有価証券報告書-第25期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

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2020/03/26 13:04
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、各種経済政策を背景に企業収益の改善や個人消費の持ち直し及び雇用情勢の改善など回復基調で推移したものの、中東地域を巡る情勢が世界経済へ与える影響や海外経済の不確実性の存在など、先行きについては引き続き不透明な状況が続いております。
当社グループの主力であるブライダル市場においては、2019年度の婚姻件数が58万3千組(2018年度は58万6千組 前年比0.6%減 厚生労働省「人口動態統計」)と推計され、2018年度に比較し減少率は鈍化(2018年度 前年比3.4%減)しましたが、少子化の影響が徐々に顕在化しております。一方、一組当たりの婚礼費用は晩婚化を背景に堅調に推移しており、マーケット環境については概ね底堅い状況が継続しております。また、ホテル市場においても、訪日外国人数が3,188万人(2018年度は3,119万人 前年比2.2%増 日本政府観光局)と増加率は鈍化(2018年度 前年比8.7%増)したものの引き続き訪日者数の増加に加え、国内景気も回復基調にあることから拡大傾向が継続いたしました。リラクゼーション関連市場は、市場全体としての伸びは鈍化が見られますが、従来の底堅さに加え、美容・健康への関心の高まりを背景に安定した状況で推移いたしました。
このような環境の中、当社グループはブライダル市場、ホテル市場並びにW&R市場における新たな価値の創造、高品質かつ魅力あふれる店舗づくりと付加価値の高いサービスの提供に取り組み、個性化・多様化するお客様のニーズに的確に対応することで、売上高の拡大と収益性の向上に努めてまいりました。
当該方針に基づき、当連結会計年度のホテル事業においては東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、「キンプトン新宿 ホテル」(仮称)(東京都新宿区)の開業準備、「ストリングスホテル東京インターコンチネンタル」(東京都品川区)の大規模改装、また、「ストリングスホテル 八事 NAGOYA」(名古屋市昭和区)の改装及びリブランドの実施など新たな価値創造、更なるホスピタリティ・クオリティの向上に注力いたしました。
婚礼事業においては、当社グループの婚礼に係る主力商品である写真・映像・装花・音響等ウェディングコンテンツの内製化の拡充、当該コンテンツの外販事業を推進いたしました。また、W&R事業においては、9月に総合フィットネスクラブ「BEST STYLE FITNESS 京都烏丸」(京都市中京区)を開業するなど今後の収益・事業エリアの拡大を進めてまいりました。
この結果、当連結会計年度の経営成績等は以下のとおりとなりました。
イ. 財政状態
当連結会計年度末における資産総額は、前連結会計年度末に比べ8,502百万円増加し、99,343百万円となりました。
当連結会計年度末における負債総額は、前連結会計年度末に比べ8,179百万円増加し、61,939百万円となりました。
当連結会計年度末における純資産総額は、前連結会計年度末に比べ322百万円増加し、37,404百万円となりました。
ロ. 経営成績
当連結会計年度の売上高は、61,121百万円(前年同期比1.5%増)となり、利益面につきましては、営業利益6,383百万円(同21.6%増)及び経常利益6,222百万円(同18.4%増)と増収増益となりました。一方、保有する一部の資産に収益性の悪化に伴う減損の兆候が見られたことから、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき今後の事業計画及び回収可能性を検討した結果、特別損失において減損損失1,015百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は2,565百万円(同5.8%増)にとどまりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。
(婚礼事業)
当連結会計年度においては、主力である国内婚礼において施行組数の増加や施行単価が堅調に推移したこと及び外販事業の推進等により婚礼事業売上高は増加しました。利益面につきましては、主に婚礼に係る各商材(写真・映像・装花・音響等)の内製化を推進したことによりセグメント利益は大きく増加しました。
この結果、当セグメントの売上高は39,414百万円(前年同期比3.4%増)、セグメント利益は7,797百万円(同23.1%増)となりました。
(ホテル事業)
当連結会計年度においては、宿泊部門において稼働率・単価は堅調に推移しましたが、ホテル婚礼の施行組数が減少したこと及び「ストリングスホテル東京インターコンチネンタル」、「ストリングスホテル 八事 NAGOYA」の大規模改装に伴う販売可能客室数の減少により、ホテル事業売上高は減少しました。利益面につきましても、「キンプトン新宿 ホテル」(仮称)の開業準備費用の発生及び売上高減少の影響によりセグメント利益は半減いたしました。
この結果、当セグメントの売上高は17,768百万円(同2.6%減)、セグメント利益は477百万円(同51.3%減)となりました。
(W&R事業)
当連結会計年度においては、昨年12月に開業した総合フィットネスクラブ「BEST STYLE FITNESS 海浜幕張」が通期稼動したこと及び9月に「BEST STYLE FITNESS 京都烏丸」の開業によりW&R売上高は増加しましたが、利益面につきましては、新店開業費の発生及び一部の店舗においてフィットネス会員の取り込みが予定より下回ったことにより損失の結果となりました。
この結果、当セグメントの売上高は3,939百万円(同2.6%増)、セグメント損失は229百万円(前年同期はセグメント損失426百万円)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べ4,141百万円増加し、28,259百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの変動要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は7,297百万円(前年同期比20.6%増)となりました。これは主に、法人税等の支払額が2,449百万円ありましたが、減価償却費が3,140百万円及び税金等調整前当期純利益が5,122百万円となったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は12,838百万円(前年同期は375百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が10,969百万円あったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は9,686百万円(前年同期比161.5%増)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出が3,400百万円及び社債の償還による支出が590百万円ありましたが、長期借入れによる収入が11,990百万円及び社債の発行による収入が2,689百万円となったことによるものであります。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー関連指標の推移は次のとおりであります。
2015年
12月期
2016年
12月期
2017年
12月期
2018年
12月期
2019年
12月期
自己資本比率(%)39.638.540.539.137.7
時価ベースの
自己資本比率(%)
47.739.337.531.329.3
キャッシュ・フロー対
有利子負債比率(年)
6.25.85.06.66.1
インタレスト・
カバレッジ・レシオ(倍)
24.827.233.926.317.3

