百万円の増加)となりました。新株予約権の発行による収入が73百万円、新株予約権の行使による株式の発行による収入が113億31百万円発生しております。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(千円)前年同期比(%)
医薬品△100.0
合計△100.0

(注) 当連結会計年度において、生産実績に著しい変動がありました。これは、当連結会計年度において「コラテジェン®」の生産がなかったためです。
b. 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(千円)前年同期比(%)受注残高(千円)前年同期比(%)
医薬品39,998△77.0
合計39,998△77.0

(注) 1 金額には、消費税等は含まれておりません。
2 当連結会計年度において、受注実績に著しい変動がありました。これは、「ナグラザイム®」の販売が終了したことによるものであります。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(千円)前年同期比(%)
医薬品39,998△87.8
合計39,998△87.8

(注) 1 金額には、消費税等は含まれておりません。
2 当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは、前連結会計年度においてマイルストーン収入を計上したこと及び「ナグラザイム®」の販売が終了したことによるものであります。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。
相手先前連結会計年度当連結会計年度
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
田辺三菱製薬株式会社154,17047.239,998100.0
ティーエスアルフレッサ株式会社91,08627.9
アルフレッサ株式会社78,98824.2


(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、本報告書「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。連結財務諸表及び注記事項等の作成上、必要な会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、創薬系ベンチャーとして、次世代のバイオ医薬品である遺伝子医薬(DNAプラスミド製剤、核酸医薬)や治療ワクチンなどの医薬品開発と製造販売の事業を推進しております。
当連結会計年度において、国内の慢性動脈閉塞症における潰瘍に対する条件及び期限付き製造販売承認を取得しているHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の販売を継続し、さらに同製品の適応拡大を目的として安静時疼痛に対する第Ⅲ相臨床試験を実施し、米国においては2020年2月より下肢潰瘍を有する慢性動脈閉塞症を対象とした第Ⅱb相臨床試験を開始いたしました。NF-κBデコイオリゴDNAにつきましては椎間板性腰痛症に対する第Ⅰb相臨床試験を実施し、安全性が確認され、患者の腰痛に対し著しい軽減とその効果の持続が認められ、有効性も確認できました。また高血圧DNAワクチンについては第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験を海外で進めておりますが、投与後の経過観察期間を経て、初期の試験結果の評価を行い、安全性に問題がないこと、アンジオテンシンⅡに対する抗体産生を認めました。
また、2020年3月より新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの開発を開始し、第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験を国内で進めております。また、カナダのVasomune社と共同開発しているAV-001を2020年12月より新型コロナウイルス感染症治療薬として健康成人を対象として米国において第Ⅰ相臨床試験を実施し、安全性と忍容性を認め、良好な結果を確認しました。引き続き、第Ⅱ相臨床試験の準備を進めます。
これらの既存プロジェクトに加え、ゲノム創薬を推進するため、新規ゲノム編集技術と開発パイプラインを有するEmendo社を子会社化し、戦略的提携先との共同開発や他社への資本参加等による開発品パイプライン拡充により、“遺伝子医薬のグローバルリーダー”を目指してまいります。
当連結会計年度の事業収益は39百万円(前年同期比2億86百万円(△87.8%)の減収)となりました。当社グループでは、提携企業からの契約一時金、マイルストーンを研究開発事業収益に計上しております。また、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®筋注用4mg(以下「コラテジェン®」といいます。)」の販売収入につきまして、製品売上高に計上しております。
2019年6月をもってムコ多糖症Ⅵ型治療薬「ナグラザイム®」の販売が終了したため、当連結会計年度において商品売上高は計上がありませんでした(前年同期は1億70百万円)。研究開発事業収益も計上がありませんでした(前年同期は1億52百万円)。2019年9月よりコラテジェン®の販売を開始しており、当連結会計年度において製品売上高を39百万円計上いたしました(前年同期は4百万円)。
当連結会計年度における事業費用は、56億39百万円(前年同期比20億42百万円(+56.8%)の増加)となりました。売上原価は、23百万円(前年同期比64百万円(△73.6%)の減少)となりました。研究開発費は37億96百万円(前年同期比15億81百万円(+71.4%)の増加)となりました。当連結会計年度において、米国におけるHGF遺伝子治療用製品の下肢潰瘍を有する閉塞症動脈硬化症を対象とした第Ⅱb相臨床試験を開始し治験費用が発生したこと、及び新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチン開発に伴い、外注費が12億59百万円、消耗品費が2億41百万円、研究用材料費が94百万円増加しております。当社グループのような研究開発型バイオベンチャー企業にとって研究開発は生命線でありますので、提携戦略により財務リスクの低減を図りながら、今後も研究開発投資を行っていく予定です。研究開発の詳細については、本報告書「第2 事業の状況 5 研究開発活動」をご参照ください。
