四半期報告書-第13期第3四半期(令和2年7月1日-令和2年9月30日)
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当社グループは、経常的な収益力を示す指標として事業利益を採用しております。
事業利益とは、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費並びに研究開発費を控除した額に持分法による投資損益を加減算した額であります。
(単位:百万円)
これまで当社グループは、「トータルヘルスケア企業」として、健康の維持・増進、病気の診断から治療までを担う企業活動を進めてまいりました。今後のニューノーマルという時代の中でも、健康意識の高まりを成長機会と捉え、今こそ「トータルヘルスケア企業」の真価を発揮し、引き続き持続的成長の実現に向け、進んでまいります。
当第3四半期連結累計期間は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、当社グループの事業活動も一定の影響を受けましたが、連結売上収益は1,066,959百万円(前年同四半期比3.7%増)と増収となりました。医療関連事業においては、患者の受診抑制や、手術件数の減少、病床稼働率の低下等により、輸液や一部の治療薬は影響を受けましたが、グローバル4製品(「エビリファイ メンテナ」、「レキサルティ」、「サムスカ/ジンアーク」、「ロンサーフ」)等の売上収益の増加が業績を牽引しました。ニュートラシューティカルズ関連事業においては、外出機会の減少や日本の天候不順等により、飲料の消費等が影響を受けましたが、健康の自己管理意識の向上とともに、「ネイチャーメイド」、デイヤフーズ社ブランドや「エクエル」等が伸長し、新型コロナウイルス感染症が拡大する中においても同事業の売上収益は前年同四半期並を確保しました。
また、経費効率化による効果もあり、研究開発費投資前事業利益は346,723百万円(同11.8%増)、「レキサルティ」、フチバチニブ、センタナファジン及びVIS649等に係る開発費が増加したことから研究開発費は158,059百万円(同2.7%増)となり、その結果、事業利益は188,663百万円(同20.7%増)となりました。
なお、当第3四半期において、グアデシタビン及びバダデュスタットに係る無形資産(仕掛研究開発)等の減損損失を計上した結果、当第3四半期連結累計期間における減損損失は25,102百万円となりました。
営業利益は171,695百万円(同10.2%増)、四半期利益は130,598百万円(同13.7%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は127,766百万円(同14.6%増)となりました。
セグメントの業績は次のとおりです。
(単位:百万円)
(参考-前年同一期間)
(単位:百万円)
(医療関連事業)
当第3四半期連結累計期間における売上収益は715,124百万円(前年同四半期比6.3%増)、事業利益は163,562百万円(同23.4%増)となりました。
<主要製品の状況>●グローバル4製品
当社がグローバル4製品と位置付ける持続性抗精神病薬「エビリファイ メンテナ」、抗精神病薬「レキサルティ」、V2-受容体拮抗剤「サムスカ/ジンアーク」、抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ」の売上収益の合計は、前年同四半期比20.1%増の325,520百万円となりました。
・持続性抗精神病薬「エビリファイ メンテナ」
グローバルでの統合失調症治療薬としての有効性の訴求と製剤の利便性に対する認知向上に加え、2017年に米国において効能追加となった双極性障害治療薬としての処方拡大が引き続き売上収益に貢献しています。日本では2020年9月に双極Ⅰ型障害における気分エピソードの再発・再燃抑制の新たな適応を追加しました。これらの結果、売上収益は前年同四半期比17.4%増の87,908百万円となりました。
・抗精神病薬「レキサルティ」
大うつ病補助療法及び統合失調症治療薬として販売する米国では、両疾患における新たな治療選択肢として有効性と安全性に対する高い評価を受け、売上収益が増加しています。統合失調症治療薬として販売する日本では、2019年5月より処方日数制限が解除され、急性期を中心に処方数が大きく伸長しています。欧州においても、2019年4月から順次販売を開始しています。これらの結果、売上収益は前年同四半期比23.7%増の79,397百万円となりました。
・V2-受容体拮抗剤「サムスカ」
日本では、心性浮腫・肝性浮腫治療薬として、また、腎臓の難病である常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)治療薬としても、処方は引き続き拡大しています。一方で4月の薬価改定における市場拡大再算定による薬価切り下げの影響を受け、売上収益は前年同四半期比1.6%減の66,152百万円となりました。
・V2-受容体拮抗剤「ジンアーク」
米国では、ADPKDの治療薬として疾患啓発や臨床データの情報提供活動等により、疾患と製品に対する認知が広まり、処方が順調に増加しています。欧州の販売国においても処方が増加しています。これらの結果、売上収益は前年同四半期比51.6%増の61,016百万円となりました。
・抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ」
日本では、結腸・直腸がん治療薬としての処方数の伸長に加え、2019年8月に承認された進行・再発胃がんに対しても同様に処方数が伸長しています。米国では、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、在宅治療や経口抗がん剤の使用が推奨されており*1,2、増収となりました。欧州では、処方の順調な推移と承認国の拡大により、増収となりました。これらの結果、売上収益は前年同四半期比26.4%増の31,046百万円となりました。
*1 Pelin Cinar et al., Safety at the Time of the COVID-19 Pandemic: How to Keep our Oncology Patients and Healthcare Workers Safe. J Natl Compr Canc Netw, 2020 Apr 15;1-6.
*2 ASCO. COVID-19 Patient Care Information, Cancer Treatment and Supportive Care.https://www.asco.org/asco-coronavirus-resources/care-individuals-cancer-during-covid-19/cancer-treatment-supportive-care. Updated 23, July 2020. Accessed 31 July 2020.
