有価証券報告書-第12期(2023/07/01-2024/06/30)

【提出】
2024/09/27 15:02
【資料】
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【項目】
136項目
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
① 業績等の概要
当社グループは、スモールビジネス(注1)向けのクラウド会計ソフトとクラウド人事労務ソフトのTAM(注2)について、合計で約1.6兆円(注3)と推計しております。一方、財務関連ソフトウェアを利用する従業員1,000人未満の中小企業及び個人事業主におけるクラウドソリューションへの支出額比率は46.3%であり(注4)、クラウドERP市場の拡大ポテンシャルは高いと認識しております。当社グループは「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げ、「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム。」の実現を目指してサービスの開発及び提供をしております。
当連結会計年度において、当社グループは、主要サービスである「freee会計」及び「freee人事労務」を中心に機能改善を目的とした開発投資を実施しました。2023年10月から開始したインボイス制度に向けて、「freee支出管理 受取請求書」(注5)において請求書の明細をOCRで自動で読み取れる機能等を開発し提供開始しました。また、フリーランス管理ツールの「pasture」事業をエン・ジャパン株式会社より承継し、「freee業務委託管理」としてリリースするなど、M&Aを活用したプロダクト拡充を進めました。さらには、インボイス制度に対応したサービス拡充に向けてsweeep株式会社の吸収合併を行いました。また、「freee TOGO world 2024」や「freee Advisor Day 2024」といったイベントを開催するなど、マーケティング活動を推進しました。
このような取り組みの結果、当連結会計年度末におけるプラットフォーム事業(注6)のARR(注7)は前連結会計年度末比26.8%増の26,087百万円、有料課金ユーザー企業数(注8)は同18.1%増の532,637件、ARPU(注9)は同7.4%増の48,977円、当連結会計年度における同事業の売上高は前連結会計年度比32.3%増の25,430百万円、調整後営業損失(注10)は7,562百万円(前連結会計年度は7,195百万円)となりました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は前連結会計年度比32.3%増の25,430百万円、調整後営業損失は7,562百万円(前連結会計年度は7,195百万円)、営業損失は8,386百万円(同7,919百万円)、経常損失は8,638百万円(同7,982百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は10,150百万円(同12,338百万円)となりました。
プラットフォーム事業のARR、有料課金ユーザー企業数及びARPU推移
2020年6月期末2021年6月期末2022年6月期末2023年6月期末2024年6月期末
ARR(百万円)7,89811,26815,05720,57926,087
有料課金ユーザー
企業数(件)
224,106293,296379,404451,088532,637
ARPU(円)35,24638,41939,68645,62248,977

