四半期報告書-第22期第2四半期(令和4年4月1日-令和4年6月30日)

【提出】
2022/08/15 16:06
【資料】
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【項目】
39項目
文中の将来に関する事項は、当第2四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
新型コロナウイルスの蔓延、サプライチェーンの混乱、世界的なインフレーションの進行、資本市場におけるボラティリティの高まりなどにより、2022年第2四半期は全世界的に医薬品業界にとって大変厳しい状況が続きました。上海でのロックダウンは緩和されたものの、新型コロナウイルスの蔓延により中国での事業活動は多くの制約を受け続けました。一方、米国では、正常な経済活動に戻りつつありますが、急激なインフレーションの進行により、事業活動の見通しを立てるのが難しくなっております。これらのマクロ経済要因は、当社グループの2022年第2四半期連結累計期間の業績に様々な影響を及ぼしました。
このような厳しい環境にもかかわらず、当社グループの当第2四半期連結累計期間の売上収益は、前年同期比26.1%増の8,154,817千円(現地通貨ベースでも、前年同期比約11%増)となりました。売上収益増加は、円安進行が要素ではあるものの、主要連結子会社が数々のマクロレベルの逆風の中での健闘によるものであります。利益面では、当第2四半期連結累計期間の営業利益は、前年同期比31.0%減の1,004,668千円となりました。この減少は、為替の影響を除外した機能通貨ベースでは、当社グループの主力である中国の主要子会社において、研究開発費は上海における厳しいロックダウン下の行動制限等の影響により前年同期比15.1%減少となりましたが、より金額の大きい販売費及び一般管理費が、上場関連費用(約111,000千円)の計上他により前年同期比13.5%増となったことによります。また、米国の主要医薬品子会社においても、同様に機能通貨ベースでは前年同期比で研究開発費はほぼフラットでしたが、販売費及び一般管理費が82.6%増加したことが大きく影響いたしました。当社グループの第2四半期連結累計期間の税引前利益につきましては、前年同期比34.0%減の790,388千円となりました。この減少要因は、Cullgen Inc. (以下Cullgenという。)が2020年に行った資金調達に係る金融費用(本年第2四半期連結累計期間で累計約390,000千円)によるものです。第2四半期連結累計期間利益は前年同期比73.4%減の197,918千円となりましたが、親会社の所有者に帰属する当期利益は、そこまで影響を受けませんでした。
中国の子会社である北京コンチネント薬業有限公司(以下BCという。)の業績は、新型コロナウイルスによる困難な状況の中、前年同期比で堅調に推移いたしました。BCはアイスーリュイの製造・販売に加え、2022年6月13日に開示いたしました「じん肺治療薬ピルフェニドンカプセル(F647)の第Ⅲ層臨床試験における最初の被験者登録について」のお知らせどおり、アイスーリュイの適応拡大などの研究開発活動も着実に進展しております。また、BCは2022年7月11日に中国証券監督管理委員会より上場承認を取得し、香港証券取引所での上場に向けて鋭意準備を継続しています。しかしながら、BCの上場は香港証券取引所の承認や市場環境次第であり、進捗があれば、速やかに開示いたします。
米国の主要連結子会社であるBerkeley Advanced Biomaterials LLC (以下、BABという。)も新型コロナウイルスパンデミックから回復し、売上収益は前年同期と比べ、堅調に推移しましたが、現地通貨ベースにおいて、前年同期比で売上総利益は微減、営業利益は微増となりました。また、同社は、中国の連携先と東アジアへの販売拡大へ向けて協業を進めており、日本進出への可能性も模索しております。
Cullgenは、米国および中国にて、標的タンパク質分解誘導技術を利用した新薬パイプライン(8つの異なる新薬発見プログラムが進行中)の進展と拡大に向けて引き続き研究開発に邁進しております。Cullgenは、2022年4月末に中国国家薬品監督管理局に同社初のがん向け薬品のIND(新薬品の治験)を申請いたしましたが、2022年8月初旬に承認されました。
①セグメント別の経営成績
医薬品事業
当社グループの中核連結子会社であるBCの主力製品であるアイスーリュイの中国市場での売上収益は、中国でのロックダウンが引き続き行われたにもかかわらず、現地通貨ベースでも引き続き堅調に推移しました。結果、当社グループの医薬品事業セグメント全体の売上収益は、前年同期比28.0%増の6,989,504千円となりました。一方、セグメント利益は479,123千円(前年同期比55.0%減)となりました。この減少は、主に中国における営業力・マーケティング機能の強化や米・中における研究開発体制の拡充によるものであります。
医療機器事業
米国における医療機器事業セグメントは、現地通貨ベースではほぼ前年同期比で同等の業績となりました。
円ベースでは、円安の影響もあり、当第2四半期連結累計期間の売上収益は1,165,313千円(前年同期比15.5%
増)となりました。また、セグメント利益は、525,544千円(前年同期比34.7%増)となりました。
②販売費及び一般管理費並びに研究開発費
(単位:千円)
前第2四半期連結累計期間当第2四半期連結累計期間差額
販売費及び一般管理費△3,677,925△4,765,750△1,087,824
人件費△1,420,567△1,892,666△472,098
研究開発費△864,935△ 1,089,540△224,604