(ニュートラシューティカルズ関連事業)
当第3四半期連結累計期間における売上収益は252,767百万円(前年同四半期比0.2%減)、事業利益は36,952百万円(同0.2%増)となりました。
<主要製品の状況>当社が主要3ブランドと位置付ける「ポカリスエット」、「ネイチャーメイド」、ニュートリション エ サンテ社ブランドの売上収益の合計は、前年同四半期比2.3%減の152,542百万円となりました。育成3ブランドと位置付けるデイヤフーズ社ブランド、「エクエル」、「ボディメンテ」の売上収益の合計は、前年同四半期比27.7%増の20,189百万円となりました。
●主要3ブランド
日本では、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う消費者の活動量の減少に加え、飲料最需要期である夏期において、昨年以上の天候不順が続き、1-9月の飲料市場全体が対前年比で減少しました*3。中でも、スポーツドリンクカテゴリーの減少幅が大きく*4、水分・電解質補給飲料「ポカリスエット」においてもブランド全体の当第3四半期連結累計期間の売上収益は減少しましたが、ニューノーマルにおいて生じた新たな健康課題に対する情報発信や、部活動の制限やスポーツの全国大会の中止等が続く中での、アスリートの活動や体調管理に関する様々なサポートを実施し、足元は回復傾向にあります。
ファーマバイト社のサプリメント「ネイチャーメイド」は、体調管理への意識の高まりと、デジタルを活用したプロモーション活動等により、増収となりました。
欧州を中心に健康食品を展開するニュートリション エ サンテ社ブランドは、外出規制等の影響により、減収となりました。
●育成3ブランド
プラントベース(植物由来)食品であるデイヤフーズ社ブランドは、北米において、チーズ代替品等の市場の成長に加えて家庭内需要の増加により、大幅増収となりました。
女性の健康と美をサポートするエクオール含有食品「エクエル」は、幅広い情報提供活動により製品の認知が進み、売上収益は順調に増加しています。
植物由来の乳酸菌B240*5を含有する「ボディメンテ」は、健康意識や体調管理に対するニーズの高まりを受け、取扱店舗数が増加し、大幅な増収となりました。
*3 インテージSRI 2020年1月~9月 ▲1.0%
*4 インテージSRI 2020年1月~9月 ▲10.5%
*5 Lactobacillus pentosus ONRICb0240:東京農業大学が単離、大塚製薬㈱が有効性を確認した乳酸菌
(消費者関連事業)
ウォーター類は、主力製品「クリスタルガイザー」において、パーソナルサイズとしては最大サイズである700mlボトルの販売数量が引き続き好調に推移しているものの、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う外出機会の減少等の影響を受け、自販機チャネルを中心にブランド全体の販売数量は減少しました。ビタミン炭酸飲料「マッチ」は、天候不順や外出機会の減少等の影響を受け、販売数量が減少しました。
これらの結果、当第3四半期連結累計期間における売上収益は24,105百万円(前年同四半期比6.4%減)、また、持分法投資利益の増加とニューノーマルに対応した経費効率化等により、事業利益は9,252百万円(同15.3%増)となりました。
(その他の事業)
機能化学品分野は、新型コロナウイルス感染症の拡大により自動車や住宅産業が影響を受け、発泡剤やチタン酸塩、複合材料などの出荷数量が減少した結果、前年同四半期比で減収となりました。ファインケミカル分野は、2019年6月に譲受したセフィキシムの海外ライセンシーに対する原薬供給事業に係る売上収益等により、前年同四半期比で増収となりました。
運輸・倉庫分野は、『共通プラットフォーム戦略』により新規の外部顧客は増えているものの、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響で取引先荷主の取扱数量が減少し、全体の売上収益は微減となりました。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間のその他の事業の売上収益は104,038百万円(前年同四半期比2.3%減)となりました。また、持分法投資利益の増加等が影響し、事業利益は10,758百万円(同28.3%増)となりました。
※その他、製品別の売上収益等につきましては、決算補足資料(ファクトブック)をご参照ください。
https://www.otsuka.com/jp/ir/library/earnings.php
<新型コロナウイルス感染症の拡大による事業及び業績への影響>新型コロナウイルス感染症の拡大に対する当社グループの対応として、生産に係る従業員は毎日体調管理を実
施、また、それ以外は在宅勤務等を取り入れながら、従業員の安全確保及び事業活動継続に取り組んでいます。
当第3四半期におきましては、医療関連事業のグローバル4製品(「エビリファイ メンテナ」、「レキサルティ」、「サムスカ/ジンアーク」、「ロンサーフ」)については順調に成長しましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う外出規制等の影響を医療関連事業以外も含めて一部の製品で受けました。製品の供給においては、現在安定して供給できる体制を維持しています。通期の事業及び業績への影響については、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響が不透明な中、長期化した場合を想定し引き続き事業及び業績への影響を注視しています。
当社グループの現状と、それにより今後、懸念される経営リスクは、以下のとおりです。
(販売)
・医療関連事業においては、外出自粛等に伴い外来患者の来院数が減少している一方、慢性疾患において長期処方が増加する傾向がみられます。今後、これらの状況が長期化もしくは深刻化した場合には、医療施設への訪問規制や疾患啓発活動の自粛に伴う新規処方の減少や、来院を要する注射剤等の処方減少がさらに進み、通期の売上収益にも影響を及ぼす可能性があります。
・医療関連事業以外においては、一部の製品については、健康意識の高まりや、家庭内消費の増加、通信販売の利用増加等により需要が増加している一方、外出自粛に伴う屋外活動の制限等による消費機会の損失もみられます。今後、新型コロナウイルス感染症の拡大が長期化もしくは深刻化した場合には、営業活動の自粛や制限に伴う新規顧客の獲得減少や消費機会の損失がさらに進み、通期の売上収益にも影響を及ぼす可能性があります。
(生産)
・原材料の調達は、一部の輸入品に遅延がみられますが、概ね順調に確保できています。生産活動は一部のラインで従業員の自宅待機等により一時的に生産が停止しましたが、現在はほぼ復旧し、人員確保も含め順調に稼働しています。今後、新型コロナウイルス感染症の拡大が長期化もしくは深刻化し、原材料調達に停滞が生じた場合、あるいは生産工場内でのクラスター発生等が生じた場合等には、一部製品の供給が停止する可能性があります。
(研究開発)
・臨床試験を実施している開発品の一部においては、治験実施施設の立上げや患者登録を中断していましたが、徐々に再開しています。患者登録等の中断もしくは遅延が深刻化した場合には、臨床試験の進捗や製造販売承認申請時期が遅延する、もしくは開発戦略を変更する可能性があります。
