有価証券報告書-第5期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

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2015/06/25 15:15
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業績等の概要

(1)業績
当連結会計年度の連結業績は、売上高は前期比12.3%減の10兆8,825億円、経常損益は1,501億円の損失(前期は3,023億円の利益)、当期純損益は2,772億円の損失(前期は1,070億円の利益)となりました。なお、在庫影響(総平均法及び簿価切下げによるたな卸資産の評価が売上原価に与える影響)を除いた場合の経常利益相当額は、前期比39.5%増の2,552億円となりました。
特別利益は、固定資産売却益560億円等により、合計で596億円となりました。
また、特別損失は、カセロネス銅鉱山及び石油・天然ガス開発事業等に係る減損損失885億円、投資有価証券評価損374億円等により、合計で1,645億円となりました。
以上の結果、税金等調整前当期純損失は2,550億円となり、法人税等350億円及び少数株主損失128億円を差し引き、当期純損益は2,772億円の損失(前期は1,070億円の利益)となりました。
(2)一般経済情勢及び当社グループを取り巻く環境
当連結会計年度における世界経済は、米国においては、雇用環境の改善や個人消費の拡大を背景に景気が回復し、中国をはじめアジア諸国においては、減速しつつも高成長を維持しました。また、日本経済は、消費税増税による個人消費の落ち込みはあったものの、円安により輸出が伸長し、株価も上昇したことから、緩やかながらも景気の回復基調を維持しました。
アジアの一般的原油指標価格であるドバイ原油の価格は、期の前半は、1バーレル当たり100ドル前後の高水準で推移していたものの、米国のシェールオイル増産による供給過剰感の強まりやOPECの減産見送りを受け、平成26年10月以降、一転して大幅に下落し、当期末時点では1バーレル当たり53ドルとなりました。こうした中、わが国の石油元売各社は、「石油の備蓄の確保等に関する法律」に基づき、70日分以上の原油・石油製品を備蓄していることもあり、原油価格の急落によって多額の在庫評価損の発生を余儀なくされました。
銅の国際指標価格であるLME(ロンドン金属取引所)銅価格は、期の前半は、1トン当たり7,000ドル前後の水準でしたが、期の後半は、中国の経済成長の鈍化懸念、取引所在庫の増加等の影響から下落し、当期末時点では1トン当たり6,051ドルとなりました。
これらの状況から、資源開発会社においては、原油、銅、石炭をはじめとする資源の価格下落に伴い、資産の減損損失計上が相次ぐこととなりました。
また、国内の石油製品需要は、ハイブリッド車をはじめとする低燃費車が普及し、工場におけるボイラー燃料についても石油からLNGへの燃料転換が進展したことなどに加え、消費税増税前の駆込み需要の反動、夏場の需要期における天候不順といった要因が重なり、ガソリン、灯油及び重油を中心に大きく減少しました。さらに、石油火力発電所の稼働減により発電用燃料の需要も減少したことから、石油製品全体の需要は前期を大きく下回りました。石油化学製品の市況は、アジア域内で石油化学プラントの新増設が相次ぎ、需給が大幅に緩和したことから、低水準で推移しました。
(3)事業活動の経過及び成果
以上のとおり、原油価格が急落したことに加え、銅価格も下落し、さらに、石油製品の需要が大幅に減少するなど、JXグループは、世界的な経済危機に陥ったリーマンショック時に匹敵する激しい経営環境の悪化に見舞われました。このような状況にあって、第2次中期経営計画(平成25年度から平成27年度まで)に掲げた経営目標の達成に向け、以下のとおり諸施策を推進しました。
セグメント別の概況は、次のとおりです。
エネルギー事業(JX日鉱日石エネルギーグループ)
● 石油精製販売事業における取組み
基幹事業である石油精製販売事業については、石油製品需要の減少に対応した最適生産体制の構築とサプライチェーンの効率化に努め、収益確保の諸施策を推進しました。
まず、グループ全体の石油精製能力を適正な水準に引き下げ、付加価値の高い製品を増産するため、平成26年3月に室蘭製油所の原油処理を停止し、同製油所の機能を石油化学製品原料の製造拠点に変更しました。
また、鹿島製油所では、重質油留分対策として、「溶剤脱れき装置」を設置し、需要の減退が著しい重油を減産するとともに、収益性の高い石油化学製品や軽油の原料を増産し、併せて、残渣油を燃料とした発電事業を行うこととしており、本年8月の設備完成に向けて工事を進めました。水島製油所においては、製油所で使用する電力コストの削減を図るとともに、需要家への電力販売を行うため、重質油留分の分解過程で副生される石油コークスを燃料とした発電設備を設置することを決定しました。