(注) 自己資本比率 :自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率 :株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー/利払い
1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
③ 施行、受注及び販売の実績
イ. 婚礼施行実績
当連結会計年度の婚礼施行実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
セグメントの名称施行件数(件)前年同期比(%)
婚礼事業12,38596.7
ホテル事業1,61194.1
合計13,99696.4

ロ. 婚礼受注状況
当連結会計年度の婚礼受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
セグメントの名称受注件数(件)前年同期比(%)受注件数残高(件)前年同期比(%)
婚礼事業11,78490.86,51891.6
ホテル事業1,46382.41,03187.4
合計13,24789.87,54991.0


ハ. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
婚礼事業39,414103.4
ホテル事業17,76897.4
W&R事業3,939102.6
合計61,121101.5

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性の存在により、これら見積りと異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等
イ. 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における資産総額は、前連結会計年度末に比べ8,502百万円増加して、99,343百万円となりました。これは主に、連結子会社であったBT KALAKAUA,LLC株式の一部売却に伴う持分減少により連結子会社から除外された結果、建物及び構築物が3,162百万円、土地が5,979百万円それぞれ減少した一方、「キンプトン新宿 ホテル」(仮称)の建設工事により建設仮勘定が7,864百万円、余資運用により投資有価証券が4,164百万円及び資金調達等により現金及び預金が4,141百万円それぞれ増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債総額は、前連結会計年度末に比べ8,179百万円増加して、61,939百万円となりました。これは主に、設備投資に係る資金調達により長期借入金(1年内返済予定含む)が3,039百万円及び社債(1年内償還予定含む)の発行により2,110百万円それぞれ増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産総額は、前連結会計年度末に比べ322百万円増加して、37,404百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が2,088百万円増加しましたが、連結子会社から除外されたことにより非支配株主持分が1,533百万円減少したことによるものであります。
なお、自己資本比率は前連結会計年度末と比較して1.4ポイント低下し、37.7%となりました。
ロ.経営成績
当社グループは売上高、営業利益及び経常利益を経営における重要指標と位置付けております。当連結会計年度における計画に対する実績の達成状況は次のとおりであります。
実績計画計画比
売上高(百万円)61,12163,000△1,878△3.0%
営業利益(百万円)6,3835,500+883+16.1%
経常利益(百万円)6,2225,560+662+11.9%