・研究活動については、外出規制等の影響により一部で遅延がみられます。これらの状況が長期化もしくは深刻化した場合には、研究活動が遅延し、中長期での新製品上市時期が遅延する可能性があります。
以上のように、新型コロナウイルス感染症の拡大による当社グループ事業への影響を多岐にわたり想定しておりますが、今後も当社グループは“Otsuka-people creating new products for better health worldwide”の企業理念のもと、当社グループ従業員の安全確保及び事業活動の継続に向けた取り組みを引き続き行ってまいります。
② 財政状態の状況
(単位:百万円)
a. 資産
当第3四半期連結会計期間末における総資産は2,582,926百万円(前連結会計年度末は2,581,309百万円)となり、1,617百万円増加しました。その内訳は、流動資産が19,887百万円の減少、非流動資産が21,505百万円の増加であります。
(流動資産)
当第3四半期連結会計期間末における流動資産は968,463百万円(前連結会計年度末は988,351百万円)となり、19,887百万円減少しました。その主たる内訳は、現金及び現金同等物が5,847百万円、棚卸資産が12,076百万円、その他の流動資産が7,932百万円増加したものの、売上債権及びその他の債権が48,801百万円減少したこと等によるものであります。
(非流動資産)
当第3四半期連結会計期間末における非流動資産は1,614,462百万円(前連結会計年度末は1,592,957百万円)となり、21,505百万円増加しました。その主たる内訳は、無形資産が18,987百万円減少したものの、持分法で会計処理されている投資が9,468百万円、その他の金融資産が25,933百万円増加したこと等によるものであります。無形資産の減少は、主に償却、グアデシタビン及びバダデュスタットに係る減損及び為替相場の変動の影響であります。その他の金融資産の増加は、保有する投資有価証券の時価が上昇したこと等によるものであります。
b. 負債
(流動負債)
当第3四半期連結会計期間末における流動負債は395,700百万円(前連結会計年度末は440,891百万円)となり、45,191百万円減少しました。その主たる内訳は、その他の流動負債が7,773百万円増加したものの、仕入債務及びその他の債務が27,250百万円、社債及び借入金が10,235百万円、未払法人所得税が15,801百万円減少したこと等によるものであります。
(非流動負債)
当第3四半期連結会計期間末における非流動負債は332,276百万円(前連結会計年度末は344,977百万円)となり、12,701百万円減少しました。その主たる内訳は、社債及び借入金が14,320百万円減少したこと等によるものであります。
c. 資本
当第3四半期連結会計期間末における資本は1,854,950百万円(前連結会計年度末は1,795,440百万円)となり、59,509百万円増加しました。その主たる内訳は、配当金の支払54,230百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益127,766百万円の計上等により利益剰余金が73,017百万円増加したこと、株式相場及び為替相場の変動等の影響によりその他の資本の構成要素が14,825百万円減少したこと等によるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は339,888百万円となり、前連結会計年度末より5,847百万円増加しました。当第3四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、187,991百万円となりました。一方で、将来の持続的成長に向けて、主に医療関連事業において投資等を行ったことにより、投資活動によるキャッシュ・フローは△86,688百万円となりました。財務活動につきましては、借入金及びリース負債を返済し、配当金の支払額が△55,522百万円となったことから、財務活動によるキャッシュ・フローは△91,089百万円となりました。
これらの結果、営業活動によるキャッシュ・イン・フローは、投資活動及び財務活動を合わせたキャッシュ・アウト・フローを上回り、円高の影響により現金及び現金同等物に係る換算差額が△4,364百万円となったものの、現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末より増加し、339,888百万円となりました。
なお、2020年9月末現在の社債及び借入金の合計額は161,971百万円であり、現金及び現金同等物が社債及び借入金の合計額を上回っていることから、財政的に健全性を維持していると考えております。
当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、187,991百万円(対前年同四半期比6,024百万円増)となりました。当第3四半期連結累計期間の主な内容は、税引前四半期利益164,990百万円、減価償却費及び償却費58,998百万円、減損損失及びその戻入益25,102百万円、棚卸資産の増減額(△は増加)△16,261百万円、売上債権及びその他の債権の増減額(△は増加)43,974百万円、仕入債務及びその他の債務の増減額(△は減少)△13,922百万円、法人所得税等の支払額△60,312百万円となっております。当第3四半期連結累計期間における対前年同四半期比6,024百万円のキャッシュ・フロー増加の主な要因は、法人所得税等の支払額が対前年同四半期比で37,230百万円増加し、キャッシュ・フローの減少となりましたが、医療関連事業におけるグローバル4製品(「エビリファイ メンテナ」、「レキサルティ」、「サムスカ/ジンアーク」、「ロンサーフ」)の伸長等により業績が堅調に推移したこと、及び売上債権及びその他の債権の影響等によりキャッシュ・フローが増加したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、△86,688百万円(対前年同四半期比28,012百万円減)となりました。当第3四半期連結累計期間の主な内容は、有形固定資産の取得による支出△36,754百万円、日本における「エンレスト」の共同プロモーション契約に係る契約一時金等を含む無形資産の取得による支出△39,803百万円、投資の売却及び償還による収入14,124百万円、投資の取得による支出△19,792百万円等であります。当第3四半期連結累計期間における対前年同四半期比28,012百万円のキャッシュ・フロー減少の主な要因は、主として医療関連事業において無形資産の取得による支出が30,132百万円増加したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、△91,089百万円(対前年同四半期比△81,404百万円減)となりました。当第3四半期連結累計期間の主な内容は、短期借入金の増減額(△は減少)△9,145百万円、長期借入金の返済による支出△14,477百万円、リース負債の返済による支出△12,392百万円、配当金の支払額△55,522百万円であります。当第3四半期連結累計期間における対前年同四半期△81,404百万円のキャッシュ・フロー減少の主な要因は、2019年3月の国内無担保普通社債の発行による収入の計上80,000百万円の影響がなくなったことによるものであります。