さらに、石油製品のマージン安定化のために、需要減少に見合った生産・販売に努め、国内外のマーケット価格の動きに応じた機動的な製品輸出を行いました。
● 石油化学製品事業の拡大に向けた取組み
石油化学製品事業については、アジアの需要を獲得し、新増設される石油化学プラントとの競争を勝ち抜くため、韓国のウルサン広域市にSKグループと共同で世界最大級のパラキシレン(合成繊維・ペットボトル等の原料)の製造装置を建設し、平成26年6月に生産を開始しました。パラキシレンについては、当期は市況が低迷しましたが、今後は需要の拡大が見込まれ、中長期的には確実な収益貢献が期待できます。
● LNG・天然ガス事業の拡大に向けた取組み
LNG・天然ガスについては、従来から、水島製油所のLNG基地を拠点に積極的に販売を進めてきたところ、さらに、東北地域及び北海道東部地域への販売拡大を進めるべく、青森県八戸市に輸入基地、北海道釧路市に同基地から転送したLNGの受入れ基地を建設し、本年4月、操業を開始しました。石油からLNGへの燃料転換が進む状況にある中、LNG・天然ガスの供給体制を拡充することにより、エネルギーに関するお客様のニーズの変化に対応します。
● 電気事業・水素事業における新たな取組み
JX日鉱日石エネルギー株式会社は、「エネルギー変換企業」として、石油以外の多様なエネルギーの供給にも取り組んでおり、当期においては、電気・水素に関する新たなビジネスチャンス獲得に向けた施策を進めました。
電気事業については、今後の電力小売市場の全面自由化に向けて、安定した需要が見込まれる家庭用電力小売事業に参入することを決定しました。
水素事業については、燃料電池自動車の普及を見据え、水素の出荷・輸送と水素ステーションの運営を担う新会社を設立し、水素の供給体制の整備に取り組むとともに、燃料電池自動車への供給拠点となる水素ステーションを全国12か所に設置しました。
● 東京オリンピック・パラリンピック競技大会の運営支援
2020年(平成32年)の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に当たり、JX日鉱日石エネルギー株式会社は、「東京2020ゴールドパートナー」に選定されました。本大会の安定的な運営及び日本代表選手団の選手強化に積極的に貢献するとともに、石油製品はもとより、電気、水素など様々なエネルギー供給に関する知見やノウハウを活かし、運営をサポートする所存です。
<エネルギー事業の業績>こうした状況のもと、エネルギー事業の売上高は前期比15.2%減の9兆1,248億円、経常損益は3,346億円の損失(前期は1,082億円の利益)となりました。在庫影響を除いた経常損益相当額は722億円の利益(前期は79億円の損失)となりました。
石油・天然ガス開発事業(JX日鉱日石開発グループ)
● 石油・天然ガス生産量の拡大に向けた取組み
石油・天然ガス開発事業については、原油換算で日量20万バーレルの生産を実現することを目標として掲げ、推進中のプロジェクトの早期生産開始に努めるとともに、権益を保有する油田・ガス田の埋蔵量を維持・拡大するために探鉱事業を着実に進めました。
パプアニューギニアのLNGプロジェクトについては、当初予定よりも早い平成26年5月にLNGの生産を開始しました。一方、英国北海のプロジェクトについては、アンドリュー油田での設備の安全性確保を目的とした補修工事等に時間を要したことから、同油田の設備を共用するキヌール油田とともに、当初の予定より遅れて、平成26年12月からの生産開始となりました。また、既存の油田・ガス田からの生産量が減少したこともあり、JX日鉱日石開発株式会社全体での生産量は、前期並みの日量11万5千バーレルとなりました。
また、今後の生産量を拡大するために開発中のプロジェクトでは、マレーシアのラヤン油ガス田については平成28年中の生産開始、英国北海のマリナー油田については平成29年中の生産開始に向けて、それぞれ資機材の調達、生産設備の設計・建設等を進めました。
JX日鉱日石開発株式会社においては、重点的に事業活動を行う国を「コア事業国」と位置付け、コア事業国を中心に探鉱事業を推進しています。その結果、当期は、オペレーターを務めるマレーシアの深海鉱区のほか、英国北海、ベトナム、オーストラリアにおいて、原油、天然ガス等を発見しました。また、英国北海においては、アンドリュー油田及びマリナー油田に近接するエリアで新たに探鉱鉱区権益を取得しました。
● 米国における石炭火力発電所の排ガス活用による原油増産プロジェクトの開始