注:人件費には役員報酬は含みません。
当第2四半期連結累計期間の販売費及び一般管理費は、日本円ベースで4,765,750千円(前年同期比29.5%増)となりました。この販売費及び一般管理費の増加は、米・中双方の人件費および主に中国における営業・マーケティング費用の増加と上場準備費用によるものであります。
当第2四半期連結累計期間の研究開発費は、日本円ベースで1,089,540千円(前年同期比25.9%増)となりました。しかしながら、上記、(1)経営成績に関する分析で説明いたしました通り、この増加は円安によるものであります。現地通貨ベースでは、研究開発費は前年同期比で減少しております。この減少は、主に新型コロナウイルスによる経済活動の減速によるものであります。
③金融収益及び金融費用
(単位:千円)
前第2四半期連結累計期間当第2四半期連結累計期間差額
金融収益32,809175,775142,965
金融費用△290,762△390,055△99,292

金融収益
当第2四半期連結累計期間において、当社グループは175,775千円(前年同期比435.7%増)の金融収益を計上いたしました。この収益の増加は、主に円安傾向による為替差益の増加であります。
金融費用
当第2四半期連結累計期間において、当社グループは390,055千円(前年同期比34.1%増)の金融費用を計上いたしました。この費用は、主にCullgenの資金調達に関する金融費用であります。
(2)財政状態に関する分析
連結財政状態
(単位:千円)
前連結会計年度当第2四半期連結会計期間差額
資産合計30,296,98035,266,7954,969,815
負債合計11,030,73413,504,2942,473,560
資本合計19,266,24621,762,5012,496,255

資産合計
当第2四半期連結会計期間における資産合計は、35,266,795千円(前連結会計年度末比16.4%増)となりました。この増加は、設備の取得、資産計上開発費の増加、円安に伴うのれん等評価額の増加および事業活動の活発化による運転資本の増加によるものであります。
負債合計
当第2四半期連結会計期間における負債合計は、13,504,294千円(前連結会計年度末比22.4%増)となりました。この増加は、主にCullgenの資金調達に関する未払利息の追加計上によるものであります。
資本合計
当第2四半期連結会計期間における資本合計は、21,762,501千円(前連結会計年度末比12.9%増)となりました。主な要因は、在外営業活動体の換算差額と利益剰余金の増加であります。
連結キャッシュ・フロー
(単位:千円)
前第2四半期連結累計期間当第2四半期連結累計期間差額
営業活動によるキャッシュ・フロー1,100,855389,264△711,591
投資活動によるキャッシュ・フロー△1,006,877△1,496,808△489,931
財務活動によるキャッシュ・フロー2,906,178△267,292△3,173,471