(2) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(3) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間における研究開発費は、158,059百万円です。
主な研究開発分野及び新製品の開発のセグメント別の状況は、次のとおりです。
(医療関連事業)
当社グループは、精神・神経領域、がん・がんサポーティブケア領域を重点領域とし、循環器・腎領域等においても未充足疾患に焦点を当てた研究開発を進めています。
医療関連事業における研究開発費は、150,250百万円です。
当第3四半期連結累計期間の医療関連事業における研究開発の主な進捗状況は、以下のとおりです。
(ニュートラシューティカルズ関連事業)
当事業においては、医療関連事業で培ったノウハウを活かし、日々の健康の維持・増進をサポートする機能性食品・飲料を中心に世界に通用する製品の研究開発に取り組んでいます。まるごと大豆の栄養を手軽においしく摂取できる大豆バーSOYJOY(ソイジョイ)ブランドは、まるごと大豆の生地と、ピーナッツのしっかりとした食べごたえのある食感はそのままに、糖質を1/4カット*1した「SOYJOY ピーナッツ」を2020年2月にリニューアル発売し、同年9月には「SOYJOY 抹茶&マカダミア」を新発売しました。また、独自の発想と技術により肌の健康を考えるCosmedics(健粧品)*2分野では、スキンケアシリーズ「インナーシグナル」より、美白*3機能と化粧水・乳液・クリームの3つの機能を集約した時間差浸透 薬用オールインワン ゲル状クリーム「インナーシグナル リジュブネイト ワン」を同年3月に新発売しました。
また、同年3月に近赤外線(IRA)によるヒト表皮細胞の増殖抑制作用とそのメカニズム解明について*4、同年4月に毛髪の悩みとエクオール産生能の関係について*5、それぞれの研究成果を専門誌に発表しました。
*1 自社従来品「ソイジョイ ピーナッツ30g」比で、糖質を26%カット
*2 Cosmedics(健粧品):cosmetics(化粧品)+medicine(医薬品)
*3 メラニンの蓄積をおさえ、しみ・そばかすを防ぐ
*4 Syota Shimizu et al. (2020) Infrared-A Irradiation-induced Inhibition of Human Keratinocyte Proliferation and Potential Mechanisms. Photochemistry and Photobiology
*5 Soh Iwashita et al.(2020) Equol status affects hair aging in postmenopausal women: A cross-sectional study. The Journal of Japanese Society of Aesthetic Dermatology
ニュートラシューティカルズ関連事業における研究開発費は、4,583百万円です。
(消費者関連事業)
当事業においては、生活に身近な食品や飲料の分野でオリジナルかつユニークな製品の研究開発に取り組んでいます。
消費者関連事業における研究開発費は、422百万円です。
(その他の事業)
当事業においては、機能化学品やファインケミカルの分野で研究開発に取り組んでいます。
その他の事業における研究開発費は、2,803百万円です。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当社グループは、経常的な収益力を示す指標として事業利益を採用しております。
事業利益とは、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費並びに研究開発費を控除した額に持分法による投資損益を加減算した額であります。
(単位:百万円)
前第3四半期 連結累計期間 | 当第3四半期 連結累計期間 | 増減額 | 増減率 | |
売上収益 | 1,028,758 | 1,066,959 | 38,201 | 3.7% |
研究開発費投資前事業利益 | 310,265 | 346,723 | 36,457 | 11.8% |
事業利益 | 156,326 | 188,663 | 32,337 | 20.7% |
営業利益 | 155,830 | 171,695 | 15,864 | 10.2% |
税引前四半期利益 | 151,574 | 164,990 | 13,415 | 8.9% |
四半期利益 | 114,892 | 130,598 | 15,705 | 13.7% |
親会社の所有者に帰属する四半期利益 | 111,519 | 127,766 | 16,246 | 14.6% |
研究開発費 | 153,939 | 158,059 | 4,120 | 2.7% |
減損損失 | 400 | 25,102 | 24,701 | - |
これまで当社グループは、「トータルヘルスケア企業」として、健康の維持・増進、病気の診断から治療までを担う企業活動を進めてまいりました。今後のニューノーマルという時代の中でも、健康意識の高まりを成長機会と捉え、今こそ「トータルヘルスケア企業」の真価を発揮し、引き続き持続的成長の実現に向け、進んでまいります。
当第3四半期連結累計期間は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、当社グループの事業活動も一定の影響を受けましたが、連結売上収益は1,066,959百万円(前年同四半期比3.7%増)と増収となりました。医療関連事業においては、患者の受診抑制や、手術件数の減少、病床稼働率の低下等により、輸液や一部の治療薬は影響を受けましたが、グローバル4製品(「エビリファイ メンテナ」、「レキサルティ」、「サムスカ/ジンアーク」、「ロンサーフ」)等の売上収益の増加が業績を牽引しました。ニュートラシューティカルズ関連事業においては、外出機会の減少や日本の天候不順等により、飲料の消費等が影響を受けましたが、健康の自己管理意識の向上とともに、「ネイチャーメイド」、デイヤフーズ社ブランドや「エクエル」等が伸長し、新型コロナウイルス感染症が拡大する中においても同事業の売上収益は前年同四半期並を確保しました。
また、経費効率化による効果もあり、研究開発費投資前事業利益は346,723百万円(同11.8%増)、「レキサルティ」、フチバチニブ、センタナファジン及びVIS649等に係る開発費が増加したことから研究開発費は158,059百万円(同2.7%増)となり、その結果、事業利益は188,663百万円(同20.7%増)となりました。
なお、当第3四半期において、グアデシタビン及びバダデュスタットに係る無形資産(仕掛研究開発)等の減損損失を計上した結果、当第3四半期連結累計期間における減損損失は25,102百万円となりました。