米国において、石炭火力発電所の燃焼排ガスから二酸化炭素を回収するプラントを建設し、回収した二酸化炭素を油田へ圧入することにより原油の増産を図るCO2-EORプロジェクトを開始しました。このプロジェクトは、老朽化した油田の生産量を大幅に増加させるだけでなく、大気中に放出される二酸化炭素を回収し、地中に貯蔵する画期的な取組みであり、日本の政策金融機関である株式会社国際協力銀行からの出資に加え、米国エネルギー省からの支援を得て実施するものです。CO2-EORに関する技術は、原油の増産により収益向上を図ることができるのみならず、環境面でも貢献が期待できる極めて有効な手段であり、今後はこの技術を環境意識が高まる産油国等にアピールすることにより、新たな権益取得に活かすことができるものと考えています。
<石油・天然ガス開発事業の業績>こうした状況のもと、石油・天然ガス開発事業の売上高は、前期比12.0%増の2,264億円、経常利益は前期比19.5%減の849億円となりました。
金属事業(JX日鉱日石金属グループ)
● 銅の資源開発事業及び製錬事業の取組み
チリのカセロネス銅鉱山において、平成26年5月、銅精鉱の生産を開始しました。同年7月に開山式を執り行うとともに、銅精鉱の出荷を開始し、9月には佐賀関製錬所に出荷第1船が到着しました。その後、銅精鉱の生産工程で生じる「廃さい(鉱石くず)」堆積場の整備等に時間を要することとなったため、フル生産の開始が遅れていますが、その早期実現に向けてグループ一丸となって全力で取り組んでいます。
一方、製錬事業については、買鉱条件が改善したことに加え、円安の影響もあって、収益を改善することができました。
● 電材加工、環境リサイクル及びチタンの各事業の取組み
電材加工事業については、半導体の製造に利用されるスパッタリングターゲット、フレキシブル電子基板用の圧延銅箔、主にコネクター材として使用される精密圧延品等を生産し、世界的トップベンダーとして主要電子機器メーカーに納入しており、当期においては、スマートフォンやタブレット端末の販売好調を受け、増収増益となりました。このような状況の中、中国(広東省)に新たに精密圧延品の供給拠点を設置し、台湾の龍潭(ロンタン)工場において半導体用ウェハのめっき受託加工サービスを開始するなど、海外の需要獲得のための施策を推進しました。
環境リサイクル事業については、米国に新たな拠点を設置し、リサイクル原料の集荷体制を強化しました。また、平成26年3月に開始した北海道苫小牧市の廃棄物処理施設における低濃度PCB廃棄物の無害化処理事業については、順調にその処理量を伸ばしました。
軽量で強度・耐食性に優れた金属であるチタンは、航空機や化学プラント設備等に使用されますが、その製造・販売事業については、電力料金の値上げによるコストアップに加え、安価な中国製品の台頭が懸念されるなど厳しい事業環境にあることから、国内においては、生産設備を一部休止し生産体制の効率化を図る一方、安価な電力と安定した原料の調達が可能なサウジアラビアにおいて製造事業を行うことを決定しました。
<金属事業の業績>こうした状況のもと、金属事業の売上高は、前期比11.2%増の1兆1,560億円、経常利益は前期比19.5%増の566億円となりました。
その他の事業
その他の事業の売上高は前期比5.7%減の4,610億円、経常利益は前期比3.4%増の398億円となりました。
<株式会社NIPPO>株式会社NIPPOは、舗装、土木及び建築の各工事ならびにアスファルト合材の製造・販売を主要な事業内容としています。当期は、公共工事が底堅く推移したものの、労務費や原材料コスト等が上昇したことから、引き続き厳しい経営環境となりました。こうした状況下、同社は、優れた技術力を活かし、工事の受注獲得に尽力するとともに、アスファルト合材の販売拡大やコスト削減・効率化の取組みを強化し、収益確保に努めました。
上記各セグメント別の売上高には、セグメント間の内部売上高857億円(前期は729億円)が含まれています。
(4)キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は3,280億円となり、期首に比べ479億円増加しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
営業活動の結果、資金は7,372億円増加しました。これは、たな卸資産の減少(4,418億円)、売上債権の減少(4,026億円)、減価償却費(1,973億円)等による資金増加要因が、税金等調整前当期純損失(2,550億円)、仕入債務の減少(1,193億円)等による資金減少要因を上回ったことによるものです。
投資活動の結果、資金は3,778億円減少しました。これは、石油・天然ガスの開発に係る投資及びカセロネス銅鉱山事業への投資等によるものです。
財務活動の結果、資金は3,263億円減少しました。これは、短期借入金の減少(2,519億円)、長期借入金の返済による支出(1,793億円)等による資金減少要因が、長期借入れによる収入(2,268億円)等の資金増加要因を上回ったことによるものです。