有価証券報告書-第9期(令和2年7月1日-令和3年6月30日)

【提出】
2021/09/29 15:00
【資料】
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【項目】
119項目
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
① 業績等の概要
当社グループは、スモールビジネス向けのクラウド会計ソフトとクラウド人事労務ソフトのTAMについて、合計で約1.2兆円と推計(注1)しております。一方、会計ソフトを利用している従業員1,000人以下の中小企業及び個人事業主のうちクラウド会計ソフトの普及率は22.5%に留まるなど(注1)、クラウドERP市場における普及率の上昇余地は大きく残されていると認識しております。当社グループは「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げ、「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム」の実現を目指してサービスの開発及び提供をしております。
当連結会計年度においては、当社グループは、ミッションの実現に向けて、顧客価値向上のために、主要サービスである「freee会計」及び「freee人事労務」の機能改善に向けた開発投資を実施するほか、申請・承認機能の拡充を行いました。
さらに、ユーザー基盤の更なる拡大のために、ダイレクトセールスの組織の拡大を図ると共に、金融機関やパートナー企業との連携強化に加えて、法務領域への進出を目的とし株式会社サイトビジットを子会社化したほか、会計事務所を対象としたイベント「freee Advisor Day 2021」を開催しました。
このような取り組みの結果、当連結会計年度末におけるARRは前連結会計年度末比42.7%増の11,268百万円、有料課金ユーザー企業数は同30.9%増の293,296件、ARPUは同9.0%増の38,419円となりました。なお、当連結会計年度に実施したM&A(株式会社サイトビジットが運営する「NINJA SIGN by freee」はARR154百万円及び合同会社ノンモが運営する「Taxnote」はARR42百万円)(注2)考慮後のARRは11,465百万円となります。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は前連結会計年度比48.8%増の10,258百万円、調整後営業損失(注3)は2,301百万円(前連結会計年度は2,587百万円)、営業損失は2,441百万円(同2,681百万円)、経常損失は2,719百万円(同2,938百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は2,756百万円(同2,972百万円)となりました。
ARR、有料課金ユーザー企業数及びARPU推移
2017年6月期末2018年6月期末2019年6月期末2020年6月期末2021年6月期末
ARR(百万円)1,7202,9865,2737,89811,268
有料課金ユーザー
企業数(件)
84,517115,808160,132224,106293,296
ARPU(円)20,35125,78632,93035,24638,419

(注) 1.前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)当社グループの強み ① 成長性の高いクラウド会計・人事労務ソフト市場におけるユニークで強固なポジション」を参照
2.NINJA SIGN(サイトビジット社)及びTaxnote(ノンモ社)のみなし取得日は2021年6月30日であり、損益計算書、ARR、有料課金ユーザー企業数及びARPUは2021年7月から連結開始。なお、両サービスともにM&A実施直後であるため、ARRは速報ベースの参考値であり、今後変動する可能性がある点に留意
3.調整後営業利益:営業利益+株式報酬費用+M&Aにより生じた無形資産の償却費用+その他一時費用。なお、調整後営業利益については有限責任 あずさ監査法人による監査又はレビューを受けておりません
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末比37,388百万円増加の55,286百万円となりました。これは主に、新株発行等により現金及び預金が32,006百万円増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末比4,370百万円増加の8,414百万円となりました。これは主に前受収益が2,314百万円、未払金が576百万円増加したことによるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末比33,017百万円増加の46,871百万円となりました。これは主に、新株発行により資本金及び資本剰余金がそれぞれ17,694百万円増加したことによるものです。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、47,143百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は192百万円(前連結会計年度は1,380百万円)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失2,747百万円、前受収益の増加額1,418百万円、営業活動に係る活動未払金の増加額311百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は3,180百万円(前連結会計年度は1,306百万円)となりました。これは主に、子会社株式の取得による支出2,173百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は35,380百万円(前連結会計年度は11,970百万円)となりました。これは主に、株式の発行による収入35,472百万円によるものです。
④ 生産、受注及び販売の状況
a. 生産実績
当社グループが営む事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
b. 受注実績
当社グループが営む事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績は前連結会計年度比48.8%増の10,258百万円となりました。なお、当社グループは当社と連結子会社4社の合計5社で構成されておりますが、プラットフォーム事業を主な事業としており、他の事業セグメントの重要性が乏しいため、セグメントごとの記載はしておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
なお、当社グループの連結財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 経営成績の分析
(売上高)
売上高は10,258百万円となりました。これは「freee会計」及び「freee人事労務」の有料課金ユーザー企業数の増加、ARPUの上昇によるARRの拡大を主因とした売上高の増加によるものであります。
(売上原価、売上総利益)
売上原価は2,100百万円となりました。これは主に、サービスの利用ユーザー数の増加に伴い、サーバーに係る費用、カスタマーサポートに係る費用が増加したことや、ソフトウェア資産の減価償却費の増加によるものであります。この結果、売上総利益は同52.9%増の8,158百万円となりました。
(調整後販売費及び一般管理費、調整後営業損失)
調整後販売費及び一般管理費は10,459百万円となりました。これは主に、人件費、マーケティング費用の増加によるものであります。この結果、調整後営業損失は2,301百万円(前連結会計年度は2,587百万円の損失)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
営業外収益は4百万円となりました。営業外費用は281百万円となり、主な内容は株式交付費及び資金調達費用であります。この結果、経常損失は2,719百万円(前連結会計年度は2,938百万円の損失)となりました。
(特別利益、特別損失、親会社株主に帰属する当期純損失)
特別損失は28百万円となり、主な内容は投資有価証券評価損であります。また、法人税等合計は8百万円となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純損失は2,756百万円(前連結会計年度は2,972百万円の損失)となります。
(単位:百万円)
2019年6月期2020年6月期2021年6月期
売上高4,5166,89510,258
売上原価9861,5572,100
売上総利益3,5305,3378,158
調整後販売費及び一般管理費6,1917,92510,459
うち調整後R&D(注1)1,6231,9582,630
うち調整後S&M(注2)3,5364,6076,031
うち調整後G&A(注3)1,0301,3591,798
調整後営業利益(△)△2,660△2,587△2,301

(注)1.Research and Developmentの略称。研究開発に係るエンジニアの人件費や関連する経費及び共通費等の合計
2.Sales and Marketingの略称。販売促進に係る広告宣伝費やセールス人員の人件費や関連する経費及び共通費等の合計
3.General and Administrativeの略称。コーポレート部門の人件費や関連する経費及び共通費等の合計
4.調整後R&D、調整後S&M、調整後G&A及び調整後営業利益の各数値については、 有限責任 あずさ監査法人による監査又はレビューを受けておりません
③ 財政状態の分析
当連結会計年度の財政状態の分析については、前記「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりであります。
④ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、前記「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループにおける主な資金需要は、当社グループの業容拡大を企図した、M&Aや戦略的投融資のほか、研究開発活動や営業活動にかかる人件費や広告宣伝費です。これらの資金需要に対しては、主に自己資金を充当することを基本としております。
⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。