営業利益は171,695百万円(同10.2%増)、四半期利益は130,598百万円(同13.7%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は127,766百万円(同14.6%増)となりました。
セグメントの業績は次のとおりです。
(単位:百万円)
医療関連 事業 | ニュートラシューティカルズ 関連事業 | 消費者 関連事業 | その他 の事業 | 調整額 | 連結 | |
売上収益 | 715,124 | 252,767 | 24,105 | 104,038 | △29,076 | 1,066,959 |
事業利益 | 163,562 | 36,952 | 9,252 | 10,758 | △31,862 | 188,663 |
(参考-前年同一期間)
(単位:百万円)
医療関連 事業 | ニュートラシューティカルズ 関連事業 | 消費者 関連事業 | その他 の事業 | 調整額 | 連結 | |
売上収益 | 672,679 | 253,233 | 25,763 | 106,523 | △29,441 | 1,028,758 |
事業利益 | 132,589 | 36,880 | 8,026 | 8,386 | △29,556 | 156,326 |
(医療関連事業)
当第3四半期連結累計期間における売上収益は715,124百万円(前年同四半期比6.3%増)、事業利益は163,562百万円(同23.4%増)となりました。
<主要製品の状況>●グローバル4製品
当社がグローバル4製品と位置付ける持続性抗精神病薬「エビリファイ メンテナ」、抗精神病薬「レキサルティ」、V2-受容体拮抗剤「サムスカ/ジンアーク」、抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ」の売上収益の合計は、前年同四半期比20.1%増の325,520百万円となりました。
・持続性抗精神病薬「エビリファイ メンテナ」
グローバルでの統合失調症治療薬としての有効性の訴求と製剤の利便性に対する認知向上に加え、2017年に米国において効能追加となった双極性障害治療薬としての処方拡大が引き続き売上収益に貢献しています。日本では2020年9月に双極Ⅰ型障害における気分エピソードの再発・再燃抑制の新たな適応を追加しました。これらの結果、売上収益は前年同四半期比17.4%増の87,908百万円となりました。
・抗精神病薬「レキサルティ」
大うつ病補助療法及び統合失調症治療薬として販売する米国では、両疾患における新たな治療選択肢として有効性と安全性に対する高い評価を受け、売上収益が増加しています。統合失調症治療薬として販売する日本では、2019年5月より処方日数制限が解除され、急性期を中心に処方数が大きく伸長しています。欧州においても、2019年4月から順次販売を開始しています。これらの結果、売上収益は前年同四半期比23.7%増の79,397百万円となりました。
・V2-受容体拮抗剤「サムスカ」
日本では、心性浮腫・肝性浮腫治療薬として、また、腎臓の難病である常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)治療薬としても、処方は引き続き拡大しています。一方で4月の薬価改定における市場拡大再算定による薬価切り下げの影響を受け、売上収益は前年同四半期比1.6%減の66,152百万円となりました。
・V2-受容体拮抗剤「ジンアーク」
米国では、ADPKDの治療薬として疾患啓発や臨床データの情報提供活動等により、疾患と製品に対する認知が広まり、処方が順調に増加しています。欧州の販売国においても処方が増加しています。これらの結果、売上収益は前年同四半期比51.6%増の61,016百万円となりました。
・抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ」
日本では、結腸・直腸がん治療薬としての処方数の伸長に加え、2019年8月に承認された進行・再発胃がんに対しても同様に処方数が伸長しています。米国では、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、在宅治療や経口抗がん剤の使用が推奨されており*1,2、増収となりました。欧州では、処方の順調な推移と承認国の拡大により、増収となりました。これらの結果、売上収益は前年同四半期比26.4%増の31,046百万円となりました。
*1 Pelin Cinar et al., Safety at the Time of the COVID-19 Pandemic: How to Keep our Oncology Patients and Healthcare Workers Safe. J Natl Compr Canc Netw, 2020 Apr 15;1-6.
*2 ASCO. COVID-19 Patient Care Information, Cancer Treatment and Supportive Care.https://www.asco.org/asco-coronavirus-resources/care-individuals-cancer-during-covid-19/cancer-treatment-supportive-care. Updated 23, July 2020. Accessed 31 July 2020.
(ニュートラシューティカルズ関連事業)
当第3四半期連結累計期間における売上収益は252,767百万円(前年同四半期比0.2%減)、事業利益は36,952百万円(同0.2%増)となりました。
<主要製品の状況>当社が主要3ブランドと位置付ける「ポカリスエット」、「ネイチャーメイド」、ニュートリション エ サンテ社ブランドの売上収益の合計は、前年同四半期比2.3%減の152,542百万円となりました。育成3ブランドと位置付けるデイヤフーズ社ブランド、「エクエル」、「ボディメンテ」の売上収益の合計は、前年同四半期比27.7%増の20,189百万円となりました。
●主要3ブランド
日本では、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う消費者の活動量の減少に加え、飲料最需要期である夏期において、昨年以上の天候不順が続き、1-9月の飲料市場全体が対前年比で減少しました*3。中でも、スポーツドリンクカテゴリーの減少幅が大きく*4、水分・電解質補給飲料「ポカリスエット」においてもブランド全体の当第3四半期連結累計期間の売上収益は減少しましたが、ニューノーマルにおいて生じた新たな健康課題に対する情報発信や、部活動の制限やスポーツの全国大会の中止等が続く中での、アスリートの活動や体調管理に関する様々なサポートを実施し、足元は回復傾向にあります。
ファーマバイト社のサプリメント「ネイチャーメイド」は、体調管理への意識の高まりと、デジタルを活用したプロモーション活動等により、増収となりました。
欧州を中心に健康食品を展開するニュートリション エ サンテ社ブランドは、外出規制等の影響により、減収となりました。
●育成3ブランド
プラントベース(植物由来)食品であるデイヤフーズ社ブランドは、北米において、チーズ代替品等の市場の成長に加えて家庭内需要の増加により、大幅増収となりました。