(注) 1.「スモールビジネス」とは、個人事業主と従業員が1,000名以下の法人を指す
2.TAM:Total Addressable Marketの略称。当社グループが想定する最大の市場規模を意味する用語であり、当社グループが本書提出日現在で営む事業に係る客観的な市場規模を示す目的で算出されたものではない。各プロダクトのTAMは、一定の前提の下、外部統計資料をはじめ、プロダクトラインナップ拡充やプラン改定等の当社ビジネスの取り組み状況も踏まえ、国内における全潜在ユーザー企業において各プロダクトが導入された場合の年間支出総金額を当社グループが推計したものであり、その正確性にはかかる統計資料や推計に固有の限界があるため、実際の市場規模はかかる推計値と異なる可能性がある
3.国内における当社グループの全潜在ユーザー企業において「freee会計」及び「freee人事労務」が導入された場合の全潜在ユーザー企業による年間支出総金額。全潜在ユーザー企業は、個人事業主と従業員が1,000名未満の法人の合計。(「freee会計」及び「freee人事労務」の全潜在ユーザー企業数(国税庁「令和4年申告所得税」、総務省統計局「令和3年経済センサス 活動調査」) × 従業員規模別の「freee会計」及び「freee人事労務」の想定年間課金額)
4.International Data Corporation(IDC)「Worldwide Software and Public Cloud Services Spending Guide_2024V2」
5.2024年3月に受取請求書管理サービス「sweeep」から名称変更
6.スモールビジネス向けに展開するクラウドERPの提供や金融サービス等から構成される事業。2022年6月期においては、当社グループの事業全体から、連結子会社である株式会社サイトビジット(現・フリーサイン株式会社)が提供していた「資格スクエア」事業(2021年12月に売却)を除いたもの
7.ARR:Annual Recurring Revenueの略称。各期末月のMRR(Monthly Recurring Revenue)を12倍して算出。MRR:Monthly Recurring Revenueの略称。対象月の月末時点における継続課金ユーザー企業に係る月額料金の合計額(一時収益は含まない)
8.当社グループのサービスを利用する個人事業主と法人の双方を指す
9.ARPU: Average Revenue Per Userの略称。1有料課金ユーザー企業当たりの平均単価。各四半期末時点における合計ARRを有料課金ユーザー企業数で除して算出
10.調整後営業利益=営業利益+株式報酬費用+M&Aにより生じた無形資産の償却費用+その他一時費用。なお、調整後営業利益については有限責任 あずさ監査法人による監査又はレビューを受けておりません
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末比2,833百万円減少の39,953百万円となりました。これは主に、現金及び預金が4,654百万円減少したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末比7,272百万円増加の23,000百万円となりました。これは主に、短期借入金が4,700百万円、前受収益が2,416百万円それぞれ増加したことによるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末比10,106百万円減少の16,952百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失の計上により利益剰余金が10,150百万円減少したことによるものです。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、31,750百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は6,767百万円となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失10,076百万円、前受収益の増加額2,296百万円及び減損損失1,472百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は1,088百万円となりました。これは主に、吸収分割による支出794百万円及び有形固定資産の取得による支出662百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は3,705百万円になりました。これは主に、短期借入金の純増額4,700百万円によるものです。
④ 生産、受注及び販売の状況
a. 生産実績
当社グループが営む事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
b. 受注実績
当社グループが営む事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績は前連結会計年度比32.3%増の25,430百万円となりました。なお、当社グループは当社と連結子会社5社の合計6社で構成されておりますが、プラットフォーム事業を主な事業としており、他の事業セグメントの重要性が乏しいため、セグメントごとの記載はしておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
なお、当社グループの連結財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 経営成績の分析
(売上高)
売上高は25,430百万円となりました。これは「freee会計」及び「freee人事労務」の有料課金ユーザー企業数の増加、ARPUの上昇によるARRの拡大を主因とした売上高の増加によるものであります。
(売上原価、売上総利益)
売上原価は4,439百万円となりました。これは主に、サービスの利用ユーザーの増加に伴う、サーバーに係る
費用やカスタマーサポートに係る費用の増加によるものであります。この結果、売上総利益は20,991百万円(前連結会計年度は16,066百万円)となりました。
(調整後販売費及び一般管理費、調整後営業損失(注1)) 調整後販売費及び一般管理費は28,554百万円となりました。これは主に、中長期成長戦略に伴う先行投資による人件費、マーケティング費用を増加させたことによるものです。この結果、調整後営業損失は7,562百万円(前連結会計年度は7,195百万円の損失)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失) 営業外収益は8百万円となりました。営業外費用は259百万円となり、主な内容は支払手数料及び譲渡制限付株式報酬償却損であります。この結果、経常損失は8,638百万円(前連結会計年度は7,982百万円の損失)となりました。
(特別利益、特別損失、親会社株主に帰属する当期純損失)
特別利益は36百万円となり、主な内容は新株予約権戻入益であります。特別損失は1,475百万円となり、主な内容は減損損失であります。以上の結果、親会社株主に帰属する当期純損失は10,150百万円(前連結会計年度は12,338百万円の損失)となりました。
(単位:百万円)
2022年6月期2023年6月期2024年6月期
うち「資格スク
エア」事業(注2)
Q1-Q2(5ヶ月)
売上高14,38039319,21925,430
売上原価2,8401393,1534,439
売上総利益11,53925316,06620,991
調整後販売費及び一般管理費13,79016123,26128,554
うち調整後R&D(注3)3,606-6,8648,332
うち調整後S&M(注4)7,541-13,33716,974
うち調整後G&A(注5)2,481-3,0593,246
調整後営業利益(△)△2,25092△7,195△7,562

(注)1.調整後営業利益=営業利益+株式報酬費用+M&Aにより生じた無形資産の償却費用+その他一時費用。なお、調整後営業利益及び調整後販売費及び一般管理費については有限責任 あずさ監査法人による監査又はレビューを受けておりません
2.株式会社サイトビジット(現・フリーサイン株式会社)が提供していた事業で、2021年12月に売却
3.Research and Developmentの略称。研究開発に係るエンジニアの人件費や関連する経費及び共通費等の
合計
4.Sales and Marketingの略称。販売促進に係る広告宣伝費やセールス人員の人件費や関連する経費及び共通費等の合計
5.General and Administrativeの略称。コーポレート部門の人件費や関連する経費及び共通費等の合計
③ 財政状態の分析
当連結会計年度の財政状態の分析については、前記「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりであります。
④ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、前記「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループにおける主な資金需要は、当社グループの業容拡大を企図した、M&Aや戦略的投融資のほか、研究開発活動や営業活動にかかる人件費や広告宣伝費です。これらの資金需要に対しては、主に自己資金を充当することを基本としております。また、クレジットカード事業においては、運転資金の効率的な調達を行うため当座貸越契約等を締結しております。
⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。