売上高につきましては、繁忙期である第4四半期会計期間(主に10月~11月)の婚礼事業及びホテル事業の婚礼施行件数が計画に比し減少したことにより、計画比1,878百万円減少の61,121百万円と未達となりました。これは主に、第1四半期会計期間の受注件数が計画に比し減少したこと等によるものであります。
利益面につきましては、婚礼事業及びホテル事業において婚礼商材(主に写真・映像・装花等)の内製化を推進した効果により売上原価が圧縮されたこと、コストダウン施策の効果により販売費及び一般管理費が計画に対し減少したこと等により、営業利益は計画比883百万円増加し6,383百万円、経常利益につきましても同要因により計画比662百万円増加し6,222百万円と利益面に関しては達成いたしました。
今後につきましては、婚礼商材の内製化を計画的に推進することによる更なるコストダウン及びIT技術導入による業務効率化を図ることで業績及び企業価値の向上に努めてまいります。
ハ. キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第一部[企業情報]第2[事業の状況]2[事業等のリスク]」で述べましたとおり、協力会社を含めた時代変化に対応しうるサービス(ソフトまたは人材)の品質確保、及びそれに付随するコストの変化、ブライダル市場の縮小を招くような冠婚葬祭等社会文化の著しい変化、出店予定地の確保等が、経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
④ 経営戦略の現状と見通し
当社グループは、安定的かつ継続的に成長できる企業体であり続けるために、財務体質の強化を図りつつ、収益性を総合的に向上させるべく5つの基本戦略を掲げております。
イ. 出店戦略
持続可能な成長を遂げるため、当社グループは今後も綿密なマーケティング分析による出店地選定と施設計画に基づいた出店を行います。出店対象商圏としては、景気動向や都市化による人口減の影響を受けにくく、将来的に安定した需要が見込める東京都心部・大阪並びに名古屋中心部等の大都市圏を中心に、それぞれの都市圏におけるエリアシェア戦略に基づいたポートフォリオを構築します。エリアシェア戦略は、単に出店数を目標値とするのではなく、エリアの人材育成状況や、経営方針に基づく出店・運営構想とも連動しながら計画しています。
また、既存のゲストハウスにつきましても3年程度のサイクルでリニューアルを行い、常に新鮮さと品質を維持することで、顧客獲得率の安定化を図っております。
ロ. 商品開発力
当社グループに蓄積した経験・ノウハウと多くの取引先企業による高水準のサービスとを融合させることにより、お客様の趣味や趣向を高いレベルで実現できる商品とサービスの提供を目指します。
ハ. 提案力及び販売力
お客様の多様なニーズ=「夢」を的確に捉え、その「実現」のための商品提案力と販売力の向上を目指します。顧客サービス充実のための婚礼演出力強化が同業他社との差別化に繋がるものと考え、各スタッフのサービス提案力向上のための教育研修制度を確立することで、今後も更に高いレベルの人材の開発に力を入れてまいります。
また当社の商品告知・広告戦略は結婚情報誌等への有料広告に大きく依存しており、同業他社との受注競争に勝つためには、より魅力ある広告制作が必須となります。当社グループは、ゲストハウスのデザイン、サービス内容等を最大限にアピールするため、写真を中心とした魅力的な誌面づくりに取り組んでおります。また併行し、インターネット等、新たな集客媒体の開拓についても積極的に行っております。
海外挙式につきましては、集客力並びに成約率の向上を図るために、国内における集客拠点であります海外サロン並びに販売チャンネルの強化を図っております。
ニ. 利益率向上
高い収益性を確保するために、経営の合理化と業務効率の向上を図ります。
ホ. 資金調達
健全な財務体質の維持、資本効率の向上、株式価値の希薄化等への十分な配慮を行い、資本コストを重視した資金調達を実行します。
今後の事業戦略につきましては、婚礼事業国内部門におきましては、様々な挙式スタイルへ対応すると同時に、多様なコンセプトの披露宴スタイルを提供し、運営受託型ビジネス・再生型ビジネス等多様な事業形態により、財務基盤を健全化しつつ、安定的かつ高利益率の事業ポートフォリオを構築してまいります。
ホテル事業につきましては、「ホテル婚礼」における高単価顧客の取り込み、ゲストハウスとホテルを融合させた従来にない全く新しい価値を持った複合施設の出店を行ってまいります。
海外事業につきましては、ハワイにおいては大聖堂挙式・ハウスウエディング等多様化する顧客ニーズに対応した挙式の提供、また海外事業全体として直営プロデュースを通じ、クオリティ・ブランド力を提供することで、デスティネーション・ウエディングへの取組みを継続・強化してまいります。
W&R事業につきましては、既存店のリモデルによる店舗の活性化、女性が生き生きと輝くための「美」「健康」をサポートするフィットネス事業の開発を行ってまいります。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
所要資金の調達方針及び流動性管理について
当社グループの所要資金は、大きく分けて設備投資資金及び経常運転資金となっております。これら所要資金のうち、設備投資資金につきましては、ホテルやゲストハウス等の建物のための設備資金を中心としており、主に社債の発行、長期借入金等により資金調達を行っております。また、経常運転資金については、資金需要時期に銀行からの短期借入により調達しております。
現状、当社グループ婚礼事業における「前回収、後支払」という事業形態の性質上、通常の運転資金につきましては自己資金で対応できておりますが、更なる営業キャッシュフローの増大に向けて、販売の拡大と仕入コストの削減に取り組み、充分な流動性を維持していく方針であります。
⑥ 経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「第一部[企業情報]第2[事業の状況]1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等]」に記載のとおり、当社グループ既存ターゲットから派生するゲストハウスの追加出店をエリア展開するのみならず、婚礼スタイル・価格帯・人数等、より多様化する社会ニーズに応えるための、ターゲット別ポートフォリオを構築していくことであります。当社グループの今後の出店計画、人材の確保と育成は、既存事業所の事業計画の枠に捉われず、ターゲット別に構築された事業計画に沿った出店形態やコストの考え方に基づき、より多様化し柔軟性を高めてまいります。