女性の健康と美をサポートするエクオール含有食品「エクエル」は、幅広い情報提供活動により製品の認知が進み、売上収益は順調に増加しています。
植物由来の乳酸菌B240*5を含有する「ボディメンテ」は、健康意識や体調管理に対するニーズの高まりを受け、取扱店舗数が増加し、大幅な増収となりました。
*3 インテージSRI 2020年1月~9月 ▲1.0%
*4 インテージSRI 2020年1月~9月 ▲10.5%
*5 Lactobacillus pentosus ONRICb0240:東京農業大学が単離、大塚製薬㈱が有効性を確認した乳酸菌
(消費者関連事業)
ウォーター類は、主力製品「クリスタルガイザー」において、パーソナルサイズとしては最大サイズである700mlボトルの販売数量が引き続き好調に推移しているものの、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う外出機会の減少等の影響を受け、自販機チャネルを中心にブランド全体の販売数量は減少しました。ビタミン炭酸飲料「マッチ」は、天候不順や外出機会の減少等の影響を受け、販売数量が減少しました。
これらの結果、当第3四半期連結累計期間における売上収益は24,105百万円(前年同四半期比6.4%減)、また、持分法投資利益の増加とニューノーマルに対応した経費効率化等により、事業利益は9,252百万円(同15.3%増)となりました。
(その他の事業)
機能化学品分野は、新型コロナウイルス感染症の拡大により自動車や住宅産業が影響を受け、発泡剤やチタン酸塩、複合材料などの出荷数量が減少した結果、前年同四半期比で減収となりました。ファインケミカル分野は、2019年6月に譲受したセフィキシムの海外ライセンシーに対する原薬供給事業に係る売上収益等により、前年同四半期比で増収となりました。
運輸・倉庫分野は、『共通プラットフォーム戦略』により新規の外部顧客は増えているものの、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響で取引先荷主の取扱数量が減少し、全体の売上収益は微減となりました。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間のその他の事業の売上収益は104,038百万円(前年同四半期比2.3%減)となりました。また、持分法投資利益の増加等が影響し、事業利益は10,758百万円(同28.3%増)となりました。
※その他、製品別の売上収益等につきましては、決算補足資料(ファクトブック)をご参照ください。
https://www.otsuka.com/jp/ir/library/earnings.php
<新型コロナウイルス感染症の拡大による事業及び業績への影響>新型コロナウイルス感染症の拡大に対する当社グループの対応として、生産に係る従業員は毎日体調管理を実
施、また、それ以外は在宅勤務等を取り入れながら、従業員の安全確保及び事業活動継続に取り組んでいます。
当第3四半期におきましては、医療関連事業のグローバル4製品(「エビリファイ メンテナ」、「レキサルティ」、「サムスカ/ジンアーク」、「ロンサーフ」)については順調に成長しましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う外出規制等の影響を医療関連事業以外も含めて一部の製品で受けました。製品の供給においては、現在安定して供給できる体制を維持しています。通期の事業及び業績への影響については、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響が不透明な中、長期化した場合を想定し引き続き事業及び業績への影響を注視しています。
当社グループの現状と、それにより今後、懸念される経営リスクは、以下のとおりです。
(販売)
・医療関連事業においては、外出自粛等に伴い外来患者の来院数が減少している一方、慢性疾患において長期処方が増加する傾向がみられます。今後、これらの状況が長期化もしくは深刻化した場合には、医療施設への訪問規制や疾患啓発活動の自粛に伴う新規処方の減少や、来院を要する注射剤等の処方減少がさらに進み、通期の売上収益にも影響を及ぼす可能性があります。
・医療関連事業以外においては、一部の製品については、健康意識の高まりや、家庭内消費の増加、通信販売の利用増加等により需要が増加している一方、外出自粛に伴う屋外活動の制限等による消費機会の損失もみられます。今後、新型コロナウイルス感染症の拡大が長期化もしくは深刻化した場合には、営業活動の自粛や制限に伴う新規顧客の獲得減少や消費機会の損失がさらに進み、通期の売上収益にも影響を及ぼす可能性があります。
(生産)
・原材料の調達は、一部の輸入品に遅延がみられますが、概ね順調に確保できています。生産活動は一部のラインで従業員の自宅待機等により一時的に生産が停止しましたが、現在はほぼ復旧し、人員確保も含め順調に稼働しています。今後、新型コロナウイルス感染症の拡大が長期化もしくは深刻化し、原材料調達に停滞が生じた場合、あるいは生産工場内でのクラスター発生等が生じた場合等には、一部製品の供給が停止する可能性があります。
(研究開発)
・臨床試験を実施している開発品の一部においては、治験実施施設の立上げや患者登録を中断していましたが、徐々に再開しています。患者登録等の中断もしくは遅延が深刻化した場合には、臨床試験の進捗や製造販売承認申請時期が遅延する、もしくは開発戦略を変更する可能性があります。
・研究活動については、外出規制等の影響により一部で遅延がみられます。これらの状況が長期化もしくは深刻化した場合には、研究活動が遅延し、中長期での新製品上市時期が遅延する可能性があります。
以上のように、新型コロナウイルス感染症の拡大による当社グループ事業への影響を多岐にわたり想定しておりますが、今後も当社グループは“Otsuka-people creating new products for better health worldwide”の企業理念のもと、当社グループ従業員の安全確保及び事業活動の継続に向けた取り組みを引き続き行ってまいります。
② 財政状態の状況
(単位:百万円)
前連結会計年度 (2019年12月31日) | 当第3四半期連結会計期間 (2020年9月30日) | 増減額 | |
流動資産 | 988,351 | 968,463 | △19,887 |
非流動資産 | 1,592,957 | 1,614,462 | 21,505 |
資産合計 | 2,581,309 | 2,582,926 | 1,617 |
流動負債 | 440,891 | 395,700 | △45,191 |
非流動負債 | 344,977 | 332,276 | △12,701 |
負債合計 | 785,869 | 727,976 | △57,892 |
資本合計 | 1,795,440 | 1,854,950 | 59,509 |
a. 資産
当第3四半期連結会計期間末における総資産は2,582,926百万円(前連結会計年度末は2,581,309百万円)となり、1,617百万円増加しました。その内訳は、流動資産が19,887百万円の減少、非流動資産が21,505百万円の増加であります。