営業活動によるキャッシュ・フロー
当第2四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、389,264千円(前年同期比64.6%減)の収入となりました。主な減少要因は、マーケティングおよび研究開発費用と法人所得税支払額の増加であります。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当第2四半期連結累計期間の投資活動によるキャッシュ・フローは、1,496,808千円(前年同期比48.6%増)の支出となりました。主な要因は、有形固定資産や無形資産の取得およびBCにおける長期性譲渡預金の取得に伴う支出であります。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当第2四半期連結累計期間の財務活動によるキャッシュ・フローは、267,292千円の支出(前年同期は2,906,178千円の収入)となりました。主な減少理由は、前年同期は複数の資金調達を行ったものの、当第2四半期連結累計期間は資金調達活動をしていないためであります。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第2四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更はありま
せん。また新たに生じた課題はありません。
(4)研究開発活動
[研究活動]
当社グループの創薬活動はCullgenを中心に、新しい創薬基盤技術であるuSMITE™(ユビキチン化を介した標的タンパク質分解誘導技術)を活用した、革新的な新規化学物質(NCE)の開発を目指しています。
Cullgenは、がん、痛み、及び自己免疫疾患の適応症に対する酵素及び非酵素タンパク質の両方を標的とした複数の新規分解剤を含む創薬パイプラインの拡充のための研究開発を進めております。
Cullgenの新しいE3リガンドプログラムの開発は、タンパク質分解誘導の将来を担う技術で、毒性の低減、薬剤耐性の緩和、組織・腫瘍・細胞内コンパートメントの選択性の提供、基質スペクトルの拡大を実現させるNCEの開発の可能性があると考えられております。
なお、Cullgenは、最初のがん候補薬のIND(Investigational New Drug、臨床試験実施のための申請)を中国国家薬品監督管理局(NMPA)に2022年4月末に提出し、2022年8月上旬に承認されました。米国でのFDA(Food and Drug Administration、食品医薬品局)との協議は積極的に継続しております。
[開発活動]
■アイスーリュイ[中国語:艾思瑞®、英語:ETUARY®(一般名:ピルフェニドン)]
糖尿病腎症(DKD)
アイスーリュイの3番目の適応症であるDKDは、Ⅰ型糖尿病またはⅡ型糖尿病により引き起こされる慢性腎臓病です。中国では9,240万人が糖尿病に脅かされており、このうち20~30%がⅠ型糖尿病またはⅡ型糖尿病を患い、腎機能障害を引き起こすと言われております。当社グループは、第Ⅰ相臨床試験の臨床データ収集を完了し、NMPAと次のフェーズの臨床試験に関して協議を続けております。
結合組織疾患を伴う間質性肺疾患(SSc-ILDおよびDM-ILD)
2016年9月、SSc-ILDおよびDM-ILDの治療に対するアイスーリュイの4番目の適応症のNMPA承認を受けました。このINDの承認により、全身性硬化症(強皮症、SSc-ILD)と皮膚筋炎(DM-ILD)の2つの適応症について、直接第Ⅲ相臨床試験に移行することが承認されました。
2018年6月には、強皮症(SSc-ILD)及びDM-ILDの治療を対象とした第Ⅲ相臨床試験の各段階において、無作為、二重盲検、プラセボ・コントロール、52週間の試験に第1期被験者を登録しました。強皮症(SSc-ILD)には144名、DM-ILDには152名の被験者が登録される予定であります。
じん肺治療薬(Pneumoconiosis, PD)
2019年5月、当社グループは、アイスーリュイの5番目の適応症として、じん肺治療薬の治験許可(IND)申請に対する承認をNMPAより取得しました。じん肺疾患は、肺に炎症や瘢痕化(線維化)を引き起こす慢性的な肺疾患で、吸い込まれた粉塵や微粒子が、肺の細胞に蓄積することによって引き起こされます。当社グループは、2022年1月にアイスーリュイのじん肺疾患適応のための第Ⅲ相臨床試験の承認を倫理委員会から取得し、2022年中に最初の被験者を登録する計画であります。
■F351(肝線維症等治療薬)
F351(一般名:ヒドロニドン)は、当社グループの医薬品ポートフォリオにおける重要な創薬候補化合物であり、他の世界の主要医薬品市場へ臨床開発活動を拡大する戦略の重要な部分を占めております。
F351は、アイスーリュイの誘導体である新規開発化合物であり、内臓の線維化に重要な役割を果たす肝星細胞の増殖及び、TGF-β伝達経路を阻害します。当社グループは中国、日本、豪州、カナダ、米国及び欧州各国を含む主要な国でのF351の特許権を保有しております。
2020年8月、当社は肝線維症の候補薬であるF351の中国における第Ⅱ相臨床試験の初期段階分析の良好な結果について発表しました。この試験は、中国における慢性ウイルス性B型肝炎患者の肝線維症に対するF351の安全性と有効性を評価する、無作為化、二重盲検、プラセボ・コントロール、多施設、用量逓増試験で、プラセボと比較して52週の治療で肝線維症スコアが統計的に有意に改善するという主要評価項目を満たしました。
なお、中国の医薬品評価センター(CDE)との協議を経て、2021年3月にF351はNMPAより肝線維症の画期的治療薬に指定されました。これにより、F351についてのCDEとの協議が優先的、かつ有利な臨床試験を進めることが可能となっております。その後、2021年7月29日に中国において第Ⅲ相臨床試験許可申請承認がされ、2022年1月17日、当社グループからも開示いたしました通り、第Ⅲ相臨床試験の最初の被験者登録が行われました。
F351のNASH(非アルコール性脂肪肝炎)に対する米国における第Ⅱ相臨床試験については、米国の当局と協議を継続しております。
■F573(急性肝不全(ALF)・慢性肝不全急性時(ACLF)治療薬)
F573はアイスーリュイ及びF351に次ぐ3番目の創薬候補化合物として、カスパーゼを阻害する可能性を持つ強いジペプチド化合物であり、急性肝不全(ALF)や慢性肝不全の急性憎悪(ACLF)に関連して発生するアポトーシスや炎症反応に重要な化合物です。2022年1月20日、第Ⅰ相臨床試験の最初の被験者への投与が行われました。