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は18億20百万円(前年同期比5億25百万円(+40.6%)の増加)となりました。前年同期と比較して、EmendoBio Inc.及び同社の子会社であるEmendoBio Research and Development Ltd.(以下「Emendo社」と総称します。)を完全子会社化した際のコンサルティング費用及び弁護士報酬を計上したこと等により、支払手数料が4億65百万円増加しております。法人事業税の資本割額が増加したことにより、租税公課が1億39百万円増加しております。一方で、新型コロナウイルス感染症拡大による出張の自粛等により、旅費交通費が47百万円減少しております。前年同期において当社取締役及び従業員に対する株式報酬型ストック・オプション(新株予約権)を発行し、株式報酬88百万円を計上しておりましたが、当連結会計年度においては48百万円の計上となっております(前年同期比40百万円の減少)。この結果、当連結会計年度の営業損失は55億99百万円(前年同期の営業損失は32億70百万円)となり、前年同期より23億29百万円損失が拡大しております。
当連結会計年度の経常損失は、66億18百万円(前年同期の経常損失は32億93百万円)となりました。新株予約権の発行及び行使に伴う株式交付費が1億17百万円発生し、前年同期に比べ76百万円増加しております。第1四半期連結会計期間よりEmendo社が持分法適用会社となり、持分法による投資損失が9億9百万円発生しております。
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は、42億9百万円(前年同期の親会社株主に帰属する当期純損失は37億50百万円)となりました。Emendo社を完全子会社化したことに伴い、段階取得に係る差益が24億28百万円発生しております。ストック・オプションの権利行使期間終了による権利失効に伴い、新株予約権戻入益が5百万円発生しております。前年同期においては、投資有価証券評価損を4億68百万円計上しておりましたが、当連結会計年度においては発生しておりません。Emendo社への持分比率の変動により、持分変動損失を20百万円計上しております。
当連結会計年度末の総資産は383億54百万円(前連結会計年度末比258億30百万円の増加)となりました。
現金及び預金においては、新株予約権の発行及び行使に伴う114億69百万円の入金及びEmendo社を新規連結したことに伴う増加はありましたが、Emendo社株式の取得及び当期事業費用への充当により、前連結会計年度末比14億96百万円増加して115億37百万円となりました。主に新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの製造に係る費用を前払いしたことに伴い、前渡金が8億86百万円増加しております。コラテジェン®の原薬を製造したことに伴い、原材料及び貯蔵品が5億76百万円増加しております。流動資産は31億74百万円増加し141億66百万円となりました。
有形固定資産においては、主に研究開発設備への投資及びEmendo社を新規連結したことに伴い、建物が73百万円、工具器具及び備品が1億12百万円増加しております。無形固定資産においては、Emendo社を完全子会社化したしたことにより、のれんを227億13百万円計上しております。投資その他の資産においては、主にEmendo社を完全子会社化したことにより、投資有価証券が3億43百万円減少し、10億75百万円となりました。これにより、固定資産は226億55百万円増加し、241億87百万円となっております。
当連結会計年度末の負債は56億74百万円(前連結会計年度末比52億5百万円の増加)となりました。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)より採択された「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」及び厚生労働省より採択された「ワクチン生産体制等緊急整備事業」に関する助成金が入金され、前受金に35億94百万円を計上しております。Emendo社を完全子会社化した際の費用の計上及びEmendo社を新規連結したことに伴い、未払金が11億28百万円増加しております。新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの開発に係る費用の計上により、買掛金が3億31万円増加しております。
純資産は326億79百万円(前連結会計年度末比206億24百万円の増加)となりました。第三者割当増資、新株予約権の発行及び行使により、資本金が113億20百万円増加し、新株予約権が49百万円増加しております。増資及びEmendo社を新規連結したことに伴い、資本剰余金が136億49百万円増加しております。保有する有価証券の評価差額を計上したことに伴い、その他有価証券評価差額金が64百万円増加しております。Emendo社株式持分の円換算額の計上により、為替換算調整勘定が2億50百万円減少しております。親会社株主に帰属する当期純損失42億9百万円の計上により、利益剰余金が減少しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの事業活動における資金需要は、プロジェクト推進のための研究開発費需要と会社運営のための運転資金需要があります。これらの資金需要に対して、主に新株予約権によるエクイティファイナンスによって資金調達を行っております。