(流動資産)
当第3四半期連結会計期間末における流動資産は968,463百万円(前連結会計年度末は988,351百万円)となり、19,887百万円減少しました。その主たる内訳は、現金及び現金同等物が5,847百万円、棚卸資産が12,076百万円、その他の流動資産が7,932百万円増加したものの、売上債権及びその他の債権が48,801百万円減少したこと等によるものであります。
(非流動資産)
当第3四半期連結会計期間末における非流動資産は1,614,462百万円(前連結会計年度末は1,592,957百万円)となり、21,505百万円増加しました。その主たる内訳は、無形資産が18,987百万円減少したものの、持分法で会計処理されている投資が9,468百万円、その他の金融資産が25,933百万円増加したこと等によるものであります。無形資産の減少は、主に償却、グアデシタビン及びバダデュスタットに係る減損及び為替相場の変動の影響であります。その他の金融資産の増加は、保有する投資有価証券の時価が上昇したこと等によるものであります。
b. 負債
(流動負債)
当第3四半期連結会計期間末における流動負債は395,700百万円(前連結会計年度末は440,891百万円)となり、45,191百万円減少しました。その主たる内訳は、その他の流動負債が7,773百万円増加したものの、仕入債務及びその他の債務が27,250百万円、社債及び借入金が10,235百万円、未払法人所得税が15,801百万円減少したこと等によるものであります。
(非流動負債)
当第3四半期連結会計期間末における非流動負債は332,276百万円(前連結会計年度末は344,977百万円)となり、12,701百万円減少しました。その主たる内訳は、社債及び借入金が14,320百万円減少したこと等によるものであります。
c. 資本
当第3四半期連結会計期間末における資本は1,854,950百万円(前連結会計年度末は1,795,440百万円)となり、59,509百万円増加しました。その主たる内訳は、配当金の支払54,230百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益127,766百万円の計上等により利益剰余金が73,017百万円増加したこと、株式相場及び為替相場の変動等の影響によりその他の資本の構成要素が14,825百万円減少したこと等によるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は339,888百万円となり、前連結会計年度末より5,847百万円増加しました。当第3四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、187,991百万円となりました。一方で、将来の持続的成長に向けて、主に医療関連事業において投資等を行ったことにより、投資活動によるキャッシュ・フローは△86,688百万円となりました。財務活動につきましては、借入金及びリース負債を返済し、配当金の支払額が△55,522百万円となったことから、財務活動によるキャッシュ・フローは△91,089百万円となりました。
これらの結果、営業活動によるキャッシュ・イン・フローは、投資活動及び財務活動を合わせたキャッシュ・アウト・フローを上回り、円高の影響により現金及び現金同等物に係る換算差額が△4,364百万円となったものの、現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末より増加し、339,888百万円となりました。
なお、2020年9月末現在の社債及び借入金の合計額は161,971百万円であり、現金及び現金同等物が社債及び借入金の合計額を上回っていることから、財政的に健全性を維持していると考えております。
当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、187,991百万円(対前年同四半期比6,024百万円増)となりました。当第3四半期連結累計期間の主な内容は、税引前四半期利益164,990百万円、減価償却費及び償却費58,998百万円、減損損失及びその戻入益25,102百万円、棚卸資産の増減額(△は増加)△16,261百万円、売上債権及びその他の債権の増減額(△は増加)43,974百万円、仕入債務及びその他の債務の増減額(△は減少)△13,922百万円、法人所得税等の支払額△60,312百万円となっております。当第3四半期連結累計期間における対前年同四半期比6,024百万円のキャッシュ・フロー増加の主な要因は、法人所得税等の支払額が対前年同四半期比で37,230百万円増加し、キャッシュ・フローの減少となりましたが、医療関連事業におけるグローバル4製品(「エビリファイ メンテナ」、「レキサルティ」、「サムスカ/ジンアーク」、「ロンサーフ」)の伸長等により業績が堅調に推移したこと、及び売上債権及びその他の債権の影響等によりキャッシュ・フローが増加したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、△86,688百万円(対前年同四半期比28,012百万円減)となりました。当第3四半期連結累計期間の主な内容は、有形固定資産の取得による支出△36,754百万円、日本における「エンレスト」の共同プロモーション契約に係る契約一時金等を含む無形資産の取得による支出△39,803百万円、投資の売却及び償還による収入14,124百万円、投資の取得による支出△19,792百万円等であります。当第3四半期連結累計期間における対前年同四半期比28,012百万円のキャッシュ・フロー減少の主な要因は、主として医療関連事業において無形資産の取得による支出が30,132百万円増加したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、△91,089百万円(対前年同四半期比△81,404百万円減)となりました。当第3四半期連結累計期間の主な内容は、短期借入金の増減額(△は減少)△9,145百万円、長期借入金の返済による支出△14,477百万円、リース負債の返済による支出△12,392百万円、配当金の支払額△55,522百万円であります。当第3四半期連結累計期間における対前年同四半期△81,404百万円のキャッシュ・フロー減少の主な要因は、2019年3月の国内無担保普通社債の発行による収入の計上80,000百万円の影響がなくなったことによるものであります。
(2) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(3) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間における研究開発費は、158,059百万円です。
主な研究開発分野及び新製品の開発のセグメント別の状況は、次のとおりです。
(医療関連事業)
当社グループは、精神・神経領域、がん・がんサポーティブケア領域を重点領域とし、循環器・腎領域等においても未充足疾患に焦点を当てた研究開発を進めています。
医療関連事業における研究開発費は、150,250百万円です。
当第3四半期連結累計期間の医療関連事業における研究開発の主な進捗状況は、以下のとおりです。
領域 | 「製品名」 (一般名) 又は開発コード | 状況 |
精神・神経領域 | 「エビリファイ持続性水懸筋注用」 (アリピプラゾール) | <日本>・双極Ⅰ型障害における気分エピソードの再発・再燃抑制が2020年9月に効能追加されました。 |
「レキサルティ」 (ブレクスピプラゾール) OPC-34712 | <米国・欧州>・開発戦略上の理由で、Ⅰ型双極性障害を対象とした開発を中止しました。 <中国>・開発戦略上の理由で、大うつ病を対象とした開発を中止しました。 | |
OPC-214870 | <米国>・てんかんを対象としたフェーズⅠ試験を2020年2月に開始しました。 | |
OPC-64005 | <日本>・大うつ病を対象としたフェーズⅡ試験を2020年4月に開始しました。 <米国>・開発戦略上の理由で、注意欠陥・多動性障害を対象とした開発を中止しました。 | |
(フレマネズマブ) TEV-48125 | <日本>・片頭痛発作の発症抑制の効能で2020年7月に承認申請しました。 | |
がん・がんサポーティブケア領域 | (グアデシタビン) SGI-110 | <日本・米国・欧州>・急性骨髄性白血病と骨髄異形成症候群のフェーズⅢ試験結果を受けて総合的に判断し、全ての対象疾患における開発を中止しました。 |
「INQOVI」 (decitabine・cedazuridine) ASTX727 | <欧州>・急性骨髄性白血病を対象としたフェーズⅢ試験を2020年1月に開始しました。 <米国>・骨髄異形成症候群と慢性骨髄単球性白血病の治療薬として2020年7月に承認を取得しました。 | |
(tolinapant) ASTX660 | <日本>・T細胞リンパ腫を対象としたフェーズⅠ試験を2020年8月に開始しました。 | |
(decitabine・cedazuridine +tolinapant) ASTX727+ASTX660 | <米国>・急性骨髄性白血病を対象としたフェーズⅠ併用試験を2020年7月に開始しました。 | |
(azacitidine・cedazuridine) ASTX030 | <米国>・骨髄異形成症候群を対象としたフェーズⅠ試験を2020年7月に開始しました。 |
領域 | 「製品名」 (一般名) 又は開発コード | 状況 |
(pamufetinib) TAS-115 | <日本>・骨肉腫を対象としたフェーズⅢ試験を2020年8月に開始しました。 | |
TAS-118 | <日本>・開発戦略上の理由で、胃がんを対象とした開発を中止しました。 | |
TAS-119 | ・VITRAC社へ導出しました。 | |
(フチバチニブ) TAS-120 | <米国・欧州>・乳がんを対象としたフェーズⅡ試験を2020年2月に開始しました。 <日本・米国・欧州>・FGFR異常がんを対象としたフェーズⅡ試験を2020年8月に開始しました。 | |
TAS1440 | <米国>・急性骨髄性白血病を対象としたフェーズⅠ試験を2020年6月に開始しました。 | |
「ブスルフェクス」 (ブスルファン) | <日本>・公知申請により、悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療が2020年3月に効能追加されました。 | |
「アイクルシグ」 (ポナチニブ) AP24534 | <中国>・慢性骨髄性白血病及びフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病を対象としたフェーズⅡ試験を2020年7月に開始しました。 | |
循環器・腎領域 | 「サムスカ」 (トルバプタン) OPC-41061 | <日本>・抗利尿ホルモン不適合分泌症候群における低ナトリウム血症改善が2020年6月に効能追加されました。 |
VIS649 | <日本・米国・欧州>・IgA腎症を対象としたフェーズⅡ試験を2020年8月に開始しました。 | |
その他領域 | OPS-2071 | <日本>・開発戦略上の理由で、クロストリジウム・ディフィシル感染症と腸管感染症を対象とした開発を中止しました。 |
(ジファミラスト) OPA-15406 | <日本>・アトピー性皮膚炎の治療薬として2020年9月に承認申請しました。 | |
「エネフリード輸液」 (糖・電解質・アミノ酸・脂肪・ビタミン) OPF-105 | <日本>・末梢静脈栄養輸液として2020年9月に承認を取得しました。 | |
診断薬 | C13-CAC | <日本>・開発戦略上の理由で、胃酸関連検査の体内診断薬としての開発を中止しました。 |
(ニュートラシューティカルズ関連事業)
当事業においては、医療関連事業で培ったノウハウを活かし、日々の健康の維持・増進をサポートする機能性食品・飲料を中心に世界に通用する製品の研究開発に取り組んでいます。まるごと大豆の栄養を手軽においしく摂取できる大豆バーSOYJOY(ソイジョイ)ブランドは、まるごと大豆の生地と、ピーナッツのしっかりとした食べごたえのある食感はそのままに、糖質を1/4カット*1した「SOYJOY ピーナッツ」を2020年2月にリニューアル発売し、同年9月には「SOYJOY 抹茶&マカダミア」を新発売しました。また、独自の発想と技術により肌の健康を考えるCosmedics(健粧品)*2分野では、スキンケアシリーズ「インナーシグナル」より、美白*3機能と化粧水・乳液・クリームの3つの機能を集約した時間差浸透 薬用オールインワン ゲル状クリーム「インナーシグナル リジュブネイト ワン」を同年3月に新発売しました。
また、同年3月に近赤外線(IRA)によるヒト表皮細胞の増殖抑制作用とそのメカニズム解明について*4、同年4月に毛髪の悩みとエクオール産生能の関係について*5、それぞれの研究成果を専門誌に発表しました。
*1 自社従来品「ソイジョイ ピーナッツ30g」比で、糖質を26%カット
*2 Cosmedics(健粧品):cosmetics(化粧品)+medicine(医薬品)
*3 メラニンの蓄積をおさえ、しみ・そばかすを防ぐ
*4 Syota Shimizu et al. (2020) Infrared-A Irradiation-induced Inhibition of Human Keratinocyte Proliferation and Potential Mechanisms. Photochemistry and Photobiology
*5 Soh Iwashita et al.(2020) Equol status affects hair aging in postmenopausal women: A cross-sectional study. The Journal of Japanese Society of Aesthetic Dermatology
ニュートラシューティカルズ関連事業における研究開発費は、4,583百万円です。
(消費者関連事業)
当事業においては、生活に身近な食品や飲料の分野でオリジナルかつユニークな製品の研究開発に取り組んでいます。
消費者関連事業における研究開発費は、422百万円です。
(その他の事業)
当事業においては、機能化学品やファインケミカルの分野で研究開発に取り組んでいます。
その他の事業における研究開発費は、2,803百万円です。